【特集2 ライフライン強靭化】予防保全支える新端末を導入 鉄塔の遠隔監視業務を進化させる東電設計

東電設計は鉄塔遠隔監視の新サービスを開始した。端末の改良により、予防保全の利便性が向上している。

東電設計は、鉄塔管理者向け遠隔監視センサー「DELI-FACT II」のサービスを7月に開始した。同サービスは鉄塔計測用の傾斜、振動、気象などの各センサーに通信機、太陽光発電を組み合わせた端末を設置し、データを携帯電話回線「LTE-M」を介してセンターへ伝送する。取得したデータを活用し、設備の予防保全と二次災害防止につなげる。
先代タイプ「DELI-FACT」が普及する契機となったのは、千葉県に大きな被害をもたらした2019年の台風19号だ。送電鉄塔の近くの土砂崩壊により基礎が露出するなどの被害が発生。東京電力パワーグリッドから補修状態を定量的に監視したいとの要望を受けて傾斜センサーを設置した。これが評価され、全国の鉄塔への採用が広がっている。
同社の強みは送電鉄塔の設計・調査事業から得た豊富な知見にある。これを基に独自の保安基準を設けており、この基準を超えた数値を端末が検知すると、携帯電話回線を通じて管理者にアラートを通知する。先代機では鉄塔が山間部の携帯電話回線の圏外にあっても、中継器を介したマルチホップ伝送を使うことで、傾斜データを送ることが可能だ。

先代機を含めて、鉄塔には100基以上を設置

軽量化・カメラ搭載で負担軽減 他インフラへの応用も視野に

後継機種の「DELI-FACT Ⅱ」では、初期型の端末は架台込みで20kgを超えていたのに対し、約1kgと大幅に小型・軽量化した。これにより、設置作業の負担を軽減し、メンテナンス性も高めている。また、顧客から要望の多かったカメラを標準搭載し、傾斜などの数値データを画像で裏付けできるようにした。画像で現場の状況を把握し必要な装備を持って出動できるため、保全業務の効率も上がっている。さらに、データ管理用サーバーをクラウド(AWS)に移行しスマートフォンで簡単に閲覧できるようにするなど、管理者の利便性も向上した。また、先代機に搭載されているマルチホップ伝送に画像データも追加できるよう開発中であり、さらにはAI 分析機能の実装も進めている。
同サービスの普及には、災害の激甚化と保安人材の不足・高齢化などが背景にあった。こうした課題は他のインフラにも存在する。同社は、河川や盛り土、太陽光発電所などの保守への展開も視野に、ニーズに応じた開発を進めていく考えだ。

【特集2 ライフライン強靭化】ガスと電力を一体で提案 老健施設の安定運用を支えるI・T・O

I・T・Oは、災害時の経験を生かした防災提案を進めている。非常時の電力確保と空調維持を実現する体制を構築した。

LPガスを備蓄するバルク貯槽と供給設備を一体化した「災害対応型LPガスバルク供給システム(災害バルク)」。非常時でもエネルギー供給を維持できる設備として、病院や福祉施設などへの設置が進んでいる。
その一つが、横浜市の介護老人保健施設「千の星・よこはま」だ。同施設は2025年、災害バルクとガス発電機を導入した。容量2.9tのバルク貯槽を備え、最低72時間のLPガス供給が可能になっている。また、大気熱だけを利用してLPガスを気化させる空温式ベーパーライザーを採用することで、供給の安定性と経済性を兼ね備えたシステムを整備した。
併せて、空調システムもガス空調(GHP)に更新した。平時から稼働させることで、電力消費を抑えながら快適な室内環境を維持できるほか、災害時にも継続して利用できる。介護老健施設などでは、災害時の電力確保や空調機能の維持が重要な課題となる。そうした中、同施設では入所者が安心して過ごせる防災・事業継続体制が整えられた。

設置した災害バルクは最低72時間の供給が可能だ

福祉施設や病院への導入促進 東日本大震災の教訓生かす

今回のシステム導入は、I・T・Oがバルク貯槽をはじめ、ガス発電機やGHPの提案から設計・施工までを一括して担うことで実現した。また、病院や福祉施設などへのLPガス災害バルク導入を支援する、経済産業省の補助金も活用している。
災害バルクは、同社が注力する商材の一つ。その原点となったのが、東日本大震災だ。震災当時、同社は仙台営業所に設置していた災害バルクを活用して炊き出しを行い、地域住民に温かい食事を提供した。だが、その後に発生した停電によって、エネルギー供給にはガスだけではなく電力の確保も不可欠であることを痛感することになる。この経験が、ガス発電機を組み合わせたシステムの開発・提案につながった。
特に、介護・福祉施設や病院、避難所など、人命を守る役割を担う施設では、災害時にもエネルギーを途切れさせないことが不可欠となる。同社は今後も、こうした施設への提案を積極的に進め、安心・安全な地域づくりに貢献していく構えだ。

