電力各社が本格的なビジネスを見据えたVPP実証を始めている。既に約700万台が普及したエコキュートにも新たな期待が持たれている。
電力各社が取り組むVPP実証―。東京電力など大手電力が5年ほど前から先陣を切って取り組んできた実証の動きは、昨今は地方の電力会社にも波及している。
北陸電力や四国電力は、関西電力が手掛ける「関西VPPプロジェクト」に昨年から参画し、自らの供給エリア内に存在する需要家のエネルギーリソースを活用しながらリソースアグリゲーターとして参加し始めている。
2016年度から実証を始めている幹事会社の関西電力は、十数分から数時間程度の比較的長時間の負荷変動に対応する調整力の制御について、リソースアグリゲーター自らがエネルギーリソースを制御するためのシステムを開発。実フィールドにおいて高度な制御ができることを確認している。また数秒から数分程度の短周期の制御では約1万台規模の蓄電池を一括制御するシステムを構築するなど、今年度も実証を進めていく方針だ。
参画している北陸電力によると、「地域に分散している需要側のエネルギーリソースの統合制御の精度向上に努めていく」という。
キーワードは「多様化」 需要家巻き込み安定供給
各社の実証の中身はVPPのビジネス展開を見据えたものになっている。中部電力の小売りカンパニーである中部電力ミライズでは、今年度から始めている実証で、①多種多様なエネルギーリソースの調整力への活用を検証、②需給調整市場への参入や幅広いビジネスモデルを検討、③多様な事業者・需要家の参加、④調整力を活用したビジネスへの参入しやすい環境を構築―の四つの特徴を掲げ、主に五つの実証項目に取り組む(表参照)。
キーワードは「多様化」だろう。エネルギーリソースは照明、空調、自動販売機、発電機、エネファーム、水道ポンプ、蓄電池、電気自動車など実に多様なアイテムが並ぶ。プレイヤーも多様だ。リソースアグリゲーターとして大阪ガス、トヨタエナジーソリューションズ、明電舎など6社が参画する。需要家側も多様である。学術機関、製造業、自動車販売店、植物工場、水道局など需要家自らも協力する体制で臨む。