【石油】ガソリン補助の段階的削減 混乱防止へ周知を

【業界スクランブル/石油】

石油元売り・販売業界は、難題に直面している。2024年11月決定の総合経済対策で12月19日と25年1月16日に約5円ずつ2段階の「ガソリン補助金」縮小が決まったことで、石油業界はサービスステーション(SS)などの小売価格への計10円前後の値上げが必要になる。一度に5円の2段階転嫁が可能か、消費者や需要家に受け入れられるかが、大きな問題だ。

業界全体で製品価格5円の価格転嫁は、月間収益約500億円に相当するから頭が痛い。対策には、補助金の段階的縮小と新年以降の延長がセットで明記されたが、報道では「燃料油価格激変緩和補助金」の延長だけが前面に出ており、縮小を報じる向きはごく少数。対策には2段階の補助率縮小は明記されたが、それが5円の値上がりに相当するとは書いていない。手取り増加と物価対策が目的の対策なので、物価上昇の話は書けなかったかも知れない。国民民主党にすれば値上げは「話が違う」ということになる。

補助金が縮小する直前の仮需(買い急ぎや駆け込み購入)も心配だ。石油商社や独立系特約店がタンクローリーを手配したとの噂も聞こえてくる。直前は発注が急増するだろうし、SSには給油待ちの行列ができるであろう。現場で混乱が起きないか不安だ。

補助金は、灯油や軽油、重油、ジェット燃料向けにも支給されている。このため暖房需要期の灯油、ハウス栽培や漁船で使う重油の値上げも憂慮される。トラックやバスなどの物流コストの上昇、航空運賃のサーチャージ値上げもありうる。国民は穏やかな新年を望んでいる。混乱防止には、製品価格値上げの事前周知が必要不可欠だ。(H)

【コラム/1月20日】仕掛けの24年から仕込みの25年へ

加藤真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

2025年が明けて、はや3週間ほど経つが、国内のエネルギー業界は昨年末までの慌ただしさから一服して、落ち着きを見せている。
昨年末には、GX2040ビジョン、第七次エネルギー基本計画、地球温暖化対策計画と、令和の政策3本柱とも言える政策の原案が提示され、パブリックコメントが1月下旬まで行われている。

24年は、その他の制度設計も忙しなく行われてきたことは、このコラムでもお伝えしているが、今回は、昨年の振り返りと今年の展望を記していく。


24年の審議会はどのようなものだったか

著者は、毎月、経産省(資源エネルギー庁含む)と環境省を中心に審議会の動向を追っているが、24年の1年間の特徴を整理してみた。

ご存知のとおり、各審議会は、毎回、複数の議題の報告や決議が行われているが、それらを各月、電力のバリューチェーンとその他関連キーワードで分類してみた。全体的にバランスの取れた議論が展開されているが、カーボンニュートラルや脱炭素が、ある意味、デファクト的に織り込まれるようになっており、全体に占める割合も2割を超えている。

電力バリューチェーンでは、やはり再エネの話題が多く、それに紐付く系統増強や運用面が関わることから送配電分野の議論も活発である。


24年度第三四半期は取りまとめと足元の制度の並行運用の季節

直近の四半期である24年10〜12月は多くの取りまとめが行われたほか、足元の制度設計や例年通り、多くの入札が行われた。

第3四半期の政策・制度設計の状況を見ると、大きく4つのポイントに整理される。

まずは、今後の政策の柱に関する取りまとめ作業・議論が加速したこと。言わずもがな、上述の3つの政策・計画が取り纏められたことが挙げられる。他にも、付随して26年度から本格運用が始まる排出量取引制度の制度設計や同じく26年度から実行フェーズに入る地域脱炭素のあり方、政府実行計画、ペロブスカイト太陽電池に代表される次世代太陽電池の戦略、30年度半ばから後半にかけて排出ピークを迎えるとされる使用済み太陽光パネルのリサイクルのあり方等が整理された。