【特集2 ライフライン強靭化】事前防災でインフラを守る デジタル技術で強靭化へ

災害の激甚化・複雑化で、事前防災への転換が急務となっている。
防災庁の機能、エネルギー業界の動きから防災の在り方を考える。

今回の保安・防災特集の取材を進める最中、7月28日に発生した令和8年熊本地震、そして8月14日の千葉豪雨といった、尊い人命を奪う甚大な自然災害が相次いで発生した。道路や交通インフラの損壊、水道やガスなどライフラインの寸断、山間部の送電設備の深刻な崩壊や変電所の浸水による長時間の停電―。エネルギーインフラが抱える複合的なリスクが改めて浮き彫りとなった。


さらに、南海トラフ地震をはじめとする巨大地震発生の切迫性が高まっている。過去の災害データを基準にした従来の事後対応型の防災に対する考え方では、これから想定される災害リスクに到底対応しきれない現実が顕在化している。

徹夜で作業に当たる西部ガスの災害復旧隊

国家主導の防災体制へ 発災前の備えを強化する

こうした背景から、災害対応の司令塔を一元化し、重要インフラのレジリエンス強化を国家主導で迅速に進めるための新組織として「防災庁」が発足する。従来の内閣府担当部局による管轄から、防災大臣が各省庁に対して必要な措置を求める「勧告権」を持つようになる。
防災庁が担う大きな役割の一つに、事前防災の推進が挙げられる。事前防災とは、災害が発生する前に被害を最小限に抑えるための計画や対策を講じることだ。従来の災害対応は、発災後の救助や復旧に重きを置く「事後対応型」が中心だった。しかし、激甚化する気候変動や巨大地震のリスクに対しては、事後対応だけでは国民の生命や経済活動を守りきれない。そこで、災害による致命的な被害をあらかじめ回避・軽減する事前防災へのパラダイムシフトが求められてきた。


具体的な取り組みとしては、ハザードマップの高度化による危険地域の特定や重要インフラの耐震化・防水化といった物理的な強靭化が挙げられる。さらに、エネルギー供給網の多重化や、サプライチェーンの分散化といった組織的な備えも不可欠だ。最悪の事態を想定して社会全体のレジリエンスを事前に高めておくことこそが、これからのインフラ防衛の核心となる。

先端技術が変える保安現場 分散型エネの機動力生かす

こうした業界全体の課題に対し、エネルギー企業の一部ではすでに最先端のデジタル技術を投入し、一歩進んだ保安・防災の取り組みを実践している。例えば、関西電力送配電は兵庫県の離島において、ドローンを用いて配電設備を遠隔で自動点検する実証を行っている。本土の営業所から指示を出すことで、ドローンが自動で目視外飛行をして設備を空撮し、リアルタイムで映像を共有する仕組みだ。これにより、発災時にも人が近づけない場所の迅速な被害把握が可能となる。
また、西部ガスでは、緊急通報時に顧客のスマートフォンと保安指令室をビデオ通話でつなぐシステムを導入している。アプリ不要で現場の映像をリアルタイムに指令室へ送信できるため、ガス漏れなどの状況を正確かつ迅速に捉え、事後対応の初動を劇的に早めることに成功している。このように、先進的な企業が培う現場発のイノベーションと、新設される防災庁の強力な司令塔機能が有機的に結び付くことで、日本のインフラ防衛はさらなる進化を遂げることが期待されている。


メディアではあまり報道されていないが、熊本の被災地では、寸断されたライフラインを補うように、避難所での炊き出しや暖房、給湯の確保などに、LPガスが大きく貢献している。新設される防災庁には、この分散型エネルギーが持つ機動力を国全体の避難所改革の一環として統合・加速させる役割が欠かせない。自治体との連携強化や災害対応型バルクシステムの設置拡大を推し進め、国の災害レジリエンスを一段と高めていくことが求められる。

【特集2 ライフライン強靭化】防災庁が担う新たな役割 国全体の防災司司令塔に

災害大国の日本において防災力の強化が求められている。新たに設置される防災庁が果たす機能について聞いた。

インタビュー/大山璃久(内閣官房防災庁設置準備室参事官補佐)

―防災庁を設置する背景は何ですか。


大山 現在も内閣府に防災担当部局があり、関係省庁が連携して災害に対応しています。一方で、今後想定される南海トラフ地震、日本海溝地震、首都直下地震、富士山噴火などに備えるには、今まで以上に政府全体の防災体制を強化する必要があります。そこで、防災庁を2026年中にも新たに設置します。防災対策推進における司令塔機能を強化するため、防災大臣が各省庁に対して勧告権を持つ仕組みも導入します。


―主な役割は。


大山 主に三つあります。一点目は、国の防災力を俯瞰的に捉え、中長期的な視点で基本政策や国家戦略を立案すること。二点目が、事前防災の推進です。平時から地域レベルでさまざまな主体が行う防災対策について調整役や支援役を果たします。三点目が、発災時から復旧・復興に至る災害対応の司令塔を担うことです。

