井伊重之/産経新聞 客員論説委員
高市政権がメガソーラー支援の停止と規制強化に踏み切った。
再エネ偏重の課題が顕在化する中で、政策の現実性を問い直す動きだ。
政府が大規模太陽光発電所(メガソーラー)に対する支援の停止を正式決定した。環境影響評価(環境アセスメント)の対象となる基準も厳格化する。政府や自治体は法令に違反した事業者からの電力調達を避け、民間企業にも同様の対応を求めるという。政府は2011年の東京電力の福島第一原発事故後、太陽光や風力など再生可能エネルギーの普及を積極的に進めてきたが、今回の規制方針は、優良な再エネ事業者を育成し、現実的な再エネ政策に転換する一歩としたい。

政府は昨年12月に発足した「大規模太陽光発電事業に関する関係閣僚会議」(議長・木原稔官房長官)で、メガソーラーに対する規制強化を決めた。規制の柱は27年度以降、新たなメガソーラーに対する補助を停止することだ。出力規模が1000万kW以上の地上設置型の事業用太陽光発電施設は、市場価格に一定額を上乗せする補助の対象外とする。また、工事前に環境アセスを義務づける発電施設の出力基準を引き下げるほか、出力10kW以上の事業用発電施設は第三者が設計内容をチェックする制度なども導入する。
福島第一原発事故を受け、当時の旧民主党政権は脱原発に向けた新たな電源として再エネに注目した。その普及を後押しするため、太陽光や風力などの再エネ事業者が発電した電力を電力会社が固定価格で買い取る「固定価格買い取り(FIT)制度」を導入。22年度には市場価格に連動し、一定の補助を支給する「フィードインプレミアム(FIP)制度」を採用した。FITに伴う賦課金額は年々増え、25年度には初めて3兆円に達する。これは電気料金の1割以上を占めている。
国土が狭い日本には、メガソーラーの建設に適した新たな用地は残り少ない。すでに国土面積当たりの太陽光発電の導入量はドイツに次ぐ世界2位の水準で、1k㎡当たり200kW近くに上っている。最近では山林や山裾などを切り開いて建設されるメガソーラーが増え、景観や自然環境の破壊のほか、樹木の伐採に伴う土砂崩れなど災害リスクに対する懸念が強まっている。これに伴い、全国各地のメガソーラー建設計画を巡って自治体や周辺住民との摩擦が激化している。
政策を歪めた割高買い取り 遅きに失した規制強化
特に北海道の釧路湿原国立公園周辺や千葉県鴨川市に計画されているメガソーラーに対しては、地元住民だけでなく、全国的に反対運動が広がるなど、社会問題化している。こうした中で高市早苗首相は、昨年秋の自民党総裁選で「メガソーラーに対する補助停止」を掲げ、高市政権の発足で具体的な規制強化に乗り出した。
それでも日本国内には約9000カ所のメガソーラーがすでに稼働しており、今回のメガソーラー規制は遅きに失した印象が拭えない。なかでも13年度から15年度にかけて大量に建設されたメガソーラーには割高なFITの買い取り価格が設定されていた。このため、国民が負担するFIT賦課金の過半は、この3年間に稼働を始めた発電施設による買い取りとされている。脱原発を急いだ末のずさんな制度設計が、健全な太陽光発電市場の育成を阻んできたのは間違いない。
その後、政府も割高な買い取り価格の引き下げを進め、太陽光で発電した電力の現在の買い取り価格は、1kW時当たり9円前後に低下している。これはFIT導入当初の買い取り価格に比べて4分の1以下の安値水準だ。これに伴い、再エネ事業者もFITに依存せず、需要家に直接電気を販売する「非FIT」の開発が広がっている。なかでもIT企業は再エネ由来のグリーン電力を求める傾向が強く、価格が割高でも太陽光による電力を購入する流れが広がっている。もはやメガソーラーは補助に頼らないビジネスモデルを確立したと言える。
実現見込めぬ電源構成目標 当面は火力が中心に
何より問題なのは、今回のメガソーラー規制は、太陽光など再エネの普及を目指す政府のエネルギー政策と矛盾する恐れがあることだ。
政府が昨年2月に閣議決定した第7次エネルギー基本計画によると、40年度の電源構成目標として再エネ比率を4~5割、原発比率を2割、そして火力比率を3~4割とした。再エネと原発を合わせた脱炭素電源で全体の過半を占め、石炭やLNGなどの火力比率を大幅に引き下げる方針だ。再エネのうち、太陽光は23~29%に高めるとしており、現行の1割程度に比べて2~3倍も大幅に増やす。政府は折り曲げられる「ペロブスカイト型」の国産太陽光パネルを屋根などに大量導入して太陽光比率を高める考えだが、その価格を含めて将来像はまだ不透明である。
実際、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が昨年4月にまとめた向こう10年間の電力供給計画によると、34年度における電源構成の見通しは再エネ比率が33%、原発比率も約1割にとどまり、火力比率が依然として56%と主力電源の地位を占めていると見ている。これは再エネの弱点とされる系統や送電網の整備遅れも響いているが、再エネ比率が過半を占めるとする政府の40年度における電源構成目標とはほど遠い姿だ。原発比率を現行の2倍に相当する2割に引き上げる計画も、現状の原発政策を継続していては達成が難しいだろう。
エネルギー基本計画に盛り込まれた再エネ比率を高める目標は、温室効果ガスの排出目標を達成するために人為的に設定されたものだ。再エネを導入すればするほど、発電量の変動を抑えるために火力による出力調整も不可欠となる。暮らしと産業を支えるエネルギー政策は、脱炭素に向けた理想論を掲げながらも、厳しい現実にも正面から向き合う必要がある。政府は火力に対する安定投資を促すため、現実的な電源構成目標を示すべきである。



















