【コラム/2月10日】地域における再エネ導入による脱炭素の実現に向けて

渡邊開也/リニューアブル・ジャパン株式会社 執行役員 社長室長

2022年が始まって早1か月、オミクロンに関するニュースが毎日流れている一方、脱炭素に関するニュースも日々何らかの形で目にすると感じる。ただ、最近の脱炭素に関するニュースは、洋上風力の選定された入札価格が従来の業界の常識を覆す価格であったことや「再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定」、「交流→直流へ送電大転換、…、再エネ普及へ構築」といったように、大企業の動きや大型発電所で発電した電力を大都市に届けるという強靭化法案でいうところの競争型電源の話、洋上風力をはじめとした再エネBULK電源を大送電網を整備して3大都市へ如何に届けるか?といったニュースばかりではないか?コロナ禍でワーケーションをはじめとした人の分散化が起こり始めているのに、地域による地産地消やマイクログリッド、レジリエンスはどうなっているのか?と思うのは私だけだろうか?

先日、自治体、メーカー、地域新電力、鉄道会社、金融機関、地元企業等の方々による地域における再エネ導入による脱炭素の実現に向けてどんな課題があるのかというテーマで座談会があり、そこに出席させていただいた。2時間余りの座談会の中で、参加された方がそれぞれの立場からの見方はあるものの異口同音におっしゃっていたのは、地域における再エネ導入の現実的な課題の中でキーとなるのは、「自治体の役割が大きい反面、それを推進する人材が圧倒的に不足しているということ」に集約されるのではないかと感じたことだ。

環境省の資料によると、2021年8月31日時点で「2050年二酸化炭素排出実質ゼロ表明」をした自治体は444自治体(40都道府県、268市、10特別区、106町、20村)である。表明自治体総人口約1億1140万人※(※表明自治体総人口(各地方公共団体の人口合計)では、都道府県と市区町村の重複を除外して計算。)で、表明市区町村の人口は6414万人である。日本の総人口が約1億2000万人であるから、人口カバー率でいうと2人に1人は2050年カーボンニュートラルを表明していることになる。これだけ見ると如何に脱炭素リテラシーが高いかと思ってしまう。しかしこの表明した市区町村に住んでいる方々がそういう意識を持ち、30年後に向けて具体的に活動しているのだろうか?前述の座談会での話ではないが、総論賛成、各論何から取り組んでいけば良いのかわからない、限られた人材や予算の中でどうして良いかわからない、能動的にというより受動的に取り組んでいる(まるで、親から宿題ちゃんとやりなさいよと言われている子供のような気持ち)、というのが本音ではないだろうか。やりたくないのではなく、わからない、だからきちんと知りたいと思っている全国の自治体担当の方は多いと思う。

そこで、ジャストアイディアべースではあるが、例えば、全国市長会議のように各自治体の脱炭素実務担当者連絡会を定期的に開催して、情報交換や意見交換をするとか、ロボットコンテストならぬ脱炭素取り組みコンテストみたいなものをやって、取り組みを競う(披露)しあう、上位自治体は国から交付金が積み増しされるとか、大学入試合格者ランキングならぬ全国脱炭素取り組み市区町村ランキングをビジネス雑誌に特集してもらってアピールする場にするといったようにもっと前向きに取り組める要素を出してはどうだろうか?取り組み事例が取り上げられれば、その自治体はモチベーションになるし、何をして良いかわからない自治体は、先進的な自治体がどこなのか知りそこに教えを乞うことができるし、また、自分たちと似たような条件の中でどう取り組んでいるのかも参考になると思う。

つまるところ、地域における脱炭素の実現とは、何か特別なことではなく、先行している自治体の事例を如何に横展開し、各自治体にノウハウを貯めて人材を育てていくかということに尽きると思う。

参考図:脱炭素取り組みランキング(イメージ)

出 典

・日本経済新聞「再生エネ普及へ送電網、2兆円超の投資想定 首相が指示」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA231B1023122021000000/

・日本経済新聞「交流→直流へ送電大転換 日立やNTT、再エネ普及へ構築」https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2119E0R21C21A2000000/

・環境省「地域の脱炭素化の促進について(改正地球温暖化対策推進法等)」https://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/kisei/conference/energy/20210907/210907energy12.pdf

【プロフィール】1996年一橋大学経済学部卒、東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)入行。2017年リニューアブル・ジャパン入社。2019年一般社団法人 再生可能エネルギー長期安定電源推進協会設立、同事務局長を務めた。

集合住宅の環境価値を有効活用 使用電力のグリーン化を推進

【東京電力エナジーパートナー】

 2050年度カーボンニュートラルの達成に向けて、再生可能エネルギーの活用が推進される。

旭化成グループの旭化成と旭化成ホームズが本社を置く東京ミッドタウン日比谷と神保町三井ビルディング(ともに東京都千代田区)での使用電力において、旭化成ホームズの集合住宅「ヘーベルメゾン」に設置した太陽光発電設備で創出する環境価値を有効活用し、非FIT(固定価格買い取り制度)非化石証書付電力を調達することにより、本社使用電力のグリーン化推進を21年11月に発表した。

東電と三井不動産の協業 今年4月から提供予定

今回の取り組みは、両ビルに電力を供給する東京電力エナジーパートナー(東電EP)と両ビルを旭化成と旭化成ホームズに賃貸している三井不動産との協業により22年4月から提供される予定だ。

東電EPは、20年8月に「ヘーベルメゾン」から発電された電力を買い取り、買い取った電力に含まれる環境価値を非FIT非化石証書として使用することで、旭化成の川崎製造所(川崎市)に実質再生可能エネルギー由来の電力として供給する取り組みを開始。この非FIT非化石証書を同一企業グループ内で有効活用するスキームは国内初だった。

20年12月には、東電EPが三井不動産との間で「使用電力のグリーン化に関する包括協定」を締結し、オフィスビル等のテナント向けに安定的にグリーン電力を提供する「グリーン電力提供サービス」を構築したことにより、テナントはグリーン電力の調達が可能となった。

グループ内活用を更に拡大するにあたり、本社での活用を志向する旭化成や旭化成ホームズと、オフィスビルでの使用電力のグリーン化を推進する東電EPや三井不動産の意向が合致し、今回の取り組みの実現に至った。

