【特集2 ライフライン強靭化】高密度観測で地震被害を把握 ガス供給の早期遮断を実現する東京ガスネットワーク
東京ガスネットワークは、超高密度リアルタイム地震防災システム「SUPREME(シュープリーム)」を運用している。同システムは大規模地震発生時に被害の大きな地区を素早く見つけ、ガス供給を停止し、被害を最小限に食い止める。
特徴は観測網の密度にある。同社は、供給エリア内に約4千カ所ある地区ガバナー(圧力調整器)の全てに、揺れと建物・導管被害との相関が高いSI値を計測するSIセンサー(地震計)を約1㎢当たり1カ所の割合で設置。首都圏の同じエリアで比較すると、気象庁が設置する数の約6倍に相当する。これにより、地震の揺れの精緻なデータが得られる。
地震発生から供給を停止するまでのプロセスは次のように進む。①震度6弱相当の揺れを検知するとその地区のSIセンサーが即座にガス供給を自動遮断する、②約5分後に同システムが各SIセンサーから地震情報を収集・分析、③10分後に供給停止が必要と判断したブロック内のガバナーを遠隔遮断(第一次緊急停止)、④さらに20分後、同システムの導管被害推定機能を利用して追加で供給停止が必要なブロックを洗い出し、ガバナーの追加停止(第二次緊急停止)を行う――。また、早期復旧に向けて、被害推定情報を基に最適な復旧方法を自動的に判断する。従来は第一次緊急停止まで約40時間かかると想定されていた作業時間を、10分まで大幅に短縮した。
同システムは、独自の被害推定機能も持っている。4千カ所のSIセンサーで計測したSI値と約6万本のボーリングデータ、微地形分類などから、表層地盤の影響を取り除いた仮想的な基盤面の値を作る。これにより、地震計のない場所でも、50㎡単位で揺れを推定できる。これを基に、導管被害や液状化、建物被害を短時間で算出し、第二次緊急停止で追加停止ブロックを判断している。
「大地震発生時は、二次被害の拡大を食い止めることが重要だ。当社の導管網は329の低圧ブロックに細分化されており、被害地区のみを停止する。一連の作業にシュープリームは大きく寄与する」と防災・供給部防災グループ防災チームの上戸亮典チームリーダーは説明する。

鉄道の安定輸送に応用 AIで高精度化目指す
近年は他業種への応用も進んでいる。JR東日本は昨年4月に同システムの地震計情報の受信を開始した。データを活用することで、沿線の地震動をよりきめ細かくかつ正確に把握し、地震発生時の鉄道輸送の安全性・安定性の向上に取り組んでいる。「ここまでSIセンサーを高密度に設置して運用する事業者は存在しない。この仕組みをさまざまな企業や団体に活用してもらいたい」。同グループの元田靖士グループマネージャーはこう強調する。
同システムの開発では、AIを用いた被害推定の高速化・高精度化などにも取り組んでいる。首都圏のライフラインを支えるシステムとして、さらに進化させていく構えだ。


