
障がい者や高齢者が幸せに生きる地域づくりを目指し福祉事業から政治の世界へ。
脱炭素戦略は福祉政策や環境問題の解決に大きく貢献すると語る。
父は埼玉県志木市長を務めた穂坂邦夫氏。政治が身近にある環境だったが、幼少時は政治に興味はなく「幼い自分から見た父は、いつも不在で普段何をしているのか、よく分からない人だった」という。大学卒業後は会計事務所に勤務。医療法人の老人保健施設や医療系予備校などの立ち上げにも携わった。障がいのある人や高齢者が生きる幸せを感じられる社会のために奔走し、社会の仕組みを変えるには政治の力が必要だと実感する。父の偉大さを知ったのはその時だ。「福祉の行き届いた地域づくりを進める中で『君の親父さんには助けてもらった、世話になった』と感謝する人の声を多く聞いた」。人々の苦しみの声に答え、幸福のために動く父に、改めて尊敬の念を覚えた。政治家が身近にいる以上、理念を引き継ぐ社会的使命があると政治家を志し、2016年に志木市議会選挙でトップ当選を果たした。
市議会議員として地域に根差した活動をしていた矢先、自民党埼玉県連から17年の衆院選への出馬を打診された。当初は「ここで国政に転身すれば、地域の民意をないがしろにしてしまうのではないか」と固辞。後援会や地元支持者からの推薦を受けて出馬を決意するものの、選挙区には無所属で出馬した元自民党所属の候補がいて、党内からの積極的な支援は難しい。その中で、いの一番に応援演説に駆け付けたのが、菅義偉前首相だったという。「安倍政権下の官房長官として多忙の中でも来てくれた。一本筋の通った方で、本当にありがたかった」。衆院初当選後、20年に菅氏が総理大臣に就任してからも交流は続き、今も薫陶を受ける。
21年には岸田文雄首相の下で環境大臣政務官兼内閣府大臣政務官に就任。第208回通常国会内での環境省関係法案の成立に貢献した。福祉事業での経験を生かして、障がいの有無にかかわらず多様性が尊重された環境で学ぶ「インクルーシブ教育システム」の活用や障がい者雇用対策を進めている。政府のデジタルトランスフォーメーション(DX)推進には「DXが進めば、障がいがある人の労働や勉学の可能性が広がる」と期待を寄せる。
エネルギー地産地消方針を支持 省エネ住宅支援策にも注目
エネルギー政策については需要側の整備に力を入れる。環境大臣政務官時代から、政府の脱炭素政策によるエネルギーの地産地消の方針を支持。持続可能な街づくりを目指す自治体の電気自動車(EV)カーシェアが、高齢者の移動問題にも貢献する考えを示すなど、地域の課題解決には脱炭素戦略が重要だと話す。「環境大臣政務官として各地の再生可能エネルギー戦略を視察してきた。地域に合った地産地消エネルギーの活用を推進するべきだ」と訴える。
また、注目しているエネルギー施策に「省エネ住宅支援」を挙げる。国土交通省、経済産業省、環境省の3省連携で補助金を導入し、住宅の断熱性の向上や高効率給湯器の導入など、住宅省エネ化を支援する制度で、断熱性や気密性の高い家は、電気代の節約だけでなく、子供のぜんそく率減少や入浴事故リスク、といった健康面、経済面で良い影響を与えるという。「この政策は脱炭素だけでなく福祉の充実につながる。住宅リフォームで地元産業にも大きな経済効果も期待できる」として、制度の活用を呼び掛けている。
脱炭素戦略の今後の課題については「気候変動対策における適応策への予算、資金が足りていない」と指摘する。50年カーボンニュートラル(CN)実現には、温室効果ガスを減らす緩和策と、気候変動影響に備える適応策の両輪で進める必要がある。緩和策はCO2排出量削減に向けた取り組みがスタートしているが、適応策は議論の途上だと話す。「この課題解決には、NECの森田隆之社長らが提案する『潜在カーボンクレジット』が新しいアプローチになる」。防災、災害軽減による将来のCO2抑制量を予想・算出してクレジット(金融商品)化することで民間の資金調達を促す手法で、脱炭素に向けたESG(環境・社会・統治)投資と防災・減災対策を目的とした投資活性化につながるという。一方で、CN社会の実現には民間投資だけでなく国民意識の問題も挙げる。「環境問題を解決するには脱炭素のほか、資源循環と自然再生という三つの軸が重要。リサイクル推進など国民の意識を高める活動を行いたい」と展望を語った。
現在は国会での質疑だけでなく、地元埼玉県で子供たちに向けた啓発にも積極的に取り組み、若者の政治参加の架け橋も担う。座右の銘は「まず、やってみる」。議論で作り上げた政策は、実行してこそ意味があると話す。政界の恩師である菅前首相の、迅速に政策を決断する実行力を手本にして、党内で汗を流し、現場を走り続ける。