なお、再エネ活用の取り組みは旭化成グループの他の事業会社(旭化成エレクトロニクス、旭化成建材、旭化成ファーマ、旭化成メディカル)の本社でも同様に行われている。

東電EPは、今後も地球環境を重視し、持続可能な社会の実現に貢献していく。

燃料価格上昇で物流業界に打撃 「2024年問題」にも影響

【業界紙の目】田中信也/物流ニッポン新聞社 東京支局記者

原油高による軽油価格の上昇は、トラック運送事業者の経営に大きな打撃を与えた。

働き方改革に関する「2024年問題」も抱える中、運賃への燃料価格の適正な反映が至上命題となる。

 2021年はレギュラーガソリンの全国平均小売価格が10週連続で値上がりし、1ℓ当たり169円と約7年ぶりの高水準に達した。全日本トラック協会(全ト協)は11月9日、軽油高騰対策を緊急決議し、斉藤鉄夫国土交通相に要望書を提出した。

トラック運送事業での営業費用のコスト構成を見ると、「燃料油脂費」が約15%と「人件費」の40%に次いで高い割合を占めており、トラックの主要燃料である軽油の価格が高騰すれば、事業者は大きな打撃を受けることが分かる。

業界求めるトリガー条項解除 政府は消極姿勢崩さず

このため、要望では「軽油価格の高騰が続けば、中小零細事業者が99%以上を占めるトラック運送業界の経営は悪化の一途をたどり、将来的に安定した輸送力を確保できなくなることも懸念される」として、政府備蓄原油の放出に加え、①燃料高騰分の価格転嫁対策、②税制および補助金による燃料費の負担軽減措置、③高速道路料金の割引制度の拡充―など、マクロ、ミクロの両面で支援策を求めた。

マクロ対策のうち政府備蓄原油の放出は、米国が協調放出を要請したこともあり、日本政府は初めて国内需要の1~2日分に相当する420万バレルを放出する方針を表明。だが、税制措置として求めていた、燃料高騰時に軽油引取税の課税を停止する「トリガー条項」の凍結解除については、政府与党は消極的な姿勢を崩さない。

これに代わる政策として創設されたのが、レギュラーガソリン小売価格(全国平均)が1ℓ当たり170円を超えた場合、5円を上限に石油元売りへ給付する激変緩和措置だ。ただ、原油価格の変動に合わせて価格を示す元売りへの支援より、「ガソリンスタンドや自動車ユーザーに直接補てんすべき」との声はトラック事業者のみならず根強く、日本維新の会と国民民主党、立憲民主党は、トリガー条項を発動させるための法案をそれぞれ臨時国会に提出した。

導入できない理由として政府与党は、発動後にトリガー条項を解除するのに最低3カ月を要するため税収低下が懸念されることや、凍結解除に法改正が必要なことを挙げているが、「自公政権として、民主党政権時に創設されたトリガー条項を復活させたくない」といった事情も見え隠れする。これに対し、全ト協の坂本克己会長は「われわれへの経済対策はしょぼい」と断言。軽油価格はこの1年で25円程度上がっており、5円ではどうにもならないのだ。トラック業界は12月2日、「燃料価格高騰経営危機突破総決起大会」を開き、自民、公明両党の国会議員に対し、トリガー条項に代わる制度も含む財政出動を求めた。

一方、荷主との交渉が基本となる価格転嫁の対策については、国交省は全ト協からの要望を踏まえ、直ちに荷主関係団体に対して「燃料費の上昇分を反映した適正な見直しを行う」よう書面で要請した。

価格転嫁対策としては、燃料価格の上昇・下落によるコスト増減分を別建ての運賃として設定する「燃料サーチャージ制」が08年に規定されている。同年、ガソリン小売価格が180円超と未曽有の高騰にひんしたことから導入する事業者が拡大したものの、その後、軽油価格が安定したことで導入の動きは鈍化。現状、全事業者の2割程度の導入にとどまっている。

サーチャージ制「もろ刃の剣」 標準的な運賃導入も推進

全ト協は「燃料サーチャージなどによる適正な運賃・料金の収受に向けた荷主関係団体・企業の理解・醸成」を求めているが、軽油価格が下落した際、荷主からの過度な値下げ圧力につながる「もろ刃の剣」になることも懸念される。また、適正なコストや利潤が反映されていない契約運賃のままサーチャージ制を導入すれば、「運賃本体の値上げがしづらくなる」として導入を敬遠するトラック事業者も一定数あり、軽油価格高騰対策の決定打とはなり得ていない。

全ト協を中心に財政出動を要望している

こうした中、サーチャージ制の導入以上にトラック業界が尽力しているのが「標準的な運賃」に基づく運賃・料金の導入だ。働き方改革関連法に基づき、24年度からトラック、バス、タクシーの各事業者に対し、時間外労働を「年間960時間以内」とする罰則付き上限規制が適用される。これにより、ドライバー不足や業績低下が懸念される「2024年問題」に備えるための特例措置が、標準的な運賃の導入で、改正貨物自動車運送事業法の規定に基づき、23年度末までの時限措置として、国交省が20年4月に告示した。

ただ、即座に値上げにつながるものではなく、標準的な運賃に基づいて適正なコスト・利潤を確保できる運賃・料金を算出し、これを基に荷主と交渉を行い、合意に基づく運賃・料金の変更を所管の運輸支局に届け出るのが通常の流れだ。また、「標準」ではなく、あくまで「標準的」と称するように、かつての認可運賃とは異なり、導入に対する強制力もない。

標準的な運賃は、新型コロナウイルス感染拡大の本格化と重なる最悪のタイミングで告示されたため、出鼻をくじかれた。その後、経済活動の復調や、国交省、全ト協とその傘下の都道府県トラック協会の普及推進運動により、導入するケースが徐々に増えてきた。

実際に、どの程度の事業者が告示に基づく適正運賃を実現したか把握するのは困難だが、導入状況を測るデータとして、全国の運輸支局などへの届け出状況を国交省自動車局が公表している。これによると、届け出件数は21年11月末時点で2万2806件あり、届け出率は40%に上っている。ただ、運賃・料金の届け出を先行し、荷主との交渉を「後回し」にしているケースが相当数に上ると見られる。加えて、都道府県ごとの届け出率の格差も顕著になっており、特例措置の期限まであと2年強と迫る中、問題は山積している。

12月以降、原油高は落ち着きを見せているが、「24年問題」の解決には、燃料費と人件費の収支改善は避けて通れない。トラック業界は高い政治力を生かすとともに、荷主に対しても毅然とした態度で臨むことが求められる。

〈物流ニッポン〉〇1968年創刊〇発行部数:15・8万部〇読者構成:陸上貨物運送業、貨物利用運送業、倉庫業、海運業、港湾運送業、官公庁・団体、荷主など

ドイツで原発3基停止 化石依存増大は不可避

元日に発表されたEUタクソノミーの方針では原子力を「持続可能」と認めたが、ドイツは脱原発方針を堅持したままだ。大みそか、エーオンとRWEが稼働中の原発6基のうち3基を停止。ショルツ政権は、メルケル前政権が掲げた2022年末脱原発完了に向けひた走る。中道右派から左派主導政権に交代し、連立には経済界寄りの自由民主党もいるが、環境派の緑の党が存在感を増しており、当然の方針だろう。