各地域の災害リスク評価に注力 スマメによる早期復旧に期待

―注力していくことは何でしょうか。


大山 二点目の事前防災に関連する、地域ごとの災害リスク評価です。今後、大規模な地震も想定されていますが、それに限らず、各地でどういう災害リスクがあり、どのような対策が効果的なのか、科学的な知見やシミュレーション技術を使って評価していきます。例えば、地震が起きた場合、山間部には土砂崩れ、沿岸部には津波のリスクがあります。地域ごとに災害に対する弱点をクリアにして、それを踏まえた対策の漏れや進行具合をフォローアップしていきます。また、被災者に寄り添った支援体制の構築も重要です。避難所の生活環境をより良くするために「TKB」、つまりトイレ、キッチン、ベッド・バスといった各種資機材を確保していくために、自治体とも連携しながら整備したいと考えています。


―エネルギー業界に期待することは。


大山 ライフラインを担っていただく業界です。災害が起きたとしても、できるだけエネルギーを供給し続けられるようにインフラの強靭化を図っていただきたいです。それから電力会社やガス会社は現在、スマートメーターを整備しています。早期復旧には被災状況をいかに早く正確に把握するかが非常に重要です。普段使いしているスマートメーターが有事でもシームレスにそうした役割を果たせることを期待しています。

おおやま・りく 2015年国土交通省入省。河川・ダムに関する事業計画立案や災害対応などに従事。防災庁設置準備室の発足から防災庁の役割などの検討に従事。


【特集2 ライフライン強靭化】千葉商科大学が防災・エネルギーセンター設立 学生の人材育成に取り組む

キャンパス内の電力を自然エネルギーで賄う千葉商科大学。機関設立で防災とエネルギーへの知見を深める人材育成に動く。

インタビュー/手嶋 進(千葉商科大学人間社会学部教授防災・エネルギーセンター長)

―「自然エネルギー100%大学」を目指し取り組みを進めてきました。


手嶋 消費電力の全量を自然エネルギーで賄う趣旨の下、2017年から国内大学初の試みとして取り組んできました。キャンパス内施設の屋根に540kW程度の太陽光発電(PV)を整備するとともに、全照明のLED化などで消費量を減らした上で、年間消費電力量(350万kW時)の約18%を賄っています。当学野球場跡地にもPVを整備しましたが、FITを活用し売電しているため非化石証書を付けて買い戻しています。不足分を小売事業者から再エネメニュー電気を購入することで、キャンパス内電力の全量を自然エネルギーで賄うことができています。

地元小学校で出前授業 設備の自前運用で知見蓄積

―そうした取り組みを進める中、防災・エネルギーセンターを設立した狙いとは。


手嶋 防災や環境エネルギー分野の知識を持って行動できるような学生を育てる目的で、昨年9月に設立しました。災害時の電力確保や自然エネルギーの活用を体系的に学び、実社会で活躍できる実践的な人材育成を目的としています。例えば、当学の学生が中心となる「SONE」という環境団体があります。行政からいろいろな環境イベントに参加してほしいとの要請を受けますが、そうした活動を支援しています。また、地元市川市や鎌ヶ谷市の小学校へ地球温暖化に関する出前授業をしたりしています。体験型授業活動も活発です。手回し発電機を使ってLEDと白熱灯の照度を比べ「省エネ性に優れるLEDの方が手回しの労力は少ない」と、小学生に体験を通じてエネルギーを身近に知ってもらう取り組みです。現状ではこうした活動はボランタリーなものですが、将来的には学生の単位取得につながるカリキュラムを整備したいです。


―防災向けエネルギー設備はありますか。


手嶋 約2000人の学生が帰宅困難になることを想定し、一晩過ごせる設計で家庭用の蓄電池を設置しています。当学は設備の自前運用が特徴です。17年以降、設備を清掃した方がエネルギー効率が上がるのではないか、壁にフィルムを貼って断熱性を上げるべきではないかといった細かい議題含めて150回以上会議をしてきました。設備運用のノウハウを独自に蓄積しており、結果的にエネルギーに関する発言に説得力を持たせることができ、学生のエネルギーリテラシーが高まっていくと考えています。

てしま・すすむ 1988年慶応義塾大学法学部卒。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)などを経て19年同大准教授。2025年から教授。

【特集2まとめ ライフライン強靭化】

7月の熊本地震や8月の千葉豪雨など大きな災害が毎年のように日本を襲う。
国は災害が頻発する昨今の状況に危機感を抱き、新たに防災庁を設置して事前防災や災害時における早期復旧の仕組みづくりに注力する。
防災とエネルギーの観点から人材育成に取り組む大学機関や、エネルギー事業者などへの取材を通じて災害対策の最新事情に迫る。