2つ目は、足下の制度設計・運用は着々と進展していることである。例えば、昨年の通常国会で成立・公布された水素社会推進法やCCS事業法の具体設計や、事業用のFIT・FIP太陽光発電を卒FIT・FIP後も長期に活用するための新たな認定制度、託送料金レベニューキャップ制度の第1次規制期間初年度の期中評価等が挙げられる。

転換期の世界の勢力図〈上〉ウクライナ・中東で新展開

【ワールドワイド/コラム】国際政治とエネルギー問題

2024年は分断と統合が同時進行した。BRICSは拡大する一方、G20(20カ国・地域)あるいはグローバルサウス諸国が目指す方向は一つではない。エネルギー動向に関してはクリーン化の流れは変わらない中で、エネルギー価格は横ばいで推移した。その中で原油価格動向を見ると、OPECプラスは12月5日、閣僚級会合を開催し、日量220万バレルの自主減産に関し、減産幅の縮小開始を25年1月から4月へと延期することを決めた。

エネルギー資源の増産を唱える米国のトランプ次期大統領就任後の原油価格への影響を見定める構えだ。米国新政権は、エネルギー開発の規制撤廃と再生可能エネルギー向けの税額控除廃止を打ち出しており、燃料供給増は中国の景気減速を主因とする燃料需要の停滞と相まって石油価格を下落に導く恐れがある。他方、産油国であるイラン制裁の強化で供給を引き締める可能性も指摘され、トランプ政権の政策がエネルギー価格にどう影響するのかが読みづらい年明けとなった。

では、国際政治の主要な懸案であるウクライナと中東に対し、25年、国際社会はどう対応しようとするか。ウクライナに関しては、トランプ氏の再登場で、ロシアが侵攻を断念する可能性は基本的に遠のいた。日々の戦闘がなくなり、紛争凍結のシナリオはあり得るとしても、ウクライナが奪われた領土を取り戻すことはなくなった。未来志向で、ウクライナへの侵攻を許してしまった過ちを繰り返さない方策を考えることが重要である。ウクライナ国内に西側諸国の部隊を派遣し、ウクライナのNATO(北大西洋条約機構)加盟構想を維持すれば、ロシアが再び攻撃することは防げる。換言すれば、こうした措置が採られない限り、紛争凍結の後、ロシアが再びウクライナを攻撃するのを抑止することはできない。

目を中東に転じると、中東地域の鎮静化のシナリオが進行している。ガザでは、鎮静化の兆しは既に現れている。イスラエルにはもはや攻撃する標的が多くは残存していない。多くの指導者を殺害し、トンネルを爆破し、ミサイルや兵器の保管場所を破壊した現在、イスラエルにとって大規模な軍事作戦は終了した。

ガザとは異なりレバノンについては、いまだそこまでには至っていないが、早晩同じ状況がもたらされる公算が大きい。イランは、イスラエルにとって大敵であり続けるが、両国は国境を接しておらず、エネルギー問題との接点でいえば、両国の軍事作戦の展開により、ペルシャ湾の原油航行に支障を来さない限り、重大な原油供給問題へのエスカレートは考えにくい。

注目がシリアに移るや否や12月8日、反政府軍の進攻開始後わずか12日でアサド政権が崩壊した。ダマスカスの制圧はシャーム解放機構(HTS)が主導したが、国内勢力の分布はモザイク状態である。新たな国造りには紆余曲折が予想され、注視する必要はあるものの、国際エネルギー供給の基本的構図は当面変わらない。

(須藤 繁/エネルギーアナリスト)

「死の谷」にとらわれる欧州石油メジャー

【ワールドワイド/コラム】海外メディアを読む

英紙フィナンシャルタイムズは2024年12月11日、「BPとシェルは『死の谷』から脱出するため電力事業の野望を抑制」と題する記事を発信した。記事では、欧州の石油メジャーであるBPとシェルが、電力業界の大手になるために5年間で合計180億ドルを費やしたものの、現在では進捗の遅れと懐疑論の広がりを受け、電力事業を縮小させている実態について報じている。