力点を置くのはやはり再生可能エネルギー政策で、総発電量の再エネ比率を30年80%、太陽光は同年までに200GW(1GW=100万kW)などと壮大な目標を掲げる。だが、冬場の日照時間が短いドイツで太陽光の発電量をどれだけ積み増せるのかは疑問だ。

米国のある有力環境NGOは、ドイツの発電用化石燃料消費量は22年に増加すると予想している。気象条件や電力需要が21年並みの場合、太陽光・風力発電の追加では原発の損失を補えないためで、結果、22年の電力部門の温暖化ガス排出量は21年と比べ8%程度増加する見通し。

エネルギー危機のただ中で、ドイツはどこまで脱原発方針を堅持できるのか。

脱炭素社会へ正念場の年  「不都合な真実」直視し協調を

【論説室の窓】竹川正記/毎日新聞論説副委員長

COP26で脱炭素化は国際的な合意を得たが、その直後に各国は化石燃料の取り合いを始めた。

浮き彫りになっているのは、カーボンニュートラルという「理念」と「現実」との間の壮大なギャップだ。

 「われわれがこの問題を何かしら解決したなどと勘違いしようものなら、致命的な過ちになりかねない」――。

英国グラスゴーで昨秋開かれた国連気候変動枠組み条約の第26回締約国会議(COP26)。参加した197カ国・地域が「産業革命前からの気温上昇を1・5℃に抑える」「石炭火力発電を段階的に削減する」と合意できたにもかかわらず、議長国・英国のジョンソン首相の記者会見は厳しい発言が目立った。

COPの崇高な理念をよそに、足元では脱炭素化の取り組みの後退を示す「不都合な真実」が露呈していたからだ。

再エネ加速で電力不足 化石燃料依存に逆戻り

象徴的なのが昨年半ばに始まった欧州発の天然ガス価格の歴史的な高騰劇だ。英国を含む各国は近年、風力や太陽光発電を軸に温室効果ガスを排出しない再生可能エネルギーシフトを加速させてきた。ところが、皮肉にも気候変動問題を背景とした天候不順で再エネ発電の稼働率が低下。新型コロナウイルス禍からの経済活動再開が重なり、深刻な電力不足に陥った。各国は火力発電で補おうと天然ガスの調達に一斉に走った。

だが、エネルギー企業に対する環境規制の強化や、化石燃料関連への資金提供を敬遠するESG(環境・社会・企業統治)投資拡大による新規開発の停滞も災いし、天然ガス需給は極度にひっ迫。価格が一時、原油換算で1バレル当たり200ドルを超える異常事態となった。天然ガスの代替需要で原油や石炭の価格も跳ね上がった。

欧州と協調して脱炭素化を推進してきた米国のバイデン大統領も「直ちにグリーン経済へ転換するのは困難」と認め、最近は石油やシェールガス採掘規制の緩和に動いている。日本や中国を巻き込んだ異例の原油の国家備蓄放出まで余儀なくされた。「脱炭素に逆行する」との批判もものかは、電気代やガソリンの価格高騰などが国民や企業を苦しめる事態に「背に腹は代えられない」ということだろう。

欧米と同様に風力発電の稼働率低下で昨秋に大規模停電が発生した中国は、温暖化対策上「禁じ手」としていた石炭火力向け国産炭の増産にまで踏み込んだ。

今では世界的な化石燃料高騰がさまざまな原材料価格を押し上げる「グリーンフレーション」が懸念されている。脱炭素の取り組みを示す「グリーン」と、継続的な物価上昇を表す「インフレーション」を組み合わせた造語で、性急過ぎる脱炭素化の流れに実体経済が追い付かないジレンマを示す。

年明けには、電力用の一般炭で世界最大の供給国であるインドネシアが1カ月間、石炭の輸出禁止措置を発動し、業界に衝撃を与えた。国内の電力供給の安定確保を優先するためというが、化石燃料不足が価格高騰にとどまらず、供給停止に発展するリスクが意識された。エネルギーの大部分を輸入に頼る日本が厳しい状況に直面していることは言うまでもない。

COP26が高らかにうたった合意と裏腹に、相次いで表面化した「不都合な真実」が示す教訓は何か。それは2050年のカーボンニュートラルという「理念」と、世界各国が経済活動や社会生活を維持するために当面、化石燃料を使い続けなければならないという「現実」との壮大なギャップだろう。

 欧州委員会が1月1日に、原子力発電と天然ガスを「温暖化対策に役立つエネルギー源」として認め、環境に配慮した持続可能な投資先(タクソノミー)に分類する方針を示したのも、再エネ一辺倒の直線的な脱炭素化の取り組みでは危ういと判断したからだ。実需があるにもかかわらず、理念だけで化石燃料を無理に排除しようとすれば、投機マネーに目を付けられて相場が混乱するのは必定だ。ESGブームの圧力で欧米エネルギー企業が化石燃料の開発・投資から撤退を続けることで中東やロシアなど資源国の影響力が強まり、地政学的なリスクも高めている。

手段だけに目を奪われずに 実効性のある工程表が必要

経済産業官僚時代に京都議定書に関する国際交渉を手掛けた有馬純・東京大学公共政策大学院特任教授は、交渉の実態について「『地球環境を守るために力を合わせましょう』という美しいものではなく、各国は完全に国益で動いている」と解説。「温室効果ガスの削減は、地球レベルでの『外部不経済の内部化』であり、そのコストを各国の間でどう負担するかというゲーム」と喝破する。その上でCOP26の成果を認めつつ「地球全体の温度目標を定めるトップダウンの性格と、各国が実情に応じて目標を設定するボトムアップの性格が微妙なバランスを取っていたパリ協定の性格を大きく変えることになる」と指摘し、先進国と途上国の対立激化を懸念する。

有馬氏が言うように本質が各国の産業競争力や雇用をかけたゲームだとしても、欧米による自国への利益誘導が目立つままなら、世界的な脱炭素化の取り組みは行き詰まりかねない。

電力不足を各国は天然ガス火力で補おうとしている

問題は、COPが石炭火力削減やガソリン車の排除、カーボンプライシングなど脱炭素化の手段にばかり熱心で、世界全体が化石燃料依存からどう脱して、再エネに転換するかという実効性ある工程表づくりを怠ってきたことだろう。脱炭素社会というゴールに到達するには、再エネの安定電源化に不可欠な大容量の蓄電池開発や、水素の活用、メタネーションなど相当の技術革新が必須だが、いずれも発展途上だ。それまでの数十年間は、省エネや火力発電の低炭素化などあの手この手で化石燃料依存を秩序立てて減らしつつ、経済や生活に必要な石油や天然ガス供給は確保しなければならない。

