【マーケットの潮流】橋爪吉博/石油情報センター事務局長
テーマ:原油価格
量こそ縮小傾向にあるものの、OPECプラスは増産を続けている。
国際情勢の変化や産油国の思惑が複雑に絡み合い、価格動向は不透明だ。
OPECプラスの有志8カ国は、10月5日のウェブ会議で、石油市場の健全なファンダメンタルズと堅調な世界経済成長見通しを踏まえ、10月に続いて11月も日量13・7万バレルの減産緩和(増産)を確認した。市場観測に沿った10月の増産を継続する合意だが、今年5~9月の増産幅(日量41・1万バレル)を圧縮する内容であり、翌6日のアジア市場では想定内として、わずかながら反発した。

毎月の生産協定見直し カルテルの新形態
減産緩和・増産を開始する今年3月以前、OPECプラスには3段階の減産合意があった。ベースとなる生産量(22年10月)に対して、①経済制裁あるいは内戦中のイラン・リビア・アルジェリアの3カ国を除く参加国20カ国による協調減産(日量200万バレル、2026年末終了予定)、②サウジアラビア・ロシアなど主要有志8カ国による自主減産(日量165万バレル、今年4月から縮小中、26年末終了予定だった)、③有志8カ国による追加自主減産(日量220万バレル、終了)─の三つである。今回の決定は10月に続いて、②の緩和・増産を延長するものだ。
3段階の減産合意は、ウクライナ戦争に伴う対露経済制裁によるロシア減産の回避(ロシア原油輸出先の中国・インドなどへのシフト)、米欧の利上げ(22年下期)による世界経済の減速を主な要因とする原油価格軟化に対応したものだった。ただ、②③は23カ国の全参加国による合意が難しかったため、減産を必要と考える、あるいは減産の余裕がある主要8カ国の合意による「自主減産」という形式にしたのであろう。
本来、カルテル組織における増減産・生産調整は、あくまで全メンバーによる基本生産量に対するプロラタ(均等割当)が基本である。自主減産はカルテル組織としては異例の考え方で、OPECプラスのカルテル構造は二重化したものと考えるべきだ。したがって、有志8カ国の自主減産の解消が優先され、8カ国会合で決めることになる。
OPEC時代には、増減産時は常に総会(臨時総会を含む)を開催して生産協定を決めていた。組織として、生産協定の対象期間の世界の石油需要量の想定を行い、そこから非OPEC産油国の供給量を控除したものをOPEC需要量(Call on OPEC)として、OPEC生産量を決定していた。考え方はOPECプラスも変わらないが、意思決定については、全加盟国で合意できないことが多く、機動的な対応とは言えない状態だった。その意味で、毎月ウェブで主要8カ国が会合し、生産協定を見直す体制は、カルテル組織として一種の「進化」と言えるかも知れない。
OPECプラスは、米国のシェール増産・最大産油国化に対抗するため、16年秋、サウジアラビアとロシアを中心に設立された。OPEC加盟国13カ国とロシア・カザフスタンなど非加盟産油10カ国の協力組織である。世界第2位の産油国であるロシアと第3位のサウジによる2位・3位連合、あるいは「石油同盟」とも言える。世界の石油生産シェアも、OPECだけで32%だったものが、OPECプラスで54%となった。17年初めに生産調整を開始、20年には新型コロナウイルス禍の減産方針を巡って一時決裂したが、その直後、日量970万バレルという史上最大の減産合意を実施し、パンデミックによる需要激減を乗り切った。世界的な脱炭素化に対応するため、またロシアの戦費調達のために価格維持の方針を優先した時期もあった。
しかし、ウクライナ戦争の副産物である「世界の分断」やグローバルサウスの勢力伸長による気候変動政策の世界的退潮で、最近は産油国がかつての自信を取り戻し、長期を見据えた「シェア回復」方針に回帰したように見える。すなわち、途上国の経済成長に伴う「オイルピーク」(石油需要が最大になる時期)の先送りを前提に、当面はシェア確保によって需要量増加に伴う石油増収を図ることが有利との考え方に変化したのではないか。特に、サウジやアラブ首長国連邦(UAE)といった生産余力を有する産油国ではその傾向が強い。
需要予測に大きな差 中国の不気味な動き
ただ、この点については、参加国には米国を中心とする経済制裁に直面し、生産量拡大は難しく高価格を望むロシア・イラン・ベネズエラも含まれている。今回の減産緩和も規模を巡り、サウジとロシアが対立したと言われており、留意が必要だ。
増産姿勢を示すサウジは慎重に対応している。今回の合意では、増産幅は前月(日量13・7万バレル)据え置きで、前々月(日量41・1万バレル)の約3分の1だった。しかも、過去に違反増産を行ったイラクやアゼルバイジャンなどに対しては、24年以降の合意違反の超過生産分を生産量から相殺することを約束させている。
今後の石油需要の伸びについて、国際エネルギー機関(IEA)は25年を前年比日量70万バレル増、26年を同60万バレル増との予想に対し、OPECは25年同130万バレル増、26年同140万バレル増と予想しており、倍近い差がある。OPECの強気見通しに従えば、OPECプラスの増産方針も理解できる。そもそも、双方の短期見通しのズレも、オイルピークの時期やピーク数量といった長期見通しの想定のズレに起因している気がしてならない。
一方、中国は現在、石油の戦略備蓄を積み増していると言われている。多くの関係者が需給緩和・価格下落を予想する中で積み増ししているのは、理由が分からず気味が悪いが、サウジの増産姿勢の要因となっていることは間違いないだろう。今後の原油価格動向は「不透明」としか言いようがない。


















