オゾン層の現状/輸入木質バイオマスの効果
Q 現在、オゾン層の状況はどうなっているのでしょうか?
A「オゾンホール」は南極上空のオゾン量が極端に少なくなる現象で、地表からの高さ20〜30㎞の成層圏にあるオゾン層に穴の空いたような状態にあることから名付けられました。生物に有害な紫外線をオゾンが吸収することができなくなり、紫外線が地上に届いて悪影響を及ぼす恐れがあります。オゾンホールは8~9月に発生し11~12月に消滅する季節変化が、1980年代から衛星によって観測されています。2023年のオゾンホールは南極上空で8月上旬に現れた後、9月21日に年最大となりました。
電化製品から捨てられたフロンがオゾン層を破壊することが判明した後、フロンの生産は1987年9月に採択されたモントリオール議定書で全世界で禁止されました。日本では2001年4月から家電リサイクル法によりフロンの回収が義務付けられています。23年1月に国連環境計画と世界気象機関は、このままフロンガス規制が続きオゾン層の回復が進めば、南極で66年ごろ、北極で45年ごろにオゾンホールが1980年の水準まで戻ると発表しました。一方、フロンから温室効果の大きい代替フロンへの転換が進んだ結果、地球温暖化を悪化させている負の現象もあります。
南極上空のオゾンホール発見から40年でオゾン層破壊のメカニズムが世界で認知され国際条約にまでこぎつけました。地球温暖化と比較すると、自然現象の理解が容易でコンセンサスが得られやすかったことが規制に成功した理由です。
フロンを生み出したのは人間ですが、その破壊を予測し制御するのも人が生み出した科学の力です。楽観視は禁物ですが規制の成果に期待し、さらなる観測データの収集を待ちたいと思います。
回答者:鎌田浩毅 /京都大学名誉教授 京都大学経営管理大学院客員教授)
Q 輸入木質バイオマスの利用は、日本の温暖化対策にどの程度の効果をもたらしますか?
A 日本で燃やされたバイオマスは、輸入材であっても排出量はゼロとカウントされます。これはIPCC(気候変動に関する政府間パネル)ガイドラインにおいて、バイオマス由来のCO2の燃焼はゼロとすることが決まっているからです。ただし、国内の内航船による輸送や港湾・発電所におけるハンドリングに伴う排出は計上されます。原産国でのバイオマス燃料の生産や収穫、加工に伴う排出は、原産国の排出になります。木材の伐採に伴い森林の炭素蓄積が減少した場合は、原産国の土地利用部門において排出と計上されます。
国をまたぐ海上輸送では、排出量の特定の国への帰属が難しいため、国際管理することになっています。海上輸送については国際海事機関の目標「2050年ごろまでにGHG(温室効果ガス)排出ゼロ」に沿って削減を進めることとなります。一方で、地球温暖化防止を法律の目的の一つとしているFIT/FIP制度においては、ライフサイクルアセスメント(LCA)に基づく評価を行い、火力発電の加重平均である1MJあたり180g-CO2電力に比べて70%以上の削減を求めています。この計算は、IPCCガイドラインなどとは別に、FIT/FIP制度で支援を受けている各発電所が尊守すべき持続可能性の一つの要素として、あるべき姿を求めているものと言えます。
この時のバイオマス発電の排出の計算には、燃料の原産国における栽培・加工から輸送、そして日本での発電工程までのライフサイクルGHGが含まれます。発電工程で発生するバイオマス由来のCO2は、IPCCガイドラインやEUなどの取り扱い同様、ゼロとしていますが、メタンや亜酸化窒素については計上が必要です。
回答者:相川高信 /PwCコンサルティング合同会社マネージャー