【SNS世論】原子力好き?のイーロン・マスクに学ぶ広報術
マスク流の広報の日本への応用
こうしたイーロン・マスクの広報手法を、日本の原子力・エネルギー広報に役立てることができないだろうか。日本の原子力関係者は真面目で、情報を大量に提供している。しかし伝わる工夫が、今一つであるように思える。
どんなに一生懸命、広報のコンテンツを工夫して提供しても、そもそもそれを読まず見ず原子力を語ったり、原子力やエネルギー企業を批判したりする人もいる。「企業は悪いことしている」と最初から固定化した意見を持っている人もいる。そうした過激な批判者は少数者だが、原子力の関係者の多くは、少数でも批判を恐れるあまり、守りの姿勢に入ってしまう。それでは人の心は動かない。
原子力広報で決まり文句となっている言葉について、一般の人に感想を聞いたことがある。「安全性の更なる向上」というフレーズは、「自分の正当性を主張するだけに聞こえる」との感想があった。「原発が動かないと電気が足りなくなる」「電気代が上る」というアプローチは、多くの人が正しいと認めるものの「脅迫を受けているようで不快」との意見もあった。事実を繰り返し伝えても、聞き手がどのように受け止めるかはわからない。
マスク氏のように、リスクを背負って、広報をすることは、日本の原子力で行われている組織の広報では難しい。しかし彼の積極的な広報で、マイナス面があっても、それを飲み込みながら彼は前に進んでいる。もちろん彼の存在感の大きさ、影響力は、SNSの言論空間の活動のためだけではなく、実際の彼のビジネスの大きさや政治活動によってももたらされている。しかし、そうした積極的な広報が、現実のビジネスにも好影響を与えているように思える。
日本の原子力批判者、反対派の「危険」という感情的な訴えに対し、推進派が冷たい数字と手続き論を中心に返してきた。その結果が、動きが止まり、原子力をめぐる世論の改善のペースが遅い現状なのだろう。
原子力を巡る「大きな物語」を活用せよ
ちょうど今、原子力・エネルギーを巡る大きな変化が起きつつある。日本でもAIによる需要が伸び、また世界的なエネルギー価格の上昇の中で、原子力の役割の見直しが起きている。
「AIを発展させ、日本が世界規模の競争に勝ち、さらに私たちの快適な生活を作るには、しっかりしたエネルギー産業が必要である。エネルギー産業はあなたと共に未来をつくる」
「原子力発電は、古い危険な存在ではない。未来を作り、温暖化抑制に役立つ、私たちの未来を素晴らしい方向に変えるエネルギー源であり、AIを支えるITインフラだ」
この二つの「大きな物語」が嘘ではなく、現実のものとして作られつつある。
マスク氏のように、反対派と争う必要も、評判を下げかねない他者への批判は無理にする必要がない。しかし彼の行う「大きな物語」を語り、それに発信をつなげる広報術を実際に行える状況になりつつある。人々に夢を抱かせる広報は、快適だし、実行する人にもやりがいがありそうだ。
日本の原子力・エネルギー広報では真面目なこれまでの手法も必要だ。それに加えて、マスク的、広報、SNSの使い方は、壁を乗り越える一つの策になり得ると思う。新しい手法を取り入れるべき時だ。
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