日本は欧米が主導する脱炭素化の国際ルールづくりに乗り遅れまいと焦燥感を高めるが、アジア各国や中東産油国などと連携し世界共通の脱炭素化の工程表づくりにも乗り出してほしい。回り道のように見えても、そうしてCOPの協調を支えることがルールづくりで主導権を取り戻し、国益に資する道につながるはずだ。

関係者を困惑させた 容量市場価格の大幅下落

昨年12月末に公表された、容量市場の第2回メインオークションの結果が関係者を困惑させている。2025年度を実需給年度とする約定価格が、北海道と九州で1kW当たり5242円、それ以外で3495円となり、前回の約定価格1万4137円と比べ大幅下落したためだ。

約定総容量は1億6534万kWで、これにFIT電源の期待容量を加算すると1億8423万kWとなり、追加オークションなく電力広域的運営推進機関が設定した目標調達量を満たすことができる。つまり、この約定結果は、市場に電源が十分にあるため価格が下落したことを示している。

だが、昨今の厳しい需給を踏まえれば、この結果は関係者の実感とは相当かけ離れていると言わざるを得ない。前回よりも、指標価格以上で応札する電源が大幅に減少し、一方でゼロ円入札を行った電源が大幅に増えたわけだが、学識者の一人は「なぜ多くの発電事業者がそのような応札行動を取ったのか」と首をかしげる。果たして、将来の供給力を確保する手段として妥当な制度なのか。是非を問う議論が再燃しそうだ。

【コラム/2月8日】2022年財政を考える~バラ色展望で財政破綻状況脱皮は可能か

飯倉 穣/エコノミスト

1,経済は、コロナ感染ショックで「収束なければ回復なし」である。コロナ前に比し5%程度の水準低下が続く。先行き米金融政策も気懸りである。その現実を直視せず、政策手段・効果曖昧なまま水準回復狙いも込め、22年度予算も高水準の歳出(支出)が続く。

「膨張 107兆円予算案 コロナ予備費5兆円 税収最高見込む 閣議決定」(朝日21年12月25日)、「107兆円予算案 減らせぬ費用多く 社会保障・国債費60兆円超 新規事業1%未満 成長に回らず」(日経同)。

報道も、コロナで諦めの体である。吟味・批判少なしである。そして財政見通しも暗い。

「高成長前提 遠い財政黒字、25年度目標維持、試算に甘さ「賢い支出」欠かせず」(日経22年1月15日)。只今、財政健全化展望なしである。いずれ国民の生活に塗炭の苦しみを招来しないか。今日の財政を考える。

2,22年度予算の経費内訳は、最大の社会保障費36兆円に次いで、国債費24兆円と歳出の23%を占める。一応公債償還原則60年と利払いを維持する。財源は、税収65兆円、借金37兆円(公債依存度34%)である。普通国債残高は、年度末予想1,026兆円で、GDP比184%である。繰言ながら当初予算ベース28年連続公債依存度20%超 (90年代前半10%台、後半20%台、99年以降30%台以上)、96年以降27年連続特例公債(赤字国債)発行となる。

この40年間、米国要求、オイル・円高・金融等ショックに加え直近はコロナ感染対策で、政治主導の「国を食い物に」する歳出を編成して来た。数字は物語る。巨額財政赤字への感覚麻痺である。我が国の長期にわたる公債依存度は、緊急対策、不況対策の位置づけを越える。なぜ消費税率を引き上げたのか、なぜそれまで財政頼りの経済とするのか。

3,この財政状況を憂慮する現職次官の嘆きも登場した。財務省作成「日本の財政関係資料」を見れば、破綻状況は一目瞭然である。他国との比較には、目を閉じたくなる。事務方トップのやや情緒的な論考は「バラマキ合戦の政策論に一言。国の長期債務残高はGDPの2.2倍、歳出と歳入推移が示す「ワニのくち」は拡大傾向、楽観的成長率を前提とした税収期待でよいのか。単年度財政収支をプライマリーバランス内に、社会保障制度持続に消費税は必要、引き下げは論外。財政破綻回避の努力が必要」と訴える(「財務次官、モノ申す「このままでは国家財政は破綻する」」文春21年11月号)。

 これに対し次号で積極財政派の異見の紹介もあった。インフレ、財政危機に懐疑的な立場から、低金利・低インフレ・低成長なら財政出動は短期赤字だが、結果的に債務比率引き下げ実現と述べる。つまり財政出動が財政を健全化すると強弁する。L&Gの円天「使っても減らない通貨」を思い出す。

4,過去を振り返る。第一次オイルショック以降、経済低下に伴う財政出動とその後の財政悪化懸念・財政健全化努力の繰返しであった。財政再建の歴史も40年を超える。国民世論や経済の現状認識の読み違いによる失敗や後遺症が目立つ。例えば大平正芳内閣での一般消費税導入の失敗(79年)、中曽根康弘内閣の売上税導入失敗(87年)、細川護熙内閣の国民福祉税導入の失敗(94年)、橋本龍太郎内閣の六大改革に合わせた消費税増税実施と緊縮財政の組合せのタイミングの悪さ(97年)が目に沁みる。他方、不完全ながら前進例もある。竹下登内閣の消費税導入(89年)、村山富市内閣の97年4月実施の消費増税決定(94年)、野田佳彦内閣の財政再建・社会保障・税一体改革の関連法制定(12年8月)である。

5,財政赤字継続の論理は、様々である。まず経済論がある。不況時に財政拡大で需要創造・雇用確保というケインズ効果を狙う。最近登場のMMT(現代貨幣理論)派は、政府紙幣発行・財政支出拡大を是認する。

ビジネス、社会、政治サイドの強欲もある。低成長下、近時の経営感覚は、自立自営の精神を忘却し、苦境を国の助けで乗り切る姿勢が目立つ。国民のモラル崩壊もある。ほいど根性的社会保障の外延的拡大である。働く意欲の低下で、貧しさを国の責任・国頼りとする。朦朧状態のエコノミストの無責任さもある。また日本的思考(科学的精神不足)は、困難なことを回避・先送りし自分で決めない。

6,財政の基本は何か。経済の流れで財政を考えれば、生産、所得、支出で、支出の項目内にある。国民は、所得の一部を必要な公的サービスのために支出(税負担)する。その負担が国民生活の質を向上する。その際、財政支出のうち経常支出を税収で賄うことは、経済の原理、財政の基本原理である。公共投資を賄う建設国債の発行にも限度がある。公債発行に伴う金融市場の影響も無視できない。つまり国債は、金利を税収で賄ううちは、国民の財産で投資対象だが、金利を税収でなく国債で支払うことになれば、紙切れとなる。

