エネ政策の旗振り役へ 資燃部の組織改革に注目
資源エネルギー庁資源・燃料部石油流通課でLPガスの政策課題を担当してきた企画官のポストが廃止され、「エネ庁におけるLPガスの政策的位置付けの後退を象徴している」(エネルギー業界関係者X氏)と、業界を騒然とさせた。
これに対しエネ庁幹部S氏は、「地方の人口減少という大きな構造転換とカーボンニュートラル(CN)の流れを踏まえれば、業界の垣根を超えて考えるべき課題が大きくなっている。その第一歩として、石油流通課が石油、LPガス両業界を一元的に所管することになった」と、その意義を強調する。
S氏のこの言葉から推察されることは、資源燃料部の組織改革はこれにとどまらないということだ。エネルギー行政に詳しい大物学識者のK教授も、「資燃部は来年4月に向け大々的な組織変更を行おうとしている」と指摘する。

これまでのエネルギー政策の焦点は、低・脱炭素時代に向け、電源構成における原子力と再生可能エネルギーの比率をどこまで引き上げられるかにあった。これらを管轄するのは、電力・ガス事業部と省エネルギー・新エネルギー部であり、炭素を排出する化石資源を管轄する資燃部の影は薄かった。
ところが、2020年10月の菅義偉前首相による50年CN宣言以降、脱炭素化の鍵を握るアンモニアやCCS(CO2の回収・貯留)技術が欠かせなくなり、それによって資燃部のプレゼンスも一気に上昇。「これをきっかけに、資燃部がCNの旗を振ろうという思惑が見えてくる」(K教授)
当然、CN系のアンモニア燃料やCCSなどを所管する部署の新設は避けて通れない。新時代の政策展開を見据え、エネ庁内の組織を統廃合する動きが来年にかけて本格化しそうだ。
再処理工場の完成遅延 日本原燃M氏に賛否
日本原燃の最高幹部であるM氏への風当たりが強まっている。六ケ所再処理工場の完成時期の遅れに加え、パワハラ批判などが一部月刊誌に掲載された。しかし、原燃を取り巻く社外の電力関係者の間では逆に、同氏への同情の声が強まっている。
原燃は9月に再処理工場を完工する予定だったが、原子力規制委員会・規制庁の審査が遅れ、実現はほば不可能になっている。規制庁、原燃の双方が審査の遅れを批判する中、審査の対応を巡り、社内ではM氏に対し「強権的」「現場の声を聞かない」といった声がささやかれているという。経済誌Sの2月号に、このような論調の批判記事が掲載され波紋を広げた。
一方、社外からはM氏にエールを送る向きが広まっている。原燃は各電力会社の出向者が幹部を占める寄り合い所帯で、社風はかなり緩い。それを真面目なM氏が是正しようとした結果、あつれきを生んだというのが周囲の見方だ。
「M氏は熱い。しかし審査対応の人に同じ熱量は感じない」と、事業者に冷たいとされる更田豊志規制委員長さえ、今年1月の意見交換会で同情を寄せた。
また23年の青森県知事選を機に引退が見込まれるM知事が、任期中に再処理工場完成の目処をつけたいと、原燃への支援を強める意向らしい。とはいえ、再処理工場の完成が遅れれば、M氏らの進退を含めた責任論が出そうだ。もとっとも、「彼がもし辞任すれば後任探しは大変だ」(関係者)との身勝手な意向も電力業界にはある。
S商事が狙うSガス株 断続的に買い増し
S市エリアで、地域のエネルギー会社同士による株式取得劇が密かに関係者の関心を集めている。
大手石油元売りE社系の大手特約店、S商事は8月8日、都市ガスS社の株式を1・04%買い増し保有比率が27・9%になったと、財務局に報告した。Sガスの筆頭株主であるS商事は16年ごろから同社の株式を断続的に取得し始め、昨年は3月1日、5月20日、6月3日、7月7日、19日、8月3日、8月17日、10月7日の計8回にわたって、約1%ずつ株を買い増した旨を報告している。
