【コラム/3月11日】ロシア侵攻で米国議会の潮目変る 「反グリーンディール」の猛攻開始

杉山 大志/キヤノングローバル戦略研究所研究主幹

米国内では、バイデン政権の自滅的なエネルギー政策がロシアのウクライナ侵攻を招いたとして、野党共和党の大物議員が激しくバイデン政権の失態を非難している。これには大物の民主党議員も加わっている。

バイデン政権はグリーンディール(日本で言う脱炭素)にばかり熱心で、石油・ガスの採掘を環境規制によって妨げ、石油・ガス企業に圧力をかけて事業や権益を放棄させてきた。結果としてOPEC(石油輸出国機構)とロシアが世界の石油・ガス市場を支配するようになり、石油・ガス価格の高止まりを招いてきた。これはプーチンが付け入る機会になった。

3人の大物議員の批判を紹介しよう。

元大統領候補のテッド・クルーズ上院議員は、バイデンの大失敗は2つあったとする。

一つはアフガニスタンからの無様な撤退であり、これが「アメリカ弱し」との印象を世界に与えたこと。もう一つは、ノルドストリーム2ガスパイプラインにトランプ政権が課していた経済制裁を解除してしまったことだ。これは、ウクライナを通らない形で、ドイツがますます多くのロシアのガスに依存したがっていることを意味した。

プーチンはこれを見て、経済制裁があるとしてもたかが知れていると読み、ウクライナに侵攻した。

もう1人の有力者、元大統領候補のマルコ・ルビオ上院議員も、同じくアフガニスタンとノルドストリーム2がバイデンの二大失敗だとした。その上で、欧米が自らの石油・ガス産業を痛めつけてきたせいで、ロシアへの依存を高めてしまい、ロシアに力を持たせてしまったことを糾弾している。

ルビオは、「最大の対ロシア制裁は、いますぐ愚かなグリーンディールを止めると宣言することだ」と述べている。

ロシアは巨大な産油国・産ガス国であり、経済も財政も石油・ガスの輸出に頼っている。石油・ガスの価格が高いことで、戦争をする経済的余裕が生まれた。グリーンディールを止めることで世界的にエネルギー価格が下がれば、ロシアにとって大きな経済的痛手になるはずだ。

のみならず、いま石油・ガスの価格が高いため、欧米はロシアへの経済制裁に二の足を踏んでいる。欧米が増産していれば、こんなことにはならないはずだった。

(参考:マルコ・ルビオ上院議員インタビュー動画)

石油・ガス増産求める声拡大 超党派で政権を突き上げ

共和党だけではなく、与党の民主党に属しながら造反して、バイデン政権のグリーンインフラ整備を目指した「ビルド・バック・ベター」法案を葬り去ったジョー・マンチン議員は、「ロシアからのあらゆる輸入を止め、国内の石油・ガスを大増産して自由世界に提供すべきだ」としている。

(参考:マンチン: ロシアからの全ての輸入を禁止することで世界に率先し、かつてなかったほどにエネルギーを増産すべきだ、ブライトバート3月1日)

もとより共和党はバイデンを批判しているから、民主党の造反者と共に、米国議会からは、石油・ガス増産を可能にする法案が次々に出てくると予想される。これには、これまで気候危機を煽りグリーンディールにこだわり続けたバイデン政権もかなりの程度従わざるを得ないのではないか。

すでに、議会の攻勢の第1弾があった。ロシア石油の禁輸は、国内のエネルギー価格上昇を招くだけだといって、バイデン政権は当初は反対していた。だが、超党派で突き上げられて、豹変し、結局はまるで自分たちの手柄の様に禁輸措置を発表した

米国のエネルギー政策が大幅に揺り戻されることは間違いなさそうだ。

米国のグリーンディールとドイツのエネルギーベンデは、戦争という最悪の結果をもたらした。日本もこれを機会に無謀な脱炭素政策を止め、安全保障と経済に軸足を置いて、エネルギー政策を根本から造り変えるべきだ。

【プロフィール】1991年東京大学理学部卒。93年同大学院工学研究科物理工学修了後、電力中央研究所入所。電中研上席研究員などを経て、2017年キヤノングローバル戦略研究所入所。19年から現職。慶應義塾大学大学院特任教授も務める。「脱炭素は嘘だらけ」「15歳からの地球温暖化」など著書多数。

内田社長が異例の5年目へ 東ガス「導管分離」遂行で

東京ガスの社長就任から丸4年がたつ内田高史氏が、来年度も続投する公算が強まっている。同社の社長人事を巡っては、上原英治氏が1999年に就任して以来、2003年就任の市野紀生氏が3年間で退任したことを除けば、鳥原光憲氏06年就任、岡本毅氏10年就任、広瀬道明氏14年就任、そして内田氏が18年就任と、4年交代のサイクルを続けてきた。

そんな経緯があるだけに、内田社長を巡っても22年交代説が業界内外でささやかれており、一部報道では後任候補として副社長の沢田聡氏らを挙げていた。ただ同社関係者によると、「社長交代がある場合、1月下旬前後に発表するのが通例。それがないということは、続投の可能性が高い」。異例の展開になった背景には何があるのか。事情通が言う。

「今年4月から大手都市ガス3社を対象にした導管分離、別会社化がスタートする。この歴史的な経営改革を、現経営陣が責任をもって遂行していくというのが、大きな理由ではないか」

脱炭素化、資源高騰など重要課題が山積する中、現経営陣の改革のかじ取りが注目される。

自動車各社が電動化に本腰 EV普及のカギ握る電源構成

【業界紙の目】村田浩子/日刊自動車新聞社 記者

欧州や中国勢がEVに大きくかじを切る一方、日本勢はハイブリッド車を含む全方位型の姿勢を崩さない。

火力発電への依存度が高い日本では、ライフサイクルアセスメント視点での対応も求められる。

 自動車メーカー各社が相次いで電動化戦略を公表している。

トヨタ自動車は昨年末、2030年にEVの世界販売台数を350万台にすると発表した。従来目標の200万台から150万台を積み上げた形だ。レクサスブランドは30年までに年間100万台をEVとし、35年にはEV専用ブランドとする。

30年までの電池関連投資も従来の1兆5000億円から2兆円に積み増すとともに、電動化の総投資額を8兆円と見積もった。

トヨタはこれまで、EVには後ろ向きと言われることが多かった。自社の強みであるハイブリッド車(HV)を電動車戦略の要とし、燃料電池車(FCV)、EVと、全方位でラインアップを固めており、「EV一本足」からは距離を置いていた。

一方、昨年11月に英国グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)に合わせて環境団体グリーンピースが公表した主要自動車メーカーの脱炭素化の取り組みのランキングではトヨタが最低評価となるなど、世界から厳しい目を向けられていた。

欧州ではメルセデス・ベンツが30年まで、米国ではゼネラル・モーターズ(GM)が35年までにEVなどのゼロエミッション車(ZEV)専業メーカーへの転身を宣言しているのに対し、トヨタはHVの販売終了時期を明かしておらず、それが今回の評価につながったと見られる。

