【フォーラムアイ】四国電力が「BX推進室」設置でDXを深化 事業の持続性と競争力拡大を目指す

2026年9月12日

四国電力は、客観的な根拠に基づく戦略立案や意思決定につながるDXの実現を目指す。

今後はデータ活用基盤・DX人材などを生かしながら、新しい価値創出にも挑戦する。

四国電力は3月、2022年に設置したDX推進プロジェクトを「BX推進室」へ改組した。昨年9月に中期経営計画の策定にあたり見直した「よんでんグループビジョン」では、目指す姿として『エネルギーとデジタルで未来を創造』を掲げ、デジタルとデータ活用を軸にしたビジネス変革を着実に進めている。

YONDEN-BXアワード本選審査会

データ活用基盤を整備 業務効率向上・高度化推進

同社のDXの取り組みの始まりは、推進プロジェクトが発足した22年にさかのぼる。この時、DXを「デジタル技術とデータ活用により、ビジネスモデルや業務プロセス、組織風土、従業員のマインドなどを含むビジネス全般を変革すること」と定義し、「BX by『D』(Business Transformation by Digital & Data)」と位置付けた。

その後、24年には経済産業省が定める「DX認定」を取得するとともに、よんでんグループBXビジョン「LUCK」を策定・公表した。さらに、同年度末にはBXの土台となるデータ活用基盤を整備し、現在もその機能拡充を進めている。これと並行し、必要なデータを適切に把握・活用するための管理ルールを策定し、データマネジメントの推進にも取り組んできた。

現在は、27年度までの2年間をBX推進の「フェーズ3」と位置付け、AIなどのデジタル技術やデータ活用による業務の効率向上と高度化を推進している。具体的には、定型業務の自動化によって生み出したリソースを、企画立案や課題解決など高付加価値業務へとシフトさせる。さらに、データ活用基盤を通じた部門間の情報共有を推し進め、客観的なデータを活用した戦略立案や意思決定の高度化を目指している。

藤岡克門BX推進室長は、「今後は、現場で培われた経験や知見も大切にしながら、データを活用したより客観的で再現可能性のある業務運営に取り組んでいく」と説明する。例えば現場では、設備データや点検履歴をAIなどで解析して故障の兆候を早期に捉え、予防保全や保守判断の高度化を図る。一方、間接業務では、ワークフローやデータ連携によって手作業を削減し、企画や調整といった人手をかけるべき業務へ時間を充てる。経営層は各部門の状況をデータで即座に把握し、より迅速で納得感のある意思決定につなげられる環境づくりを進めている。こうした変革を丁寧に進めることで、事業の持続性と競争力を高めていく方針だ。

四つのタイプ別に人材育成 目標を超える認定者数

同社のDX人材育成の特長は、画一的な育成ではなく、役割に応じた教育を重視している点だ。独自の認定制度を設け、任務の異なる四つの人材タイプを定義している。DXリーダー(戦略立案・プロジェクト統括)、DXデザイナー(お客さま視点でのサービス設計・改善)、データサイエンティスト(データ分析などによる意思決定支援)、DXエンジニア(デジタル基盤構築・セキュリティ管理)は、各人材が単独で業務を完結するのではなく、協働・補完しながら事業変革や新たな価値創造を進めていくことを前提としている。

認定制度では、DX人材に求められるスキル・知識の保有状況を初級・中級・上級の3段階で認定する仕組みを整え、24年8月から運用を開始した。初級は今年6月末で全体の4割を超える約1700人が取得。中級はデジタルを活用した業務改善などの実績や専門研修の受講が求められ、四国電力および四国電力送配電の社員約4000人のうち、415人が取得した。これは30年度までに中級以上を600人認定という当初の目標を大きく上回るペースだ。「私たちの想定以上であり、社員の学習意欲や実践への関心の高まりを感じている」と藤岡氏は明るい表情を見せる。

また、こうした個人のスキルアップを組織全体の成果につなげるため、デジタル技術・データを活用した優れたBXの取り組みを表彰する「YONDEN―BXアワード」を毎年開催している。2回目となった25年度には18件の応募があり、予選を通過した11組が本選に進出。本選審査の様子はオンライン配信し、結果は社内ポータルサイトで発信するなど、優良事例の共有を通じて、BXのさらなる発展につなげている。BXアワードに加えて、生成AIを用いた業務の効率化・高度化事例など、テーマ別に小規模なコンテストを開催するほか、各部の大小さまざまな取り組みを、失敗や導入見送り事例も含めて共有し、組織全体の学びにつなげている。「個人や組織の工夫、努力をその場に埋もれさせるのではなく、できるだけスポットライトを当て、挑戦や改善の取り組みを称賛する風土づくりを大切にしている」と藤岡氏は人材育成の秘訣を語る。

YONDEN-BXアワード受賞者の記念撮影

今後の優先課題は、個人や部門単位での個別最適の取り組みを全社的な変革へつなげていくことだ。デジタルツールの導入そのものを目的とするのではなく、経営課題や部門が目指す姿から逆算したテーマ設定と業務プロセスの見直しを進める。小さく始めて効果を可視化しながら横展開する方針だ。

藤岡氏は、「これまでは社内の意識改革や人材育成、データ活用基盤の整備を中心に進めてきたが、今後はこうした基盤を活かしながら、新たな価値創出にも挑む。社内外との協働の可能性を探り、まずは小さく立ち上げたい」と意気込みを語った。次なるフェーズでの飛躍に期待が高まる。