山間部などにおける太陽光発電所の乱開発を巡るトラブルが後を絶たない。一部では反社勢力の影も。
自治体は独自の太陽光条例を制定するなど、規制強化に向けた動きを加速させ始めている。
某県某市の山間部メガソーラーの建設現場。発電所の開発を手掛けている中堅デベロッパーA社の下請け工事会社が、産業廃棄物の不法投棄やずさんな施工を行っていた問題が明るみに出た。消息筋によると、A社は地元住民とのトラブルが絶えない悪質事業者として知られ、反社会的勢力とのつながりが浮上している。何らかの資金が裏社会に流れているのか。建設反対運動を展開するNPOでは、県庁や県警本部などと連絡を取り合いながら、実態の解明を慎重に進めているという。
「FIT(固定価格買い取り制度)に基づく長期安定収入が見込める太陽光事業は、反社にとっても実にうまみのあるビジネスと言っていい。産廃事業の延長線で手掛けることができる上、国のお墨付きを得た『環境貢献』という大義があるので、世間の理解を得やすいメリットもある。資金源の一つになっていても不思議ではない」(元警察暴力団対策関係者)
太陽光の乱開発は年々深刻化している。例えば奈良県平群町では、メガソーラー建設のため山林を伐採して盛り土を造成している土の中から、コンクリート片やガラス片の産業廃棄物が見つかった。災害の誘発を心配する住民側は昨年3月、工事の差し止めを求めて奈良地裁に提訴し係争中だ。7月3日に静岡県熱海市で盛り土崩壊による土石流災害が発生したことも、地元の不安に拍車を掛ける。
愛知県南知多町では、名古屋市内の事業者が太陽光建設のため広範囲の山林を切り崩した。その際、樹木の無断伐採や町道の損傷などが多数確認され、河川への土砂流入なども懸念される事態に。事業者側は「誤伐採」「業務指示の間違い」などと釈明しているが、町の届け出に不備があったことや低圧分割案件として規制を逃れていたことなどが判明し、住民側の不信感は募るばかりだ。
岩手県遠野市、宮城県丸森町、栃木県那須塩原市、茨城県笠間市、埼玉県小川町、山梨県甲斐市、静岡県伊東市、同函南町、長野県諏訪市、兵庫県宝塚市、岡山県岡山市、長崎県佐世保市―。メディア報道を見るだけでも、太陽光反対運動が盛り上がっている地域は、枚挙にいとまがないほどだ。
全国175自治体が条例 実効性には疑問の声も
こうした中、乱開発に「待った」をかける自治体が続々と登場し始めている。地方自治研究機構の調べによると、太陽光など再生可能エネルギー設備の設置を規制する単独条例は、大分県由布市が2014年1月29日に施行したのを皮切りに増え始め、令和時代に入ると加速。昨年末現在、都道府県が5条例(表参照)、市町村が170条例となっている。関係者によれば、今春には宮城県が太陽光条例を策定する見通し。それでも全国47都道府県・1718市町村という分母を踏まえると、9割近くが未対応の状況だ。
太陽光発電の導入・設置に関わる法令は、国土利用計画法、都市計画法、農地法、海岸法、森林法、河川法、道路法、工場立地法、土壌汚染対策法、環境影響評価法、自然公園法、砂防法、FIT法など多岐にわたる。開発規制を抜本強化するには国家レベルの関与が不可欠なだけに、自治体条例にどれほどの実効性があるのか、疑問視する向きも少なくない。
実際、19年6月に再エネ条例を制定した函南町では、メガソーラー計画の事業地が条例の「抑制区域」に位置し、町長が不同意を示しているにもかかわらず、事業者側は計画を継続中。また伊東市では、地元住民の反対を理由に太陽光設置工事のための河川占用申請を却下された事業者が、太陽光条例に基づく市長の同意を受ける義務がないことなどの確認を求める訴えを静岡地裁に起こした。
「確かに条例の効力は弱いとの見方もあるが、重要なのは、自治体の首長が太陽光乱開発は絶対許さないという強い姿勢を対外的に示し、対策を打ち出すことだ。これが住民を勇気付け、国を動かす原動力になる。その意味で、山梨県の長崎(幸太郎)知事の動きは素晴らしい。わが県の川勝(平太)知事もぜひ見習ってほしい」(静岡県の太陽光反対運動関係者)
〝環境犯罪〟と化す乱開発 「法的措置も辞さず」
昨年10月に太陽光条例を施行した山梨県。長崎知事は本誌1月号のインタビューで次のように述べている。「この条例に違反した建設に関しては法的措置も辞さない毅然とした態度で臨みます。最高裁まで徹底的にやり合う覚悟です。そういった事態も想定して条例は入念に設計しています」

太陽光が長期安定収入をもたらす金融商品と化した現状に着目し、国に対しFIT認定の取り消しを求めることができるようにした同条例。制定以来、他県からの問い合わせが相次いでいるという。裏を返せば、FIT利権に群がる悪質事業者が全国的に急増していることの証左だろう。
話題はそれるが、環境犯罪に立ち向かう警察関係者の孤軍奮闘を描いた『潜入捜査』シリーズの著者、今野敏氏は『終極』(実業之日本社文庫)の巻末インタビューで、興味深い見解を示している。
〈当時、環境問題と反原発というのは非常に結びついていたんです。私自身も関心がありましたし、それで調べていくうちに環境破壊はそれ自体が犯罪であるという発想が生まれてきた。環境を破壊するような犯罪行為、例えば産業廃棄物の不法投棄だとか違法な森林伐採、野生動植物の不法取引など、そういう犯罪が全国で頻繁に起こっていることも分かってきた。しかもこれらの犯罪は、暴力団の手を借りることで地下に潜って反社会化し、巨悪化している部分もある。(原文ママ)〉
今からおよそ30年前に同シリーズの第一作が世に出たことを考えると、卓見というほかない。
「脱炭素」花盛りの時代、再エネを舞台に環境犯罪が繰り広げられているとすれば、国は「一部の病理的な事象」(河野太郎・前規制改革担当相)として片付けている場合ではない。今こそ乱開発の撲滅に向けた強いメッセージを国民に対し発信すべきだ。悪質事業者を本気で排除しなければ、取り返しのつかない事態になろう。






