【マーケット情報/10月8日】原油続伸、供給不安強まる


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続伸。欧米やアジアにおける冬の需要期を前に、供給不足への懸念がさらに強まった。

米国原油の指標となるWTI先物は、8日時点で79.35ドルとなり、2014年10月末以来の最高値。また、北海原油を代表するブレント先物と、中東原油の指標となるドバイ現物は、2018年11月以来初めて、80ドル台にまで上昇した。

OPEC+の11月増産量が、日量40万バレルに留まったことによる品薄感が根強い。供給不足が懸念される一方、英国は新型コロナウイルス感染拡大の減速を背景に、渡航規制を緩和。また、米国の石油ガス会社Shellは、ルイジアナ州のNorco製油所を再稼働。ハリケーン「アイダ」の影響により、6週間ほど停止していた。米国では、製油所の原油処理量が前週比で増加しており、需給が一段と引き締まる要因となった。加えて、同国の原油在庫は、生産増と輸出の急減により前週比で増えるも、前年を15%、過去5年の平均を7%下回っている。

他方、中国では、新型ウイルスの感染再拡大で、一部国内便がキャンセル。ジェット燃料消費が減少するとの予測が台頭し、価格の上昇を幾分か抑制した。

【10月8日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=79.35ドル(前週比3.47ドル高)、ブレント先物(ICE)=82.39(前週比3.11ドル)、オマーン先物(DME)=81.14ドル(前週比5.64ドル高)、ドバイ現物(Argus)=81.04ドル(前週比5.66ドル高)

LNG・石炭高騰止まらず 電気料金への波及に懸念


化石エネルギー資源価格の上昇に歯止めが掛からない。9月中旬現在、北東アジアのLNGスポット価格指標であるJKMは、12月分の先物で100万BTU当たり23ドル強。例年の4割ほど高い水準で推移しているのだ。

最大の要因は、世界的な脱炭素化の動きを受け、欧米や中国を中心に発電燃料の天然ガスシフトが急速に進んでいることだ。そこに、欧州市場における低在庫の問題や、ロシアとドイツを結ぶ天然ガスパイプライン「ノルドストリーム2」を巡る問題、上流生産設備や発電設備のトラブルなどが重なり、相場を押し上げている。一方の石炭価格も1t当たり170ドル台後半で高止まりの状態だ。

「通常であれば、不需要期の秋を迎え、価格が下がるはずの時期に高騰しているのは異常と言っていい。火力発電の柱である天然ガス、石炭ともに上がっているわけだから、始末に負えない。冬場の需要期に向けて、どうなることやら。とにかく電気料金への波及が心配だ」(大手電力関係者)

2021年度の冬に日本を襲った電力暴騰相場が再燃するのか。行方から目が離せない。

南極観測で科学発展へ貢献 電気工事を支える裏方の使命


【関電工】

 60年以上におよぶ日本による南極観測。この極寒の地での観測が、自然科学の発展に大きく貢献してきた。実は、その発展の一翼を、東京電力系の電気工事会社・関電工が担っている。

関電工は1986年から、国立極地研究所の要請でこれまで越冬隊、及び夏隊の計38回、社員を南極へ派遣している。そして現在、 南極観測隊の活動拠点である昭和基地へ、第62次越冬隊員として昨年11月から1年3カ月間の計画で出向いているのが関電工の上原誠さんだ(現在の所属は国立極地研究所 南極観測センター)。

㊤常に仲間に感謝しているという上原さん
㊦物資を運ぶ「しらせ」
提供:国立極地研究所

「南極でのミッション」――。それは電力会社や水道局が存在しない南極・昭和基地で、電気・空調設備の設営や保守管理の業務を遂行することだ。それだけでなく上原さんは、観測や生活に必要な建物や設備の建設、燃料輸送などにも従事する。観測活動や隊員の生活に必要な電気は、中核設備「ディーゼル発電機(300kVA)」によって供給される。排熱は室内向けの暖房に利用するコージェネとして有効利用する。基地には太陽光や風力発電設備もあり、ディーゼル燃料の消費量を減らしている。一連の配線工事や設備運用を上原さんが担うわけだ。

「どの設備も細かな維持管理が必要です。現地では無駄のない設備で構成されているからこそ、何か一つでも故障で直らなくなると、場合によっては命に関わります」(上原さん)とその使命は重要である。真冬はマイナス40℃近くなることもあるという極寒の環境、そして資機材と人材に制約があるなか、とりわけ屋外作業では手際の良さが必須だ。綿密な作業計画と業務を遂行する能力は、「南極経験4度」の豊富な経験を持つ上原さんのなせる技である。

仲間の存在への感謝 周りを支えるために

上原さんは「一人の力では何もできない」と日々、周りの仲間の存在に感謝している。「私は電気の専門家のリーダーとしてミッションを遂行しますが、いろいろな方々の協力が不可欠です。南極では、その思いを一層強くしています。そんな経験から、自分にとって『何をしたいか』ではなく、『自分が周りを支えられることは何か』を強く意識するようになりました」。上原さんの南極でのミッションはあと4カ月ほど続く。

