自治体で相次ぐ太陽光条例 深刻化する乱開発に反社の影

山間部などにおける太陽光発電所の乱開発を巡るトラブルが後を絶たない。一部では反社勢力の影も。

自治体は独自の太陽光条例を制定するなど、規制強化に向けた動きを加速させ始めている。

某県某市の山間部メガソーラーの建設現場。発電所の開発を手掛けている中堅デベロッパーA社の下請け工事会社が、産業廃棄物の不法投棄やずさんな施工を行っていた問題が明るみに出た。消息筋によると、A社は地元住民とのトラブルが絶えない悪質事業者として知られ、反社会的勢力とのつながりが浮上している。何らかの資金が裏社会に流れているのか。建設反対運動を展開するNPOでは、県庁や県警本部などと連絡を取り合いながら、実態の解明を慎重に進めているという。

「FIT(固定価格買い取り制度)に基づく長期安定収入が見込める太陽光事業は、反社にとっても実にうまみのあるビジネスと言っていい。産廃事業の延長線で手掛けることができる上、国のお墨付きを得た『環境貢献』という大義があるので、世間の理解を得やすいメリットもある。資金源の一つになっていても不思議ではない」(元警察暴力団対策関係者)

太陽光の乱開発は年々深刻化している。例えば奈良県平群町では、メガソーラー建設のため山林を伐採して盛り土を造成している土の中から、コンクリート片やガラス片の産業廃棄物が見つかった。災害の誘発を心配する住民側は昨年3月、工事の差し止めを求めて奈良地裁に提訴し係争中だ。7月3日に静岡県熱海市で盛り土崩壊による土石流災害が発生したことも、地元の不安に拍車を掛ける。

愛知県南知多町では、名古屋市内の事業者が太陽光建設のため広範囲の山林を切り崩した。その際、樹木の無断伐採や町道の損傷などが多数確認され、河川への土砂流入なども懸念される事態に。事業者側は「誤伐採」「業務指示の間違い」などと釈明しているが、町の届け出に不備があったことや低圧分割案件として規制を逃れていたことなどが判明し、住民側の不信感は募るばかりだ。

岩手県遠野市、宮城県丸森町、栃木県那須塩原市、茨城県笠間市、埼玉県小川町、山梨県甲斐市、静岡県伊東市、同函南町、長野県諏訪市、兵庫県宝塚市、岡山県岡山市、長崎県佐世保市―。メディア報道を見るだけでも、太陽光反対運動が盛り上がっている地域は、枚挙にいとまがないほどだ。

全国175自治体が条例 実効性には疑問の声も

こうした中、乱開発に「待った」をかける自治体が続々と登場し始めている。地方自治研究機構の調べによると、太陽光など再生可能エネルギー設備の設置を規制する単独条例は、大分県由布市が2014年1月29日に施行したのを皮切りに増え始め、令和時代に入ると加速。昨年末現在、都道府県が5条例(表参照)、市町村が170条例となっている。関係者によれば、今春には宮城県が太陽光条例を策定する見通し。それでも全国47都道府県・1718市町村という分母を踏まえると、9割近くが未対応の状況だ。

太陽光発電の導入・設置に関わる法令は、国土利用計画法、都市計画法、農地法、海岸法、森林法、河川法、道路法、工場立地法、土壌汚染対策法、環境影響評価法、自然公園法、砂防法、FIT法など多岐にわたる。開発規制を抜本強化するには国家レベルの関与が不可欠なだけに、自治体条例にどれほどの実効性があるのか、疑問視する向きも少なくない。

実際、19年6月に再エネ条例を制定した函南町では、メガソーラー計画の事業地が条例の「抑制区域」に位置し、町長が不同意を示しているにもかかわらず、事業者側は計画を継続中。また伊東市では、地元住民の反対を理由に太陽光設置工事のための河川占用申請を却下された事業者が、太陽光条例に基づく市長の同意を受ける義務がないことなどの確認を求める訴えを静岡地裁に起こした。

「確かに条例の効力は弱いとの見方もあるが、重要なのは、自治体の首長が太陽光乱開発は絶対許さないという強い姿勢を対外的に示し、対策を打ち出すことだ。これが住民を勇気付け、国を動かす原動力になる。その意味で、山梨県の長崎(幸太郎)知事の動きは素晴らしい。わが県の川勝(平太)知事もぜひ見習ってほしい」(静岡県の太陽光反対運動関係者)

〝環境犯罪〟と化す乱開発 「法的措置も辞さず」

昨年10月に太陽光条例を施行した山梨県。長崎知事は本誌1月号のインタビューで次のように述べている。「この条例に違反した建設に関しては法的措置も辞さない毅然とした態度で臨みます。最高裁まで徹底的にやり合う覚悟です。そういった事態も想定して条例は入念に設計しています」

都道府県の太陽光条例制定の状況

太陽光が長期安定収入をもたらす金融商品と化した現状に着目し、国に対しFIT認定の取り消しを求めることができるようにした同条例。制定以来、他県からの問い合わせが相次いでいるという。裏を返せば、FIT利権に群がる悪質事業者が全国的に急増していることの証左だろう。

話題はそれるが、環境犯罪に立ち向かう警察関係者の孤軍奮闘を描いた『潜入捜査』シリーズの著者、今野敏氏は『終極』(実業之日本社文庫)の巻末インタビューで、興味深い見解を示している。

〈当時、環境問題と反原発というのは非常に結びついていたんです。私自身も関心がありましたし、それで調べていくうちに環境破壊はそれ自体が犯罪であるという発想が生まれてきた。環境を破壊するような犯罪行為、例えば産業廃棄物の不法投棄だとか違法な森林伐採、野生動植物の不法取引など、そういう犯罪が全国で頻繁に起こっていることも分かってきた。しかもこれらの犯罪は、暴力団の手を借りることで地下に潜って反社会化し、巨悪化している部分もある。(原文ママ)〉

今からおよそ30年前に同シリーズの第一作が世に出たことを考えると、卓見というほかない。

「脱炭素」花盛りの時代、再エネを舞台に環境犯罪が繰り広げられているとすれば、国は「一部の病理的な事象」(河野太郎・前規制改革担当相)として片付けている場合ではない。今こそ乱開発の撲滅に向けた強いメッセージを国民に対し発信すべきだ。悪質事業者を本気で排除しなければ、取り返しのつかない事態になろう。

