【フォーラムアイ】九州電力がソリューション事業の新ブランド 小売りに次ぐ「第二の柱」目指す
九州電力は、エネルギーソリューション事業の新ブランドを立ち上げた。
顧客起点の課題に最適解を提供し、「お客さまにとって一番のパートナー」を目指す。
九州電力は5月、新たなエネルギーソリューションブランド「Enebee(エネビー)」を立ち上げた。今後の新たなソリューションサービスに加え、既存のサービスについても同ブランドの下、展開していく方針だ。
「bee」とは英語でミツバチのこと。花々を巡り、蜜を集めて上質なハチミツを作り出すミツバチのように、顧客の課題を見つけて集め、それを最適な答えに育て、届けていきたいという思いが込められている。

電力小売りの全面自由化から10年が経過し、業界の事業環境は大きく変化した。他社との競争激化に加え、脱炭素化を目指す企業の設備更新や電化の動きが加速し、さらに九州では、半導体工場やデータセンター開設などによる電力需要の拡大も見込まれている。
同社はこうした環境変化を背景に、「電気を売る会社」から「エネルギー起点で価値を生む事業会社」への転換を目指しており、「九電グループ経営ビジョン2035」で、小売りの強みを生かした新たな収益源の柱を掲げている。今後10年間でエネルギーソリューション事業を電力小売りに次ぐ第二の柱に育てる方針だ。
営業本部の堤隆秀マーケティング戦略グループ長は、「エネビーの一番の特長は、顧客の課題を起点に最適解を導き出すこと」と語る。具体的には、一般家庭向けには情報過多で商品選びに悩む顧客の代わりに、一人ひとりに合った設備やサービス選びを支援し、顧客の手間を大幅に削減する。また法人向けには、コスト削減や脱炭素化、電力調達へ向けた、リスクを最小限に抑えた最適解を提示する。「お客さまにとって一番のパートナー」としてニーズを的確に把握し、最適な価値として届けることを志向している。
法人向けDRに注力 家庭向けは早期商用化へ
サービスの領域は、家庭向け、法人向け、および共通領域の三つがある。家庭向けには太陽光発電や蓄電池のほか、近い将来には住宅リフォームまで視野に入れ、それぞれの暮らしに最適な設備やサービスを提案する。法人向けには単なる電力契約にとどまらず、機器販売から施工、運用、保守までをワンストップで、顧客の経営成果に直結する一体的な支援を目指す。
エネビーの下、展開するサービスの一つ目が、顧客への提供価値を最大化するデマンドレスポンス(DR)「EnebeeDR(エネビーDR)」だ。同サービスでは、蓄電池やEV、空調・給湯設備などを最適に制御し、コスト抑制や市場価格を活用した収益還元の実現を目指す。また、最大需要電力抑制による電気料金の削減や、再エネの有効活用、顧客の脱炭素化にも貢献できる。なお家庭向けのDRについては、現在、蓄電池やエコキュート、EVなどの遠隔制御の実証実験が進行中で、早期の商用化を目指している。
二つ目は、今後本格化する「Enebee Biz(エネビービズ)」だ。
法人向けにBCP(事業継続計画)支援や省エネ診断・最適な設備提案などを行う。営業本部の高橋直樹カーボンニュートラル支援グループ長は「これまで培ってきた顧客との接点を生かし、電力契約にとどまらず、設備の最適運用のご提案など、顧客一人ひとりの思いに寄り添った提案を行うことで、エネルギーのプロとして顧客の事業に伴走したい」と意気込む。また、「九州全域に31の営業拠点を構え、法人向けサービスの専門スタッフも配置している」と万全の営業体制に自信を見せる。

家庭向けECサイトを開設 今年度中に九州全域へ拡大
三つ目は、6月に開設した家庭向けECサイト「Enebee STORE(エネビーストア)」だ。
住宅設備機器の交換について、見積もりから機器の選定・工事の注文までインターネットで完結できる。利用者は、交換したい機器などの写真をアップロードすることで工事費込みの見積価格を取得できる。訪問による見積もりが不要なためスピーディで利便性が高い上に、事前に総額が分かり、顧客の安心感にもつながる。さらに、設置後は10年間の保証が付き、施工は同社認定の工事会社が担うなど、オンラインの手軽さと大手ならではの安心感を両立させている。
堤氏は「購入先に悩み、店舗に行くのを面倒に感じる顧客のニーズに応えたい。地域に根差した『九電ブランド』の安心感で差別化を図る」と熱く語る。現在の対象エリアは福岡と佐賀の一部に限られるが、26年度中には九州全域に拡大予定だ。また、取扱商材もIHクッキングヒーター、エコキュート、エアコン、食洗器の4商材から、顧客のニーズなどを踏まえて段階的な拡充を検討していく。将来的には機器の新規設置や住まい全体のリフォームの提案も行っていく考えだ。
堤氏は「エネビーの反響は大きい。脱炭素化という壮大なミッション実現に向け、連携に関心のある企業や自治体からの問い合わせがあり、今後多様なアライアンスも想定できる」と展望する。
作物の受粉を助け、豊かな自然の恵みをもたらすミツバチのように、エネビーが人々の暮らしや事業の発展を支える存在として、今後どのように「電力小売りに次ぐ第二の柱」に成長していくのか。これからの九州電力の取り組みに大きな期待がかかる。