豊田章男社長は、年末の記者会見の場で「これ(新たな目標)で前向きではない会社と言われるなら、どうすれば前向きな会社とご評価いただけるのか、逆に教えていただきたい」と発言し、自社のEV戦略に自信を見せた。

トヨタは2030年350万台のEV販売を目指す

国内30年電動化率9割へ 主軸はEVではなくHV

日系メーカーでいち早くEVシフトを表明したのはホンダだ。40年には新車販売をEVとFCVに絞る。20年には初の量産EV「ホンダe」を投入。得意の軽自動車で培った駆動性能で、小回りの良さを追求した。

乗用EV「リーフ」を他社に先駆けて市場投入した日産自動車は、三菱自動車、ルノーを加えたアライアンスの中で、30年までにEV35車種の投入を目指す。今後5年で電動車開発に230億ユーロ(約3兆円)を投資し、コンパクトカー、軽、低価格車など多様なセグメントでEVをそろえる考えだ。日産単体としては、30年代前半にはグローバルで電動車100%を目標に掲げる。

このほかにも、マツダとダイハツ工業が30年に全ての国内販売を電動車にするほか、スバルはグローバルで30年代前半には全車に電動車技術の搭載を目指している。スズキも30年までに世界で電動車技術の全面展開を見込む。

各社の電動化戦略を踏まえると、現在4割にも満たない国内乗用車市場の電動車比率は、30年には9割近くに達する見通しとなっている。10台に9台が電動車となる計算だ。

一方、EVの販売は1~2割水準にとどまる見通しで「電動化=EV」の構図は30年にはまだ成り立たない様相だ。国内においてはHVが販売の大半を占めている。EVの本格普及には、コストの多くを占める電池の低コスト化と大容量化、さらに小型車や軽自動車への搭載も視野に入れた軽量化が必須となる。航続距離の伸長との両立も求められることになり、一朝一夕では進まないのが実態だ。

欧州などと比べて日本勢のEV化がスローペースなのは、日本独自のエネルギー事情も関係している。火力発電の比率が4割未満で再生可能エネルギーの割合が高い欧州と、火力発電への依存が7割以上で再エネの比率が2割にとどまる日本とでは、再エネを利用するのにかかるコストが大きく異なる。「50年カーボンニュートラル達成」のためには、再エネ比率の拡大が必須となるが、再エネは天候によって発電量が左右されやすく、安定供給の点がネックになっている。初期投資の金額も大きく、そのコストを誰が負担するかも課題になるだろう。

欧州はLCAルール化に着手 日本の事情考慮した戦略を

自動車産業には、ライフサイクルアセスメント(LCA)全体でのCO2の排出削減が求められることになる。LCAとは、製品の生産から輸送、使用、廃棄までを含めた環境評価のこと。EVは走行中こそCO2を排出しないものの、電池やモーターなどを製造する際には大量のCO2を排出する。LCA視点では、EVは「究極のエコカー」とは言い切れないのが現状だ。

このLCAが今後の自動車の環境規制の基準になるとの見方が強い。特に欧州はすでにLCAのルール作りを始めている。再エネ比率が高い欧州が国際基準のルールメイキングの主導権を握れば、日本メーカーにとって不利な内容になる恐れがある。

自動車産業もこのような状況に危機感を強めている。日本自動車工業会(自工会)の豊田会長は「日本らしいカーボンニュートラル実現の道筋がある」とし、欧州に追随するのではなく、日本のエネルギー事情をくんだ政策を打つべきとくぎを刺す。

日本政府が昨秋公開した第六次エネルギー基本計画では、30年の電源構成で再エネの比率を現在の約2倍となる36~38%に引き上げ、石炭火力の比率を従来の26%から19%に引き下げるとしている。しかし、欧州にならって再エネの数字だけを追っていては、実現性は乏しい。

また、この差を10年足らずの期間で縮めるには、イノベーションの創出だけでなく、社会実装も急ぐ必要がある。しかし、多額の費用がかかれば電気料金の上昇に直結し、産業界では製造コストに跳ね返る。これにより価格競争力が弱まれば、輸出で稼いできた自動車を含む日本の製造業の収益構造を揺るがしかねない。

日本のエネルギー事情を踏まえたLCAルールを早急にまとめ、国際市場での議論に加わる必要がある。

〈日刊自動車新聞〉〇1929年創刊〇発行部数:日刊10万2600部〇読者構成:自動車メーカー、部品メーカー、電機メーカー、自動車ディーラーなど

経産省主導のGXリーグ 排出量取引の前哨戦に

CP(カーボンプライシング)の新施策として経済産業省が始める、企業間で自主的に排出量を取引する「GX(グリーントランスフォーメーション)リーグ」の基本構想が明らかになった。2023年春からの本格稼働を前に、経産省が賛同企業の募集を開始。今春以降、賛同者を交え制度設計を進め、秋から実証を始める。既に電源開発などが賛同を表明し、エネルギー企業の関心も高い。

経産省は、将来的には政府による義務的な排出量取引があり得るとの考えで、GXリーグはその前哨戦となる。「CN(カーボンニュートラル)の先行企業の取り組みは、遅れた企業よりも炭素価格が高くなる。その格差を調整することが必要になる」(同省幹部)

参画企業はCNと整合する30年の温暖化ガス削減目標を資本市場に開示し、毎年の進ちょく公表が求められる。国が掲げる30年46%減より高い水準の目標に設定して超過達成した場合は、国がカーボンクレジット化する仕組みだ。未達の場合は、今後創設される取引市場からクレジットを調達できるようにする。クレジット購入は義務化しないが、金融市場などのプレッシャーで取引を活性化させたい考えだ。

水素を可視化する計測技術を開発 火炎も捉え安全な設備運用に貢献

【四国総合研究所】

水素活用に向けインフラや設備の導入が進む中、無臭で着火しやすい性質は取り扱いの課題が多い。

四国総研はガスの計測原理に着目し、独自開発した技術で安全な水素社会の実現をサポートする。

 近年、水素は有望なクリーンエネルギーの一つとして世界的に注目を浴びている。水素はカーボンニュートラルを達成する上で、燃焼時にCO2を排出しないといった特徴が優位な点とされ、生成する方法も多岐にわたる。

水素の特徴を安全運用の観点で見てみると、二つの課題が浮かび上がる。 

一つ目は、水素分子は小さいため、漏えいしやすいガスということだ。水素を取り扱う施設では、天井などに漏えいを検知する警報器を取り付けるなど、万一のガス漏れに備えている。その一方で、仮に警報器が発報しても、警報器がカバーする空間のどこかから水素ガスが漏えいしていることは認知できるものの、無臭でもあるため具体的な漏えい箇所を特定し、広がりを確認することは難しい。漏えい箇所の特定には探査作業が必要になることに加え、作業に長時間を要するなど、安全確保の面での課題が出てくる。

