【特集2】ゼロカーボン電力を万博会場に供給 エネルギーの未来像を映し出す
【関西電力】
関西電力は、4月13日~10月13日に大阪市夢洲地区で開催する「EXPO2025大阪・関西万博」で、「Beyond 2025」と題し、七つのエネルギープロジェクトに取り組む。
開催に先立ち関電は昨年9月、同博覧会向けにゼロカーボンの電力を供給する契約を2025年日本国際博覧会協会と締結した。契約電力は、4万5000kWで25年4月から26年3月末まで、パビリオンを含む会場全体に供給する。ゼロカーボンの電源としては、再生可能エネルギーや原子力発電に加えて、水素の活用も予定する。
万博・IRプロジェクトチームの前林ダニエル慎吾マネジャーは「1970年の大阪万博では、日本初の商用PWRである美浜発電所(福井県)で発電した原子力の電力を会場まで届けた。今回の万博ではゼロカーボンの各種発電方式を組み合わせて供給し、未来社会の『あたりまえ』を万博会場で先行して実現したい」と説明する。
水素関連プロジェクトの一つが水素発電実証。経済産業省と新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO) が進めるグリーンイノベーション基金の助成を受けて、万博の期間中、水素混焼発電実証を行う。姫路第二発電所(兵庫県姫路市)のガスタービンコンバインドサイクル(GTCC)発電1基(約49万kW)を使い、最大30 vol%まで水素混焼を行い、信頼性・安全性などを確認する。この電気を万博会場まで送り届ける計画だ。水素事業戦略室技術開発グループの松下吉文チーフマネージャーは「水素は燃焼速度が速く、従来のGTCCをそのまま使うことはできない。GTCCの燃焼器などを改良し対応した。このほか、周辺設備も拡充した。この設備をゼロカーボン水素で稼働する」と話す。
さらに水素燃料電池船では、岩谷産業が船舶建造・運航と船舶用水素ステーションの設置を、関電はエネルギーマネジメントと船舶用充電設備の建設を担当する。水素燃料電池船「まほろば」は燃料電池と蓄電池で稼働するため、水素と電気の二つの制御が必要だ。そこで関電は、南港発電所(大阪市住之江区)に水素充填と電気充電の設備を設置。水素事業戦略室事業開発グループの辻慎太郎マネジャーは「水素はフル充填に2時間、電気はフル充電に7~8時間かかる。水素充填は相当のエネルギーが必要で、充電と同時に行うと系統に負荷がかかる。エネルギーの平準化、コスト、時間に制約がある中で、どう供給するかなどを実証する」と語る。
原子力由来も燃料の一部 プロジェクトの拠点へ供給
これらのプロジェクトでは、福井県おおい町と県、ふくい水素エネルギー協議会が供給する原子力由来の水素も燃料の一部として使用。水素製造では、関電の原子力発電所から電力供給を受けて、おおい町の水電解装置を用いる。製造した水素は、姫路第二発電所と南港発電所に陸路で運搬するという。関電は「未来社会の実験場」となる万博を舞台に、エネルギーの未来像を映し出したい考えだ。