シェルは19年に世界最大の電力会社になるという目標を掲げ、30年代までに電力収入が石油・ガスからの収入と同等になるとした。BPは翌年、大胆な移行計画を打ち出し、30年までにグリーンエネルギーへの支出を10倍の年間50億ドルに増やし、再生可能エネルギー事業を20倍の約5000万kWに拡大すると約束した。

しかしその後、シェルは約118億ドル、BPは約68億ドルを電力事業に費やしたものの、株主の期待に応えるほどの優位性を発揮できず、既に多くの事業で規模を縮小させている。特に、金利上昇やインフレのあおりを受ける洋上風力開発については、シェルは新規事業から撤退、BPは日本のJERAとの合弁事業に移行させると発表している。他の欧州の石油会社も同様に電力や再エネ事業の見直しをしている。あるエネルギー業界のトップは、これらの石油会社は、従来の化石燃料支持派の株主と、新たな気候変動支持派の株主の間にある「死の谷」にとらわれていると述べた。

現在の株主はグリーン比率が20%に達した時点で売却するだろうが、新規株主はグリーン比率が50%に達するまで買わないので、その間に「死の谷」があるのだという。

両社の戦略の変化は、上場石油会社がエネルギー転換を行うことの困難さをあらわしている。

(大場紀章/ポスト石油戦略研究所代表)

【ガス】天然ガス復権が世界的潮流 どうする日本?

【業界スクランブル/ガス】

一方向に極端に振られた振り子は、バランスを取り戻すために揺り戻しを起こすものだ。まさに、脱炭素化の動きがそうした状況にある。典型的な事例がEVの勢いの鈍化だ。欧米自動車メーカーは極端なEV移行戦略からハイブリッドを主力化する現実路線へと軌道修正を進めている。

天然ガスを取り巻く環境も同様だ。トランプ次期米大統領は天然ガスの段階的廃止などバイデン政権下で制定された気候変動関連法や規制を見直す意向を表明している。豪州政府は2024年5月に「将来のガス戦略」を発表し、再エネへの移行を支えるために、50年以降も天然ガスの役割を維持するバランス戦略を明確に打ち出した。

欧州でも脱炭素化を推進しつつエネルギー安全保障を実現するため、再エネと天然ガスを組み合わせたバランス戦略へ移行、LNG輸入を増加させている。アジアも経済成長と脱炭素化の両立に向けLNGを将来の重要なエネルギーと位置付けている。上流側のシェルやエクソンモービルも、脱炭素化推進と収益性確保を両立させるため、再エネ投資一辺倒を改め天然ガス開発投資を復活させている。

一方、日本を見ると、将来の天然ガスの位置付けがいまだ明確になっていない。現在、「第7次エネルギー基本計画」策定に向けて作業が進められている。今後エネルギー需要拡大が予想される中、原子力発電所の再稼働は進んでおらず、日本ガス協会の内田高史会長が10月の記者会見で述べたように、天然ガスをエネルギー安定供給と脱炭素化実現の「最有力の手段」として、エネ基に明確に位置付けるべきである。(G)

【新電力】電源の脱炭素化へ FIP活用の着想に注目

【業界スクランブル/新電力】

温室効果ガスの削減目標として、2035年に13年度比60%減、49年に73%減という案が示された。カーボンニュートラル達成に必要な削減のレベル感を、数字に落とし込んだ形である。現行のエネルギー基本計画は、30年に13年度比46%削減するという21年の地球温暖化対策計画をにらみながら策定されたものだが、今回、さらに踏み込んだ目標の目線案が出たことで、第7次エネ基における再エネ・原子力比率に求められる水準が定まったと言えるだろう。現行エネ基の達成が不安視される中、実効性のある計画と対応が出てくることを期待したい。

脱炭素電源の導入促進につながるのは「Non―FIT/FIP」を活用した、持続可能性の高い再エネの活用である。その実現のために小売電気事業者が果たす役割は幅広くあるが、FIT電源とは異なり非化石価値を需要家が自ら評価し、自らに帰属させる「Non・FIT/FIP」の活用を促すようなビジネスモデルの推進が、より重要視されていくことになると考えられる。

FIPはいまだFITに対して2%程度の導入量にとどまっており、その活用の難しさが数字にも表れている。これを受け、政府は、国民負担を増やさないことに留意しながら、25%程度になるまでFIPの活用促進を支援することを表明した。 発電事業者や金融機関による理解促進もさることながら、最終的にその電源を活用する小売電気事業者が、FIP電源を活用してどのようなメニューを需要家に届けることができるのか―。エネ基の改定を横目に、注目していきたいところだ。(K)

COP29の苦い結末 1・5℃目標の「死」は近い?