グロス・ビディング廃止へ 透明性確保に新たな措置


2017年に卸電力市場に係る大手電力会社の自主的取り組みとしてスタートしたグロス・ビディングが、廃止されることが決まった。大手電力会社の社内取引分を含めて、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場を介して売買する仕組みで、①市場の流動性向上、②価格変動の抑制、③透明性の向上―という三つの効果が期待されてきた。

実際、取り組み開始前は、日本の電力需要の3・2%にすぎなかったスポット市場の約定量が20年度末にはコロナ禍の価格低迷もあって37・6%に拡大した。

だがその一方で、グロス・ビディングは成り行き買いによる全量買い戻しが認められるため、かえって「社内取引の透明性が確保されているとは言い難い」との指摘も。昨年度冬の市場価格高騰の際には、「大手電力会社のグロス・ビディングを通じた高値買戻しが、価格の高止まりを長引かせた要因だ」との指摘もあった。

資源エネルギー庁は、取引の透明性をより高めるための新たな手段に移行することを廃止の前提としている。廃止されれば、JEPXにおける取引量が半分以下に縮小するだけに、新たな市場活性化策も求められそうだ。

成功裏に終わった東京2020 大会運営を支えた電力供給


【東京電力】

 史上初の延期とコロナ禍で開催された東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会。

東京電力は管内の41の大会会場などへの電力供給と保安を担った。大会期間中は全社大で特別保安態勢を組み、最大で1日約600人が大会の電力供給を見守り続けた。会場内での電気設備の構築、運営も行った。

東京オリンピック・パラリンピックプロジェクト統括室の渡邉守主任は、お台場海浜公園のトライアスロン会場の電気設備の構築、運営を担当。電気設備の設計など、初期段階から携わった。各大会関係者がリクエストする機器の使用電力から、必要な機材の使用を確認し設計の調整を進めた。

自分たちで考えて対応 経験は大きな財産に

だが2020年3月24日、大会が1年延期に。お台場海浜公園は構築中の電気設備をいったん撤去。延期により、大会組織委員会はより一層のコスト削減を打ち出した。建物や設備に変更が入るたび、電気設備の設計に変更を加え構築の再開に備えた。

「本当に開催されるのか、最後まで反対の声が多く耳に入ってくる中で、役割を果たすためにモチベーションを維持するのは大変でした」と、渡邉さんは振り返る。

21年5月、再び現地に入ると、電気設備工事を担う海外の企業や各大会関係者との調整に追われた。開催直前まで観客の有無が分からない中、運営や警備、放送など、会場に関わる多くの部署から電力設備に関するさまざまな要請が来る。海外の企業と調整を重ね、再設計と確認を繰り返し、構築を進めた。

「毎日初めてのことばかり起こる。調整力と度胸がつきました。同じ業界でも文化や認識が違う海外の人ともわたり合い、出来上がった設備を保守していく。貴重な経験でした」

会場では電力の信頼性向上のため複数の系統の電気設備が整備された。経験したことのない複雑な設備構築。海外の企業の機材は240V、400V仕様で、かつバックアップ電源も必要だからだ。

福田正喜エネルギーゾーンマネージャーは、トライアスロン会場を含め6会場の電気設備の構築を監督した。大会期間中は24時間体制のエネルギーオペレーションセンターで、各会場と連携を取り、各電気設備の運営を見守った。大会が終わり、それぞれ新たな職場にいくメンバーの成長を感じているという。「これまではマニュアルがあり、やり方がわかっている仕事がほとんど。今回のミッションは、未経験のものを全く新しい場所で、自分たちで考え作り上げていくものだった。この経験は大きな財産になる」

今後は未経験のものでもひるまず取り組めると話す二人の笑顔は、どんな場所でもどんな時でも電気を供給し続けるという責任感と使命感に輝いていた。

「無事に終わってほっとしました」と話す、福田正喜さん(左)と渡邉守さん

脱炭素目指すエネルギー政策 世界の潮流見極めて再構築を


【論説室の窓】黒川茂樹/読売新聞 論説副委員長

野心的な目標を掲げたエネルギー基本計画案に、「数字合わせにすぎない」との批判が相次いでいる。

日本は、世界の複雑な動きを見極めつつ、エネルギー・環境政策を再構築すべきだ。

 この秋、気候変動を巡る国際的な議論は激しくなりそうだ。

10月末から英国グラスゴーで、気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)が開かれる。同じ時期にイタリアのローマで開催されるG20サミット(主要20カ国・地域首脳会議)でも温暖化対策は主要テーマの一つだ。

米西海岸でこの夏、人の平熱を大きく超える46・7℃を観測し、東部を記録的豪雨が襲った。世界中で洪水や山火事などの異常気象が頻発している。

国連の「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」が公表した報告書が、温暖化が加速している現状に強い危機感を示したことも見逃せない。世界中の論文を精査し、最新の科学的知見を集め、信頼性の高い資料とされるものだ。

