【フォーラムアイ】北陸電力が能登半島地震で得た知見や対策「虎の巻」として公開

2026年9月4日

道路情報と啓開状況 リアルタイムの共有化

二点目の情報収集および社内共有については、「道路」に関わる情報が問題となった。震災直後は、各機関からの情報が錯綜し、全体把握が困難だったためだ。また、国道、県道では管理主体が異なる。道路の全体像を把握できなければ、復旧作業員や作業車、資機材を送る最適なロジスティックは分からない。逆に、同社側から道路の啓開を要請することも難しい。

そこで、今回の対応では各機関による道路情報の一元化を要請した結果、国のシステム上に反映された。また、同社側が現場で得た「生の情報」を社内地図システムに即時登録し、災害時にはリアルタイムで全社に共有する仕組みを構築した。さらに同様の被害が発生することに備え、国や県が「北陸圏域道路啓開計画」を策定した。関係者間で道路の啓開の優先度を調整する枠組みを設けることで、より早期の復旧に期待がかかる。

三点目で重要だったのが、復旧拠点や宿泊施設の確保だ。これに関しては、従前からの取り組みが奏功した点、逆に課題が明らかになった点の両面があった。奏功した点は、他の民間企業と結んできた「災害時連携協定」を活用し、例えば商業施設の駐車場を利用して迅速に復旧拠点を設営できたこと、あるいはその隣接店舗から、食料や生活用品を確保できたことなどがある。

ただ、最も被害が大きかった奥能登エリアには「協定先」がなく、拠点を迅速に設けることがかなわなかった。今回は「のと里山空港」を拠点にできたが、今後は管内全域を網羅できるようあらかじめ協定を結ぶ必要性を認識し、候補をリストアップの上で協定締結を目指す。

発電機車への給油の様子

長期戦ゆえに得られた教訓も多かった。従前の対策や訓練では、発災から数日間の初動対応が中心だった。しかし今回は長期戦で、前線を支える要員の確保が大きな課題だった。同社は不急の業務を中断して全社から要員を捻出。復旧拠点への各種支援、避難所に配備した発電機車への給油、被災に伴う事務処理の応援など要員をそろえた。

こうした取り組みから、どの部門からどういった基準で要員を捻出するか、必要なスキルの一覧、交代・宿泊の計画、指揮系統などを平時から整理しておくことが最も効果的な対策だと結論付けた。

「復旧完了までに多くの時間を要した点で、今回の地震は稀有な事例。その意味で、当社が取り組んで得た知見は個社にとどめるのではなく、広く知ってもらった方が社会にとって有用だと判断し公表することにした」(才川氏)。この「虎の巻」には電力やエネルギー事業者、さらにはその他の公益的なインフラを担う多くの事業者にとって参考にしてほしいという思いが込められている。

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