【ワールドワイド/環境】

2024年11月にアゼルバイジャンで開催された地球温暖化防止国際会議・COP29の最大の焦点は25年以降の新規合同数値目標(NCQG)を決定することであった。

NCQGの議論において途上国は自分たちの緩和、適応行動、損失と損害を含め、少なくとも年間1・3兆ドルを先進国が支払うこと、1・3兆ドルは譲許的な公的資金であること―などを要求した。対し先進国は、NCQGのドナーを能力のある途上国にも広げること、民間資金を含む多様な資金源から調達すること、受益国を小島しょ国、低開発国などのぜい弱国に絞ること―などを主張。具体的な資金援助目標については交渉終盤に2000億ドルという数字を提示したが、途上国は「冗談か?」と相手にしなかった。

最終的な合意は、①全ての関係者に対し、途上国への気候変動対策のための資金を35年までに、官民全ての資金源から年間少なくとも1兆3000億米ドルまで拡大できるよう協力するよう求める、②先進国が主導する形で、途上国に対し35年までに少なくとも年間3000億米ドルの気候行動目標を設定する―というものだった。1・3兆ドルに言及はされたものの、資金ソースも資金の出し手も大きく拡大され、途上国の主張する先進国からの支援は3000億ドルにとどまったため、インドなどは「この合意を受け入れられない」と強く反発した。他方、先進国はCOP28に盛り込まれた化石燃料からの転換、野心レベルの強化などのフォローアップといった緩和行動の強化を強く主張していたが、全く盛り込まれなかった。

このようにCOP29は先進国、途上国双方に強い不満を残す苦い結末となった。それでも合意したのは25年1月にトランプ政権が誕生し、温暖化防止に関する国際合意が難しくなるとの計算が働いたと言われている。しかし3000億ドルという数字の実現可能性も決して楽観できない。トランプの米国は資金拠出を一切しないだろうし、日本やEUが米国の肩代わりもできない。先進国からの資金援助が積み上がらなければ途上国のNDC(国別目標)の野心レベル引き上げも期待できない。もともと実現可能性のなかった1・5℃目標の「死」が、いよいよ明らかになるだろう。

(有馬 純/東京大学公共政策大学院特任教授)

英国で電力脱炭素化目標前倒し 道筋示されるも課題浮き彫り

【ワールドワイド/市場】

2024年7月の英国総選挙で政権交代を果たした労働党は、30年までの電力部門の脱炭素化を掲げている。化石燃料依存からの早期脱却を図り、低廉な電気料金を実現するとしている。

目標までの期間が短い中、労働党は政権発足直後から、再生可能エネルギー支援制度の予算増額や導入促進に向けた施策の見直しなどを実施している。

再エネプロジェクトへの投資を促進するため、再エネ発電公社の設立も予定している。公社の役割は、着床式洋上風力など成熟技術に民間プロジェクトの開発支援とサプライチェーンなどへの投資、グリーン水素製造や浮体式洋上風力などの未成熟技術に、先行投資・保有を通じた導入支援が想定されている。

他方、英国では10年代に老朽化した石炭火力や原子力が退役し、洋上風力を中心に再エネの導入が進んだが、調整電源としてのガス火力の重要性が増している。23年は発電シェアの約3割をガス火力が占めた。

前保守党政権はエネルギー安全保障を念頭に、現実路線として脱炭素目標を35年に設定、ガス火力の新設も厭わないとしていた。目標が前倒しされた現在、調整力の脱炭素化を短期間で如いかに実現するかが課題だ。

