A LPガスの商取引を巡りさまざまな困難な課題がある中で、今回の省令改正に至るまでのプロセスはあくまでも改革の第一歩であり着地点ではない。戸建ての無償配管問題の議論が先送りされたことは大きな課題だし、改正省令案で罰則を含む義務・規定が制定された項目がある一方で、情報開示については罰則なしの努力義務にとどまってしまった。さらに対象は新規契約だけで、既存の契約者をどう守るのか見えてこない。消費者団体は「消費者被害」と呼んでいるが、資源エネルギー庁もLPガス業界も、一連の議論の中で消費者に不利益な点があることを認めていた。それにもかかわらず、新規よりも圧倒的に多い既存契約について不利益を放置してしまうのは納得いかない。期限を設け、既存契約も新規と同様の扱いにしていただきたいと考えている。
B エネ庁がよくここまで踏み込んだなというのが率直な感想だ。17年の省令改正で三部料金制などを努力義務として求めたが、事業者が全く対応しなかったということもあって、エネ庁が重い腰を上げ罰則規定も辞さない省令改正に踏み切った意義は大きい。最も評価しているのは、国土交通省や公正取引委員会など他省庁に協力を働き掛けたことだ。業界側は、間違いなく17年改正時よりも緊張感を持って受け止めているし、きちんと取り組もうとする動きが以前よりも出てきている。
C 前回の省令改正から見れば、大手のニチガスとTOKAIをWGに呼んで話を聞いたことを含め本当に大きく踏み出したと思うし、どこまで実効性が確保できるかに注目している。というのも、3月10日までWGの中間取りまとめと省令改正案に関するパブリックコメントが実施され、いよいよ4月に公布されるのを前に、一部事業者が集合住宅の契約切り替えを盛んに行っていると聞く。エネ庁はそれにどう対応するのか。3月中に見せしめのような対応をするのではないかという噂もあったが、そのような動きもないし、実効性については試行錯誤が続くのかな。