【業界スクランブル】
日本時間の6月21日午後に日食があった。日本では、夕方の時間帯に全国で部分日食を見ることができた。今回の日食は、アフリカから東欧、アラビア半島・ロシア南部、アジアほぼ全域、豪州北部とオセアニア北部で見ることができ、アフリカ東部からアラビア半島南部、パキスタン・インド北部、中国(チベット・四川・福建・台湾)を通ってグアム沖までの帯状の地域では金環日食となった。皆既日食中は、太陽光パネルは発電しないから、火力発電などで補給しないと停電となって大変なことになる。世界のどこでも停電になったということが報告されていないので、用意がうまく、補てんできたのだろう。
この予備の電力を準備しておくのが容量市場だ。先行例は2015年3月20日にドイツで起きた。この日は天気が良く太陽光発電も順調だった。9時半に日食が始まり、11時前に日食のピークが来て12時に終了。太陽光による発電量は、日食が進むにつれ1200万kW激減し、その後12時頃、1900万kW回復した。欧州の電気事業への影響として、揚水発電が急稼働し、ドイツからの電力輸出量が大きく減った。従来型の化石燃料などによる発電量はほとんど変わっていない。結果、容量メカニズムがうまく機能して停電には至らなかった。何億年も前の太陽光を缶詰した化石燃料が貯蓄のごとく払い出され、現在の太陽光発電停止分を補てんした。
日食の発生は、22年までに現在の太陽光発電を1億kWに引き上げるとしているインドにあっては一大事である。皆既日食は滅多に起きないが、インドの配電網のオペレーターは、このイベントが起こる時に全国の電力網に降りかかる、突然の停電に備えていた。スイッチが切替わるまでのほんのわずかな時間での柔軟な対応、9分の停電の間に配電網管理の偉業をやり遂げねばならないと、国有パワーシステム操作株式会社はモディ首相に言われたそうである。日食は今回のコロナ禍や巨大サイクロンやサイバー攻撃同様、備えておくべきインパクトであった。(T)