【アウトライン】事前防災でインフラを守る デジタル技術で強靭化へ

【インタビュー】防災庁が担う新たな役割 国全体の防災司司令塔に

【インタビュー】千葉商科大学が防災・エネルギーセンター設立 学生の人材育成に取り組む

【レポート】映像・AIで情報を即時共有 事故防止と対応力を強化する西部ガス

【レポート】高密度観測で地震被害を把握 ガス供給の早期遮断を実現する東京ガスネットワーク

【レポート】関西電力送配電が離島の配電設備を遠隔点検 ドローン導入で保守を効率化

【レポート】コスモ石油が製油所の点検にロボット活用 異常の早期検知で保全高度化

【トピックス】通信インフラ稼働に貢献 LPガスで非常時の電力確保支える伊藤忠エネクスグループ

【トピックス】燃料設備の信頼性が向上 有事と平時に供給力を提供するタツノ

【トピックス】ガスと電力を一体で提案 老健施設の安定運用を支えるI・T・O

【トピックス】予防保全支える新端末を導入 鉄塔の遠隔監視業務を進化させる東電設計

【特集2 ライフライン強靭化】映像・AIで情報を即時共有 事故防止と対応力を強化する西部ガス

西部ガスは2024年1月、ガス漏れなどの緊急時に現場の状況を迅速かつ正確に把握できる「LIVE0919(ライブクイック)」を導入した。同システムは、日本テレネットの「LINX Chat(リンクスチャット)」を基盤としており、スマートフォンの標準ブラウザからリアルタイムで保安指令室とビデオ通話でつなぐ仕組みだ。名称は、同社のガス漏れ専用ホットラインの下4桁「0919」に由来する。
ライブクイックの利用実績は25年度で284件に上る。
具体的な活用事例として、「ガスが出ない」との通報に対し、映像を確認した結果、外壁塗装工事の養生により給湯器の給排気口がふさがれていた状況を把握できた。不完全燃焼による一酸化炭素中毒の原因を迅速に特定し、事故を未然に防いだケースもある。また大雨後の対応では、ガスメーターの映像からガス圧力の低下を確認し、ガス管内への浸水の可能性を早期に予測。供給支障の原因特定と初動対応を迅速に行い、影響範囲の最小化につなげることができた。このように、ライブクイックは現場状況の正確な把握による対応の迅速化、事故防止、出動の適正化に大きく貢献している。

ライブクイック実施中の保安指令室

DX活用で情報を一元化 ベテランの知識継承も推進

同社では保安や業務の高度化や効率化に向けたDX、およびAI活用も積極的に進めている。その一つが、GIS(地理情報システム)を用いた災害時システムの構築だ。これが実現すれば、大雨などで大規模な供給支障が起きた際、導管の被害や調査の進捗、要員の配置を一元的に地図上で把握でき、より効率的な指揮・指令が可能になる。 さらに、AIを活用したナレッジマネジメントシステムの導入も検討中だ。ベテラン社員の知識やノウハウを可視化して共有することで、対応品質の向上や判断の均質化、事業継続性の強化を目指す。
加速する技術革新を味方に付け、より高次元なサービス提供を目指す同社の取り組みが今後も注目される。

【特集2 ライフライン強靭化】高密度観測で地震被害を把握 ガス供給の早期遮断を実現する東京ガスネットワーク

東京ガスネットワークは、超高密度リアルタイム地震防災システム「SUPREME(シュープリーム)」を運用している。同システムは大規模地震発生時に被害の大きな地区を素早く見つけ、ガス供給を停止し、被害を最小限に食い止める。
特徴は観測網の密度にある。同社は、供給エリア内に約4千カ所ある地区ガバナー(圧力調整器)の全てに、揺れと建物・導管被害との相関が高いSI値を計測するSIセンサー(地震計)を約1㎢当たり1カ所の割合で設置。首都圏の同じエリアで比較すると、気象庁が設置する数の約6倍に相当する。これにより、地震の揺れの精緻なデータが得られる。
地震発生から供給を停止するまでのプロセスは次のように進む。①震度6弱相当の揺れを検知するとその地区のSIセンサーが即座にガス供給を自動遮断する、②約5分後に同システムが各SIセンサーから地震情報を収集・分析、③10分後に供給停止が必要と判断したブロック内のガバナーを遠隔遮断(第一次緊急停止)、④さらに20分後、同システムの導管被害推定機能を利用して追加で供給停止が必要なブロックを洗い出し、ガバナーの追加停止(第二次緊急停止)を行う――。また、早期復旧に向けて、被害推定情報を基に最適な復旧方法を自動的に判断する。従来は第一次緊急停止まで約40時間かかると想定されていた作業時間を、10分まで大幅に短縮した。
同システムは、独自の被害推定機能も持っている。4千カ所のSIセンサーで計測したSI値と約6万本のボーリングデータ、微地形分類などから、表層地盤の影響を取り除いた仮想的な基盤面の値を作る。これにより、地震計のない場所でも、50㎡単位で揺れを推定できる。これを基に、導管被害や液状化、建物被害を短時間で算出し、第二次緊急停止で追加停止ブロックを判断している。
「大地震発生時は、二次被害の拡大を食い止めることが重要だ。当社の導管網は329の低圧ブロックに細分化されており、被害地区のみを停止する。一連の作業にシュープリームは大きく寄与する」と防災・供給部防災グループ防災チームの上戸亮典チームリーダーは説明する。