三菱商事が洋上風力総取り 戦略的安値入札の衝撃

クリスマスイブに衝撃ニュースがエネルギー業界を駆け巡った。経済産業省と国土交通省は、公募していた洋上風力3地点の事業者にいずれも三菱商事グループを選んだ。決め手は破格のFIT(固定価格買い取り制度)価格だ。最安値の秋田県由利本荘市沖では1kW時11・99円、ほか2地点でも他社を寄せ付けない価格で入札し、価格点の評価はいずれも120点満点だった。

三菱商事グループが総取りした事業の実現可能性は(写真は秋田県能代市)

入札上限価格はIRR(内部収益率)10%を前提に同29円に設定していた。「結果は上限の半分以下で、陸上風力の買取価格よりも安い。3地点総取りを前提とした戦略的な値段設定だ」(風力業界関係者)

裏にはいくつかのポイントがある。例えば風車はいずれもGE製1万2600kWで、3地点で計134基を採用する。GEには欧州風力市場のシェア伸び悩みの事情もあり、破格の値段で交渉されたもようだ。「海外でも導入実績のない大型設備を、波が激しい日本海にいきなり使うのは相当勇気のいる決断」(同)と言える。

Amazon、NTTアノードエナジー、キリンが「協力企業」として名を連ねる点も要注目だ。PPA(電力販売契約)などで環境価値を数円上乗せして売電する戦略ではないかとみられている。

ただ、「国内ゼネコンなどのSEP(自己昇降式作業台)船ではこの発電単価は無理。うまくいかなければ事業を売却する可能性も。その際に地元対策などが継続されるか注意が必要」(同)など、産業化の観点での不安材料もある。

いずれにせよ今回の結果がベンチマークとなることは間違いない。経産省が思い描く洋上風力産業化の行方やいかに。

キシダノミクス「一番地」へ CE戦略に有力経産OBの影

 岸田文雄政権が新しい資本主義政策の柱に位置付けている「クリーンエネルギー(CE)戦略」の議論が、官邸主導の色合いを強めている。

官邸で開かれたクリーンエネルギー戦略の有識者会合であいさつする岸田首相(1月18日)

岸田首相は1月4日の年頭記者会見で、新資本主義の取り組みとして「スタートアップ創出」「デジタル田園都市構想」と並べる形で「気候変動問題への対応」を挙げ、「CE戦略を議論する会議に私自身が出席し、炭素中立型に経済社会全体を変革していくために、関係各省で総力を挙げて取り組むよう指示を行うことにした」と意気込みを見せた。

これを受け18日には首相官邸で、CE戦略に関する有識者懇談会を開催。会合に出席した岸田首相は、「資本主義の負の側面が凝縮しているのが気候変動問題であり、新しい資本主義の実現によって克服すべき最大の課題」「カーボンニュートラル(CN)分野への投資を早急に、少なくとも倍増させ、新しい時代の成長を生み出すエンジンとしていく」「CE戦略では、どのような分野で、いつまでに、どういう仕掛けで、どれくらいの投資を引き出すのか。経済社会変革の道筋の全体像を示したい」などと強調した。

第一次岸田内閣発足後の昨年10月8日に開かれた特別国会の所信表明演説では、「2050年CNの実現に向け、温暖化対策を成長につなげるCE戦略を策定し、強力に推進する」という程度の表現でしかなかったことを踏まえると、その変貌ぶりがうかがえよう。

首相演説で戦略の玉出し 気になるNTT・東電連合

国会や会見など公の場で岸田首相が発言した内容を振り返ると、CE戦略の玉出しが官邸主導で進められている様子が浮かび上がってくる。「目標実現には、社会のあらゆる分野を電化させることが必要。その肝となる送配電網のバージョンアップ、蓄電池の導入拡大などの投資を進める」(12月6日の臨時国会)、「カーボンプライシングを最大限活用していく」(1月4日の年頭会見)、「アジア・ゼロエミッション共同体と呼び得るものを、アジア有志国と力を合わせて作ることを目指す」(1月17日の通常国会)――。

経済産業省のCE戦略検討合同会合の委員は「送配電インフラ巨額投資の話題は、根回しもなく突然踊り出てきた。官邸主導で物事が進んでいることを実感した」と話す。その意味で業界関係者の関心を集めているのが、1月4日の会見で飛び出した「通信・エネルギーインフラの一体的整備」だ。

「エネルギーインフラが直流グリッドに関係しているとすれば、通信との一体的整備には、NTT・東京電力連合が噛んでくる可能性がある」(大手電力会社幹部)

折しもNTT執行役員事業企画室長は経産省出身の柳瀬唯夫氏。首相秘書官の嶋田隆氏と、元首相秘書官の今井尚哉氏を加えた有力経産OB3人組の姿が、CE戦略の背後に浮かび上がる、しかも演説原稿のドラフトを書いているのは、経産官僚の荒井勝喜・首相事務秘書官という。「キシダノミクス」の一丁目一番地にCE戦略が位置付けられようとしている。

国の審査に合格した島根2号機 稼働見据え情報公開に全力

【中国電力】

ABWRを有し長期稼働が見込める島根原子力発電所は、脱炭素化政策上特に重要な意味を持つサイトだ。

2号機に設置変更許可が下り、中国電力は地元の理解醸成に向けた活動に尽力する。

 福島第一原子力発電所の事故から10年を経て、ようやくBWR(沸騰水型炉)の稼働が見通せるようになってきた。

島根原子力発電所では2021年9月15日に新規制基準に関わる原子炉設置変更許可が下り、再稼働に向けたさまざまな取り組みが進んでいる。これからは、稼働年数ゼロ、つまり少なくとも今後40年間稼働できるABWR(改良型BWR)である3号機の審査が控えている。

このように同発電所は、中国電力はもとより原子力政策上も重要なサイトであり、その動向が注目されている。

2号機の申請から8年弱 軌道に乗る安全対策工事

2号機は設置変更許可が出るまでに8年弱かかった。ほかの原子力発電所と同様、特に地震や津波の想定に関して厳しく審査され、中でも時間を要したのが発電所の南側にある宍道断層の評価だ。申請時には約22㎞と想定していたが、より万全を期すための追加調査の結果を踏まえ、保守的に約39㎞に延長した。それに伴い基準地震動は600ガルから820ガルに見直した。