新政権に30年までの道筋を諮られた系統運用者は、11月に報告書を発表した。そこでは、洋上風力を最大限導入しながら調整力を需要側のフレキシビリティや電力貯蔵に頼るシナリオと、洋上風力をある程度導入しながら調整力をCCS(CO2回収・貯留)技術や水素発電の小規模な実用化に頼るシナリオの2通りが示された。いずれのシナリオも電化の急速な進展、国際連系線の活用、一部既存原子炉の運転延長、陸上風力の導入量倍増、太陽光の導入量3倍増、蓄電池の導入量4倍増などをベースとしている。既存のガス火力は厳冬期などにおける調整力の最終手段として維持されるが、年間発電シェアは5%以下となる想定だ。CCSや水素の実用化が前提となるが、既存ガス火力の脱炭素転換が本格化するのは30年以降とされる。

これらのシナリオでは30年時点の電力部門の排出量は500万CO2換算t程度となる見込みで、目標のおおよその達成とされる。報告書は、サプライチェーンを破綻させないよう、いかに必要技術の導入を同時並行で進めるかが課題と指摘している。英国政府は報告書を参考に近く政策をまとめるとみられ、その行方が注目される。

(宮岡秀知/海外電力調査会 調査第一部)

【電力】電力政策を歪ませる 不都合な真実

【業界スクランブル/電力】

「『原発〇基分の再エネ』と繰り返し報道される割には、石炭火力や原子力が減らないのはなぜ?」「なぜ欧州のように日本では洋上風力の開発が進まないの?」「今や一番安い太陽光発電(PV)が、もっと導入されないのはなぜ?」「再エネ普及に不可欠な送電網の拡充が遅れるのは誰のせい?」―。新たなエネルギー基本計画の議論と並行して、ちまたではこうした声が飛び交う。

本誌の読者なら「何をバカな」と言うレベルの話かもしれない。しかし考えてみると、例えばPVは設備能力の15%しか発電せず、火力や蓄電池がないと使えないと知る人は世の中に1%いるだろうか。PVの増加で昼間の電気は余りはじめていること、日本の洋上風力の設備利用率はせいぜい30%程度で欧州北海沿岸の約6割しかないこと、そしてその設備利用率の低さゆえ、大需要地までの長い送電線に投資をしても採算が極めて悪いことなどもほとんど知られていない事実であろう。

電力業界に関わる者ならば当たり前の前提であるにもかかわらず、政策決定の場ではほとんど議論されず、報道もされない。当事者の一角であるはずの大手電力会社は寡黙である。今や自ら風力・太陽光事業に関与するからなのか、再エネに否定的な発信は印象が悪いからなのか。はたまた、この手の話は業界出身のA氏やB氏に任せておけば良いとでも考えているのか。

政治家や官僚は“再エネ”という美しい言葉を決して手放さそうとせず、彼らから本当の話は聞こえてこない。このようにして、電力政策は軌道修正されるどころか、ますます歪んでいくような気がするのだ。(M)

急速な石油需要増の鈍化 中東情勢不安定化に懸念

【ワールドワイド/資源】

中国石油天然気集団(CNPC)傘下のシンクタンクCNPC―ETRIが、2024年12月12日に「世界・中国の石油展望」について報告した。中国の石油の輸送燃料需要はピークに達し、25年の需要は7・7億t(日量1546万バレル)と予測した。石化原料向けの需要は伸びているがEV販売シェアが自動車販売の5割を超え、LNG燃料トラックが増加したことで軽油需要の減少ペースが加速し、同機関の過去の予測に比べピークは5年前倒し、量も下方修正された。国家統計局によると1~10月の原油生産量は前年同期比2%増加したが、輸入量は3・4%減の日量約1109万バレル、精製処理量は2%減の日量1418万バレルだった。

中国の経済低迷、輸送分野のエネルギー転換、貯蔵インフラの充足などの構造的な要因による。公安局によると9月時点でEV、PHEV、FCV保有台数は1821万台で自家用車の5・5%に達した。ただし、輸送分野における石油代替の主役は天然ガス自動車である。石油消費の7割を輸入に依存(天然ガスは4割)しており、代替促進のため、自動車向けの天然ガス価格を軽油より低く統制した。その結果、天然ガス産地を中心にCNG車保有台数は600万台に増加。さらに近年の軽油価格上昇でLNG燃料トラックブームが起き、23年の販売量は20万台、保有台数は推計100万台に達した。