地震発生から10分でブロック停止する

鉄道の安定輸送に応用 AIで高精度化目指す

近年は他業種への応用も進んでいる。JR東日本は昨年4月に同システムの地震計情報の受信を開始した。データを活用することで、沿線の地震動をよりきめ細かくかつ正確に把握し、地震発生時の鉄道輸送の安全性・安定性の向上に取り組んでいる。「ここまでSIセンサーを高密度に設置して運用する事業者は存在しない。この仕組みをさまざまな企業や団体に活用してもらいたい」。同グループの元田靖士グループマネージャーはこう強調する。
同システムの開発では、AIを用いた被害推定の高速化・高精度化などにも取り組んでいる。首都圏のライフラインを支えるシステムとして、さらに進化させていく構えだ。

【特集2 ライフライン強靭化】関西電力送配電が離島の配電設備を遠隔点検 ドローン導入で保守を効率化

兵庫県姫路市の沖合約18㎞、瀬戸内海に浮かぶ家島諸島―。大小40余りの島々に約4000人が暮らすが、島への移動手段は船に限られる。関西電力送配電は6月、この離島を舞台に、ドローンによる配電設備の遠隔点検実証を実施した。離島にドローンポートを設置し、目視外で自動飛行しての点検は全国初の試みだ。
家島諸島の設備保守は、同社姫路配電営業所が直営で担当している。現地に常駐する社員はおらず、平時の巡視・点検や停電時の対応では、その都度本土から出向する。本土から島まではフェリーで約40分。島内は基本的に徒歩での移動となり、急傾斜地や車両が入れない箇所も多く、作業は一日がかりだ。現場の状況を確認してから資機材を準備するケースもあり、復旧対応に時間を要することもあるという。
同社は2017年にドローン空撮を業務に導入し、災害時の被害状況の把握や高所・立ち入りが困難な箇所の点検に活用してきた。24年7月には専任チームも発足させた。ただ、ドローンの飛行は機体を直接目視できる範囲に限られ、活用領域拡大の壁となっていた。

西島に配置したポートと実証ドローン

新制度で目視外飛行可能に 実証で適用範囲を拡大

転機となったのが、23年12月に新設された「レベル3・5飛行」制度だ。これにより、有資格の操縦者が機上カメラで歩行者がいないことを確認すれば、立入管理措置なしで目視外飛行が可能となった。同社は送電線の丸山幹線で実証を行い、申請手続きや運用方法を確認し、今回の離島実証に臨んだ。
実証では、米スカイディオ社のドローンポート「Dock」を家島諸島の西島に設置。姫路配電営業所から海を越えて遠隔で指示を出し、目視外自動飛行により、約17㎞にわたって島内設備を空撮した。スカイディオが飛行許可申請と操縦、KDDIスマートドローンが通信の技術支援を担い、関電送配電は空撮画像をもとに業務への適用性を評価。離島での電波レベルや空撮精度、航続距離、リアルタイムでの画像連携、故障対応の即応性などを検証した。
この結果、従来は本土から島への移動に約1時間、島内の徒歩移動に約2時間、帰路に約1時間を要していたところ、遠隔点検により1回当たり約4時間の移動時間を削減できる可能性を確認した。また、台風や豪雨といった災害時にも、被害状況を上空から俯瞰することで迅速に把握でき、早期復旧や作業リスクの低減につながることも分かった。一方、本格運用に向けては、リアルタイム画像の安定確保に向けた通信手段の改善が課題として残った。「保守時間の削減などの結果を得られ、現状の通信環境なども把握できた」。工務部の西島慎二リーダーは実証の成果をこう説明する。
同社は一連の成果を踏まえ、今年6月には滋賀・兵庫県内の一部送電線路で、従来の点検の一部をレベル3・5飛行に置き換える取り組みを開始した。将来的には離島に限らず、全ての設備点検業務へのドローン適用を目指す構えだ。

【特集2 ライフライン強靭化事情】コスモ石油が製油所の点検にロボット活用 異常の早期検知で保全高度化

コスモ石油は、製油所の保全業務にロボットを活用する検証を開始した。製油所には、稼働から50年以上経つ設備も少なくない。故障を未然に防ぐことは大きな課題だ。ロボットを活用することで、人の五感では捉えにくい初期の異常を早期に検知し、予兆保全につなげて安定操業を支える狙いがある。
同社は5月下旬、堺製油所でロボットを使ったPoC(概念実証)を実施した。使用したのは、米Boston Dynamics社製の四足歩行ロボット「SPOT」だ。カメラやマイク、各種センサーなどを搭載し、排水処理設備エリアの点検や運転状況の状態確認を行った。実証には、東京電力福島第一原子力発電所の廃炉作業にSPOTを導入・活用した実績を持つ東北エンタープライズ(福島県いわき市)も協力した。