最大の津波高さについても、より厳しい想定を行い、海抜11・9mに見直した。日本海側の津波想定としては高い部類だ。防波壁は、福島第一事故直後に当時の経営者がかさ上げを判断し、申請前の13年9月には海抜15mの壁を完成させていた。現在は、防波壁の健全性確保に万全を期すための補強工事が進められている。

東日本大震災を教訓に15mにかさ上げした防波壁

また、万が一、防波壁を越波した場合などに備え、2、3号機の建屋内外には100枚以上の水密扉を設置し、重要設備の浸水を防止している。

このほか、竜巻は最大風速92m(秒速)、火山灰は、島根県中央部に位置する三瓶山噴火時の層厚を56‌cmなどと想定し直した。島根原子力本部の渡部公一広報部長は「山に囲まれ、平地が狭いという特性上、大規模設備新設のためには敷地造成を要するという苦労があります」と説明する。

電源の確保に向けた対策も進む。例えば、ガスタービン発電機(6000k‌VA×3台)を津波の影響を受けない高台に設置したほか、構内には14台の高圧発電機車を分散配備している。

また、独自対策として、外部電源用高圧鉄塔を構内の岩盤上に建設した。送電設備が被害を受けても早い段階で復旧が見込まれる6万6000V系について、復旧後直ちに外部電源を受電できるようにしている。「福島第一の事故は電源喪失が全ての発端。電源の供給手段を多様化し、同様の事態が起こらないように万全を期す」(渡部部長)との決意からだ。

理解醸成を目指して 原子力のCM放映

再稼働に向けては、近隣住民への丁寧な説明も欠かせない。特に島根原子力発電所は県庁所在地に立地する唯一のサイトであり、UPZ(発電所から半径30㎞圏内)の人口が約46万人と、全国で3番目の多さだ。故に避難計画の実効性への関心は高く、その点を留意した理解・広報活動に努めている。

島根原子力発電所では安全性向上に向けたさまざまな取り組みが進む

万が一、原子力災害が発生した場合は、国や地方自治体と連携した対応を行う。中国電力は、スクリーニング検査の対応に最大1300人を動員できる人的体制を敷いているほか、福祉車両の確保を進めている。また、毎年実施される自治体主催の訓練にも参加するなど、事業者としてできる限りの対応を行う方針だ。

これまで同社単独での説明会は7回開催。従前からの理解活動である自治会や婦人会などへの説明機会もたびたび設けている。加えて、自治体主催の大小数十回の説明会にも同社担当者が出席する。「2号機再稼働の必要性について、国や地域のエネルギー事情や脱炭素電源としての位置付けなどの観点から説明しています。安全を最優先にさまざまな対策を講じていることなどを伝え、ご理解をいただけるようしっかりと理解活動に取り組んでいきたいと考えています」(渡部部長)

昨夏には、UPZの住民が対象の公募での現地見学会を5回実施。百聞は一見にしかずで、参加者からの反応に手応えを感じている。直接訪れて見学することが難しい人向けには、発電所のバーチャルツアーをHPで公開している。

さらに、島根原子力発電所への理解促進を目的としたテレビCMを21年9月から放映中だ。コンセプトは「向き合う」。安全、地域、技術などに向き合い、発電所で働く社員にスポットを当てた。「実際に働いている人が出演することによって、安全確保に懸命な姿を感じられた」など、好意的な反応が寄せられているという。

渡部部長は「これで安全対策は十分だと思った瞬間に思考停止に陥る。安全を不断に追求し続け、皆さまに安心していただくことが重要です」と強調。さらに「今後の理解活動の中では、安全対策はもちろんのこと、訓練や日々の業務を通じて実際に働く人の力量を高める努力をしていることについても、さまざまな広報ツールを駆使しながら伝えていきたいと考えています」と続ける。再稼働に向けたハード、ソフト両面での対応に、引き続き万全を期す構えだ。

CMや特設サイトで社員の姿勢をアピール

官邸主導で変貌するCE戦略 「新しい資本主義」の目玉に浮上

クリーンエネルギー(CE)戦略は当初、エネルギー基本計画で抜け落ちた政策課題の現実解を示すことを目的とした。

だが官邸の介入が強まり、あらゆる分野を包括する「新しい資本主義」の目玉政策に祭り上げられつつある。

 「いつの間にかCE戦略が岸田政権の政策の中枢に位置付けられるようになってきた」(エネルギー業界関係者)。NDC(国別目標)の2030年46%減に沿った第六次エネルギー基本計画と、50年カーボンニュートラル(CN)に向けたグリーン成長戦略をつなぐ道筋として、検討が始まったCE戦略。ただ、官邸の意向でエネルギーの枠を超え、あらゆる分野を包括する戦略へと変貌し始めている。

もともとは、菅政権下での積み上げなしの第六次エネ基で残した宿題に手を付け、現実的な議論を深めることを主眼とした。ことに経済産業省が再構築しようとしたのが原子力政策。エネ基では、30年原発比率20~22%のために必要な新増設・リプレースの明示を政権の強固な介入で断念し、「必要な規模を持続的に活用する」との表現が精いっぱいだった。

それをCE戦略という新たな舞台で、まずは既設の再稼働と運転期間延長への環境を整備しつつ、将来的な新型炉開発の道筋を付ける――。しかし、甘利明氏が幹事長を辞任した辺りから雲行きが変わり、「岸田氏側近からは『参院選が予定される7月までの政権運営は安全運転で行く』との声が出ている」(霞が関事情通)。結局、6月策定予定のCE戦略には原発の運転延長は入れないよう、官邸から経産省に通達があったという。

再びの政治介入 首相が包括的議論を指示

そんな中、去る12月16日にCE戦略を検討する小委員会で議論がスタート。主な論点は、①GX(グリーントランスフォーメーション)に向けた企業投資を後押しする方策、②需要サイドのエネルギー構造転換、③必要な社会システム、インフラ導入――だ。「グリーン成長戦略を深掘りし、供給サイドの企業投資のために何が必要か。そしてエネ基でもう少し議論すべきだった需要サイド、つまり熱需要の電化や、産業構造の転換をどう進めるか、といった辺りが主な検討課題」(経産省幹部)になる。

