【コラム】2026年度前半の政策・制度設計の振り返り

2026年9月2日

小売電気事業・需要家向けの制度設計も徐々に動きが出ている

今後の小売電気事業者への量的(kW時)な供給力確保義務と整合を取る形で創設が予定されている中長期取引市場の詳細設計の議論が、新たに設置されたワーキンググループで着手された。非常に論点が多く、現時点で決定した内容は少なく、今年度で、一定の方向性を出しておきたいところ、どこまで整理できるかが課題となっている。

その他、電力システム改革検証に係る制度設計で整理された項目については、一部の改正電気事業法として法律公布となったものやガイドライン改定の動きがあった。

小売電気事業者にとって、売上原価の大宗を占める電源調達については、内外無差別な卸売の最新のフォローアップが行われ、北海道・東北・北陸・関西・中国・四国・沖縄の7エリアで内外無差別性が担保されていると評価されている。また、今年度から法制化された排出量取引制度において、発電事業者にかかる費用や収益の扱い(卸価格などへの転嫁)についても議論が始まっており、卸市場、ベースロード市場、容量市場、経過措置料金での扱いの具体設計が行われ、おおむね方向性が整理されている。

小売電気事業者の主要な売上原価には託送料金もある。23年度から始まったレベニューキャップ制度で運用を続けてきた一般送配電事業者にとって、物価・労務費・工事費・金利・為替の変動は、コスト増や工事の後ろ倒しといった影響になって現れており、収支もキャッシュフローも厳しい状況に追い込まれつつある。そうした中、物価などの上昇について、26年度・27年度分を限定としたエスカレーションが認められ、この7月に北陸・中国を除く一般送配電事業者8社が「収入の見通し」の変更認可申請(増額)を行った。8月に電力・ガス取引監視等委員会で審査が行われ、ほぼ満額回答で確認が終わり、今後、経済産業大臣の承認を経て、託送供給等約款の変更届出が行われ、11月1日から実施される予定となっている。審査完了時点で、当該8社は託送料金を算出しているが、需要側・発電側双方、値上げとなっている。小売電気事業者においては、11月という非常に半端な時期、かつタイトなスケジュールではあるが、託送料金値上げ分を小売料金に反映する見直しを行うか検討する必要がある。

依然として残っている経過措置料金の扱いについては、26年3月末時点の状況を踏まえた解除要件の確認が行われ、初めて解除要件をクリアしたエリアが出てきた。それは、最も電力小売全面自由化が遅れているとされていた沖縄で、沖縄電力の代理を行っていた事業者が自社小売に転換したことを受け、シェアを伸ばしたことが要因となっている。実際に沖縄エリアの経過措置料金解除を行うかは、今後、実態を精査した上で判断されることとなっている。

国や独立行政法人で使用する電力の入札(環境配慮法に基づく契約)では、27年度契約分から採用される総合評価落札方式への変更を含む基本方針の改訂が行われた。早ければ26年度秋に行われる入札から適用される見通しとなっている。これまでギリギリで裾切りをクリアし、価格勝負に持ち込んでいた小売電気事業者については、環境配慮点をある程度上げる必要があり、入札戦略の見直しが必要になる可能性がある。また、法律違反している再エネ電源からの調達を避けることが明記されており、その証明や誓約を行うことも盛り込まれている。

非化石価値取引では、25年度分の入札が完了した。今年度の入札は例年通り8月から行われる。高度化法対応は、第3フェーズに入り、最初のターゲットである30年度目標への見立ても出しておく時期に来ている。高度化法については排出量取引制度との整合を検討すべきとの意見も多く、また、GHGプロトコルscope2の改定も予定される中、非化石価値取引制度の在り方自体を見直すことも視野に入れる必要があるだろう。なお、非化石証書の上下限価格の見直し、一部で2027年度から適用する方向であることから、今年度中に最終決定を出しておく必要があるだろう。

実効性ある制度設計ができるかどうかが今後の課題

この数年、日本の電気事業の制度設計は、増改築を繰り返す家のように、適宜、見直され、新たな施策の創設や制度変更が行われてきた。都度、事業者、さらにはその先にある需要家が困惑するケースも見られ、その意義・目的が見失われていないかという感覚に陥る時がある。一つの政策や制度が未来永劫続くことはなく、その時々の情勢や実態を踏まえた修正・見直しが行われるといったPDCAサイクルを回すことに異議はないが、その内容が実効性を伴ったものになるのか、今後、よく見極めた制度設計を行うことが求められる。特に、電気を利用する最終需要家へのコスト負担を伴うものが結果的に多くなっていることから、特に留意が必要だろう。

最近、この「実効性を高める」や「事業者の意見をよく聞く」といった言葉を審議会で聞くケースが増えている。こうした姿勢が掛け声倒れにならず、実行されることを願いたい。

【プロフィール】1999年東京電力入社。オンサイト発電サービス会社に出向、事業立ち上げ期から撤退まで経験。出向後は同社事業開発部にて新事業会社や投資先管理、新規事業開発支援等に従事。その後、丸紅でメガソーラーの開発・運営、風力発電のための送配電網整備実証を、ソフトバンクで電力小売事業における電源調達・卸売や制度調査等を行い、2019年1月より現職。現在は、企業の脱炭素化・エネルギー利用に関するコンサルティングや新電力向けの制度情報配信サービス(制度Tracker)、動画配信(エネinチャンネル)を手掛けている。

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