点検項目の一つが、ガス漏れの検知だ。今回の実証では、配管を超音波カメラで撮影した結果、微量の空気漏れを確認できた。今回は空気の漏れだったため、安全性に問題はなかったが、水素などの危険なガスについても、極めて早期に漏えいを検知できることが期待される。もう一つが、サーマルカメラによる設備の劣化状況の確認だ。保温配管で高温部を検知し、断熱材の劣化状況を把握。また、液体を圧送するポンプの軸受けでも温度上昇が見つかり、劣化が懸念される箇所が確認できた。


一方、従来は人が巡回して点検している圧力計や電流計などの計器類、油槽については、取得した画像をAIで解析し、過去との差分を検知する仕組みも検証した。例えば、1年前と現在の画像を比較することで、さびの進行状況を把握できる。また、数日前の画像との差異から、トラブルの原因究明にもつなげることも可能になる。

「SPOT」は大型犬ほどの大きさだ

全所展開を視野に運用検証 複数台の本格導入も検討へ

今後は、同社が使用しているデータ統合基盤と取得したデータを連携させ、保全業務への活用を進める予定だ。「人をロボットに置き換えるのではなく、ロボットの検知を加えることで安定操業や稼働率の向上につなげたい。その結果が競争力強化にもなると考えている」。工務部の吉井清英・保全戦略グループ長はこう話す。


今回の実証の成果を踏まえ、今後は堺、千葉、四日市の3製油所のいずれかにSPOT1台を本格導入し、ノウハウのさらなる蓄積を目指す。将来的には全製油所に複数台を稼働させ、予兆保全の高度化を図る構えだ。台数はこれから精査するが、「製油所1カ所当たり、10台で網羅できる可能性がある」(吉井氏)という。
コスモエネルギーグループは、第8次連結中期経営計画の中で、製油所の競争力と販売力の強化に向け、AIの活用に取り組んでおり、今回のロボット活用もその一環に位置付けられる。人による従来の点検業務にロボットとAIによる検知を組み合わせ、新たな保全体制の構築を目指す同社の挑戦が続いている。

【特集2 ライフライン強靭化】通信インフラ稼働に貢献 LPガスで非常時の電力確保支える伊藤忠エネクスグループ

災害時の安否確認などに重要なのが、通信インフラだ。LPガスと通信事業者の協業の下、システムの整備が進んでいる。

全国津々浦々に整備されている携帯電話基地局は、エネルギー供給設備と同様に日々の安定した通信・通話を担う重要な公共基盤である。そんな通信インフラに対してエネルギーの安定供給に注力するのが、伊藤忠エネクスグループだ。同社は、ソフトバンクが運用する携帯電話基地局にLPガスを継続的に供給するシステムを構築し、運用を開始した。
ソフトバンクが基地局に整備・管理している非常用発電機には、定置式とポータブル(可搬式)の二つのタイプがある。いずれもLPガスか油を燃料としており、このうちLPガス発電機への燃料供給を担っているのが伊藤忠エネクスグループだ。
両社の協業は、2021年にさかのぼる。ソフトバンクが、特定の基地局へ定置式のLPガス非常用発電設備を導入したことを契機に協業がスタートした。
災害に強い通信ネットワークの構築に向けたソフトバンクの取り組みと、災害に強いLPガスの特性が合致したわけだ。その後、両社の関係はさらに進むことになり、昨年からは可搬式の非常用発電機へのLPガス供給も加わった。

LPガスで安定通信を守る

他社と連携し供給体制を構築 72時間以上の稼働を担保

可搬式では、伊藤忠エネクスが日本BCPと連携して発電機向けの燃料供給体制を整備している。伊藤忠エネクスグループ(関係取引先含む)が全国10地点の燃料備蓄拠点でLPガス容器へ充填。日本BCPが、ここから全国各地のソフトバンク基地局にLPガス容器を運搬する仕組みだ。これにより安定的なLPガスの供給を可能としている。
定置式についても、LPWAで容器内の残ガスなどをリアルタイムに管理し、有事には最低でも72時間以上の稼働を担保している。
伊藤忠エネクスグループの関係者は「長期保管による劣化が少なく、長時間の稼働を支えられるのがLPガスの大きな特長だ」とした上で、「災害時には災害用伝言ダイヤルや災害用伝言板などを通じた、被災者の安否確認や情報伝達が非常に重要になる。その基盤となる通信インフラを、エネルギー供給を通じて支えていきたい」と、取り組みの意義を強調する。

【特集2 ライフライン強靭化】燃料設備の信頼性が向上 有事と平時に供給力を提供するタツノ

タツノは燃料設備の進化で新たな価値を創出している。災害対策から生産性向上まで、活用領域が拡大中だ。

鋼製の地下タンク内には、長期使用によるスラッジ(泥上の固形物)やタンクから発生したさびが底部に固着している。平時においては問題とならないが、災害時には深刻なリスクとなる可能性がある。地震の強い揺れによって固着物が浮遊すると、計量機やフィルターが目詰まりを引き起こし、給油不能に陥ったり非常用発電設備が稼働停止したりといった重大な被害を招くからだ。実際、東日本大震災では同様の事態が多数発生している。震災後に関係団体が実施したアンケート調査では、非常用発電機が始動後に停止した原因の一つとして報告された。非常用発電設備が有事の際に稼働しない状況は、BCP(事業継続計画)の観点から大きなリスクと言える。
タツノは、この課題を根本的に解決するソリューションとして、内面をFRP(繊維強化プラスチック)でコーティングしたプレミアムタンク「EcoMaxG」を展開している。接液部分がFRPとなるため、さびの発生を防ぐことができる製品だ。価格は通常のタンクより高額になるものの、高速道路のサービスエリアなど、重要度・緊急度が高く信頼性が求められる場所で採用されている。

