【東北電力 樋口社長】「スマート社会実現事業」を成長事業と位置付け早期の収益化を目指す

2021年8月1日

志賀 新会社の販売目標やサービスのターゲット層についてどう想定していますか。

樋口 従来の「需要場所」を中心とした販売ではなく、お客さま一人ひとりにフォーカスした価値を提供していくこととしており、30年時点で数百万件の顧客獲得を目指しています。スマート社会実現事業全体で、30年代に売上高数千億円程度を目指していますが、その多くの割合をカバーできるよう事業を育てていきます。

地域の信頼を守り 社員の意識変化を促す

志賀 創立70周年を迎えました。この先も引き継ぐべきもの、変えていくべきものについてどうお考えでしょうか。

樋口 当社は創立以来、「東北の繁栄なくして当社の発展なし」を基本的な考え方として経営してきました。この考え方に示される地域社会への強い想いは、東北電力グループ経営理念の「地域社会との共栄」にもあるとおり、当社経営の根幹をなす基本的価値観です。東北6県と新潟県に腰を据え、根を張り、貢献しようという想いは、事業環境が激変する中でもいささかも変わることはなく、グループ社員一人ひとりが業務を遂行する上での揺るぎない拠り所です。

 一方、今後の東北電力グループとしての在り方は、時代の変化に応じて変えていかなければなりません。その大方針が、昨年2月に策定した中長期ビジョン「よりそうnext」です。東北6県および新潟県のお客さまに安定・低廉な電力をお届けすることの重要性に変わりはありませんが、これからは、新たな時代に対応しビジネスモデルの転換を図り、「東北発のスマート社会」を実現していく必要があると考えています。

 事業を営んでいく上で、守るべきものは、これまで培ってきた地域社会からの「信頼」です。一方、事業環境が激変していく中、新たな時代に向かってビジネスモデルの転換を図っていくため、変えるべきものは、「意識」だということを社員にも強く働きかけています。  

 社員に対しては、お客さまや地域の皆さまが真に求めるものに想いを巡らす想像力を持ち、これを具現化するための創造力を働かせ、お客さま個々のお悩みを解決するようなアイデアの創出に努めることができる人材となってくれることを期待しています。 

 70周年にとどまらず、その先の100年を見据え、グループスローガン「より、そう、ちから。」のもと、お客さまにより沿い、地域に寄り添い、東北電力グループだからできる価値を創造し、お客さまと地域の方々の未来の暮らしを支え、ともに持続的な成長を遂げていくことのできる企業グループを目指してまいります。

新商品・サービスの開発に向け、アイディア創出に取り組んでいる

対談を終えて

2050年カーボンニュートラルに向けて3月、業界に先駆けて東北電力グループの戦略を打ち出し、それを基に理想ではなく現実的な積み上げによる30、50年を目標としたロードマップ作成に着手した。4月には東北・新潟の社会的課題の解決を目的とし、多様なサービスをトータルパッケージで提供することでスマート社会の実現を目指す『東北電力フロンティア』の設立と、矢継早に新手を打ち出し、その語りは滑らか。が、日米で人気爆発の大谷翔平選手に話題が及ぶと、話はもう止まらない。菊池雄星選手ともども岩手・花巻東高出身と胸を張る。

(本誌/志賀正利)

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