各国の姿勢も様々だが、EUは、財政均衡目標(財政赤字GDP×3%以内、国債務残高GDP×60%以内)を掲げる。米国には「節約が第一の徳、公債は恐るべき最大の危険」(トマス・ジェファーソン1816年7月21日)の言葉がある。節度ある経済運営の必要性を示唆している。

7,政府の「中長期の経済財政に関する試算」(22年1月)は、財政破綻危惧もなく、何とか凌いでいけると繕う。現実は、低成長下で国家の借金はますます積み上がる。いずれ選択を迫られる。

第一の道は、縮小均衡後、安定経済の道である。国民負担(適切な増税と歳出の合理化)となる。第二の道は、財政破綻、スタグフレーションの道である。国民負担の先送りは、コストプッシュ等インフレ等の形で付けが回ってくる。第三の道は、財政を語らず、破綻待ちである。破綻後調整という投遣りである。第四の道は、拡大均衡型の経済成長期待路線の継続である。過去何度も挑戦し失敗している。根強い妄念が存在する。最近の民主党政権、安倍政権は名目3%実質2%を打ち出していた(机上の空論か数字合わせ)。いずれ第二の道に合流する。岸田政権はどの道であろうか。今後を見つめたい。

どのような対応を行うべきか。経済への影響を考慮すれば、まず歳入増を行い、その次に歳出削減することが賢明である。財政学は、政治学であることを改めて思い返したい。財政規律の言葉が示すように政治家の知性と理性と倫理観が肝要である。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

「経営ビジョン2・0」を発表 地域・社会の持続的な発展に貢献

【中部電力】

中部電力は事業環境の激変に対応するべく、2050年の社会を見据えた「経営ビジョン2・0」を発表した。
また市川環境HDの株式取得も実施。脱炭素・循環型社会の実現に向けた取り組みを加速させる。

脱炭素化に向けた政策の加速、新型コロナウイルスの感染拡大による生活様式の変化、DXの進展―など、ここ数年のエネルギー業界は激しい変化の波にさらされ続けている。

2021年11月、中部電力はこうした事業環境の激変に対応するため、18年3月に策定した経営ビジョンを更新し、「中部電力グループ 経営ビジョン2・0」を発表した。

経営ビジョン2・0は、50年に目指すべき社会像を、「脱炭素」化された「安心・安全」な「分散・循環型」社会と想定。グループの人財一人ひとりの成長・活躍が企業価値そのものであり、その推進が地域・社会の持続的な発展に貢献するとの理念に基づき、「2030年までに実現すること」をより明確化した。

林欣吾社長は、「人財戦略を強化するとともに、技術開発および多様なアライアンス先との連携・共創を一層推進し、全てのステークホルダーの皆さまとともに、持続的な成長を実現していきます」と話している。

社会システムを脱炭素化 再エネ目標を320万kWに

経営ビジョン2・0では、「地域・セクター(インフラ)と共生・連携したエネルギーシステムおよび社会システムの脱炭素化」を新たに掲げている。具体的には、再生可能エネルギーの拡大、原子力の最大限の活用、火力発電における水素・アンモニアの混焼、省エネソリューションの展開など、あらゆる領域で脱炭素化への取り組みを加速していく。特に再エネは、30年ごろに向けた拡大目標として、これまでの目標(200万kW)より一歩踏み込み、320万kW以上を目指す。

30年に向けては、事業領域の拡大とビジネスモデルの変革にも取り組む。具体的には、主力事業であるエネルギー事業に加え、不動産事業、資源循環事業などへと事業領域を拡大する。同時に、これらの事業間を相互につなぐプラットフォーム領域や、データを活用した付加価値の高いサービスの提供を実現するアプリケーション領域での取り組みを加速し、ビジネスモデルを変革する。全ての領域で、地域社会・お客さまの多様なニーズに合ったソリューションをタイムリーに届けていく。

林社長は、「これからもお客さまや社会に必要とされる企業グループであり続けるため、お客さまや社会が求める価値を起点に新たなサービスを創出し、エネルギーとともにお届けするビジネスモデルへの変革に中部電力グループの人財一人ひとりが取り組んでいきます」と意気込んでいる。

連結経常利益2500億円の達成に向けては、21年度から30年度までの10年間で1兆円程度の戦略的投資を実施する方針。グローバル事業に4000億円程度、再エネ事業を中心に4000億円程度を投資するなど、戦略的投資を加速し、バランスの取れた利益ポートフォリオの実現を目指す。

事業環境の変化を踏まえて経営ビジョンを更新

市川環境HDの株式取得 循環型社会実現を推進

経営ビジョン2・0で掲げた「循環型社会の実現」に向け、中部電力は21年12月、大手機械メーカーであるクボタとともに、資源循環事業を展開する市川環境HDの株式の27・8%相当をそれぞれ取得したと発表した。

市川環境グループは、廃棄物処理事業を資源循環事業に高めるべく、バイオガス発電やプラスチックリサイクルなどの先駆的な取り組みを展開しており、業界で高い評価を得ている。

一方、クボタグループも、廃棄物処理に関わる技術・製品に加え、国、地方公共団体などが運営する処理施設の設計・施工や運転、メンテナンスの受託などの事業を有している。

中部電力とクボタは、「両社が有する豊富な経営資源と市川環境グループの資源循環事業に関する豊富な実績・知見などを相互に組み合わせることで、循環型社会の実現に向けた取り組みを強力に推進していきます」としている。

中部電力グループは、50年に向けた「地域・社会の持続的な発展への貢献」のため、経営ビジョン2・0で掲げた取り組みを着実に進めていく構えだ。

資源循環事業に新たに参画 

【覆面ホンネ座談会】脱炭素化実現には程遠い⁉ エネルギー束ね法案を両断

テーマ:エネルギー関連法改正案

1月に開会した通常国会。エネルギー関連では「電気事業法」「エネルギー供給構造高度化法」「省エネ法」「JOGMEC法」の改正案が「脱炭素化法案」として束ね審議される見通しだ。エネルギー業界関係者が、改正案のポイントについて意見を交わした。

〈出席者〉  A電力業界関係者  Bアナリスト  Cガス業界関係者

――エネルギー関連法の改正案について、どんなところに注目しているのだろうか。

A エネルギー供給構造高度化法は、電力小売り事業者に非化石価値の調達義務を課すもの。2030年度の温室効果ガスの排出量を13年度比46%削減するという目標(NDC)を政府が掲げる以上、現行の非化石電源比率44%では整合が取れないため、本来なら変えるのが望ましいが、政府目標があくまでも野心的なマニュフェストであるとすれば、制度として法律に落とし込んでしまうのは性急な感じがする。