火力発電に頼る日本への風当たりは強い。COP26の議長国である英国のニック・ブリッジ気候変動特別代表は読売新聞とのインタビューで「日本は早期に石炭火力の全廃時期を示すことを期待する」と述べている。

国内外の政治状況は目まぐるしく変わる。一連の国際会議でも、経済成長を重視したい新興国などの反発が強まることが予想され、合意に至るのは簡単ではない。

本来、世界の温室効果ガス排出量の6割超を占める新興国の抑制策こそが重要であるはずだ。

日本としては、気候変動対策に前向きな姿勢を示しつつ、冷静に状況を分析し、現実的な戦略を練ることが求められよう。

気候変動対策の積極姿勢 「アピール」することは大事

脱炭素を訴えてきた菅義偉首相が9月3日、退陣を表明したが、それでも温室効果ガスの排出量を「2030年度に13年度比46%削減する」との国際公約の重みは変わらないとみられる。

菅首相が4月下旬に「46%削減」の目標を打ち出したのは、米バイデン大統領主催の気候変動サミットに向け、協調姿勢を示す必要があったことが大きい。

米国のジョン・ケリー気候問題担当大統領特使は8月末から9月上旬にかけ、日本と中国をそれぞれ訪問し、気候変動対策の推進を訴えた。ケリー氏の狙いは、世界最大の排出国である中国に圧力をかけることだ。

日本は、誰が首相になっても米国と連携して気候変動に積極的に取り組む姿勢を示し続けることが求められる。とりわけ、水素エネルギーやカーボンリサイクルなどの共同開発に取り組むべきだ。

米バイデン政権は「30年に05年比50~52%減」との目標を掲げたものの、どれだけ実行策が伴うかは未知数だ。来年11月の中間選挙では苦戦も予想され、エネルギーへの課税強化といった急進的政策はますます取りにくくなる可能性がある。

再エネ推進を掲げる欧州 安易に追随していいのか

欧州は、火力発電をなくして再生可能エネルギーへの移行を図っているが、日本が追随するのは得策ではないだろう。

この夏まとまったエネルギー基本計画案で、30年度の電源構成について、再エネ36~38%、原子力20~22%、火力41%、水素・アンモニアを1%――とした。これに対し、識者などからは「46%削減」との整合性を取ろうとして「数字のつじつま合わせに終始した」との批判が噴出している。

再エネを最大限伸ばすのは大切だが、整備に時間がかかる洋上風力は、30年度までの本格稼働は難しい。適地が残り少ない太陽光に頼るしかないという。

太陽光の割合は、19年度の7%から30年度に15%に高めるとした。もともと民主党政権の政権公約で盛り込まれた固定価格買い取り制度が12年に始まり、太陽光が急増した。再エネ推進派はまだまだ伸ばせるというが、国土が狭く、自然条件に恵まれない日本では、今回の目標も現実離れしているとの見方が多い。

河野太郎行政・規制改革相は、著書「日本を前に進める」(PHP新書)で、「(日本の再エネ目標は)わずか36~38%でしかない」と強い不満を示している。「30年に65%」を掲げたドイツなどと比べると、大きく見劣りしているとの主張だ。

太陽光は既に国土面積当たりの設備容量は世界一となり、近年、新規案件は伸び悩んでいる。山林を切り崩して太陽光発電所を造る事例が相次ぎ、住民の反発が強まっている。

太陽光の国土面積当たりの設備容量は既に世界一だ

まず環境省と地方自治体は、新たな適地を見つけるための最大限の努力をしなければならない。環境省は適地を自治体が選び、設備を設置しやすくする「促進区域」を各地で設定する方針だ。公共施設の屋根への導入なども推進するという。再エネの可能性と限界については、十分に検証して、広く認識を共有することが欠かせない。

二酸化炭素を出さない安定電源である原子力の役割は、大きくなるはずだが、位置付けはあいまいなままだ。

東日本大震災後、稼働に向けた申請があった27基のうち、再稼働したのは10基で、19年度の電源構成で6%にとどまる。新増設や建て替えには言及していない。

今回の計画案は、投資を促進する視点が欠けている問題も見過ごせない。総合資源エネルギー調査会の会合では、「これでは投資計画を変える電力会社はなく、意味がない」(橘川武郎・国際大学教授)との厳しい指摘があった。

エネルギー基本計画は、エネルギー政策基本法に基づいて、需給に関連する施策の方向性を定めるものであり、単なる努力目標を示すものではない。

自由化のあおりを受け、大手電力の経営余力は乏しくなっている。発電所の新規工事が急減し、19年の投資額は1兆3000億円と、1993年から3割以上減った。老朽火力の休廃止などで冬の電力需給は厳しくなると予想される。

火力発電への投資がストップし、再エネは思うように伸びず、原発の再稼働が進まない―。そうなれば電力不足が恒常化しかねない。世界へのアピールをしつつも、国内のエネルギー政策はしたたかに再構築しなければならない。

