【エネルギービジネスのリーダー達】宮脇良二/アークエルテクノロジーズ代表取締役CEO
2018年にアクセンチュアを退職し福岡市でエネルギースタートアップを起業した。
デジタル技術で脱炭素社会を実現するべくサービスの開発に注力している。

福岡市を拠点に、デジタルサービスの開発やコンサルティング業務を手掛けるアークエルテクノロジーズ。2018年に同社を設立した宮脇良二CEOは、「デジタル技術を活用したイノベーションにより、脱炭素化社会の実現を目指すクライメートテック企業」と、その位置付けを語る。
再エネと貯蔵技術 電気の最適利用を目指す
1998年にアクセンチュアに入社。電力・ガス事業部門の統括パートナーを務めるなど、エネルギー業界を対象にしたコンサルティング業務に長く携わり、2016、17年の電力・都市ガスの小売り全面自由化に際しては、エネルギー各社の自由化への移行やデジタルトランスフォーメーション(DX)化を後押しした。
起業を決意したのは、「自らイノベーションを生み出し実行する役割を担いたい」との思いから。当初は、ブロックチェーンやP2P(ピアツーピア)技術を活用したサービスを模索したが、再生可能エネルギーの大量導入時代を見据え、蓄電池やEVといった貯蔵技術と変動性再エネ(VRE)を組み合わせ、デジタル技術で需要と供給をマッチングさせることで付加価値を創出するビジネスモデルを構築する戦略にかじを切った。
エネルギー市場の自由化、DX化をビジネスチャンスと捉え、多くのスタートアップ企業が続々と誕生しているが、宮脇CEOには「日本のエネルギー構造と世界の先端事例の両方を理解しているスタートアップはそれほど多くなく、ビジネスの本質を理解した上で、高度なデジタル技術を活用したイノベーションを担えるという点で他社よりも優位にある」との強い自負がある。
35人の社員全員がエンジニアであり、プログラミングができるというのも大きな強み。自ら試行錯誤しながらシステムを開発し、先行する海外スタートアップの事例をベンチマークにしながら、日本の市場に合わせたサービスの確立を目指している。
同社が本社を置く九州は、全国に先駆けて太陽光発電設備の導入が進み、発電量が需要を上回り出力抑制が実施されることがしばしば。まさに「課題先進地」であり、同社の取り組みの狙いは、市場の価格メカニズムをうまく活用して需給をマッチングさせ、より電気料金が安い時間帯に消費を促すといった、この社会課題を解決する仕組みを作り上げることにある。
基本的に、電力市場価格が安いときは、原子力や再エネを中心とした低炭素な電源が稼働している時間帯、価格が高いときは火力発電が稼働し炭素排出量が多い時間帯だと考えられる。つまり、理論上は、炭素排出量と市場価格には相関があり、より安い時間帯にEVや蓄電池に電気をためるなど消費を促すことができれば、再エネを余すことなく活用し脱炭素につなげることができるわけだ。
VPP(仮想発電所)のようにバーチャルで全体の需給を一致させることで付加価値を創出することは難しいと判断しており、同社が志向しているのは家庭やオフィス、工場などのエネルギーマネジメントシステムと連動し、建物・設備ごとに最適化することだ。
現在は、EVを所有する需要家の住宅30件と企業のオフィスの協力で、市場価格変動(ダイナミックプライシング)とEVにためた電気を宅内に供給する「V2H」機器を組み合わせ、①JEPXの価格予測、②太陽光発電予測、③消費電力予測、④EVの稼働予測―という四つのAI予測をもとにIoTで充放電を最適制御する実証に乗り出している。宮脇CEOは、「将来は、日本全国で出力抑制が発生する。実際に問題が発生している九州の地で実証を進めサービスを作り込み、全国展開につなげていきたい」と意気込む。
システムの柔軟性創出 デジタルサービスで貢献
同社が手掛けるもう一つの事業の柱が、カーボンニュートラルを目指す製造業などの企業向けコンサルティング業務だ。炭素排出量の見える化、EVのスマート充電や建物のエネマネなど、脱炭素化に資する多様なデジタルサービスを開発しクラウドで提供。さらには、新電力「ナチュールエナジー」として、再エネを調達し供給するところまで手掛けている。
宮脇CEOは、脱炭素化された社会をどのように描いているのだろうか。聞いてみると、「デジタル技術を駆使して、貯蔵やスマートホームの機能を活用することで可能な限りエネルギーを自給自足し、不足する分だけを一番安い時間帯に集中型の大規模システムから調達することが可能になっている社会」との答えが返ってきた。
カーボンニュートラルといえば、再エネ導入や水素活用などハード面が注目されがち。だが、需要と供給をうまくマッチさせ電力システムの柔軟性を創出できなければ、そうしたハードを使いこなすことができない。より柔軟性を高められるようなデジタルサービスを、しっかりと提供していく考えだ。