B 30年度46%削減といった瞬間にエネルギーの供給側だけではなく、需要側に相当手を入れなければならなくなった。需要家側の取り組みをサポートするような制度に変える必要がある。実際、今回審議される法案はそれを実現するための制度改革に力点が置かれはじめているのが分かる。44%は矛盾が生じるけど、供給側の規制でしかない高度化法はむしろ骨抜きにしてしまった方がいい。

C NDC46%と高度化法との整合という点で課題があるのは明らかだが、今回の改正では水素やアンモニア、合成燃料を非化石エネルギー源として位置付けることが一つの大きな狙い。その方向性については歓迎したい。都市ガス業界には、バイオガスの混入比率の目標があるが、今後は供給事業者にメタネーション(合成メタン)などが義務化されていくことになるだろう。裏表の関係にある省エネ法でも、同じような扱いになるはずだ。

今国会でも重要法案審議が目白押しだ

脱炭素化の主役は需要家に 高度化法は形骸化する

――国の政策目標との矛盾、制度間の矛盾がますます顕著だ。

A 高度化法の理念は正しいが、ステークホルダーの意見を聞きすぎて外部から見るとあまりに複雑で訳が分からないものになっている。それに加えて、大企業を中心に脱炭素化の取り組みを加速させるための「トップリーグ」改め「グリーントランスフォーメーション(GX)リーグ」が始まる。これは産業技術環境局が所管していて、省庁間のみならず経済産業省内の縦割りも大きな問題だよ。

C それぞれの政策の司令塔が、その人の思いで制度を作っているので全体の整合が取れていないのだろう。カーボンプライシングと同じ文脈で、経産省がGX、環境省は恐らく税制で規制をかけてくるはずだ。

B 昨年11月に非化石価値取引市場に、需要家企業が直接FIT再エネ価値を調達できる再エネ価値取引市場が創設されたが、企業の国際競争力を低下させないため1kW時当たりの下限価格が0・3円に設定された。これに対し、(小売り事業者の)高度化法義務達成市場は0・6円が下限だから、小売り事業者が再エネ価値を売ることはほぼ不可能となる。省エネ法でも、企業の非化石エネルギー導入目標を設定しようとしていて、再エネ価値市場で調達したものをカウントできるようになってしまうと、省エネの取り組みも、再エネ投資も何の意味も持たない。つまり、需要家を助けるための施策が、既存の制度を無意味なものにしてしまっている。

A 高度化法をここまで骨抜きにしてしまうくらいなら、いっそガラガラポンで新しい仕組みを作ってしまえばいいと言いたくもなるね。再エネ価値取引市場はFIT電源が対象なので、FIT電源以外の非化石価値を顕在化させる高度化法義務達成市場の存在意義はなくならないだろうが、おっしゃるような懸念は確かにある。

C 46%目標にどこまで引っ張られてしまうのだろうか。製造業の熱利用分野には電化しにくい領域がある。法改正には、足元からの積み上げが必要で、逆に目標に引っ張られてしまうと、GXリーグにしろ、省エネ法の非化石導入目標にしろ、コミットメントしようとすれば事業から撤退するか海外に出ていくしかない。産業界にそのどちらかを迫っているのだということを自覚して、国が法改正を進めているのか甚だ疑問だ。

B 岸田首相の一声で始まったクリーンエネルギー戦略は、当初は原子力政策も入っていたようだが、会議資料からは、今はとにかく熱分野の電化を進めたいのだということがよく分かる。会議は、産業構造審議会と総合資源エネルギー調査会の合同会議の立て付けだが、実際は資源エネルギー庁主導で供給側の論理で需要を語っている。供給コストが上がるというが、産業界の国際競争力と資金調達力向上という重要な視点が不足している。

C 将来的に、非化石の導入義務化まで踏み込めるのだろうか。産業部門のエネルギーの7割が化石エネルギー由来の熱。そこで46%削減にひもづいた目標を作れと言われても実現できるわけがない。

B 何を熱として供給すれば産業が残るのか、そういう技術的ソリューションを探りたいとは思っているのだろうけど、そう簡単なことではないよ。

高速炉計画に日本が参画 テラパワーに技術協力

新年早々、原子力業界に明るい話題が飛び込んできた。元日に読売新聞が「米高速炉計画に日本が参加へ」と報じたのだ。ビル・ゲイツ氏が会長を務める米テラパワーの進める高速炉開発計画に、日本原子力研究開発機構と三菱重工業が技術協力する。

原子炉で発生した熱を発電と蓄熱に振り分ける (提供:テラパワー社公式ウェブサイト)

後追い記事に甘んじた他紙は、「出所は経済産業省」とにらんだようだ。しかし記事は、読売の記者がテラパワーへ取材したことで得たスクープ。文部科学省、経産省幹部から裏を取った上で、満を持して元日1面で掲載した。

技術協力の対象となるのは、第4世代のナトリウム冷却高速炉。テラパワーはこれに溶融塩を利用した蓄熱システムを接続し、原子炉で発生した熱を発電と蓄熱システムに振り分けることで、電力需要に応じて発電量を増減する設計を構想している。

高速炉は将来の有望な原子力市場と目されている。その開発は中国やロシアが先行。米国ではエネルギー省も後押ししており、テラパワーは原子力機構、三菱重工業との協力を得て高速炉市場への参入を目指すもよう。だが、高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉決定後、わが国の高速炉開発は腰砕け状態。日本側は相手にメリットのあるパートナーになれるだろうか。

【マーケット情報/2月4日】原油続伸、供給不安が一段と強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続伸。政情悪化を受け、供給不調への懸念がさらに強まり、需給が逼迫した。

米国原油を代表するWTI先物は、4日時点で92.31ドルを付け、2014年10月初旬以来の最高価格を記録。また、北海原油の指標となるブレント先物、および中東原油を代表するドバイ現物も、それぞれ93.27ドルと89.89ドルとなり、2014年10月初旬以来の高値となった。

ウクライナ情勢の緊迫化を受け、米軍が東欧に到着。ロシアのウクライナ侵攻、それにともなう米国の対ロシア経済制裁の可能性が高まっている。ロシア産原油の供給が大幅に減少するとの危機感が一層強まった。

加えて、中東情勢も悪化。アラブ首長国連邦は2日、ドローンによる爆撃を受けた。同国は1月17日以降3度、武装勢力フーシの攻撃を受けており、供給不調の見通しが強まった。

一方、OPECプラスは3月の追加増産を、当初の計画通り日量40万バレルで合意。ただ、新型コロナウイルス・オミクロン変異株による経済活動への影響が限定的だったことから、供給不足になるとの予測が台頭している。さらに、一部加盟国の生産が、計画に追い付いていない状況が続く。イラクの1月産油量は、同国に割り当てられた生産枠を日量12万バレル下回った。