気になるCP導入の行方 既存税制強化の可能性


環境省が2022年度税制改正要望で、脱炭素化に向け、カーボンプライシング(CP)について年内に一定の方向性を取りまとめる、と踏み込んだ。要望では明示していないものの、同省が狙うのは炭素税で、かつ一般財源化も視野に入れている。

こうした動きを受け、日本経団連の十倉雅和会長は、政府の気候変動関連の会議で「炭素税なども含めて、社会変容を促し産業政策にもなり得るような最適なポリシーミックスを考えていく必要がある」と発言。ただ、経団連がその後発表した税制改正に関する提言では「炭素税については現状では新規導入の合理性は明らかとは言えない」と慎重姿勢を示した。

実際のところ、すぐに炭素税導入が結論付けられる可能性は低そうだが、既存のエネルギー諸税の強化の可能性はある。「2兆円のグリーンイノベーション基金の出どころは一般会計。エネルギー対策特別会計から出せなかったからで、今後財務省が圧力をかけてくるだろう」(経済界関係者)

やはり脱炭素化政策は金がかかるもの。今後もさまざまな場面で負担増が顕在化しそうだ。

東京パラ13日間の熱戦 エネ企業所属選手も活躍


13日間の熱戦となった東京パラリンピックが、9月5日に閉幕した。コロナ禍での異例ずくめの東京大会も、すべての日程を無事終了。パラリンピアンの活躍は五輪とは一味違った感動を多くの人に与え、エネルギー企業所属のメダリストも誕生した。

日本パラ競泳のエースで東京ガス所属の木村敬一選手は、視覚障がいクラスの男子100mバタフライで金メダル、100m平泳ぎで銀メダルを獲得した。2歳の時に病気で視力を失い、小学4年で水泳を開始。4大会連続出場ながら金にあと一歩届かなかったが、東京大会で悲願を達成した。東京ガスが開いたメダル獲得報告会では、木村選手が内田高史社長らを前に、2013年から所属する同社への感謝の想いを述べた。

競泳では四国ガスの山口尚秀選手も金メダリストに。100m平泳ぎ(知的障がいクラス)で自身の世界記録を更新しての快挙を達成した。小学4年で水泳を始め、17年から本格的に競泳に取り組む山口選手は、他にも2種目で4位入賞を果たした。地元への凱旋時は、四国ガスの眞鍋次男会長や片山泰志社長らが空港で出迎えた。

彼らの活躍を見守ってきた所属企業の喜びも印象的な東京大会となった。

木村敬一選手は悲願の金メダルを獲得した(提供:東京ガス、写真:清水一二[フォトサービス ワン])

【覆面ホンネ座談会】大型交付金にCP要望も 「脱炭素予算」に物申す


テーマ:エネルギー環境予算と税制

2022年度予算要求のエネルギー・環境関連では「地域脱炭素移行・再エネ推進交付金」(再エネ交付金)や、税制改正要望に盛り込まれたカーボンプライシング(CP)が注目されている。業界関係者の見解はどうか。

〈出席者〉 A電力  B都市ガス  C石油

―今回の目玉の一つが、環境省の再エネ交付金だ。地域脱炭素ロードマップの具体化に向け、200億円もの予算を要求している。

A 地域密着型の事業に対し交付金が有効活用されることに期待しているが、環境省には、真に脱炭素化に資する制度化を求めたい。そのために事業の選定過程で必要なのは、費用対効果で評価することだ。

 太陽光発電の拡大は重要だが、非現実的なエネルギー基本計画の目標ありきで太陽光の導入量だけを追求すべきではない。30年温暖化ガス46%減にこだわりすぎると、逆に脱炭素化が遠のきかねない。CO2排出量全体に占める電力の割合は4割にも満たず、電力の供給側の対策が貢献するのはごく一部だ。脱炭素化には需要側の電化が必須で、住宅なら30年、ビルは50~100年ほどストックするから建て替えのタイミングで電化を進める必要がある。交付金では、高効率ヒートポンプや、ZEB・ZEH(ネットゼロエネルギービル・ハウス)といった需要側の対策とセットで、中長期的に脱炭素にどれだけ寄与するかを評価軸としてほしい。交付金以外でも全ての政策に同じ評価軸を導入すべきだ。

B 都市ガス業界も再エネ交付金の新設に期待しているし、環境省幹部からも業界への期待をよく聞く。ただ、対象事業について問うと、漠然とした答えが返ってくる。運用が分かりにくいと結局バラマキとなり、先進地域で事例が少し出てきて終了、となりかねない。ロードマップでは100カ所での導入を目標にしているのだから、実行性が出るような運用にすべきだ。既存の類似の補助金とのすみ分けも明確にしてほしい。中堅都市には必ず都市ガス事業者がいて、常日ごろ自治体から相談事が寄せられている。

 ただ、両者とも何をすべきかピンときていない。そして現状、都市ガス事業者の貢献も限定的だ。再生可能エネルギーやEVなど複合的な提案力を身に付ける必要があり、地方事業者の支援や人材育成が急務となっている。