これまで対外的にS商事の意図は不明だったが、ここにきて理由の一端が明らかになった。関係者によれば、S商事とSガスは、S市エリアを舞台にした環境省の「脱炭素先行地域」事業で協業する計画だ。

具体的には、E社を含めた3社が中心となり、S市内の一円から太陽光発電の「オフサイトPPA(電力購入契約)」モデルで集めた余剰電力を、同エリアに供給する。「両社の協業がようやく実を結び始めた」。地元のエネルギー事情に詳しい関係者X氏はこう話す。
ただS商事では今後もSガス株を買い進め、3分の1以上を保有する展開も想定される。「もしそうなれば、Sガスの経営は実質的にS商事の支配下に置かれることになりかねない」(X氏)。水面下では、両社の熾烈な駆け引きが繰り広げられているのかも。
環境切り札に足場固め 小泉元環境相が奔走
「自民党が旧統一教会問題に揺れるこのタイミングで存在感を示そうとしているのは、さすがかつて郵政解散を演出した、あの父親の血を引く息子だ」
こう話すのは、自民党最大派閥、清和会に所属する重鎮議員の秘書K氏。郵政解散を演出した「あの父親」とは、当時の総理大臣、小泉純一郎氏。その息子とはもちろん、小泉進次郎元環境相のことだ。清和会を率いていた安倍晋三元首相が凶弾に倒れ、旧統一教会と自民党保守派の関係に非難の声が集まる中、冷や飯食らいの続く進次郎氏にとって、ここがチャンスと捉えている関係者も多い。
「旧統一教会系団体と関係が深い清和会と違って、資金力や集票力に優れる進次郎氏は彼らの力を借りる必要がない。ある意味、クリーンな立場で第二次岸田改造内閣に意見する役目を狙っている」(秘書K氏)
環境相時代の進次郎氏は、中井徳太郎前事務次官らとカーボンプライシング(CP)導入に向けて精力的に動いてきた。保守派の一部からは「ドラスティックな環境政策に消極的な保守系議員との対立軸を作り、味方を募る可能性がある。これは小泉親子が得意とする手法だ」(秘書K氏)という指摘も聞こえる。
最近では従来主張してきた風力・太陽光だけでなく、バイオマス混焼によるCO2削減にも理解を示し「現実路線に修正してきた」(メディア関係者)と評価する声もある。環境政策を切り札に、将来を見据えた足場固めへ奔走している。
安倍氏が水面下で画策 K再稼働のウルトラC
安倍晋三元首相の死去を機に、その影響力の大きさを再認識する状況が続く。原子力については自らの長期政権時代に前進させることはなかったが、実は最近、長期停止中のK原発再稼働に向けた「ウルトラC」の実現を働きかけていたようだ。
K原発を巡っては、T電力が新規制基準への対応を進める中、相次ぐトラブルが発覚。事業者への信頼が揺らぎ、地元での議論も進んでいない。H知事は再稼働容認派であるものの、これまで二度の県知事選では再稼働に関する議論を封印してきた。
事態が膠着する中で安倍氏が考えた秘策とは、再稼働とのバーターで、参院選も見据え、S島の世界遺産登録を進めることだった。S島はH知事の出身地である。それにこれまでも、他地域で原子力への反発が強まった際に新幹線建設の話を進めるなどの前例があったようだ。
「S島の世界遺産登録には外交問題が絡むため、当初外務省も文部科学省も消極的だったが、そこに安倍氏が働きかけ、急きょ申請をすることになった」(政府関係者X氏)
しかし本来のプロセスではドラフト版を出して正式版を出すところ、文科省はドラフトを出さずいきなり正式版を提出。結果としてユネスコに不備が指摘され、登録は見送られた。
「県議会などの政府への信頼は失墜し、文科省の大失態だ。もし参院選前に公になっていれば選挙の結果も変わっていた可能性がある」(同)。事業者に続き、今度は政府のオウンゴールで、再び振り出しに戻ってしまった格好だ。