【2月4日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=92.31ドル(前週比5.49ドル高)、ブレント先物(ICE)=93.27ドル(前週比3.24ドル高)、オマーン先物(DME)=90.65ドル(前週比3.23ドル高)、ドバイ現物(Argus)=89.89ドル(前週比2.09ドル高)

【イニシャルニュース】 自民「大物」が落選 パーティー券の行方は

自民「大物」が落選 パーティー券の行方は

昨年の衆議院選挙で自民党では大臣経験もあるI氏、N氏、H氏など「大物」が落選。そのうち、大蔵省(当時)出身のN氏は党税調の幹部を務めた税制通。通商産業省(当時)出身のH氏も国会や党で要職を歴任、環境相も経験している。両氏とも業界団体などの陳情を受けることも多く、「政治資金パーティー券の販売に不自由しなかった」(政界事情通)。

業界団体や企業は、N氏、H氏のパーティー券購入の予算を確保していた。「これにエネルギー関係などの議員が目を付けている」(同)。選挙を勝ち抜くには、政治資金の確保が不可欠。資金難に頭を痛めている議員が、一枚でも多くのパーティー券を売りたいのは当たり前だろう。

一方、党の重鎮クラスになると、政治力に衰えが見えてもパーティー券販売に苦労することはないようだ。エネルギー政策に強い影響力を持つA氏は、小選挙区の落選で党要職を辞任。しかし、「パーティーは満席状態。最近は講師を呼ばず、A氏が一人で落選の理由などを話すことが多い」(同)という。

中立か当事者か 物議を呼んだ論考

昨年12月24日に公表された洋上風力事業者の公募結果を巡り、K大学大学院のY特任教授が「驚愕の洋上風力入札結果がもつ意味/事業化・産業化の実現性に疑義あり」と題した論考を、K大のウェブサイトに掲載したことが物議を呼んでいる。

三菱商事グループの落札に異議が

今回の公募では、三菱商事を中心とする企業グループが「秋田県能代市、三種町および男鹿市沖」「秋田県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3区域を総取り。1kW時当たり11・99~16・49円という、FIT価格の3分の1~2分の1という著しく低い提示価格が、ほかの入札者をはじめ再生可能エネルギーかいわいを驚かせた。

Y教授は論考の中で、三菱商事グループの提案を「博打」と呼び、「事業規模、コスト、国内産業育成の3目標を一定の時間をかけて達成する目標を掲げ官民協議会でまとめた『洋上風力ビジョン』が破綻してしまう懸念がある」と強い危機感を示し、「国内産業育成を含む国家戦略を考えたときに、見直しを含めての再検討を要望したい」と述べている。

これに対してSNS上の複数のエネルギー業界関係者のアカウントが、「大学の先生が不正があったわけでもない入札結果に異議を唱えることこそ“驚愕”だ」などと、批判を展開したのだ。

そしてそれを知ってか知らずか、年明けに論考の続編が掲載され、今回落札できなかったN社を含む3社の具体名を挙げ、三菱商事グループよりもこれらが評価されるべきであったとの主張を繰り広げた。実はY教授は、このN社の関連会社の役員でもあり、今回の公募の当事者なのだ。

Y教授を知るX氏は、「要するに、教授の肩書で自分の会社のアピールをしているわけで、それが正論かどうか以前に、ポジショントークを中立そうな肩書で覆い隠しているように見える」と厳しく指摘する。

Y教授本人にとっては、純粋に日本の洋上風力開発の未来を思ってのことかもしれない。そうであればなおのこと、無駄な臆測を呼ぶことがないような形で意見を発信し、日本の再エネの未来に貢献していただきたい。

年末のLP業界が騒然 朝日トップ記事の波紋

「この記事は一体何だ!」

大みそかを控えた昨年12月30日、朝日新聞が朝刊1面トップで報じた記事に、LPガス業界が騒然となった。

「LPガス料金、月数千円を上乗せ違約金20万円請求の業界慣行も」の見出しで、リードには「戸建てやアパートに設置したガス配管や給湯器などの費用を、月々のガス料金に数千円上乗せして徴収する慣行が、LPガス業界で続いている。消費者がガス会社を変更しようとすると高額の違約金を求められることもある。経済産業省は、料金体系を透明化するよう業界に求めている」と書いてある。

要は、古くからLPガス業界の商慣行となっている「無償配管・貸付配管」問題の記事だ。何のことはないと言えば語弊があるが、これまでも散々報じられてきた話題であり、内容に目新しさはない。それだけに、「なぜ今ごろ?しかも1面トップで?」と、多くの業界関係者が疑問に感じたことだろう。

「30日朝、大手販売事業者Z社の幹部から電話があって、朝日はどうしてあんな記事を1面トップに載せたんだとか、記事は誰が書かせたのか分かるかとか、いろんなことを聞かれまくった。なぜZ社の人がこんなに騒いでいるのかと思ったよ」(業界紙関係者)

Z社は、首都圏に拠点を置く優良事業者として知られる。記事中には、北海道の話題は出てくるものの、個社ではなく業界全体の問題、しかもLP事業者に無償提供を要求する不動産業界の問題というトーンで書かれており、Z社が目くじらを立てるような要素は一見なさそう。強いて言えば、LPガスの契約や料金の不透明さを指摘していることぐらいか。

「経産省の関係者は朝日の記事を見て喜んでいた」(事情通)。記事の出所はおおむね想像がつく。LPガス取引に行政のメスが入るのか。

電力市場価格が高止まり 新電力経営に追い打ち

日本卸電力取引所(JEPX)スポット価格の高止まりが続いている。端境期の10月ごろから上昇しはじめ、12月は連日、24時間平均のシステムプライスが15~20円を付けた。1月は、6、11日に東日本の複数の時間帯で実質的な上限価格となる80円まで高騰し、19日には全国で一律80円を付ける時間帯があった。システムプライスは30円を超え、全く落ち着く気配を見せない。

太陽光発電は積雪で出力が大幅に低下してしまう

価格高騰の背景には、火力燃料のLNG価格が高止まりしているのに加え、過去10年で最も厳しいとされる今冬の電力需給がある。これに、降雪や低温による需要増や発電所トラブルなどが重なり、さらに価格を押し上げていると考えられる。実際、6日には東京電力エリア、11日には北陸電力エリアで需給が厳しくなり、他エリアから電力融通を受けた。

こうした状況が、昨冬の価格暴騰で傷んだ新電力経営に追い打ちをかけている。既に高圧・特別高圧を中心とする新電力が、新規の顧客獲得停止や値上げ交渉に踏み切っていたが、一定の利益が期待できるはずの低圧を手掛ける新電力の間でも、新規の顧客獲得を停止する動きが出ているようだ。まさに、事業継続か撤退かの瀬戸際に立っている。