C 石油の場合、元売り会社は全国区だが、地域ではSS(サービスステーション)が電力や食品、介護などさまざまなビジネスを展開している。地域特性は十把一絡げではなく、ゼロカーボンシティの担い手はやはり地元に根差した企業がふさわしい。そのためのエネルギー供給と需要側への対応というセットで考えると、SSの役割も期待でき、彼らの知見を活用してほしい。ただ、SSの取り組みとしては運輸部門からEVやFCVという発想になりがちだが、台数が少なく、課金ビジネスとして自立できない。太陽光発電事業への参入も同様で、SSの売り上げの9割は燃料油であり、これが地域の実態だ。地域で自立したビジネスが育てられるかが大切で、まずは環境省のお手並みを拝見したい。正直200億円程度では大した役に立たず、気合を入れなければモデル事業止まりだろう。

環境省は地域の太陽光導入などを支援するため大型交付金を新設する

太陽光偏重でバランス欠く トランジション対策も軽視

―交付金以外の環境省事業はどうか。

B これまでも指摘されてきたが、気候変動関連補助金の経済産業省と環境省のすみ分けがさらに分かりにくくなってきた。国策として取り組む以上、役割分担の明示化か、事業の統合を進めるべきだ。ほかには、サーキュラーエコノミー関連でエアコンのサブスクリプション(定額制利用)事業も、予算規模は小さいが目の付け所が良い。給湯器などに展開させても面白そうだ。

C 石油関係ではトランジション(移行期)の対応が重要であり、その点はすみ分けはできていると思う。ただし、環境省にトランジション的な事業があまりなく、経産省と連携してもっと充実化を図ってほしい。46%減目標に関しては化石燃料対策をやらざるを得ない。電源構成の8割を占める化石燃料に関する議論こそ必要なのに、注目が低すぎる。予算のバランスの悪さにもそれが見て取れる。

A その通りで、目玉事業は太陽光ばかりだ。太陽光事業者はFIT(固定価格買い取り制度)初期に大もうけし、今回の予算はFITの代わりの補助の仕組みをつくるからなんとかパネルを設置せよ、というように見えるが、お金のかけ方が間違っている。恩恵はほぼ中国に行き、グリーンリカバリーには全く寄与しない。全てエネ基のゆがみのせいであり、「小泉環境相が数字を積ませたのだから環境省が責任を取れ」という経産省の思惑もありそうだ。しかし長期スパンなら水素やSMR(小型モジュール炉)などにもっと予算をつけるべき。今後経産省に期待したい。

規制庁職員が誤廃棄 身内に甘い体質明らかに


醜態と言っていいだろう。原子力規制庁の職員が非公開の審査ガイドを誤って廃棄し、さらに保障措置を行う査察官3人が身分証を紛失していたことが、8月に明らかになっている。職員が廃棄した審査ガイドは、特定重大施設等対処施設(特重施設)に関するもので、中国電力が誤って廃棄したのと同じものだ。

原子力規制委員会は中国電力には厳しく対応した

中国電が6月に誤廃棄を原子力規制委員会に報告すると、規制委側はこれを問題視。山中伸介委員、石渡明委員は、島根原発2号機の審査について、中国電の文書管理の状況が明らかになるまで中断すべきだと主張した。大手新聞などのマスコミは、この中国電の過失を伝えている。

その後、中国電は調査を行い、廃棄に至った経緯と再発防止策を規制委側に提示。了解を得ている。しかし、規制庁職員の誤廃棄・身分書紛失について、その原因や再発防止策の詳細は明らかになっていない。規制委の「身内に甘い」体質は批判を免れないだろう。

中国電の誤廃棄が全国に報道されたのに対し、規制庁職員のミスを報じた大手紙は皆無。更田豊志委員長の記者会見でも、質問はまばらだった。規制委・規制庁とマスコミとの癒着も、改めて浮き彫りになっている。

水道メーターをスマート化 電力インフラで管理コストを低減


【中部電力】

 中部電力、豊橋技術科学大学、東京設計事務所、静岡県湖西市は、水道スマートメーターや各種センサーなどのビッグデータを収集および解析して事業に活用する共同研究の基本合意書を締結している。

水道を管理する自治体では、少子高齢化による人口減少や節水型機器が普及したことで、水需要が減少する課題に直面している。各自治体いずれも運営基盤強化に向けて業務の効率化が求められており、同様の問題を抱える湖西市は課題解決に向けて2020年11月に基本合意書を締結し、データ利活用の調査・研究に向けて取り組みを開始した。

共同研究では、①利用者の水道メーターをスマート化し、使用量などの情報を取得するための新たな情報通信ネットワークを構築、②水道スマートメーターの情報から水の流れ(使用状況に即した管網解析)を予測、③水の流れから得られる流量・流速・水圧に加え、配管状況や水温などから水質の状況(残留塩素濃度)を分析し、濃度変化のメカニズムを解明、④水の流れや水質状況を元に、管路の合理的な更新計画(アセットマネジメント)の検討を実施―を目標に掲げ、21年度からさまざまな取り組みを開始する。