二つ目は、水素の炎は燃焼しても肉眼では見えないという点だ。通常、炎といえば橙色や青色をイメージするが、水素の炎は無色透明だ。そのため水素関連施設では、一般的な火災警報器とは異なる水素専用の火炎検知警報器を設置し、水素火炎の発生を監視している。だが水素漏えいの場合と同様、水素火炎発生の警報器が発報しても炎が目に見えないため、発生箇所が特定できないという問題が起こる。水素に起因する火災が発生した際、その現場において水素火炎が見えないということは、火元の特定や鎮火の確認が難しくなることは想像にたやすい。

四国総研は、これらの課題を解決し、水素エネルギーの安全な利用に資する、光を利用した独自の可視化技術を開発した。

水素ガスを可視化する技術 迅速で安全に漏えいを検知

マルチガスライダーでガスを可視化

ガス分子に光を照射すると、光の散乱が生じる。散乱した光のほとんどは照射された光と同じ色(波長)で発生するが、ごくわずかに異なる色に変化して散乱する光が発生する。これはガス分子と光との間でエネルギーの交換が起こり、その結果として現れる現象で、「ラマン効果」と呼ばれている。ラマン効果によって生じる、異なる色の光は「ラマン散乱光」と呼ばれ、ラマン散乱光の色は分子ごとに固有のものになるため、この現象を利用する。これにより、水素ガスを大気成分などのほかのガスと分離識別することが可能となるのだ。

また、光計測技術の一つとして、「ライダー」と呼ばれる技術がある。これは空間中にパルス状のレーザー光を照射し、対象物から返ってくる光の応答を捉えることで、対象物までの距離と分子種や濃度といった対象物の情報を同時に得ることができる。

四国総研はこのライダー技術とラマン効果を融合し、ライダーの応答としてラマン散乱光を捉える、水素専用のリモートセンシングシステムを開発した。電子アグリ技術部レーザグループの朝日一平副主席研究員は成功までの日々をこう振り返る。「ラマン散乱光は非常に微弱なため、高感度に捉えることに工夫や知恵を絞りました」 この機能を搭載した「マルチガスライダー」は、観測したい空間にレーザー光を照射。レーザービーム上に存在する水素の位置と濃度を同時に遠隔計測することができる。光を用いているため、レーザー照射からラマン散乱を捉えるまでの過程は光速で進行し、応答は速い。また、レーザービームを上下左右の空間に照射して、二次元、三次元空間の水素の存在や分布を計測し、可視化。安全かつ迅速に水素ガスの漏えい検知や漏えい箇所の特定が可能となる。

マルチガスライダーは、水素に限らずさまざまなガス種に適用できる。

火炎の可視化も実現 水素の普及につなげたい

水素火炎は人の目に見えない。これは水素が燃焼しても、人の目が感じることができる色(波長)の領域に光を発していないためだ。しかし、水素火炎は紫外線や赤外線の領域の光は発している。

四国総研は、水素火炎のこれらの目に見えない発光を特殊なカメラで捉え、画像処理を施してモニター上に水素火炎を可視化する装置を開発した。

携帯型水素火炎可視化装置

水素火災の発生時、現場から10m以上離れた安全な場所に、片手で持てる小型で軽量な「携帯型水素火炎可視化装置」を配置する。撮影する空間に水素火炎が存在した場合、水素火炎から生じる近赤外領域の光を選択的に捉える。同時に取得した背景画像との差分を取り、二値化処理を加えて水素火炎領域を顕在化。取得した水素火炎画像のみを再び背景画像と重ね合わせて表示する。これにより、モニター上に動画として水素火炎を可視化することができるのだ。

目で見た水素火炎(上)と可視化装置を通して見た水素火炎(下)

瞬時にその場所と火炎の規模を認識できれば、迅速で安全、合理的な消火活動につながる。

朝日副主席研究員は、「これらの装置が水素エネルギーに対する社会的受容の向上や、普及促進につながることを目指している」と水素社会実現への展望を語った。

安全な水素利用に役立てたいと話す朝日さん

「原発ゼロ」方針変わるか 経団連幹部が公明に要請

カーボンニュートラル社会の実現、電力安定供給リスクの回避、エネルギー価格上昇の抑制という三つの社会要請から、世界的に存在価値が再評価されつつある原子力発電。フランスのマクロン大統領が2月中旬、原発14基の新増設計画を発表したことが、再生可能エネルギー至上主義からの潮目の変化を象徴する。

2011年3月の福島原発事故を経験したわが国も例外ではない。自民党が原子力政策の「復権」に向けて本格的に動き出す中、経団連の十倉雅和会長は2月2日、公明党の山口那津男代表ら幹部と会談し、「再エネが最優先であっても、原子力政策を前に進めることが不可欠だ」と訴えた。原発の増設やリプレースのほか、小型モジュール炉や核融合といった技術開発の必要性も強調したという。

公明党は「原発ゼロ社会の実現」を政策方針に掲げており、政府・与党として原発政策に取り組む際の足並みの乱れが大きな課題となっている。山口代表は、十倉会長らに対し「党内でしっかり議論していきたい」と明言。今夏の参院選に向け、党の方針がどうなるか。要注目だ。

【コラム/3月8日】エネルギー資源価格上昇の経済運営を考える~基本は縮小均衡調整、エネ対策で原子力発電利用拡大が必須

飯倉 穣/エコノミスト

1,新型コロナ感染防止対策の進展(ワクチン接種、治療方法改善等)を背景に、行動制限緩和があり、欧米で景気回復が見られる。回復に伴う需要贈、気候変動対策の影響(投資減)等で、21年下期以降エネルギー資源価格が上昇している。且つロシアのウクライナ侵略の影響も憂慮される。報道は、内外の懸念を伝える。

「米インフレ止まらぬ勢い 消費者物価1月7.5%上昇 高い賃金・原油 見通し押し上げ」 日経22年2月11日、「原油高・見えぬ賃上げ 焦る首相 コロナ禍かじ取り難しく」(朝日同)、「原油100ドルインフレ拍車」(日経2月25日)

米国の消費者物価上昇は、供給サイドの制約に加え、サプライチェーン等の人手不足を契機とする賃上げも目立つ。エネルギー価格上昇、供給制約、デマンドプルの下で、物価見合い賃上げとなれば、インフレ以上にスタグフレーションの足音が忍び寄って来る。

日本の道筋は、視界不良である。資源エネルギー価格上昇、輸入物価、企業物価、消費者物価の動向から、今後の経済運営を考える。

2, 昨年(21年)の輸入額(24%増、財務省貿易統計)は、鉱物性燃料(1.5倍)、原料品(1.5倍)の他、化学製品、原料別製品、電気機器等押し並べて輸入増であった。為替安も一因だが、それ以上に単価の上昇がある。とりわけエネルギー価格は5割以上の値上げである。本年1月も1.8倍の価格上昇(昨年同月比)で輸入額も1.8倍である。

