テーマ:洋上風力と水素事業の課題
GX(グリーントランスフォーメーション)の目玉である洋上風力、そして水素関連事業の動向が芳しくない。しかし政府は引き続き巨額投資を続ける方針で……。
〈出席者〉Aメーカー関係者 Bメディア関係者 C有識者
―洋上風力で日本は欧米の後塵を拝したと言われるが、欧米でも黄信号が灯り始めた。
A トランプ米大統領は任期中、主に洋上風力の新設を認めない方針だ。GEは昨年末に洋上風力向けタービンの新規受注を凍結すると報じられており、日本の事業にどう影響するのか。また、3~4年前は欧州各地や米国、豪州や台湾などで開発が活況だったが、足元2年ほどで停滞感が強まり、特に台湾は国内サプライチェーンの重視がコストで裏目に出た。日本は今後本格的な事業化フェーズに入るが、発電コスト低減に向け、市場停滞で余力が生まれる海外の供給力活用を含めてサプライチェーンをどう構築するのか、改めて問われているのではないか。
B 陸上風力の話だが、中近東での開発に関わる日本の関係者が面白いことを言っていた。実は中国のブレードは、価格はもちろん性能も一番優れていて、本来であれば採用したいという。英フィナンシャル・タイムズは、スウェーデン政府が巨額投資したEV用電池企業・ノースボルトの経営破綻を「欧州の夢が絶たれた」と報じたが、洋上もこうした状況になりつつある。
A 中国製の性能は全くそん色なく、数年前時点でも欧米製より3~4割安かった。もともと中国勢は欧州の設計を買って真似ることから始めている。さらに国内向け生産量が膨大で学習効果が高く、性能がどんどん高まるサイクルができ、その上激しい国内競争にさらされているメーカーに他国はかなわない。
C 中国メーカーを十把一からげにはできない。事業者目線で重要なのは結局バンカブルがどうか。レンダーの技術審査をクリアした中国製が浸透していくのは必然の流れだ。
A 日本国内でも中国製風車を採用したいとの声は多い。富山県入善町沖では、既に中国ミンヤン製の風車を使った洋上風力設備が稼働している。同事業はウインドファーム認証などの許認可手続き面を含め業界の注目を集めたが、稼働の事実はエポックメーキングだ。

国内どの地点も課題山積 R3は予想通りの結果
―国内について、特に第2ラウンド(R2)は政治判断で運転開始時期を重視するなどルールが変更されたが、進ちょくはどうか。
B 今は岐路に差し掛かっている。あおったのは政府だ。電力・ガス自由化によく似た構図。政府が主導権を握りたいというだけで、目的に哲学はなくパッチワーク。事業者にとってはたまらない。
R2で一番進んでいるのはJERAの秋田・潟上沖だ。スケジュール的には今のところ順調で1月から陸上工事が始まる予定だが、採算状況は多分に漏れずかなり悪い。他方、新潟は陸上工事、特にグリッドなどを巡りゼネコンは採算が合わないと引き受けず、下請けが捕まらないなどの事情があると聞く。いずれもスケジュールが守られるのか不透明だ。
C 競争をするのは安価な再エネ電気の恩恵が最終的に国民や産業にもたらされるためだ。R1で三菱商事の総取りが良くないとの一部事業者の声に対し、電力多消費産業からは「電力価格が安ければ良い」との声が多かった。結局、FIT(固定価格買い取り)の「利潤配慮」の恩恵を受けてきた一部事業者が価格競争の回避を志向し、そして政策変更のタイミングでインフレが襲来した。
A R1では最初に運開予定の千葉・銚子が試金石だ。地元関係者との協議がかんばしくなく、千葉県庁と資源エネルギー庁の関係もうまくいっていないと聞く。また、秋田・由利本荘では具体的な課題が聞こえてくる。例えば、陸上連系変電所までの送電線は長距離の国道縦断を計画していた模様だが、元より許可を得ることは困難で、計画変更に伴うコスト増や工程見直しは避けられないだろう。
B イベルドローラが日本の事業から撤退するかもという話も聞く。やはりコスト上の理由のようだ。
A 昨年末結果が公表されたR3では、イベルドローラがコスモの陣営から抜け、結果コスモの洋上撤退につながった。