一方で岸田文雄首相はここ1、2カ月、CE戦略の具体像に迫るような発言を続けている。「社会のあらゆる分野の電化」「会議に私自身が出席し、関係各省総力を挙げて取り組むよう指示する」「(CE戦略の)検討結果を新しい資本主義実現会議の議論にインプットする」――。一連の発言に、経産省も翻弄された。

CE戦略は一体どうなるのか。注目が高まる中、1月19日の第二回会合前日、官邸にて「CE戦略に関する有識者懇談会」が開催され、岸田首相からの正式な指示が出された。萩生田光一経産相の取りまとめの下、これまでに出ていた主軸に加え、労働力の円滑な移動、地域の脱炭素化、ライフスタイルの転換、カーボンプライシング(CP)などの多くの論点に方向性を見出すほか、「新しい資本主義実現会議」に議論の状況を報告するよう通達された。

端的に言えば、CE戦略が政権肝入りの「新しい資本主義」の主軸に据えられたことになる。参院選に向けて岸田政権のブランド政策に仕立て上げたいとの官邸の思惑が透けて見える。そのために、経産省以外の省庁の関連政策もパーツとしてCE戦略に束ねることになった。前政権と考え方は違えど、昨年のエネ基議論と同様、再びエネルギー政策への政治介入が強まっている。 

「新しい資本主義」の本質はいまひとつつかみにくいが、昨年11月の実現会議で示された緊急提言に〝市場機能の活用による経済成長の実現を基本に、不十分な部分は政府が適切に補完し、官民が連携して新しい時代の経済を創る〟といった説明がある。これをCE戦略の文脈で考えると、GXに向けた対応のどこまでが政府の役割で何をするのか、そして民間は何をすべきかといった整理になるようだ。

そして炭素中立型に変革するため、エネルギー供給面だけでなく、需要面の対応を強力に進めるという方針が、基本路線になるという。それ自体はこれまでの主要議題から逸脱していないものの、関係者からは当初から急激にスコープが広がったことへの戸惑いの声も聞かれる。

岸田首相の指示を受けたCE戦略の行方は
出典:官邸ホームページ

原子力の書きぶりどうなる 息吹き返すCP導入派

需要サイドから在るべきエネルギー供給構造の姿を考えるという、従来とは違う政策アプローチを取ることになったCE戦略。だが、当の需要家側からは「原子力の対策を何も講じない戦略なら飛車角落ちだ。鉄・化学・セメント・紙など日本経済の根幹を支える製造業がGXに向かう上でも、低廉かつ安定的な電力供給は必須。それが用意されないのなら国内では投資できず、国外に生産拠点を移すことになる」といった懸念が出ている。小委委員からも、原子力の位置付けの明確化や、再稼働・リプレースがなければ脱炭素化に向かえない、などの意見が示された。

実は、萩生田経産相個人は原子力政策に前向きだとの見方がある。件の懇談会で萩生田氏は、CE戦略の検討状況の説明で、重点事項の一つである「GXを起点とした新たな産業」を挙げる際、再生可能エネルギーやアンモニア、水素、蓄電池と並び、資料にはなかった原子力をあえて加えて発言したという。これに深い意味があると捉えるのは考え過ぎだろうか。

他方、CP導入派もこの展開に息を吹き返し始めた。菅政権退陣後、特に炭素税に関する議論は一時暗礁に乗り上げたかに思えたが、首相指示の論点の一つにCPが入り、懇談会参加者からもCPへの言及が相次いだ。岸田首相は、経産相が戦略の取りまとめ役であるものの、地域の脱炭素化や国民の理解促進、暮らしの変革については、山口壯環境相に具体策を検討せよとの指示も出した。その山口環境相は、18日の会見で「(戦略の検討で)環境省が主導しなければいけないものがたくさんある。CPについてもそうだ」と意気込みを見せている。

一気にメインストリームに引き上げられたCE戦略だが、今回の政治主導の顛末は果たしてどうなるのか。

【マーケット情報/1月28日】原油続伸、需給さらに引き締まる

【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、主要指標が軒並み続伸。政情悪化を背景とした供給不安が一段と強まり、需給が引き締まった。

ロシアのウクライナ侵攻の可能性が高まっている。これにより、米国がロシアに経済制裁を加え、ロシア産原油の供給が滞るとの懸念がさらに強まった。また、中東勢は減少したロシア産の供給をカバーしきれないとの予測が台頭。サウジアラビア、クウェイト、イラクは既に、2022年のターム契約に基づく供給量を定めており、調整が困難とみられている。加えて、アラブ首長国連邦は、武装勢力フーシのミサイル攻撃を迎撃したと発表。同国は17日にも、フーシによるミサイル攻撃を受けており、中東情勢が一段と緊迫化する見通しだ。

供給不安が広がるなか、世界各国で引き続き、新型コロナウイルス感染防止の規制緩和が進んでいる。需要回復の見込みで、需給逼迫観がさらに強まった。

【1月28日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=86.82ドル(前週比1.68ドル高)、ブレント先物(ICE)=90.03ドル(前週比2.14ドル高)、オマーン先物(DME)=87.42ドル(前週比2.19ドル高)、ドバイ現物(Argus)=87.80ドル(前週比2.55ドル高)

【省エネ】コージェネの貢献 バイオマスで増大

【業界スクランブル/省エネ】

 コージェネの国内累積導入量は1330万kWを超えており、日本の省エネルギーに大きく貢献している。エネルギー使用合理化の判断基準に、「年間を総合して廃熱及び電力の十分な利用が可能であることを確認し、適正な種類及び規模のコージェネレーション設備の設置を行うこと」と示されている通り、中間期における空調熱需要の減少影響が少ない産業用途の方が高い年間総合効率実績を達成しやすく、大型機器の導入も多いため累積導入容量も産業用の方が多い。

また、近年はCO2削減や再エネ発電連携も重要視されており、デンマークのオーデンセにある3万5000kWのコージェネはバイオマス利用によりCO2排出ゼロで、デンマークに多い風力発電の出力変動に対応するために、毎分8%の電力出力変動を実現するシステムを構築している。RE100テクニカルクライテリアの更新に伴いFAQが8月に更新されたが、不明確だったコージェネ電力の扱いが明確になった。コージェネ電力をグリーン化するには「燃料をバイオマスガスなどに切り替える」か、「同一ガスネットワーク内のグリーンガス証書を燃料使用に適用」が必要とされ、「海外の森林証書などを用いたカーボンニュートラルLNG購入」や「グリーン電力証書購入」ではRE100適用外となった。さらに、敷地内コージェネの所有をエネルギーサービス事業者などに所有させたとしても、化石燃料使用コージェネという選択が「100%再生可能エネルギーを目指すRE100」としてサポートできる戦略ではないと明言している。