自動検針のイメージ図

通信に電力インフラを活用 DX化で維持管理を高度化

この共同研究の一環として、4者は9月から、研究パイロットエリアである同市の一部地区で、水道スマートメーターと通信端末の設置を開始した。

対象エリアは湖西市知波田および入出地区の1890戸。これまで水道メーターの検針業務は検針員が人力で行ってきたが、水道メーターに通信端末を設置することでスマート化し、得られた情報は中部電力が保有する電力スマートメーター通信網とMDMS(メーターデータ管理システム)を利用して湖西市水道課のデータ収集サーバーに転送。検針データ、警報情報などの各種データをリアルタイムで取得することで、水質管理や施設更新など維持管理業務に活用することが期待されている。

水道スマートメーターと通信端末は両地区に9月から順次設置され、研究も併せて開始する予定。また、研究以外でも市営住宅の水道メーター320戸をスマート化とする予定であり、湖西市水道課が実施するSMSなどを活用した利用者へのきめ細かな情報提供や電子申請・電子決済などと連携したデジタルトランスフォーメーション(DX)推進による市民サービスへの貢献にも鋭意取り組んでいく構えだ。

既にほかの地域でも、電力スマートメーターの通信網を他事業者に貸し出すことで、ガス・水道の検針業務を高度化する事業が行われている。全国各地で整備が進められる新たな電力インフラは、地域の悩みを解決する有用なソリューションになりそうだ。

【イニシャルニュース】 海洋放出へ慎重姿勢 高市氏に元夫の影


 海洋放出へ慎重姿勢 高市氏に元夫の影

自民党総裁選の泡沫候補と称されながらも、アベノミクス路線の継承や論理明快な主張などで、党員の支持を着実に広げてきた高市早苗前総務相。エネルギー政策については、原子力推進の立場を明確に打ち出している。そんな高市氏が唯一慎重な姿勢を見せているのが、東京電力福島第一原発から出る処理水の海洋放出だ。

高市氏はメディアのインタビューなどで繰り返し、海外で日本産食品に対する輸入規制が続く現状を指摘しながら、「風評被害を払拭する外交がまず先だ」と強調。「建屋の止水工事などで汚染水をこれ以上増やさない取り組みをやるべきだ」「農林水産業全体に大きな影響が出るので、漁業関係者の理解をきちんと得てからだ」「2年後は(海洋放出の)タイムリミットではない」などと指摘している。

実は、高市氏の海洋放出慎重論に少なからぬ影響を与えているとみられる人物がいる。元夫のY氏だ。Y氏は党の総合エネルギー戦略調査会会長代理を務めるなど、原子力政策の理解派として知られるが、処理水の海洋放出には一貫して反対の立場。二次処理後も汚染物質が残存することなどを理由に、新規汚染水を発生させない完全循環(閉ループ)の冷却システムの構築を訴え続けている。

「Y氏ほど強硬ではないが、高市氏の主張を聞いていると、重なる部分が見受けられる。処理水問題を巡っても、やはり元夫婦間で意見交換をしているのかなと思ったよ」(大手電力会社関係者)

Y氏は9月初旬の段階でいち早く派閥の長である二階俊博氏の同意を取り付けた上で、高市氏の支持を表明。関係者によれば、さまざまな場で「私の元嫁をよろしく」と触れて回っているとのこと。世間一般的には離婚すれば絶縁と思われがちだが、両者の場合は「政治的な関係」が続いているのか。

パワハラが要因か 広域機関人事の混乱

8月20日、一人の経産官僚を巡る人事が電力業界に波紋を呼んだ。この日開かれた電力広域的運営推進機関の理事会において、同機関の理事で事務局長を務めていたT氏が同月28日付けで退任することが決まったのだ。

業界関係者が驚いたのは、その辞任が唐突ともいえるタイミングだったことだ。T氏の就任は2019年8月。丸2年が経過し表向きは任期満了に伴うものとしているが、在職期間は前任のS氏の4年と比較して明らかに短く、代わりにI氏を昇格させるという後任人事を見ても不測の事態であることは明らかだ。

実は、突然の辞任劇の要因は、T氏のパワハラにあるというのがエネルギー業界関係者の大方の見方だ。経産省時代にもそうした風聞は聞こえてきていたため、もともとそのような気質の持ち主なのだろう。

だが、広域機関には、大手電力会社や新電力など民間企業からの出向者も多く、役所内ではまかり通った振る舞いが通じなかったのかもしれない。「T氏がいる限り、社員を出向させたくない」――。そんな声も企業側から出てしまっていたという。

一方で、電力業界からはT氏の手腕への期待が大きかったのも事実。広域機関にとっては、今年度冬の電力需給のひっ迫に備え、電源入札の詳細設計など、さまざまな課題に関する検討を進めていた矢先のことであり、業界関係者のX氏は「T氏の存在なく、今後の制度設計はうまく進めることができるのか」と不安の声をもらす。T氏本人のキャリアにとっても、ますますかじ取りが難しくなる電気事業制度にとっても、大きな痛手となったことは間違いない。