お客さまや地域の課題解決へ 新規事業で北陸の発展をけん引

【北陸電力】

植物工場事業を行う「フレデリッシュ」、電子回覧板サービス「結ネット」など新規事業が誕生している。

事業領域の拡大を図り、北陸地域の発展をけん引すると共に自社の成長戦略につなげる。

農業従事者の減少や天候不順による野菜の生育不良などの農業が抱える課題への対策の一つとして、屋内で水耕栽培を行う完全人工光型植物工場が注目されている。

「地域の課題解決」、「保有資源と新技術を融合したサービス」を新たな成長事業の開拓分野と定め、事業領域の創出を目指す北陸電力が中心となり、大気社と農林中央金庫と共に、2021年3月に植物工場事業を行う「フレデリッシュ」(福井県敦賀市)を設立した。

敦賀市との包括的地域連携協定締結式の様子

フレデリッシュでは、最新の空調設備や高効率LEDを用いた植物工場システム「ベジファクトリー」を導入。同システムで栽培した野菜は、室内の光や温度、湿度、養液、二酸化炭素などを完全に制御した環境で育てることにより、生菌数が圧倒的に少なく、鮮度が長持ちするため、食品ロスの削減に貢献することができる。

「ゼロカーボン・レタス」 昨冬に敦賀市で初出荷

フレデリッシュでは、21年11月よりレタスの生産を開始した。このレタスは、北陸地域の豊富な水資源により、水力発電が電源構成の約3割を占める北陸電力から調達した「水力発電由来の100%再生可能エネルギー電力」を使用して生産されていることから「ゼロカーボン・レタス」として、同年12月に初出荷された。

セレモニーでプレゼントされたバゲットサンド

初出荷を記念し開催されたセレモニーには、渕上隆信・敦賀市長をはじめ数多くの地元関係者が集まり、初出荷を見守った。参加者には、北陸電力が発案した敦賀市のブランド食材(敦賀真鯛、杉箸アカカンバ、東浦みかん)とゼロカーボン・レタスを使ったバゲットサンドをプレゼントし、地元食材のPRも行った。この取り組みは、21年6月に北陸電力がゼロカーボンシティ宣言をしている敦賀市と締結した包括的地域連携協定に基づくものだ。

今回の初出荷を受けてフレデリッシュ社長の岡義仁氏は「食料の安定供給など社会課題の解決を目指すと共に、敦賀市をはじめとする北陸地域の発展につながるよう、従業員一丸となってこの事業の拡大を図っていきたい」と意気込みを語った。レタスは、業務用としてコンビニのサンドイッチやスーパーの総菜向けに出荷するほか、地元JA(農業協同組合)の直売所でも販売されている。将来的にはレタス以外の野菜の生産も行う予定だ。

初出荷された「ゼロカーボン・レタス」を披露する「フレデリッシュ」の岡社長

地域活動の運営デジタル化 「結ネット」アプリの開始

北陸電力では、創立以来70年にわたり、事業活動を通じて「北陸の発展に貢献する」という思いを脈々と受け継いでいる。長期ビジョンでもありたい姿として「北陸地域と共に発展し、新たな価値を全国・海外へ」を掲げており、地域が抱える課題やニーズに積極的に対応し、お役立ちの精神で地域の発展をけん引している。現在、北陸電力エリアの51自治体のうち23自治体と包括連携協定を締結し、災害対策の強化や観光振興・まちづくり、環境・エネルギー問題への対応など、それぞれの自治体が抱える課題解決に向け、一体となって取り組みを進めている。また、暮らしのお役立ちに貢献するため、21年10月から地域の自治会組織の運営デジタル化を目的とした地域ICT(情報通信技術)プラットフォーム「結ネット」アプリの導入支援・運営事業を開始した。

「結ネット」では、スマートフォンやタブレットのアプリとして、地域自治会の電子回覧板や自治体・店舗からの情報発信ツールとして利用できるほか、災害時には安否確認システムとしての活用が可能だ。クラウド型ポータルサービスで、これまでの自治会・町内会の活動を継承しながら、新しいカタチで活動を維持、サポートしていくものである。

「結ネット」アプリのイメージ

同システムは石川県金沢市にあるCPU社が開発したもので、北陸電力は同社と普及拡大協定を締結し、地元自治体や町内会への提案活動を行っている。また、地域住民の安全・安心な暮らしに向けて「停電情報お知らせサービス」や「住宅見守りサービス」、「AI(人工知能)を用いたクマ出没自動検出システム」といった北陸電力グループ独自のお役立ちコンテンツを順次提供していく。

結ネットのPRを担当する環境・地域共創部の在原真慈課長は、「北陸電力の社員は地域のために何かしたいとの思いが強い。結ネットをはじめ地域のニーズに合ったサービスの提供を通じて、持続可能でスマートな地域づくりに貢献していきたい」と語った。

北陸電力は、電気事業以外においても地域と一緒に発展できる企業をこれからもめざしていく。

燃料費が調整上限を突破 先行する北陸に他電力も追随

エネルギー資源価格が再び騰勢を強めている。1月20日現在の米ニューヨーク市場の動向を見ると、ウクライナ情勢への懸念などから原油先物価格がt当たり86ドルを突破した。石炭先物価格もインドネシアの石炭輸出停止の影響などから同223ドルに。LNG先物については、プラッツ社のJKMが3月分で100万BTU当たり20ドル台半ばと依然高値圏で推移している。

石油火力向けに国家備蓄の放出を求める声も

こうした中、大手電力の規制料金に適用されている燃料費調整額について、北陸電力の2月分の平均燃料価格(21年9~11月の貿易統計実績)が1kl当たり3万4100円となり、基準価格の1・5倍に当たる上限の同3万2900円を突破した。また3月分料金では北陸に加え、関西、中国の電力2社の燃料価格が調整上限を超えた。東北、四国、九州、沖縄の電力4社も上限に迫りつつある。一方、北海道、東京、中部の電力3社については、上限に達するまで比較的余裕がある状況だ。

平均燃料価格が上限を超えた分は電気料金に反映されず、大手電力側が負担することになる。16年4月の小売り全面自由化以降、料金設定の自由度が拡大し上限は廃止される方向だが、経過措置の規制料金では依然として上限制度が残ったまま。全面自由化前に比べ、規制料金の割合が年々減少しているとはいえ、全国の契約口数を見ると低圧部門の約7割を規制料金が占めている。

今後も燃料費の上昇が続けば、大手電力の業績に少なからぬ影響も。北陸は上限超過分の費用について先物の活用など自社努力で吸収する構えだ。以前は値下げ改定によって基準価格を引き上げる裏技もあったが、さすがに今は……。