インタビュー/久保山 裕史:国立研究開発法人森林研究・整備機構 森林総合研究所 林業経営・政策研究領域領域長
エネルギーの地産地消を支えようと、国産木質バイオマスの需要が高まっている。国内林業の現状と日本が抱える課題について、森林総合研究所の久保山氏に話を聞いた。
―現在、発電用に国産木質バイオマスはどれだけ活用されていますか。
久保山 木材チップや木質ペレットなどの木質バイオマスは①建築廃材などを利用した「産業廃棄物系」、②製材工場などで発生する「林産企業系」、③人工林の間伐材などを利用する「森林系」に大別されます。林野庁が行った木質バイオマスエネルギー動向調査によると、それぞれエネルギーとして事業所で利用されている量は、①406万t、②171万t、③303万tです。①は住宅着工件数が長期的には減っていくので増加するとは考えにくいですが、国内産木質バイオマス供給量を増やすことを考えた場合、②と③に改善の余地があると考えます。
―②について教えてください。
久保山 日本では②の使用量が最も少ないですが、木質バイオマス利用が進む欧州では使用量の半分が工場由来です。つまり②をどう増やすのかが木質バイオマスが普及する上で重要ですが、伸びない理由の一つに発電事業者が製材過程で発生するバーク(樹皮)の利用を避けている点があります。
樹皮には泥や土が混入しやすく、水分が高いという欠点があるため、一部の発電事業者がほかの燃料と混ぜるなどして利用を始めつつある段階です。また製材工場では木材の乾燥工程の熱源などに樹皮を使っていますが、ボイラーや乾燥釜の熱効率が低いため、残念ながら他所へ販売する分が残りません。
―③の森林系はどうですか。
久保山 ③の森林系については、いまだに未利用の末木枝条や端材(タンコロ)を利用することが重要です。
丸太のまっすぐな部分は建築用材、多少の変色や曲がりがあるのは合板や集成材に使われ、それぞれ「A材」、「B材」と呼ばれています。この基準に満たない曲がりやひび割れなどがあるものや、小径木は、パルプ材やバイオマス燃料になる「C材」として扱われます。
立木の根元に近いタンコロと呼ばれる部分や、末木と呼ばれる細い先端部や枝など「D材」と呼んでいる部分は未利用のままです。これは、かさばるので運搬しにくい、樹皮と同様に異物が多い、水分含有量が高いことが主な理由です。