コージェネの重要な役割として、BCP対策もあるが、非常用発電としての化石燃料使用はRE100も許容していることから、「バイオマスコージェネ(同一系内のバイオマス証書利用も含む)」「グリーン水素コージェネ」「オンサイトPV+蓄電池」「石油貯蔵もしくはガス導管接続の非常用発電機」が脱炭素社会に拡大すべきBCP対策となるだろう。よって、今後は日本でもバイオマスコージェネをいかに拡大させるかが重要課題となる。(M)

【住宅】脱炭素化が加速 課題はコスト

【業界スクランブル/住宅】

 住宅業界における脱炭素化に向けた動きが加速している。2021年8月にカーボンニュートラルの実現に向けた「住宅の省エネ対策のあり方に関する具体的ロードマップ」が示された。このロードマップ実現の軸は「省エネルギーの徹底」と「再生可能エネルギーの導入拡大」だ。具体的な30年に目指すべき住宅・建築物の姿として「新築される住宅・建築物についてはZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能を確保」「新築戸建て住宅の6割において太陽光発電設備を導入」、50年に目指すべき姿として「ストック平均でZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能を確保」「導入が合理的な住宅・建築物における太陽光発電設備などの再生可能エネルギー導入が一般的となる」とした。

国の方針が決まったことを受け、今後実現に向けた取り組みを進めていかなければならない。消費者の認知や住宅会社の技術力も課題には挙げられているが、一番の課題はコストだ。14年に国が掲げたエネルギー基本計画では「住宅について20 年までにハウスメーカーなどが新築する注文戸建住宅の半数以上でZEHの実現を目指す」としていたが、19年時点でまだ約20%という低い数字となっている。なぜか。そもそも住まいは高額商品であること、断熱性能の高い家に住みたい、と考える人はいても、実際に買おうと考える人はそのコストの高さから他の希望と比較し、結果、断熱性能以外の部分に費用をかけることが多い。また、近年ではコロナ禍で消費者の賃金は上がらず、住宅会社においては、各種建材の価格高騰を受け、商品価格にコストアップ分を転嫁し始めている。

しかし、断熱性能の高い住まいの住民を対象にしたあるアンケートでは、入居後に「光熱費の安さ」「断熱性能の高さ(夏冬の快適性)」が入居前に感じていたメリットを上回る結果が出ている。リアルな体験をすることで住まいに対する満足度が向上しているのだ。住宅会社は省エネ住宅に住まうべきメリットをさまざまな形でお客さまに伝え、住まい手のコストに対する意識を変えないことには普及は進まない。(Z)

【太陽光】地域との共創 求められる電源へ

【業界スクランブル/太陽光】

 2021年10月に第六次エネルギー基本計画が閣議決定され、30年のエネルギーミックスにおいて、太陽光発電は現時点の導入量からほぼ倍増を目指すことになった。国全体で太陽光発電を導入促進するさまざまな補助金などの仕組みが出来ているが、目標達成には、土地・系統の制約、コストなどの課題も多い。

一方、太陽光発電は、適切な設計、運営管理ができていない発電所も一定数存在し、アレイの支持物強度が不足し強風などで壊れそうな発電所、適切な排水計画になっておらず保守管理を行っていないことで雨水などの影響により、土砂が発電所の外に流出している発電所、またフェンスや標識がないなどのルールを守っていない発電所もある。そのような発電所は見た目からも地域住民に不安を与え、迷惑をかける可能性があることから、太陽光発電をネガティブに感じている人もおり、受け入れられていないケースも散見される。

そうした中、経済産業省の審議会では、太陽光発電設備の10~50kWを新たに「小規模事業用電気工作物」と位置づけ、技術基準の維持義務、基礎情報の届出、使用前自己確認制度の導入等の保安規律適正化のために規制を強化する方向で議論が進んでいる。50~500kWも使用前自己確認制度が新たに導入される方向だ。発電事業者や事務処理を行う方にとって手続きが煩雑になるが、今後安全・安心な太陽光発電を導入促進していく意味で効果のある施策だと考える。

太陽光発電は、地産地消が可能で災害時には地域で活用できる電源であり、本来は「地域に求められ共に創るエネルギー」であると考える。法令などのルールを守りながら適切に設計・施工し保守管理を行うと、太陽光発電はFITの20年間だけでなく、それ以上の長い期間発電し続け、温室効果ガス削減だけでなく地域共創エネルギーとして地域に貢献することができる。発電事業者、設計・施工者などにはこのようなことを改めて認識してもらい、太陽光発電設備を法令などに基づきしっかりと造っていただいて、適切に維持管理・運営してもらいたい。(T)

【コラム/1月26日】洋上風力発電の入札結果

矢島正之/電力中央研究所名誉研究アドバイザー

経済産業省と国土交通省は、昨年12月24日、着床式洋上風力発電の整備促進区域である「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」、「秋田県由利本荘市沖」および「千葉県銚子市沖」におけるFIT(Feed- in Tariff)価格の入札結果を発表したが、共同事業体「秋田能代・三種・男鹿オフショアウィンド」(三菱商事連合)がすべての地域を総取りしたことが注目を浴びた。同共同事業体は、「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」、で13.26円/kWh 、「秋田県由利本荘市沖」で11.99円/kWh、 「千葉県銚子市沖」で16.49円/kWhの価格を提示し落札したが、これは市場破壊レベルの価格をして受け取られている。確かに、入札上限価格の29円/kWh、2021年度の着床式洋上風力発電の固定価格買取制度価格の32円/kWhと比べると約半値またはそれ以下であり、急速に価格が低下している。業界は今後、さらに価格が一気に下がっていくのか戦々恐々としているとのことである。このニュースを聞いて思い出したのは、ドイツでの洋上風力発電の入札結果である。