この件を巡り、経産省内ではかん口令が敷かれているという。奇しくも、週刊誌BでK大臣による経産省幹部へのパワハラ問題が取りざたされたのと同じタイミングで、同省幹部のパワハラ問題が顕在化したのでは、同省としてもきまりが悪い。

今後、注目されるのは、次の事務局長人事。相応の年次であることと、複雑な電気事業制度に詳しいことが求められるとなれば、その候補は自ずと限られてくる。業界関係者が有力視しているのは、内閣府に出向中のH氏、そして資源エネルギー庁のO課長だというが、果たして……。

事務局長の辞任は波紋を呼んだ

事業継承者「該当なし」の衝撃 混迷深める仙台市ガス民営化


仙台市ガスの民営化が、またしても白紙に帰した。市は、2022年度中の譲渡を目指して公募を開始。東北電力、東京ガス、石油資源開発、カメイの4社グループが唯一応募したが、専門家による民営化推進委員会の答申を踏まえ、優先交渉権者は「該当なし」と決定したのだ。

仙台市ガスの民営化はまたしても先送りとなった

市は09年にも入札事業者の辞退によって民営化を断念しており、何とか実現にこぎつけたかったはず。一方、競争相手がなく、譲り受けることを前提に準備を進めてきた企業グループ側にも今回は大きな衝撃だった。東北電力関係者は「市ガス事業民営化計画の趣旨に沿えるよう、多様なサービスなど市民サービスの向上のために最大限の提案をした。市の判断は大変残念」と落胆の色を隠さない。

200満点の審査で評価は85・3点。市が設定した最低譲渡価格400億円と同額の譲り受け希望価格を示したことによる0点評価が大きいが、「譲渡後5年間で2万件もの需要脱落を見込んでいる上、福井や金沢などほかの公営ガスの民営化ではあった値下げの提案すらない。市民サービス向上の取り組みも十分とは言えず、とても議会を通せないと市は判断したようだ」(市関係者)という。

市は民営化の実現に向け再公募を目指す。その際には「複数グループに名乗りを上げてもらいたい」と関係者は強調する。注目されるのは石油資源開発、そして今回応募を見合わせた大阪ガスやLPガス会社TOKAIの動向だ。

ただ、2度のとん挫が公営ガス最大手の民営化がいかに難しいかを浮き彫りにしたのも事実。市も、最低譲渡価格を大幅に引き下げるなどの譲歩が求められる。果たして三度目の正直となるか。

ずさんな工事で法面崩落も 違法メガソーラー開発の実態


再生可能エネルギーの乱開発が全国的な問題となる中、メガソーラーの建設を巡るずさんな工事の実態が明らかになった。

法令違反が指摘されている山梨県甲斐市の太陽光発電所

中央自動車道の韮崎インターチェンジからほど近い山梨県甲斐市菖蒲沢の山間部。FIT認定IDリスト上は複数の太陽光事業者が散見されるが、もともとはブルーキャピタルマネジメントが中心となって大規模太陽光開発を進めてきた案件だ。同社のウェブサイトでは1万7280kWの規模で菖蒲沢の事業が紹介されている。

問題となっているのは、トーエネックがブルー社からIDを譲り受けた1万1990kWの工区だ。調整池や水路、太陽光パネルの設置などで林地開発許可条件に違反する不正工事(写真参照)が行われており、山梨県では昨年来ブルー社に対し繰り返し改善を指導。だがこれまでに適切な対策が講じられた形跡は見られない。

去る8月23日、山梨県、甲斐市の議員や地元住民らが改めて現地調査を行った結果、①調整池などの防災施設に重大な欠陥がある、②太陽光パネル架台の基礎部分の浸食が進んでおり、法面が崩落した痕跡が複数ある―ことなどが確認された。調査に同行した全国再エネ問題連絡会の山口雅之共同代表が言う。

「膨大な山林に複数の事業が近接して展開され、広域に開発が行われることの危険性は計り知れず、住民に取り返しのつかない被害が及ぶ危険が迫っている。こうした事例は一部ではない。全国で多発しているのは明らかだ」

ブルー社を巡っては、大分県杵築市の開発案件でも法令違反が指摘されている。災害を未然に防ぐためにも開発規制の強化など、国レベルの早急な対策が必要だ。

新桂沢・熊追発電所が来春運転開始 100年続く水力発電所を目指す


【Jパワー(電源開発)】

北海道内初の多目的ダムである桂沢ダムのかさ上げに伴い、大規模改修を行う桂沢・熊追発電所。

厳しい自然環境の中、2022年の運転開始を目指して、安全を最優先に着実に工事を進めている。

桂沢系発電所の位置

 北海道のほぼ中央にある三笠市を流れる石狩川水系・幾春別川の上流に、桂沢ダムがある。有効貯水容量は8180万㎥。治水、かんがい、上水道、工業用水、発電を目的とした道内初の多目的ダムだ。1957年にJパワーがこのダムの上流に熊追発電所を、下流に桂沢発電所を建設して電気を供給し、60年以上にわたって地域の産業や生活基盤を支えてきた。