さびが発生しにくい「EcoMaxG」の埋設作業

BCPと業務改善を実現 投資効率の良さも魅力

万一に備えた自家用給油所への需要も高まっている。以前は、主に運送業者が燃料コスト削減のために導入していたが、東日本大震災以降は備蓄を兼ねた災害への備えとして、多種多様な業種での整備が進んでいる。例えば、通信キャリアでは被災地で運用するアンテナ車への燃料供給や、公共交通機関がまひした際に災害拠点病院が医師や看護師のマイカー通勤を確保する目的でも活用されている。また近年は、運送業界の働き方改革の一環として、給油待ちやSSへの移動時間を削減する業務効率改善での導入も増えている。
エネルギーエンジニアリング部次長で給油設備グループリーダーの藤田慎庫氏は「自家用給油所は投資効率の良さでも注目されている」と語る。より多く燃料を使用する運送業などにおいては十分に投資回収でき、実質的に利益を生み出す設備へと変わる。同社は、災害への備えと業務効率化への貢献を通じ、強靭な社会インフラの構築を進めている。

インフォメーション

KPMG


SBTi企業ネットゼロ新基準イベント開催

 KPMGジャパンは7月6日、「SBTi企業ネットゼロ基準Ver.2 日本ローンチイベント」を開催した。SBTiは温室効果ガス排出削減目標の設定を支援・認定する国際イニシアチブで、現在、日本ではコミットまたは認定済みの企業を含め2500社以上が参加している。Ver.2における最大の変更点は、目標設定と認定をゴールとするモデルから、定期的な進捗報告を通じて目標を更新していく仕組みへの移行だ。イベントでは、SBTiのデイビッド・ケネディCEOが登壇。「今後も目標設定や申請準備を進める企業にとって、新基準への理解と実務への落とし込みが急務となっている」と語った。

田中貴金属工業

国内最大級の500kWの純水素型燃料電池を導入

 産業用貴金属加工・販売を手掛ける田中貴金属工業は、自社の神奈川県平塚市内の研究施設に国内最大級となる純水素型燃料電池設備(500kW)を導入し、7月に運転を開始した。発電効率50%を有する東芝製の設備でブラックアウト時でも運転可能な仕様となっている。燃料には液体水素を活用、敷地内に専用タンクを設置しオンサイトで利用する。「現状では発電利用のみで、熱の利用は模索中」(担当者)だ。これまで同社は燃料電池向け触媒に利用する貴金属をメーカーに供給してきた。今後は、水素を利用する立場として自らが燃料電池を運用し知見を収集していく。

ソラコム

IoTとAIを組み合わせた新技術や製品を披露

ソラコムは7月、自社展示会「SORACOM Discovery 2026」を開催した。同社は通信モジュールやカメラなどを用いて収集したデータをIoTに特化したマルチキャリア対応の通信SIMによってクラウドに転送。データとITを組み合わせた新たな価値を提供してきた。日本瓦斯のガスメーター用IoT端末「スペース蛍」や大崎電気工業のスマートメーター「らくらく検針」をはじめ、エネルギー業界でも採用が拡大している。基調講演では自然言語でのやり取りでIoTの仕様を設計できる「SORACOM Agent」や人が目視で行っていた作業をAIで代替できる「ソラカメPro」などの新技術や製品を発表した。

電源開発/東京電力ホールディングス/中部電力ほか

国産の次世代浮体式洋上風力の実証を開始

電源開発や東京電力ホールディングス、中部電力など6社で構成するFAWTコンソーシアムは7月、長崎県壱岐市沖で国産の次世代浮体式洋上風力「浮遊軸型風車(FAWT)」の小型実験機での海上実証を開始した。実証期間は1年間で、最大出力20kWの垂直軸型風車を用い、技術成立性や耐久性を検証、将来的なメガワット級実証機の開発と商用化を目指す。

日本郵船/ヤンマーパワーソリューション/ENEOS

レストランシップに水素燃料電池システムを採用

日本郵船は6月、ヤンマーパワーソリューション、ENEOSと共同で来春に就航予定の新レストランシップ「AMANE(海音)」に水素燃料電池システムを採用することを公表した。トヨタ製水素貯蔵モジュールを活用し、ENEOSが水素供給を担う。船舶分野での水素利活用の社会実装を進め、海運業界の脱炭素化と上質なクルーズ体験の両立を目指す考えだ。

