<メディア人編> 大手A紙・大手B紙・経済C誌
再エネタスクフォースの中国企業ロゴ問題が炎上。
他方、大半の記事は表面的な内容にとどまる。
―内閣府の再生可能エネルギータスクフォース(TF)問題では、渦中の自然エネルギー財団への誹謗中傷もあるようだ。
A紙 2020年末にTFができた当初、一部の一般紙の地域面で記事が出ていた。TFは容量市場やコネクト&マネージ、市場高騰問題などから入り、システム改革にも独自提言を突き付けたが、後追い記事はほとんどなかった。それが中国国有企業のロゴ一つでここまで盛り上がるとは。他方、大林ミカ氏がTF構成員を辞任した会見の報じ方は地味で、温度差があった。
B紙 東京新聞は掲載せず、毎日や日経はベタ記事だったかな。一方、読売は政治面で取り上げた。彼らは政局として、総選挙後のポスト岸田といった文脈で、河野太郎規制改革相の問題として見ている。
A紙 経済部の掘り下げた記事が欲しいところだが、見当たらない。一部では右の論客が、アジアスーパーグリッド構想が実現したら必然的に中国に依存すると警鐘を鳴らしているが、そんなわけはない。中国嫌い故の乱暴な議論はどうかと思う。
多方面で政策介入 明確な権限はなし
B紙 発足当初の議論は興味深かった。制度をがらっと変えるという河野氏の意思が見え、大林氏も頑張っていた。さらに途中で河野氏の私的勉強会から位置付けが変わり、TFの問題意識に対して他省庁が丁寧な資料を作っていたことが印象的だ。
C誌 私はTFに付き合う必要はないと思った。電力の構造を無視して素人が好き勝手話す会だったので。でもそれを分かる記者は少なかったし、取り上げるべきかどうかの判断自体、今のメディアにはできないのでは。
B紙 他方、私的な勉強会がいつの間にか格上げされていたことは、どうなのかとも思う。
A紙 その点は国民民主党が問題視している。TFは大臣告示で設立したが、河野氏は「私的諮問機関ではなく、規制改革会議の一段下」などとふわっと説明しているようだ。法的根拠がある審議会よりも動きやすいのだろうが、明確な権限がないのに政令や省令を変えさせ、頻繁に各省庁に宿題を出していた。
C誌 卸電力市場がスパイクした時にキャップをはめ、インバランス料金を分割払いできるようにしたことは特に異常だった。自由化でこうした局面はあり得るわけで、そこで大損した人を助けろと自由化推進側が主張するとは、一体何なのかと思った。
A紙 TFを象徴した出来事だったね。自民党の再エネ議連も乗っかった。いかに変なことを言っているのか、本来は経済部が見ておくべきだった。エネ庁電力・ガス事業部長との応酬も見ものだったのにな。
C誌 エネルギー基本計画の議論に首を突っ込むのもおかしい。政府のガバナンスがぐちゃぐちゃなことを示している。改革を推進するメンバーとして適切な人選かも非常に疑問だ。
B紙 冒頭の話題に戻すと、今、メディアはネットの声に乗っかろうという発想が強過ぎる。これは本質的な課題で、表面だけを追い掛け、エネルギー政策の現状に切り込まないことは残念だ。また、再エネの審議会があまりにも多くて、全体像が見えにくい。これを機に、俯瞰した記事が書けるよう各議論がどう関連するのか、整理が必要だ。
C誌 根本的にTFの成り立ちや目的、構成員のバックグラウンドを把握し、全体を俯瞰して相関図を作れるような記者がいない。だが、雑誌やオンラインメディアに比べて新聞の影響力は絶大だ。エネルギーの話題はもう少し深く取材してほしい。
再エネと原子力 対立構造から脱却を
―また、排他的経済水域(EEZ)まで洋上風力の設置を拡大する「再エネ海域利用法改正案」の閣議決定や、陸上風力を規制する「防衛・風力発電調整法案」といった話題もある。
C誌 EEZについては、そもそもそんな遠くに浮体式で設置しようという事業者はまずいない。予見可能性が低すぎるし、沖に出て共同漁業権が設定されていない地点は、着床式以上に同意を得るのが面倒なはずだ。
A紙 防衛省の件は、読売や産経が取り上げているね。防衛省は以前から各地のレーダーが風力で乱反射することを問題視し、防衛白書でも事前協議を求めるとアピールしてきたが、経産省などはあまり向き合わなかった。ただ、今回の法律案も結局調整だけでストップはかけられない。
B紙 いずれにせよ再エネの必要な規制が遅れた面はある。今は各紙能登地震などにリソースを割いているが、落ち着いたら再エネ問題をじっくり報じる局面もあるのではないか。
C誌 せめて日経はちゃんと書いてほしい。
A紙 再エネ開発問題の記事は増えてきたが、FIT切れで供給力が一気に落ちかねないという問題に関する記事はあまり目にしない。今電気が余り、半導体工場を誘致した九州は、原発新増設の必要も出てきそうだ。
―次のエネ基ではそうした現実的課題を取り上げてほしい。
A紙 再エネと原子力ほど互いに補完し合える電源はない。朝日は出力制御で再エネの電気が捨てられているといまだに書くが、原子力を絞るといった方法はある。対立構造ではない。
C誌 その通り。経団連元会長にインタビューした際、原発と再エネの対立はメディアの伝え方にも一因があると言われた。対立構造にないという前提で、記者には報じてほしい。
―再エネは原子力とも地域とも、共存共栄がキーワードだね。