同国では、再生可能エネルギー電源の増大は低炭素化に貢献しているとの評価があるものの、ますます膨大となっている再生可能エネルギー電源の支援コストが問題となっていた。そのため、支援コストの抑制のために、2017年から、FIP(Feed-in Premium)制度から再生可能エネルギー電力の販売に際して事業者に支払われるプレミアムを入札で決める制度に移行することになった。連邦ネットワーク規制庁(BNetzA)は、2017年4月13日に、ドイツの北海地区での洋上風力事業の第1回入札(上限1550MW)の結果を発表したが、落札した4件のうち3件はプレミアム0での落札であった(プレミアム0で落札した事業者は、Dong EnergyとEnBW)。また、落札価格の加重平均は、0.44セント/kWhであった。このニュースを、電力関係者は大きな驚きをもって受け止めた。当時、洋上風力発電事業者の入札上限は、12セント/kWhだったからである。その後、洋上風力発電に関する第2回の入札結果が、2018年4月27日に、また第3回の入札結果が2021年9月9日に発表されたが、最低落札価格はやはり0であった。第3回の入札では、複数の入札者が0オファーを出したため、くじびきで落札者を決めるという珍事が起きた。

事業者がプレミアム0で入札する理由を、第1回の入札例でみると、まず、プロジェクトの開始時期である2024~ 2025年までに、発電機の一層の大型化(13~15MW)が可能となり、発電機の設置個所の減少と1基当たりの発電量の増大により、建設・運営のコスト低減が見込まれることが挙げられる。次に、今後建設される発電機を既存発電機とともに集中的に配置させることで、運営コストの低減が見込まれることが指摘できる。さらに、規制当局は、発電機の寿命を25年から30年に延長することを認めたこともプレミアム0での入札を可能にした理由として挙げられる。

しかし、これらの理由があったとしても、プレミアム0で落札したプロジェクトが実際にペイするかどうか分からない。そのため、資金調達コストが増大し、投資の不確実性が増すという指摘もある。0入札の拡大に危機感をもつ洋上風力発電事業者協会(BWO)は、資金調達コストを低減し、プロジェクト実施の確実性を担保するために、英国型の差額決済取引型固定価格買取制度(Contract for Difference Feed- in Tariff: CfD FIT)の適用を望んでいる。類似の制度は、デンマーク、イタリア、フランスでも採用されている。入札制度を巡る紆余曲折は今後もありそうだが、せっかく芽生えた洋上風力発電の完全自立への道を遅らせることはあってはならいだろう。

注目しなくてはならないのは、ドイツでは、再生可能エネルギー電源の開発リスクを、事業者が積極的にとる例が増えているという事実である。その背景には、ますます多くの事業者は、エネルギー転換はリスクよりもチャンスのほうが大きいと考えていることが指摘できる。そして、その経営マインドの変化には競争入札の導入が関係している。「リスクを取らずんば、リターンは得ず」。これはビジネス界の常識である。わが国の再生可能エネルギー業界でも、この常識がいち早く定着化するとともに、再生可能エネルギー支援のための国民負担が大幅に低減することが望まれる。

【プロフィール】国際基督教大修士卒。電力中央研究所を経て、学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学大学院特別招聘教授などを歴任。東北電力経営アドバイザー。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力改革」「エネルギーセキュリティ」「電力政策再考」など。

【メディア放談】2022年のエネルギー報道 グリーンインフレーションに備えよ

<出席者>電力・石油・ガス・マスコミ/4名

2021年は、エネルギー・環境政策がクローズアップされた年だった。

今年は、脱炭素化の影響によるエネルギー価格の上昇に注意が必要になる。

 ――まず2021年のエネルギー・環境報道を振り返ってもらいたい。

電力 20年12月に菅義偉首相が50年カーボンニュートラルを宣言した。それから始まって、21年の4月には30年にCO2排出を46%削減すると言明する。ちょうど、エネルギー基本計画の改定の時期で、昨年はひさびさにエネルギー・環境問題が大きく取り上げられた年だった。

 その中でどういう報道がなされていたか。まず、産業界が期待する日経は小泉進次郎前環境相が「いまや脱炭素新聞ですね」というほど、小泉氏の肩を持つ報道が目立った。

――エネ基の改定では、自民党内に原発の位置付けを明確にしたい動きがあった。

ガス エネ基の議論は政治主導で動いていた。コロナ対応もあって、菅さんはエネルギー政策にあまり関心を示さなかった。それで、再エネしか眼中にない閣内の「KK」、河野太郎氏と小泉氏が好き勝手にできた。それに対して、自民党内に強い反発が起きた。

エネ政策が政治主導に 出色だった産経報道

――そういう動向がなかなか伝わってこなかった。

ガス エネルギー問題は、本来は経産省に詰める経済部の記者が追うネタだ。ところが21年は、政治家の思惑が交錯しながら、政治主導で物事が進んでいった。そうなると、政治部の記者の出番となる。

 政治記者が与党のキーパーソンを取材して、何が起きているのかを正しく伝えたのは唯一、産経だけだった。

マスコミ 確かに産経の報道は出色だった。エネルギー政策は、本来は日経が詳しく伝えなければならない。ところが、編集方針が再エネ推進の内容に大きく傾いたこともあって、経産省は日経に不信をいだいていた。それもあって、産経が完全に日経のお株を奪ってしまった。

電力 自民総裁選では核燃料サイクルの是非も話題になった。21年、エネルギー議論が盛り上がったことはよかったと思う。

石油 年末には、COP26があって、原油高の中、OPECプラスの対応も注目された。それらの記事を見てつくづく思ったのは、日本のマスコミの報道が薄っぺらいこと。やはりロイターやブルームバーグなど、海外の通信会社にかなわない。

 COP26の記事も、日本メディアの報道は表面的なものばかりだった。ところがニューズウィーク誌のSNSを見ると、先進国と途上国がいかに対立したが、手に取るように分かった。一般の人はともかく、海外情報が必要な業界人にとっては、もう日本のメディアは必要ないんじゃないか。

――新聞離れが激しくなっていると思う。各紙は電子版に力を入れている。

石油 日経テレコンの一人勝ちだ。ただ、記事をプリントアウトしていくと、ばかみたいな金額になるから、利用するのは企業に限られてしまう。

 個人で使うとなると、やはり日経電子版。市況やフィナンシャルタイムズの翻訳も読める。読売は新聞をとっていれば無料。毎日は独自ネタの面白い記事がある。ただ、月1000円が割に合うかは疑問。朝日は、どういう基準で画面を構成しているのかよく分からない。とてもお勧めできない。

価格上昇の三つの要素 避けられない国民負担増

――原油、天然ガス、石炭の値段が上がっている。脱炭素化の動きと無関係ではなさそうだ。

マスコミ 産経などが「グリーンインフレーション」という言葉を使い始めている。

――どういう意味?