故に輸入物価(指数)は、昨年23%上昇(前年比)している。本年1月は、前年同月比38%アップである。石油・石炭・天然ガス輸入物価上昇が顕著である。

国内企業物価(指数)は、昨年約5%上昇(前年比)で、本年1月は、約9%上昇(前年同月比)である。石油・石炭製品(前年比28%)、木材・木製品(同29%)、鉄鋼(同13%)、非鉄金属(同29%)、化学製品(同9%)等の上昇が顕著である。1月も、石油・石炭製品等の上昇が大きい。

消費者物価(指数)は、昨年通信費下げの特殊事情で△0.2%減である。昨年末から電気・都市ガス等エネルギー料金上昇で1月は約20%上げ(前年同月比)、本年1月の総合指数は0.3%上昇となった。このようなエネ・資源価格高騰による物価上昇を背景に賃金の引き上げが話題になっている。又ガソリン価格高騰で、需要家への支援も昨年後半から始まっている。どう対処すべきか。

3,我が国は、第一次オイルショック時にエネルギー資源価格の上昇に直面した。その経験をまず想起したい。第一オイルショック当時、石油の価格上昇に伴う輸入物価の上昇に加えて、千載一遇のチャンスとばかりドサクサ紛れの価格上乗せで、消費者物価(1974年23.2%増)を異常に押し上げた。そして賃金の高騰(ベア73年20.1%、74年32.9%)を招いた。その当時下村治博士は、原油価格の上昇で輸入物価の高騰はあるものの、消費者物価20%強の上昇は、ほとんどが便乗値上げである(上乗せを除けば本来6%程度)。便乗による物価高騰は、時間がたてば需要縮小で元に戻る。故に賃上げ時期を先延ばし、コストプッシュインフレを回避すべきと指摘した。政府は、この考えに沿って賃上げ交渉時期を繰り延べた。75年消費者物価上昇は平均で11.7%に低下、賃上げも13.1%にとどまった。これが功を奏し、他の欧米諸国が陥ったスタグフレーション突入を回避できた。

4,当時、経済の動きは、原油供給量(輸入量)に合わせた生産水準と原油価格上昇対応に伴う需要縮小等で縮小均衡となり、経済成長率は戦後初のマイナス成長となった。つまり輸入量の制約や輸入物価の上昇、とりわけエネルギー資源価格の上昇は、我国に需給調整能力がないため、甘受せざるを得ない。それが国内物価を上昇させるならば、経済は、縮小均衡調整を余儀なくされる。

今回も同様の対応が賢明であろう。輸入物価・企業物価上昇に伴う消費者物価上昇に合わせた賃金インデクセーションをせず、賃金は、生産性上昇に合わせることが基本である。

また政府施策でガソリン価格高騰対策として元売り事業者に補助金を交付し販売価格を抑制している。野党の石油税のトリガー条項発動要求対応で追加支援策も登場している。ばらまき合戦である。石油需給・価格は、国際市場の視点で考える必要があること、日本は無資源で国際環境適応宿命国であり、価格高騰は需要縮小等で対応せざるを得ないことを踏まえれば、全く不要な政策である。適正な価格転嫁の有無を監視するだけで十分である。

5, 国際的なエネルギー価格の上昇・下落は、需給状況に加え、国際的なカルテル(生産調整)、投資制約、資源国の政治情勢等を背景としている。それに金融投機や地政学リスクが加味されると極端な騰貴を生起する。我国の国際エネルギー市場への関与は、限定的である以上に無力近い。国際エネルギー価格上昇には、当面輸入価格の受容、円滑な価格転嫁、価格上昇に伴う需給調整で対応せざるを得ない。

ここで重要なことは、国内の生産水準維持に必要な量を購入できるという購買力(支払い能力)である。故に経済運営上国際収支とりわけ貿易収支の問題が重要である。貿易赤字に陥らない工夫(一定の黒字確保)がいつも必要である。

その対策として、第一オイルショック後は、短期的には省エネ、生産水準の引き下げ(縮小均衡調整)、中長期的には代替エネルギーの開発,産業構造の転換が解であった。価格効果を前提とする企業行動とその誘導政策である。現在は、化石エネルギー利用の制約問題もあり、原子力発電利用が、益々日本経済運営の鍵となる。その議論が消えていることに問題がある。政治主導思考の限界である。

【プロフィール】経済地域研究所代表。東北大卒。日本開発銀行を経て、日本開発銀行設備投資研究所長、新都市熱供給兼新宿熱供給代表取締役社長、教育環境研究所代表取締役社長などを歴任。

環境価値を付加した多様なサービス カーボンニュートラル実現にまい進

【北陸電力】

地域のカーボンニュートラルをけん引する北陸電力では、多様化・高度化する脱炭素化ニーズに応える。

豊富な水力発電を生かした電気料金メニューの提供や、太陽光・EV関連のサービスを拡充させている。

 北陸電力は、2019年4月に掲げた長期ビジョンの中で、30年度の再生可能エネルギー発電量を18年度対比で約3割(年間20億kW時)増加させる目標を掲げている。大手電力の水力発電比率は約1割程度のところ、北陸電力の水力発電比率は約3割を占め、従来より再エネ比率は高いが、水力発電所の新設やリプレース時の出力増を進めている。「近年、気候変動問題を中心に脱炭素化への関心が高まっており、その中で、当社の強みである水力発電をしっかり生かしていく重要性が増している」と松田光司社長は話す。

この北陸地域の豊富な水資源を生かした、電気料金メニューの一つが「アクアECOプラン」だ。

このプランは、水力発電100%の家庭向けの電気料金メニューとして20年7月に開始したもので、電気料金メニューとして全国で初めてエコマーク認定を取得。再エネ電気を使いたいといった環境に関心の高い顧客のニーズに応えている。

法人向けにも水力発電100%でCO2排出量ゼロの価値を付加したメニュー「グリーン特約(アクアグリーン)」や、富山県営水力発電所から産み出される電気を活用した「とやま水の郷でんき」の提供を開始。「とやま水の郷でんき」は、富山県内の水力発電所で発電された電気を使用していることを示す証明書を交付しており、再エネを地産地消することで企業価値の向上を図りたいといった顧客ニーズに応えている。

RE100に対応した電気料金メニューや、新規の再エネ発電所の開発を組み合わせた電気料金メニューなど、環境価値を付加したメニュー拡充の検討を進め、今年4月から販売を開始する予定だ。「お客さまの脱炭素化ニーズは多様化・高度化している。これらのニーズにしっかり応えることで地域のカーボンニュートラルをリードしていきたい」と営業本部室の森永知範課長は意気込む。

注目が集まる 太陽光第3者所有モデル

北陸電力グループは、カーボンニュートラルの実現に向け、顧客と共に、再エネ電源を開発する取り組みも進めている。

太陽光PPAサービス導入事例(福井鋲螺株式会社)