大阪ガス/大阪ガスマーケティング

エネマネサービス「スマイ電池EX」の実現へ

大阪ガスと大阪ガスマーケティングは7月1日、京セラ製の家庭用蓄電システム「Enerezza PlusⅡ」の販売を始めた。新築の太陽光発電住宅を対象に、同蓄電池を遠隔制御し、需給調整市場や容量市場へ電力を供出するエネマネサービス「スマイ電池EX」の実現を目指す。収益の一部を利用者に還元し、光熱費低減や再エネ活用、需給安定化を後押しする考えだ。

【特集2 動き出した柏崎刈羽】厳しい安全対策基準をクリア 地元理解得て基幹電源に

産業活性化の原動力に期待が高まる発電所の再稼働。
電力安定供給や脱炭素戦略などさまざまな波及効果が見込まれる。

国内最大級の発電出力を持つ東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所(全7基、総出力821万2000kW)。福島第一原子力発電所の事故以降、発電所の運用が順次停止し、2012年に6号機の定期検査により、全号機が停止した。


以降、東電は原子力に関する新しい規制基準をクリアするための取り組みに注力。5号機から7号機の地震の想定を450ガル(編注:地震動の加速度)から1200ガル以上へ引き上げた。津波に対しては3・3mから6・8mへと想定を引き上げて防潮堤を整備するなど、対策を重ねてきた。こうして新規制基準に適合した安全基準を達成したことで、原子力規制委員会から認可を取得。地元の理解も得て今年4月、14年ぶりに本格的な営業運転を再開した。

5号機から7号機の全景


動き出したのは6号機だ。海水温度によって多少変化するが、出力は135・6万kW。100万kWを超える電源が動き出した意義は大きい。


中東危機に見舞われる中、資源に乏しい日本にとって、国内全体では約7割、東日本エリアに限れば8割近くを火力発電に頼っている。そうした中、火力依存度が高い東日本における再稼働は、エネルギー自給率の向上に寄与する。

防潮堤も整備した

脱炭素社会の推進を後押し 電気料金の低減に寄与

カーボンニュートラルの推進や電気料金低減への期待も大きい。CO2排出係数ゼロの電気がベースロードとして利用できるようになったことで、脱炭素に向けた戦略が前進していく。さらには、原子力の稼働が進む西日本に比べて東日本の電気料金が割高傾向にある中、とりわけ料金低減への要望を口にしてきた産業界にとっては追い風となる。


最近ではデータセンター(DC)向け電力需要も上昇中。「DCの種類にもよるが、365日、一定の電力需要があるDCとベースロードの原子力とは好相性」(業界関係者)というように、「原子力とDCとの近隣一体整備」戦略もアイデアとして検討されるなど、新たな産業創出にも期待が高まる。


また、安定供給に向けた実務面にも効果がある。東電管内ではこれまで、太平洋側の電源が中心となって関東エリアの電力供給を担っていたが、今後は日本海側からのベースロードが加わることになる。レジリエンス機能が高まると同時に、他の電源の定期検査の工程や送電網のメンテナンスなど、安定供給を支える上で、さまざまな運用面での柔軟性の向上にもつながる。

東日本大震災以降の発電所における主な出来事

特重施設整備で安全対策 技術者が活躍できる場へ

今後は7号機の再稼働に向けた安全対策を進める。東電によると、航空機衝突のような極端な事態などに対応する「特定重大事故等対処施設(特重施設)」への対応と既存設備とのつなぎ込みを29年8月までに終わらせる予定だという。

災害を想定した訓練


地元では複数号機の運用を望む声が高まっている。「全号機が停止していた時は、定期検査を担っていた地元の人材は、他のエリアに出向きながら事業を続け技術を維持してきた。6号機が動き出したことで今後、地元の技術者が定期検査やメンテナンスに対応できる。さらに数年後、複数の号機が動けば、定期検査と稼働するプラントの交互運用ができ、それぞれの業務を分散させられる」(地元企業関係者)


地元に活力を生み出そうと東電は今年7月、自治体や地元企業とともに「柏崎刈羽地域共創イニシアティブ」を立ち上げた。「国ではなく地元が主導していく、地域を活性化させるための協議体。若い世代の人たちが『自分たちの発言で街が動く』ことを実感してもらいたい」。柏崎商工会議所の西川正男会頭は言う。14年ぶりに実現した再稼働を契機に、地元では新たな動きが広がり始めている。

【特集2まとめ】動き出した柏崎刈羽 発電所と地元経済の今

柏崎刈羽原子力発電所の6号機が今年4月に本格的な運転を再開した。紆余曲折を経て100万kW以上のベースロード電源が動き出した意義は大きい。CO2排出係数の観点や低い発電コストのみならず系統の安定化への寄与が期待される。同時に、今後の地元経済への貢献も求められている。発電所長や商工会議所へのインタビューを通じて地元の今を伝える。

【アウトライン】厳しい安全対策基準をクリア 地元理解得て基幹電源に

【ディスカッション】再稼働の先を見据えて 次世代に描く将来像

【インタビュー】柏崎市民にようやく笑顔戻る 信頼回復に向けた努力を評価