石油 脱炭素化によって三つ要素での価格が上昇していくことだ。①急に脱炭素化を進めることで、化石燃料の需給バランスが崩れて起こるもの、②脱炭素化にかかる巨費の製品への価格転嫁によるもの、③炭素税導入によるもの―の三つだ。

 おそらく、これから深刻な問題になっていく。本来ならばマスコミが詳しく取り上げるべきだが、紙面を割く新聞はほとんどない。

マスコミ 朝日が代表格だが、再エネが拡大すれば新産業が興り雇用が増えて経済は成長する、さらに燃料費が掛からないから電気代もいずれ下がる、とする論調がある。もう、そんな夢物語を語るのはいい加減にしてほしい。

 脱炭素化は、確実に国民にとっては負担増になる。まして原発依存低減を進める限り、負担はより増していく。政治もマスコミも、そこから逃げないでほしい。

――今年のエネルギー政策とマスコミ報道にはどんな期待が。 

ガス クリーンエネルギー戦略を打ち出した岸田文雄首相が、「クリーンの意味は」と聞かれて、「現実的なエネルギー転換」と答えている。

 今まで、エネルギー政策は供給サイドの話ばかりだった。それが需要サイド、中でも電化が困難なところでの熱の効率利用を考え始めるのかな、と思った。それと原子力だ。もっとも、夏の参院選前に原子力について言及するのは難しいかもしれない。

電力 21年、新聞で「おや」と思ったのは、6月の毎日の「公害化する太陽光発電」の記事。エネルギーフォーラムならともかく、毎日でもこういう記事が載るようになった。もともと、毎日の調査報道は評価していた。今までの論説などに捉われないで、もっとどんどんと記者が自由な視点で記事を書いていくと、かなり面白い紙面になるかもしれない。

――毎日は経営がかなり厳しいと聞く。その分、自由に記事を書かせているのかもしれない。日経を購読しているけれど、毎日に代えようかな。

【再エネ】ミックスの壁高く 風力の課題解決急務

【業界スクランブル/再エネ】

第六次エネルギー基本計画における2030年の電源構成見通し(電力量)は、50年のカーボンニュートラルからのバックキャストで、野心的目標として既存水力約10%を含む再生可能エネルギー36~38%と再稼働含む原子力20~22%を確保し、非化石比率約60%を目標にしている。具体的には順調に拡大する太陽光発電と、価格低減を含む洋上中心の風力発電拡大と、徹底した安全性確保による原子力再稼働である。

ただし風力発電は現在の陸上風力約5GW(1GW=100万kW)を18GWにし、新設洋上風力を約6GW導入しても、30年断面では全体の約5.5%程度である。太陽光発電は100GWで約15%の供給量を見込み、水力が約10%としている。国も再エネ主力電源化のカギを握る洋上風力発電の競争力強化については、①魅力的な国内市場創出、②投資促進・サプライチェーン形成、③次世代技術開発と国際連携―を方針とし、さまざまな課題解決策を探っている。

市場創出では、再エネ海域利用法と政府主導による案件形成があり、地域からの情報を収集し、有望区域の公表を行い、促進区域の指定、事業者選定、占有許可を進める。さらには日本版セントラル方式での導入拡大に向けた実証事業を計画中で、事前調査、地域共生を国の主導で進める方針である。また、洋上風力の産業競争力強化に向けても、風車のサプライチェーン構築と、将来拡大が見込まれる浮体構造物に関する要素技術開発にも取り組み、25年頃の実海域での実証事業を計画している。

一方、主要大型風車メーカーが欧米と中国にしか存在しない現状から、技術開発が立ち遅れているのも現実で、大幅な建設コスト低減に向けた画期的な浮体式洋上風車の開発に期待が高まっている。また、比較的建設コストの低い陸上風力については、30年以降も引き続き導入拡大を進める必要があり、大口径翼による経済性の改善に合わせて、地域主導も含み、陸上エリアでの積極的なポジティブゾーニングを進める事が期待されている。(S)

【コラム/1月25日】原子力に光は見えてきたか?

福島 伸享/衆議院議員

2022年は、EUの欧州委員会が原子力を持続可能な環境に資する投資として認定する方向である、というニュースで幕を開けた。1/3の日経新聞には「日本、米高速炉計画に参加」との見出しが躍り、ビル・ゲイツ氏が出資するテラパワー社や米国エネルギー省が推進する高速炉開発計画に日本原子力研究開発機構や三菱重工が協力する、との報道が流れた。1/17に開会した通常国会の施政方針演説でも、岸田首相はこれからとりまとめる「クリーンエネルギー戦略」の中の一分野として、「革新原子力」を例示している。

今年は、3.11後の原子力冬の時代の雪融けの年となるようにも思える。実際、1/11に私の地元で行われた「茨城原子力協議会新春のつどい」では、同協議会の内山会長や日本原子力研究開発機構の児玉理事長からは、期待の思いが溢れていた。

しかし、実際はどうか?足元をもう一度見直してみなければならない。「新春の集い」では、東海第二原発の再稼働問題を抱える大井川茨城県知事は、「今日はマスコミが多く来ているので発言に注意しなければ」と当たり障りのない官僚原稿を読んでサッと帰る素っ気ない対応に終始した。地元東海村の山田村長は「原子力発祥の地としての矜持を持って」と、国の曖昧な政策の間で翻弄される首長としての悲壮感を持った挨拶をされた。多くの国民が原子力に忌避感を持つ3.11後の原子力冬の時代は、原発再稼働に関しては何ら変わるところはない。

私が原発の立地を担当していた1990年代は、「トイレなきマンション」と言われながらも、高速増殖炉を開発し、六ケ所村の核燃料再処理施設を稼働させ、高レベル廃棄物の地層処分を進める準備をしている、と核燃料サイクルの説明をすることで何とか原子力に対する信用を得ようとしていた。しかし、現在ではもんじゅは廃炉となり、あれから四半世紀以上が経っても核燃料再処理施設は稼働していない。政策体系が破綻して完結しておらず、今後我が国の原子力産業がどのようになっていくのかが不透明な中で、国民の理解や信用を得るのは難しいだろう。「海外ではこうなっているから」という「出羽守(でわのかみ)」の論法も、もはや通じまい。