また原油、石油製品タンク増設により石油在庫は国家備蓄と商業在庫を合わせ米国並みの13億バレル(23年石油消費の約90日)前後で推移している。

さらに中国は30年排出ピークアウト目標実現のため、30年に原油精製処理能力上限を日量2000万バレル(23年は約1850万バレル)とする目標を設定している。精力的に製油所の新設を進めてきたが、27年以降の予定はない。政府は25年以降、日量4万~10万バレル以下の製油所50カ所以上、処理能力合計日量260万バレル相当の統廃合を段階的に進める計画だ。 中国は過去20年、世界の石油需要をけん引してきた。IEA(国際エネルギー機関)によると23年に世界の石油需要増加の8割に当たる日量170万バレルを占めたが、24年は15万、25年は21万と2割未満に減速する。次のけん引役と目されるインドの需要増加は日量20万バレル程度。急速な需要鈍化が一部資源国を追い詰め、中東情勢不安定化につながらないか懸念される。

(竹原美佳/エネルギー・金属鉱物資源機構査部)

【コラム/1月16日】原子力発電に関する世論の世界動向とわが国の課題

矢島正之/電力中央研究所名誉研究アドバイザー

最近、世界的に原子力発電を支持する世論が増大している。このことは、業界関係者には歓迎すべきものとして受け止められているものの、わが国の世論の実態を見ると、原子力発電に対するパブリックアクセプタンス(PA)は十分得られているとは言えない。本コラムでは、原子力発電に関する世論の世界動向とわが国における原子力PA向上のための課題について述べてみたい。

英国の調査会社Savantaが、20か国を対象に、2023年10月17日~11月14日に行った調査では、20,000人以上の回答者のうち、原子力エネルギーの利用への支持は46%、不支持は28%で、前者は後者の1.5倍以上となった(どちらか言えば支持、不支持を含む)。原子力への支持が不支持を上回る国は17か国で、世界で最も人口の多い中国とインドでは、支持が不支持の3倍以上となっている。エネルギー転換に際して重点を置くべき電源の選好に関しては、原子力は、陸上風力、木質バイオマス、CCS付きガス火力よりも高く、大規模太陽光よりも低い(大規模太陽光33%、原子力25%)。また、運転の安定性(信頼性)について肯定的な回答は66%に上る。そのうち原子力エネルギーの利用への支持は、不支持の4倍以上である。

原子力発電のコストについては、安価との回答が40%で高価との回答27%を上回っている。興味深いのは、過去に原子力発電の段階的廃止を決定したことのあるドイツ、日本、韓国、スウェーデンでは、安価との回答が高価との回答を大きく上回っていることである(ドイツ46%対20%、日本44%対15%、韓国51%対26%、スウェーデン54%対14%)。さらに、これらの国では、原子力は、大規模太陽光や陸上風力よりも安価と考えている回答者が多いことも特筆に値する。

また、健康への影響や安全性に関しては、回答者の79%が懸念していると回答しているものの、この回答グループでは、原子力エネルギーの利用への支持が40%と、不支持の33%を上回っている。さらに、原子力発電の利用国では、その維持を望む回答者は、廃止を望む回答者の3倍以上となっている。また、原子力発電を保有していない国では、新設を望む回答者は、禁止を望む回答者の2倍となっている。2023年12月のCOP28では、2050年までに世界の原子力発電能力を3倍にするという誓約が採択されたが、これは世界的な原子力に対する期待を反映したものといえるだろう。

原子力に対する支持が世界的に高まっているが、調査対象となった20か国のうち、不支持が支持を上回る国は3か国であり、それらは、日本、スペイン、ブラジルである。日本は、不支持40%に対して支持29%となっている。回答からは、わが国では、原子力の信頼性や安全性への懸念が大きいことがわかる。このことは、2011年における東日本大震災とそれに伴う原子力事故が影響しているようだ。