その一つが、法人・家庭向け、それぞれに実施している太陽光発電設備の第3者所有モデルによるサービス(太陽光PPAサービス)だ。このサービスは、グループの北陸電力ビズ・エナジーソリューション(北電BEST)が顧客の屋根や敷地に太陽光発電設備を設置し、初期投資ゼロで、発電したCO2排出量ゼロの再エネ電気を顧客に使用してもらうもの。設備のメンテナンスもサービス料金に含まれており、顧客は長期間にわたり安心して利用できる。

また、家庭向けの「Easyソーラー」については、10年間の契約期間満了後、太陽光発電設備は無償譲渡されるため、継続して再エネ電気が使用できる。法人・家庭向け共に、サービス開始から多数の問い合わせや申し込みがあり、顧客の注目を集めている。

また、オフサイトでの太陽光PPAサービスも展開しており、福井県坂井市に新設する太陽光発電所の再エネ電気を、今春から北陸地域のセブンイレブン約300店舗へ供給する。

EVの普及促進など 次々と新サービスを展開

至近ではカーボンニュートラルの実現に不可欠となる電化シフトに向け、EV(電気自動車)の普及サービスも展開している。

「EV導入トータルサービス」のイメージ

21年4月に、EVなどのエコカー購入者向けの電気料金割引特約「環境・エコカー割」を開始。同年6月には、家庭向けに「EV充電設備工事サービス」を、同年7月には、自治体や法人向けに、「EV導入トータルサービス」を開始するなど、次々とサービスを打ち出している。「EV導入トータルサービス」は、初期導入費用負担なしでEVが利用可能で、稼働状況を踏まえた所有車両の最適化、専用アプリによる利用者の利便性向上や車両管理業務の効率化を図ることができる。また、EVを蓄電池として活用することにより、顧客の電力需要のシフトや停電時の非常用電源としても利用可能となる。  北陸電力グループは、引き続き顧客の脱炭素化ニーズにしっかりと応えてお役に立てるよう、さまざまなサービスを提案し、顧客や地域のカーボンニュートラルを推進する企業をこれからも目指していく。

北陸電力グループが展開するカーボンニュートラルに向けた各種サービス

【覆面ホンネ座談会】乱開発問題を克服できるか!? 太陽光発電の真価を問う

テーマ:太陽光発電の生きる道

再生可能エネルギーの筆頭格でありながら、悪質事業者による乱開発が絶えない太陽光発電。規制に及び腰の政府や現状認識に欠ける野党、縦割りで連携不足の省庁など太陽光を巡る問題点に加え、地域共生や技術開発など今後の「生きる道」について議論した。

〈出席者〉  A NGO関係者  B太陽光関係者  C元経産官僚

――太陽光発電の乱開発、悪質事業者の問題が全国的に多発する現状をどう見ているか。

A 昨年9月に開かれた内閣府の第15回再エネ規制総点検タスクフォース(再エネTF)の会合で、反対運動を展開するNGOの代表が出席し、当時の規制改革担当相だった河野太郎氏に「悪質事業者が全国で違法伐採を繰り返している」として法改正の必要性を訴えた。これに対し河野氏が「一部の病理的な事象」との認識を示したことには、あきれて言葉もなかったね。そもそも再エネTFは現状認識が正確性に欠け、危機感も弱いことが問題。そうした中、今通常国会では自民党の高市早苗政調会長や公明党の山口那津男代表が、太陽光の乱開発に関する問題提起をしたことで動きは進んできたが、まだまだ認識の低い政治家、官僚の皆さんも多いと思う。

B 2012年から14年ぐらいにFIT(固定価格買い取り制度)で認定された、買い取り価格が高い時代の案件が問題だ。当時は、森林を伐採しても経済的にはペイできたと思うが、今の買い取り価格では伐採開発していたら経済的に合わない。つまり、新規認定の太陽光発電だと乱開発は起こりようがない。自治体側でも条例を整備しており、新規案件は地域と共生するのが大前提。悪質な事業者は厳しく取り締まる一方、真面目に取り組む事業者をサポートする仕組みが必要だ。

C 屋根の上に付ける小口は別として、いわゆるメガソーラーなどの大規模太陽光については、大手エネルギー事業者に集約しインセンティブ規制を作るべきだ。私が知る限りエネルギー系以外では金融屋さんがほとんど。ファンドを組成して、ある程度手数料を得た瞬間に興味がなくなる人たちなので、電気事業の世界にはふさわしくない。既設のものは大手に集約し、新設も大手に限定するような事業許可制を敷くべきだよ。

A 電力は日本経済、国民生活に直結するライフライン。東京電力や関西電力などの大手が国の事業法の下で、その基盤を支えてきた歴史がある。今はFITで金融商品化してチンピラのような企業が雨後のたけのこのように生まれてきて、日本全国で乱開発し地元住民らとトラブルを起こしている。その原因は各種関係法令の違反行為だ。昨年7月に静岡県熱海市で発生した大規模土石流のような災害が全国的に多発する危険が高まっている。地域共生とよく言われるが、その共生が果たせていないから問題が起きるわけだ。

一罰百戒の効果に期待 警察庁との連携も必要

――山口壮環境相は1月25日に埼玉県小川町のメガソーラー計画に対し、「抜本的見直しが必要」とする環境アセスメントに基づく異例の意見を発表した。

B 環境省が科学的根拠に基づいていると考えると、駄目と言われて当然なのだろう。事業者は計画を全面的に見直すか、中止するということになる。法令上の範囲で取り締まられて駄目だと言われたわけなので、事業者としては従うべきだ。全国にどう波及するかは分からないが、法令違反、条例違反になる開発行為はそもそもあってはならない。

C これは、皆さんご存じの通り結構やばい案件だ。産業廃棄物の関係で熱海の盛り土のような問題も絡まって「いくらなんでもこれは駄目だ」と、環境省は厳しいことを言っていた。いくら自然エネルギーとはいえ、やり方が悪ければ、石炭火力の時と同じような環境アセスの意見書が出される。再エネ開発事業者へのある意味、一罰百戒的なものになればいい。今後この手の問題を事前に認識するという点で効果は期待できる。

A 環境省の対応は当然だ。環境省、経産省、林野庁とそれぞれ意見交換する中で感じるのは、関係省庁との連携と言いながら、実はあまりできていないことだ。FITは経産省が始めた事業。もっとリーダーシップを取って、悪質事業者の排除に取り組んでほしい。また再エネ利権を巡っては反社勢力が介在している。その意味では、警察庁とも連携すべきだ。今は無法地帯になっているので、やはり警察庁がこの問題に介入しないと、この再エネ地獄は収まるどころか、まだまだ大きくなって国民が被害を受ける。再エネTFは規制緩和ありきの組織だが、今後は方向性を修正して国民の命と暮らしを守るという視点に立って、再エネ規制改革を推進してもらいたい。

降雨で土砂崩れが発生した山間部の太陽光発電所(茨城県笠間市)