桂沢ダムでは完成後に繰り返し起こった洪水被害に対応すべく、北海道開発局がダムのかさ上げをし、貯水量を増やして治水機能を向上させる工事を行っている。国で行っているダム事業では初めての同軸かさ上げダムで、11・9mのかさ上げ後は高さ75・5m、総貯水量は1・6倍になる。

Jパワーはこれに合わせ、ダムの上流にある熊追発電所をかさ上げし、設備の更新を行っている。高経年化した水路の補強と補修、水車発電機1台と屋外開閉設備の更新などを行い、出力は4900kWから5100kWに増加する。

敷地のかさ上げに伴い建屋を新設(熊追発電所)

ダムの下流に位置する桂沢発電所は、貯水位の上昇により有効落差が大きくなる。水車発電機2台、屋外開閉設備などを更新するほか、調圧水槽のかさ上げや水路の補強と補修を行って、新桂沢発電所として生まれ変わり、出力は1万5000kWから1万6800kWに増加する。

2018年に熊追発電所から始まった両発電所の工事は既に7割以上が終了し、熊追発電所は来年4月、新桂沢発電所は同6月の運転開始を目指している。

発電機回転子の吊り込みを実施(新桂沢発電所)

近年の三笠市は夏場の気温が高く、作業では熱中症対策が欠かせない。土地柄、ヒグマ対策も行う。一方、冬は気温がマイナス20℃近くになり、積雪は1・5mを超える豪雪地帯でもある。屋外工事が中心であった2年前までは冬場を休工としていたが、昨年は冬場も一部の屋内工事を継続した。記録的な豪雪があり、大雪に見舞われた日は、道路を除雪するショベルローダーの後ろに列をつくって現場に向かうこともあった。
「道外から赴任してきた所員は雪の多さと寒さに面食らうが、全員一丸となって頑張っている」と、新桂沢建設所総務グループの青柳智士グループリーダーは話す。
現場に通う所員の安全を守るため、工事関係者からの情報を集約し、道路横法面の積雪の亀裂や吹雪、ホワイトアウトなど危険箇所の情報を共有している。最近はドローンを使って上空から雪崩の状況を確認しており、安全に危険箇所を把握することができている。
「安全はすべてに優先する」を工事関係者全員が心掛け、無事故無災害で工程通りの完成に向かって歩を進めている。

次の世代へ技術を継承 100年続く水力発電所へ

更新工事は技術継承の貴重な場としての役割も担っており、新桂沢発電所と熊追発電所の工事でも、幅広い年齢構成の所員が携わっている。またOJTを通じて建設経験が少しでも身に着くよう新入社員が短期間、研修生として配属される。厳しい自然条件の中で、先輩たちの後姿を見ながら土木建築の大規模補修や、水車発電機更新のノウハウを勉強している。
培ってきた技術とJパワーのマインドは確かに受け継がれ、今後の水力発電所の更新工事にも生かされていくだろう。
運転開始まであと半年。新桂沢発電所と熊追発電所は、確かな技術で、100年続く水力発電所を目指し歩んでいく。

【インタビュー】

安全第一で再エネを拡大 地域とともに歩む

――新桂沢・熊追発電所の位置付けは。

河田 2050年のカーボンニュートラル(CN)実現に向けて今年2月、Jパワーは「ブルーミッション2050」を発表しました。発電事業でのCN実現に、再生可能エネルギーである水力発電は重要な役割を担います。今回の大規模更新工事により、両発電所は発電出力が増加します。

――工事が佳境を迎えています。

河田 水車発電機3台同時の更新はJパワーとして初めてのことです。これから運開までは水車発電機の組立や試験が中心になり、工程や人員の点で厳しい局面もありますが、所員一丸となって頑張っています。両発電所は、岩見沢の事務所から車で30分~1時間程度離れています。ここは豪雪地帯の上、一部林道を通行するので、移動途中の雪崩や交通事故が特に心配です。運開まで無事故無災害、安全第一で力を合わせていきたいです。

――地域共生の考えについてお聞かせください。

河田 60年以上事業を続けられたのは、先輩方が地域の皆さんと友好な関係を築いてきたからです。秋の「みかさ桂沢もみじまつり」では、例年発電所の見学会を行っていました。新型コロナウイルスの影響で、地域の行事が中止になり交流の機会が減っていますが、状況が落ち着いたら、新しい発電所と新しいダムをセットで見ていただけることを願っています。2月には所員が三笠市の雪かきボランティアに参加して、高齢の方が住む家や市の施設の雪かきを行います。

これからも地域の皆さんと共に歩んでいきたいと思っています。

河田暢亮(新桂沢水力建設所 所長)