毛利岳幹/東京商品取引所総合業務室〈市場企画担当〉課長
テーマ:電力先物市場
TOCOMは、電力先物市場の取引拡大に向けさまざまな施策を打ち出してきた。
近年、リスクマネジメントの一つの手段として取引が急拡大。活用が広がりつつある。
東京商品取引所(TOCOM)で電力先物の取引を開始してから7年目になるが、認知度拡大と利便性向上のための取り組みが徐々に結実し、2025年以降、取引の拡大が顕著である。今後もより一層の流動性・利便性の向上により電力価格の変動リスクをヘッジしやすい環境を整え、わが国における安定的な電力供給維持のためのツールの一つとして役割を果たしていくことが求められている。本稿では、TOCOMのこれまでの電力先物に対する取り組みを紹介しつつ、今後の展望について言及したい。以下、文中における意見などは個人的見解である。

TOCOMは19年9月17日に、電力先物を試験上場して取引を開始した。商品先物取引法に基づき当局の認可を得た商品として上場したが、現在においても同法に基づく認可の下で電力先物を上場して取引を行っている取引所はTOCOMのみである。
当初は先物という新分野に参入できる電気事業者は限定的で、13社の参加でスタートした。この拡大が喫緊の課題である中、19年10月にTOCOMは日本取引所グループ(JPX)の完全子会社となり、その経営資源やノウハウも活用し、電力先物スクール(事業者の要望に応じ、商品先物取引の基礎から電力先物取引の活用までを説明)を開催するなど啓発活動を展開。
20年のコロナ禍の電力価格低迷から一転、20年末から21年初にスポット価格が大暴騰したことなどを受け、スクールの受講も急増し、21年末の市場参加者数は134社と当初の10倍に拡大した。それに伴い21年の年間取引量は10億kW時(前年比1・6倍)となり、22年4月4日に、3年間の試験上場期間を半年間前倒し本上場に移行した。
参加者のすそ野拡大へ施策 金融機関などの参入促進
本上場後の同市場の成長のためには、プレゼンス向上による参加者のすそ野拡大が求められた。また、経済産業省が23年11月から24年4月にかけて開催した「電力先物の活性化に向けた検討会」(全5回)の最終取りまとめでは、取引拡大に向けて、現物取引との連携や財務上信頼できる金融機関の参加といった、TOCOMに求められる施策に関する提言をいただいた。
これらも考慮して、①商品ラインナップの拡充、②JPX傘下の他の取引所や海外のエネルギー市場に比べて手薄なクリアリングブローカーとなる金融機関の参入促進、③現物との連携強化―の3点に重点を置いて具体的な施策を進めた。
商品ラインナップとしては、市場参加者から月間だけでなく、より短期やより長期かつまとまった期間のヘッジニーズを満たせる商品が求められたことから、週間物取引(24年3月)と年度物取引(25年5月)を追加した。並行して実施したクリアリングブローカー参入促進のための営業活動強化により、25年度末までに国内金融機関2社が加わったことで、電気事業者などにとって選択肢が増え、市場参加者のすそ野拡大につながった。その結果、新たに追加した年度物取引などで大口の約定も増加し、25年の年間取引量は46億kW時(前年比5倍)と急拡大した。
今年4月13日には、中部エリアを対象とした電力先物の取引を開始する。地域間連系線の混雑などを背景に東京・関西の両エリアとの価格差が生じやすい傾向にある中部エリアの価格ヘッジニーズに応えるべく導入するもので、同エリアで活動を行っている電気事業者をはじめ多くの市場参加者からの利用を期待したい。
現物取引との連携開始 ワンストップで入札可能に
電力先物の指標は日本卸電力取引所(JEPX)の翌日取引であり、JEPXとTOCOMが連携することにより双方の機能向上と電気事業者の利便性向上につなげていきたいとの考えの下、23年1月に相互協力に関する覚書(MOU)を締結した。その反響は大きく、中でも多くの電気事業者から期待の声を寄せられたのが、電力先物取引とJEPXでの現物調達、または販売のワンストップ化の実現であった。実現に向けて両取引所で検討を行った結果、早期の連携サービス(サービス名称は「JJ―Link」)開始のため、二段階での導入とした。
フェーズ1は、TOCOMがJEPXから連携を受ける現物の約定データが先物ポジションと合致するかを照合して、確認結果を電力会社へ返すことで先物と現物の結びつきを証明するサービスとして24年10月に開始。そして先般、フェーズ2のワンストップサービス(先物ポジションに応じて、JEPXでの現物の調達、または販売の入札が各電気事業者名義で行われるサービス)への移行を今年8月31日からとすることを決定・公表した。
フェーズ2への参加を希望する場合は、事前申し込みによる利用者登録が必要で、登録受付開始は今春を予定。登録済の電気事業者は、8月31日からJJ―Linkを利用できる。フェーズ2では、取引が増加傾向にある年度物取引にも対応。年度物取引を約定後、JJ―Linkの申請をしておくことで、対象年度になれば365日間のJEPX翌日市場への入札がワンストップで行われる。

フェーズ2は、相手方のリスクを考慮せずに取引できるクリアリング付の先渡取引と同等の効果を有しており、最近のエネルギー価格の変動に鑑みれば、JJ―Linkにはリスクマネジメントの観点から、さらなる活用拡大が期待できる。
今後とも電気事業者の利便性向上に向けてさまざまな可能性を追求していきたい。

1999年大阪証券取引所(現大阪取引所)入所。金融デリバティブ市場の企画・運用部門などを経て2022年から現職(大阪取引所市場企画部兼務)。