――再エネ開発問題に対する政府の姿勢をどう見ているか。

C 再エネという言葉に幻想を抱いている人が多いよね。30年ぐらい前の原子力や天然ガスと似ているかも。私が若いころ、原子力や天然ガスには魔力があった。つまりは善。今は太陽光、風力が善。EUのタクソノミーやウクライナの危機で、少し見直しの機運が出ているが、再エネの名目が付けば何でも許される風潮は相変わらず。政府も2050年カーボンニュートラルの御旗の下で、再エネ関連の予算や補助事業を展開しているわけだ。その方向修正は容易ではないと思う。

B 私はややCさんと違うかもしれない。太陽光にしても風力にしても、期待し過ぎはもっての外だが、ただ過小評価してもそれはそれで不幸になる。特に太陽光の場合はずっと過小評価されてきた。今でも太陽光に関しては、国内で過小評価されているという認識で、森林開発しなくても、建物の上だとか空き地とか、未利用の土地・場所は日本に数多くある。そこに導入すれば現在の60‌GWの5倍も6倍も入る。コスト的には10円を切る水準になってきたわけだから、この実力を適正に評価して日本のエネルギーの中に組み入れていく方策を考える必要がある。

A 野党が「再エネ100%を目指す」と、実現可能性のない話を平気ですることも問題だよ。国会を見ていても、与党が進めている再エネ政策の問題点を、野党が誰も指摘できない。野党のある党首に、原発の再稼働はやむを得ないという話をしたら「絶対駄目だ」。じゃあ火力を増やすのかと言ったら、「火力も駄目」。それでは日本のエネルギー供給を支えられないと言ったら「そんなこと言っても、駄目なものは駄目」と、全く議論にならない。こんな政治家が国会の中で一定の規模の活動をしていると思うと悲しくなる。エネルギー問題はヒステリックに議論するのではなく、冷静にベストミックスの解を見つけていくという姿勢が極めて大事だね。

原子力復権へ動く自民議連 再エネ議連との攻防も?

自民党が原子力政策の「復権」に向けて動き出した。欧州での原子力再評価など、状況の変化を受けて、議員連盟などが原子力の規制政策やリプレースなどの提言を活発に行う構えだ。

原子力で国民の支持は得られるか

「突破力があるとして会長に選ばれた。状況を変えたい」。稲田朋美衆議院議員は1月の民間団体のシンポジウムで、自身が会長を務める「最新型原子力リプレース推進議員連盟」の活動に意欲を見せた。同議連は安倍晋三元首相ら大物議員を顧問に据え、昨年春に発足。エネルギー問題に取り組む議員の世代交代が進みつつあり、「滝波宏文参院議員や石川昭政衆院議員ら50歳前後で実務が分かり、弁の立つ議員が中心」(関係筋)とされる。

自民党内には「電力安定供給推進議員連盟」、党組織としての「自民党原子力規制に関する特別委員会」がある。参加する有力議員が重複しているため「活動を融合させて、さらに発信力を強化していく」(前出関係筋)動きも。

これと一線を画すのが、脱原発派の河野太郎前行政改革相や小泉進次郎前環境相が加わる再エネ普及拡大議員連盟だ。こちらも洋上風力落札問題などで再び存在感を高めている。今後、原発を巡る党内の攻防が激しさを増しそうだ。

【マーケット情報/3月4日】原油急伸、供給不安一段と強まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み急伸。対ロシア経済制裁が強化される可能性が出てきたことで、供給不安が一段と強まった。

米国原油の指標となるWTI先物は4日時点で、前週から24.09ドル上昇して115.68ドルとなり、2008年9月下旬以来の最高を記録した。北海原油を代表するブレント先物も20.18ドル高で118.11ドルを付け、2013年中旬以来の最高値となった。また、中東原油の指標となるドバイ現物も、3日時点で112.66ドルの上昇となり、2014年6月末以来の最高となった。

米国と欧州連合は、ロシア産原油の出荷に対して直接、制裁を加えることを検討。ウクライナでの戦闘が依然激化しており、ロシアに対してさらに圧力をかける必要があるとしている。これにより、供給が逼迫するとの懸念が一段と強まり、価格を押し上げた。

また、OPECプラスは4月、当初の計画通り日量40万バレルの増産で合意。ロシアのウクライナ侵攻にともなう需給逼迫感に関する言及はなかった。

一方、米国、日本、韓国など国際エネルギー機関の加盟国は、合計6,000万バレルの戦略備蓄の放出を決定。そのうち半分は米国が供給する計画だ。また、米国政府は、国内生産者に増産を呼び掛けている。ただ、いずれも価格上昇を抑制するには至らなかった。

【3月4日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=115.68ドル(前週比24.09ドル高)、ブレント先物(ICE)=118.11ドル(前週比20.18ドル高)、オマーン先物(DME)=108.87ドル(前週比16.19ドル高)、ドバイ現物(Argus)=109.22ドル(前週比12.36ドル高)

選手村の給湯器が全国へ 品薄状況改善に期待

全国的なガス給湯器の品薄に対応するため、2月上旬、東京五輪・パラリンピックの選手村から取り外される給湯器約1400台のうち第一弾として300台余りが、全国の都市ガス会社に届けられた。故障しているにもかかわらず、買い替えや修理ができない家庭に順次貸し出される。

選手村から運び出される給湯器

この問題は、電子部品の世界的切迫に追い打ちをかけるように、主要生産国の一つであるベトナムが新型コロナウイルスの感染対策によりロックダウンを実施し、半導体やハーネスなどの生産が停止、供給が不足したことに端を発する。

ガス会社は機器の貸し出しなどで対応してきたが、設置するまでに2~3カ月待ちを強いられるケースも。給湯器メーカーによる調達の工夫や現地での生産再開などにより、状況は改善傾向にあるものの、「全ての需要を賄いきれる水準まで回復する見通しが立っていない」(都市ガス業界関係者)のが実情だ。

メーカー関係者は、「今後、調達先の一層の多様化や、調達しやすい仕様への変更を進めていくが、これまでの在庫最適化の前提条件を見直しサプライチェーンを再構築する必要があるのかもしれない」といい、混乱終息後も難しい課題に直面することになりそうだ。

【イニシャルニュース】 和歌山製油所閉鎖の影に 二階氏の影響力低下も

 和歌山製油所閉鎖の影に 二階氏の影響力低下も

「こつこつと必死で努力して企業誘致を成功させ、何十人単位で新しい雇用をいくつも積み重ねてきたのが、いっぺんに吹き飛ぶような大打撃」

和歌山県の仁坂吉伸知事が1月29日に危機感あらわのコメントを発表した、ENEOSホールディングスによる和歌山製油所(有田市)の閉鎖問題。1941年、当時の東亜燃料工業和歌山工場として操業を開始し、和歌山経済の一翼を担ってきた古い歴史を持つ製油所だけに、仁坂知事は「次の展望も示さず閉めるというのは、地元に死ねというのと同じ」「地元に相談もなく、一方的に製油所機能の停止を決定するやり方は大変遺憾だ」などと怒り心頭の様子だ。