そうは言っても、世界は原子力の復権に向けて少しずつ動いている。だからこそ、日本が主体的に我が国の原子力産業をどうするのか、官民の役割分担を明確しながら誰が担い、どのようなファンディングをしていくのか、何をターゲットに技術開発を進めていくのか、原子力政策の体系的な再構築を図ることが、今こそ必要である。ただ原発の再稼働を進めるといった数字を掲げているだけでは、世論は変わらず、何も進まない。その際、平成までの国の研究機関が中心となった単線的な技術開発一辺倒や、地域独占企業による運営を前提とした産業論では、再び停滞と失敗の歴史を繰り返すことになるだろう。

2022年、原子力にとって一筋の光は見えてきた。原子力のルネサンスを興すためには、単に世界の時流に乗ろうとしたり、他国の政策に同調するだけではなく、その前に我が国の原子力政策自体の抜本的な再構築を始めなければならないのだ。「革新原子力」と言っている岸田首相に、果たしてその視点と覚悟はあるだろうか。

【プロフィール】東京大学農学部卒。通商産業省(現経産省)入省。調査統計、橋本内閣での行政改革、電力・ガス・原子力政策、バイオ産業政策などに携わり、小泉内閣の内閣官房で構造改革特区の実現を果たす。2021年10月の衆院選で当選(3期目)

脱炭素化と経済秩序 果たして両立できるのか

【リレーコラム】柳生田 稔/出光興産フェロー CNX・洋上風力担当

46億年の地球の歴史を1年に例えると、12月31日に人類が誕生し産業革命が始まったのが同23時59分58秒だという。46億年かけてできた化石燃料を凌駕する経済的な代替エネルギーを見つけることは容易ではない。

カーボンニュートラル(CN)を達成するためには再エネの大量導入に加え、系統の安定度を保つために必要なガス火力発電所のLNG代替燃料として安価なCO2フリー燃料の確保が重要な課題となるが、いずれにしても大幅なエネルギー価格の上昇は避けられず、これを国民が負担せざるを得ないと考えれば、少なくとも係るコストを国内で循環させることを優先するという考え方も重要である。

再エネ拡大に向けて最も優先されるべきは電力系統の増強である。日本は国土が狭く人口密度が高いので、再エネの導入地点から需要地への直接移送による需給調整が効率的だ。再エネ事業者にとっての最大のリスクは出力抑制による発電機会の減であり、無制限抑制のリスクを許容することはファイナンスの観点も含めて事業化へのハードルが高まる。系統増強は必須だが、CN達成にはこれだけでは足りず、需給調整の限界を上回る再エネの大量導入が必要となる。これを進めるには、蓄電・水素製造などにより、有価で余剰電力を吸収することで再エネの事業性を確保することが必須のセットと考える必要がある。

既存インフラ活用の重要性

発電用途のCO2フリー燃料として期待されるのが水素だが、課題はコストである。特に海外からグリーン水素を液化して運んでくるサプライチェーンを想定すると、そのインフラほぼ全てを新設する必要があり、例えば大型ガス火力発電所1カ所に必要な燃料水素を生産するための設備投資は優に1兆円を超える。他方で、LNGを原料として国内で水素を製造し、排出されるCO2をCCSするというブルー水素のサプライチェーンであれば既存インフラの多くを活用することができ、相対的に安価な水素が製造できる可能性がある。これら海外依存型のコストをいかに下げるかという取り組みも重要であるが、上述の余剰吸収としての水素製造であれば、再エネ大量導入のインセンティブとしての必要性に加え、国内でのコスト循環、あるいは地産地消によるエネルギーロス低減の観点から、これを優先するという考え方も重要である。

昨今の脱炭素に関する世論の論調から化石燃料に関する投資が困難な状況となっているが、足元の安定供給の責務を果たしつつ、経済秩序を保てる正しいトランジションを改めて認識したい。

やぎゅうだ・みのる 1988年東京都立大学工学部卒、昭和シェル石油に入社。製油所でのプラント建設、LNG発電所建設などのエンジニアリング経験を経て、2011年より電力事業を担当。出光興産との統合を経て、21年7月から現職。

※次回は九電みらいエナジー社長の水町豊さんです。

【石炭】日の丸技術の結集 IGCC運転開始

【業界スクランブル/石炭】

エネルギー資源の大部分を輸入に頼る日本にとって、石炭は石油や天然ガスと比べ価格が安く、埋蔵量も多いため、将来にわたって安定供給が見込める大切なエネルギー資源である。しかし、石炭は燃やした時のCO2排出量が他の化石燃料に比べて多いのが課題で、その課題を克服するには、発電効率を高め、少ない石炭で発電量を増やすことにより、CO2排出量を低減していく必要がある。こうした高効率化などによる環境に調和した石炭利用技術は「クリーンコールテクノロジー」の主要技術であり、その中でも注目されてているのが、石炭ガス化複合発電(IGCC)である。

石炭ガス化とは、固体燃料である石炭を可燃性ガスに転換すること。2021年11月、福島県の広野町で建設中であった広野IGCC発電所が勿来発電所に次いで、運転が開始された。出力は54万3000kWでIGCCとしては世界最大級だ。最新鋭の従来型石炭火力発電と比較しても、CO2排出量を約15%低減すると共に石炭灰はガス化炉内で溶融し、ガラス状のスラグになり、このスラグはセメントの原材料や路盤材として再利用され、次世代のSDGsを先取りする。世界最高の熱効率によりCO2排出量の削減に貢献し、また福島を技術の世界的拠点として、海外の技術者から注目されることになるだろう。

石炭ガス化炉、ガスタービン、蒸気タービンなどを組み合わせた複雑なシステムであるIGCCプラントを効率よくまとめあげ、確実に運用する高度のエンジニアリングを達成した技術者の努力に敬意を払いたい。今後もIGCCの周辺では、新たな技術が産声を上げていくことで、このところ逆風下の石炭利用に光明が照らされることを期待したい。

世界最高レベルの効率を誇るJ形ガスタービンの投入や、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を組み合わせたトリプルコンバインドサイクル発電(石炭ガス化燃料電池複合発電:IGFC)などが実現すれば、今後は発電効率が65%を超える発電システムも現実味を帯びてこよう。(C)