電力需要の大幅増を見越し、米国ではビジネスベースでDC隣接型「ワット・ビット連携」が拡大中だ。
翻って日本は制度面などの障壁が高いが、GX戦略で日本版モデル確立を目指す動きが増えつつある。
AIの急速な普及に伴い、膨大な情報処理のためデータセンター(DC)の建設需要が伸びている。データ処理量が多すぎるため、DC内のサーバーやGPU(画像処理半導体)といった装置類が大量の電力を消費。DC由来の電力需要増を解決する策の一つとして、電力供給とデータ処理を隣接地で取り組む「ワット・ビット連携」に注目が集まっている。日本国内では構想段階だが、海外では現実のビジネスとして動き始めた。
例えば米国では、既存の原発からDCに大電力を直接供給する契約が成立した。象徴的な事例がアマゾンとタレン・エナジー(テキサス州)が昨年6月に結んだ長期契約だ。タレンが保有するペンシルベニア州のサスケハナ原発から、アマゾンが最大192万kWの電力を購入するという内容だ。さらに両社は小型モジュール炉(SMR)の建設も検討し、既存原発の発電容量を拡大する計画だという。工場や家庭など特定多数に安定供給する、従来の電力供給モデルを大きく変革した事例だと言える。ただ、規制当局との調整が難航した経緯があり、制度設計の課題も浮き彫りになった。
米国で契約続々 DC隣接型に熱視線
そもそもなぜワット・ビット連携と呼ぶのか。電力(ワット)とデータ(ビット)を連携させてエネルギー利用を最適化するとの構想がその由来だ。
従来は遠隔地にある発電所から送電線を使い、需要地である都市部へ送電している。電圧と距離によるが、ざっくりと送電量の4~5%が失われるといわれている。また、現状はDCでデジタル信号を処理する際は電気信号でやりとりし、その際に大量の電力を消費する。送電時の電力損失をなるべく抑えた方がコスト面でも得になるため、原発などに隣接させる形でDCを建設して発電した電力を直接送れば送電時の損失を抑えられる。この発想からワット・ビット連携が注目を集めるようになったわけだ。
実用化が進む米国の事例に話を戻そう。同国の電力大手コンステレーション・エナジーが進めるスリーマイル島原発1号機(ペンシルバニア州)の再稼働計画がある。再稼働後に生み出される約83万kWの電力について、コンステレーション社はマイクロソフトとの間で20年間の売買契約を締結。マイクロソフトは全電力を同社のDCで使用する方針だ。この事例はDCと発電所が隣接するわけではないが、原発が生み出す大電力をDC専用に用いる点でワット・ビット連携の一つといえよう。
原発関連だけではない。再生可能エネルギー分野ではグーグルが主導するエネルギーパーク構想が注目を集めている。太陽光発電と蓄電池、DCを同一敷地に集約するもので、総投資額は約200億ドル(約3兆300億円)規模に上る見込みだ。
グーグルやアマゾンに加え、大手IT企業の一角を占めるメタ社も同様の計画を公表している。今年1月には米電力大手ビストラ社やSMR開発企業のテラ・パワー社、同じくSMRスタートアップのオクロ社との間で電力調達や開発支援を含む契約を相次いで締結した。
メタ社はオハイオ州で「プロメテウス」計画を進めている。生成AIなどによるデータ処理需要に対応するための次世代DC構想の通称で、AI専用に最適化した巨大な電力消費型施設を指す。1拠点で原発1基分に匹敵する100万kWの電力を消費する巨大施設となる。
メタ社はビストラ社の原発から210万kW超の電力を20年間にわたって購入し、DCの電力需要を賄う計画だ。他社のように単一発電所から調達するのではなく、複数の電源から広域的に需要を支える形を取るのが特徴だ。点在する原発が巨大なDCの〝基盤インフラ〟を支える仕組みとなる。
メタ社は次世代型原発の支援に力を入れる方針も打ち出している。テラ・パワー社が開発するナトリウム冷却高速炉とオクロ社の最新原発からも電力を調達し、合計で最大500万kW超の電源を確保。DC用の膨大な電力を安定調達する考えだ。