とはいえ、同製油所を巡っては、2010年代に入り石油元売り再編が加速する中で、事あるごとに閉鎖がささやかれてきた。経緯を知る業界関係者の間では「既定路線」(元売り関係者)と見る向きも。それが、ここにきて来年10月の閉鎖発表に踏み切ったのは、なぜなのか。エネルギー関係の有力学識者K氏は「地元で圧倒的な政治力を保持してきた二階俊博・元自民党幹事長の影響力低下が関係しているのではないか」と指摘する。

製油所は地元経済の一翼を担ってきた

昨年10月の岸田政権発足を受け、自民党の中枢から姿を消す形となった二階氏。最近は表舞台に顔を出す機会も少なくなった。一部報道などでは、二階氏の公設秘書を務める三男、伸康氏への世代交代が取りざたされている。

二階氏といえば2000年代半ばの経済産業相時代、和歌山県の関西電力・御坊発電所近隣に「日高港新エネルギーパーク」が鳴り物入りで開設されたのは、知る人ぞ知る話。「今や閑古鳥が鳴いている」(地元関係者)そうだが、こちらも世代交代の影響を受けるのか、どうか。

洋上風力の落札失敗組 再エネ系議員に接近

三菱商事グループの洋上風力3地点総取りという入札結果の波紋は収まる気配がない。第2ラウンドとなる秋田県八峰町・能代市沖については、昨年末から公募がスタート。三菱陣営はこの案件にも応募する意向で、今度はどの程度のFIT価格をつけるのか、注目が集まっている。

そうした中、今回落札できなかった事業者の一部が、自民党の再生可能エネルギー系議員にすり寄る動きを見せている。三菱陣営の他社を寄せ付けない価格の実現可能性や、価格重視の採点配分への疑問、さらには入札のやり直しまで訴えているようだ。

議員側も、こうした意見に同調する様子を見せる。重鎮議員S氏は、資源エネルギー庁に対し、「今回の結果には納得がいかない」と不満をぶつけたという。また、党の再エネ普及拡大議員連盟は、非公開の会合で入札結果についてヒアリングを実施し、採点配分の見直しを求める意見も挙がった。いずれも現岸田政権で概ね冷や飯を食わされている人々だ。

本来は再エネコストが下がることは国民にとって望ましいこと。先述の議員らもかつては「再エネは安く買えるようになってきた」などとメリットを強調していたのだから、むしろ洋上風力の「価格破壊」を歓迎してもおかしくはないのだが……。

発電と消費は等価? M教授発言が物議

「あれは単に論理をすり替えて、現状の問題の根本をごまかそうとしているだけだ。第一、デマンド・レスポンス(DR)事業者がどれだか苦労して需要側を束ね、調整力を供出しているか、現実が見えてるのか」

こう、学識者N氏が憤るのは、1月25日に開催された経済産業省の有識者会合「電力・ガス基本政策小委員会」におけるM教授の発言に対してだ。M教授は、直近の電力需給と卸電力の動向について意見を求められ、「電力システム改革のひとつの大きなポイントとして、電力の発電と消費は等価だということを貫徹させていくことがあった。つまり、供給量を1単位増やすことと需要を1単位減らすことは、安定供給の観点から見ても等価なはずだ」と述べた。

これについて大手電力関係者のS氏も、「電気自動車(EV)や給湯器などを自動制御することにより、需要をコントロールできるという考えは一見まともなようだが、需要家は機器を使った結果としてエネルギーを消費するのであって、例えばテレビを見たいのに、エネルギー消費を抑えるために見ないという選択をするわけがない。M教授の主張は現実的ではないよ」と切り捨てる。

電力システム改革の進展により、発電所建設の投資回収の予見性が低下し将来の安定供給確保への不安は高まるばかり。経産省も、大手電力会社が余剰電力を市場に供出する際の「限界費用」に、一定の条件下でLNGスポット価格を反映することを容認するなど、これまで「システムの歪み」のしわ寄せを受けていた発電側にお金が回るような政策へとかじを切りつつある。

電力業界関係者の中には、予見性低下の責任の一端はM教授にあると考える人も一定数いて、それにもかかわらずさらに発電の「価値」を下げるような言動を繰り広げることに、「ありもしないものを使って大手電力会社を悪者にし、電力システム改革の失敗をなすりつけようとしているのではないか」と危惧する声も聞こえてくる。

将来の安定供給確保にどのような手を打つべきなのか。現実に即した議論を求めたい。

早くも「敗戦」ムード 自民・青森県連の憂うつ

7月に行われる参議院選挙。青森県の自民党関係者は、「今回は不戦敗」とささやいている。自民党は公募による候補者選びを行い、伊吹文明元衆議院議長の秘書、其田寿一氏と県議の斉藤直飛人氏が立候補。一方、立憲民主党は現職の田名部匡代氏が出馬を表明している。

田名部氏は、農林水産相を務めた田名部匡省氏の次女。衆院当選3回を経て参院に転じ、再選を目指す。2世議員として県内では知名度が高く、「当選は間違いない」(事情通)と見られている。

自民党関係者の一部は、早くから田名部氏に勝てる候補を探していた。白羽の矢が当たったのは、青森県S町のY町長。曾祖父から3代にわたり国会議員を務めた家系で、17年から県内初の女性首長としてS町長に就任している。父親の元参院議員が昨年病没したためとむらい合戦にもなる。「Y氏なら勝てる」。こういう声が高まっていた。

しかし、S町のY氏支持者が「町長に就任してまだ4年。国会議員への転出などとんでもない」と猛反発。「出馬を促す声は強く、Y氏はぎりぎりまで考えたが断念した」(同)。この時点で、自民党にとって今夏の参院選は事実上、「不戦敗」になった。

県連関係者の間では、敗戦を見越して責任者探しが始まっている。候補者の調整に当たったのは、O元衆院議長とT参院議員。O氏は政界から引退しているため、「T氏の責任が追及されるのでは」(同)といわれている。

核燃サイクルに黄信号!? 規制委員長にY氏浮上

「核燃サイクルは大丈夫か」。今年行われる原子力規制委員会の人事を巡り、原子力業界関係者がこう漏らしている。更田豊志委員長の後任として名前が浮上しているのが、規制行政の事務方トップを務めたY氏。経産省に在籍時から規制行政に携わり、原子力発電についての知識は折り紙付き。福島第一原発事故の際、当時の原子力安全・保安院幹部の説明下手に政権首脳は業を煮やしたが、Y氏が官邸に駆け付け詳しく解説すると、すぐさま納得したという逸話がある。

ただ、業界関係者にとっての懸念は、Y氏の核燃料サイクルについての「前歴」だ。03年ころ原子力業界を騒然とさせた「19兆円の請求書」。膨大な額の費用負担から、核燃サイクルからの撤退を求めたものだ。執筆者は3人の経産官僚とされるが、「当時、エネ庁担当課長だったY氏の了解の下で作成した」(業界関係者)といわれている。六ヶ所再処理工場はいま、規制委の審査に苦労しており、「Y委員長となったら、稼働後も厳しい指摘を受けるかもしれない」(同)。

もっとも次期委員長には、更田氏の再任説や委員の昇任説も流れている。核燃サイクルは今後、どうなることか。関係者の心配は尽きない。

規制委の核燃サイクルへの対応はどうなる

明暗分けるメガソーラー 大手参入も乱開発は「待った!」

メガソーラーの自立化と事業規律強化に向けた動きが、官民で加速している。

乱開発が横行する太陽光ビジネスが転換期を迎えつつある

2月上旬、国内太陽光発電事業には未参入だったJERAが、太陽光開発大手のウエストホールディングス(HD)と業務提携すると発表した。脱炭素化の実現には工期の短い太陽光の活用が必須だと判断。JERAがウエストHDに資本参画し、ウエストHDはJERA向け案件を優先開発する。想定規模は2026年度に110万kWで、実現すればJERAは国内最大手の太陽光発電事業者になる見込み。環境に配慮し小規模事業も積み重ねる方針だ。

設備はJERAが所有し、非FIT(固定価格買い取り制度)型の電力販売を検討している。太陽光だけの電力は当然ながら、夜間も供給できるよう「ガス火力と太陽光を組み合わせた形で電力を売る計画もある」(矢島聡・JERA事業開発本部副本部長)。実証中のゼロエミ火力の将来的な活用も視野に入れ、新たな事業モデル確立を目指す。

他方、乱開発への政府対応も強化され始めた。環境省が1月下旬、埼玉県小川町の計画(3万9600kW)に対し、事業の再検討を含めた抜本見直しを求めた。必然性が不明瞭な大量の土砂搬入、大規模森林伐採や土地改変などの影響を懸念した。メガソーラーへの環境アセスメント義務化は20年4月からで、こうした厳しい環境大臣意見が示されるのは初めて。

山口壯環境相は会見で「環境配慮が不十分な事業には今後も厳しい態度で臨み、地域と共生する再エネの導入を促進していきたい」と強調した。長らく続いた不適切太陽光の野放し状態に、ようやくメスが入ろうとしている。

九州から日本の脱炭素をけん引 カーボンマイナスの実現を目指して

【九州電力】

九電グループは、カーボンニュートラルの実現に向けたアクションプランを策定した。

需要側と供給側の双方の取り組みを通じて、九州から未来を創ろうと動き出している

 2021年4月に「九電グループカーボンニュートラルビジョン2050」を策定した九州電力は、同年11月、「九電グループカーボンニュートラルの実現に向けたアクションプラン」を発表した。この中では30年の環境目標を大きく上方修正した。

従前の目標は、九州のCO2削減必要量3800万tの70%、2600万t(九電の排出量の50%相当)を削減するとしていたが、カーボンニュートラル(CN)の実現に向けてさらなる高みを目指し、エネルギーの供給側・需要側の双方で目標を設定。

供給側の目標は、サプライチェーン全体のGHG(温室効果ガス)排出量(スコープ1+2+3)を13年度比で60%削減することだ。このうち国内事業では65%削減するとしており、これは政府が21年に示した目標である46%削減を大きく上回る。

需要側の目標については、九州の電化率向上への貢献を掲げる。50年の家庭部門・業務部門の電化率100%を目指し、30年の家庭部門70%、業務部門60%の実現に貢献する(13年時の実績は家庭部門58%、業務部門48%)。

供給側のGHG排出削減と、需要側のGHG排出削減への“貢献”といった双方の取り組みにより、グループの事業活動におけるGHG排出量を実質マイナスにする「カーボンマイナス」を50年よりできるだけ早期に実現したいとしている。

2030年の経営目標(環境目標)

ポテンシャルを生かす 供給側と需要側の取り組み

供給側の具体的な取り組みとして、①再エネ+蓄電、②原子力、③火力+新技術など―の活用を掲げる。

①は、21年11月末現在で国内外に247万kWある再エネ開発量を、30年には500万kWまで拡大することを目指す。この想定電力量は九州の全世帯数の約7割に相当する。九電グループの強みである地熱や水力の開発に加え、導入ポテンシャルが大きい洋上風力やバイオマスなどについても積極的に取り組み、再エネの主力電源化を推進する。また、世界最大級の大容量蓄電システムを備えた豊前蓄電池変電所などを活用し、再エネを最大限受け入れながら、電力の安定供給を達成する。

②は、安全性の確保を大前提に、現在稼働中の玄海・川内原子力発電所を最大限活用する。また、設備利用率の向上に向けた検討を早期に本格化する計画だ。

③は、再エネの導入拡大への対応と電力の安定供給に大きく貢献する火力発電について、高効率化など低炭素化に向けた取り組みを推進する。非効率石炭火力については国のエネルギー政策を踏まえつつ、電力安定供給やエネルギーコストの観点、立地地域の事情などを勘案しながら30年までのフェードアウトを目指す。燃焼時にCO2が発生しない水素やアンモニアの混焼、CO2回収技術の適用検討などにも取り組む。

需要側については、九電グループのリソースを活用し、電化のポテンシャルが大きい九州エリアを中心に最大限の電化に挑戦する。

家庭・業務部門の電化では、家庭部門については住宅関連事業者との連携強化などにより、オール電化を推進していく。

業務部門については設備の運用状況やエネルギーの使用状況に基づき、エネルギー効率が高いヒートポンプ(HP)システムを提案するなど、空調・給湯・厨房設備の電化を推進する。

産業部門でもHPなど熱源転換機器の技術研究を行い、生産工程における温水や蒸気、加熱といった幅広い温度帯の熱需要に対する電化に挑戦する。

運輸部門では、30年に特殊車両を除く社有車の100%EV化を目指す。EVの普及促進に向けて、シェアリングサービスや充電インフラの拡大、EVを活用したエネルギーマネジメントなどのサービスも提供していく。

供給側と需要側をつなぐ送配電ネットワークについても、国のマスタープランを踏まえた連系線・基幹系統の整備や強化、送電容量の最大限の活用などを行い、送配電ネットワークの広域的な運用に取り組む。

デジタル技術を活用し、需給運用や系統安定化技術の高度化も推進する。

九電の目指すゴール

地域・社会の課題解決に貢献 ゼロカーボン社会を共創

21年11月末現在、九電は九州の11の自治体とエネルギー分野の連携協定を結んでいる。具体的には、地域のCN推進やレジリエンス強化などのニーズに対して、再エネ電力の供給や省エネ、電化を中心としたエネルギーシフトの推進など、トータルソリューションを提供する。

また、自治体などが所有する森林からのJ—クレジット創出支援や、創出したクレジットの活用による、CO2排出ゼロが困難な排出源のカーボンオフセットにも取り組む。

低・脱炭素の業界トップランナーとして、政府の目標を大きく上回るGHG排出削減に取り組むとともに、社会のCN実現に大きく貢献し、カーボンマイナスを50年よりできるだけ早期に実現させるべく策定したアクションプラン。

九電グループは、地域と共に「九州から未来を創る」ことを目指し、持続可能な社会の実現に向けさらなる進化に挑戦する。