本調査からは、原子力PAの改善のためのヒントを得ることができる。調査回答では、世界的に、原子力発電の仕組みについて高い知識を有する回答者では支持が不支持を大きく(35%ほど)上回ることが示されており、知識の無い回答者では、支持と不支持はほぼ同数となっている。わが国については、原子力発電の仕組みについて高い知識を有する回答者では、支持と不支持がほぼ同数となっており、知識の無い回答者では、不支持が支持を20%ほど上回っている。このことは、原子力発電に関する理解レベルの深化が大変重要であることを示唆するものと言えるだろう。

ある目標達成のためには、一つではなく複数の手段を使うほうが効率的であることは明白である。一つだけの手段では、目標達成のための限界費用は著しく高くなるからだ。わが国では、CN達成のためには、再生可能エネルギーだけでなく原子力も主要な役割を担う。両者いずれかといった二項対立ではなく、利用可能な脱炭素電源は適切に活用していかなくてはならない。エネルギー転換を成功させるためには、必要となる技術の知識基盤の拡大と国民への教育が、必須条件となるだろう。


【プロフィール】国際基督教大修士卒。電力中央研究所を経て、学習院大学経済学部特別客員教授、慶應義塾大学大学院特別招聘教授、東北電力経営アドバイザーなどを歴任。専門は公益事業論、電気事業経営論。著書に、「電力改革」「エネルギーセキュリティ」「電力政策再考」など。

理想のSDV実現 遠く険しい道

【モビリティ社会の未来像】古川 修/電動モビリティシステム専門職大学教授・学長上席補佐

SDV(Software Defined Vehicle)には、いろいろなメリットがあると言われている。消費者にとっては、いちいちディーラーにクルマを持ち込まなくてもOTA(Over The Air)を利用して機能を向上させたり、新たな機能を取得できたりすることが挙げられる。また、自分の好みの特性にカスタマイズすることも可能となる。

自動車メーカー側にとっては、販売後も消費者とつながりを持つことで、継続的にいろいろなサービスを提供することで収益を得たり、運転データを取得・解析してその後の開発の指針を得たりと、新たなビジネスモデルの創出に寄与することも期待されている。しかし、このようなメリットを具現化するためには、さまざまな課題があることも事実だ。

SDVのメリット・デメリット

一つには、クルマの機能をソフトウエアで自由に設定できるという構造がもたらす、走行安全性の失陥への防護施策の困難さが挙げられる。ソフトのバグやハードウエアの欠陥、そしてサイバー攻撃などが、クルマの走行機能に直接影響することになるため、それが不安全性につながることを避けなければならない。そのためには、SDV機能を担うコンピューターのハードとソフトのシステム構成を工夫することが必要となる。SDVでは集中型のコンピューターの方がより柔軟な機能設定が可能となるが、上記の安全性の失陥につながる可能性は高くなる。コンピューターのハードとソフトをどこまで集約して、どの部分を分散させれば安全性の確保ができるかというシステムデザインの検討が必要である。

次に、ビジネスの観点からの課題として、車載コンピューターの容量をどこまで余裕を持たせるべきか、ということが挙げられる。これまでのクルマ作りでは、機能が満たされる最低限の容量にして、コストを低減するデザインが採られていた。しかし、SDVではバージョンアップや新機能追加のための余裕を持たせる必要があり、それにはコスト増を容認しなければならない。さらに、容量に余裕を持たせていても、スマートフォンなどの例でもわかるように、新たなソフトに対応するにはハードも刷新する必要がある。

もう一つ大きな課題は、国土交通省の道路運送車両法に基づくクルマの機能の認可への対応が挙げられる。例えばブレーキ装置など安全にかかわる機器は、モデルチェンジなどの際に同省の認可が必要となる。そのためには、その装置の試験データを添えて規定に適合させる手続きが必須であるが、ソフトの更新時に毎回その手間をかけられるのかどうか―、ということがメーカー側の課題となる。

このように、SDVの機能を柔軟にすればするほど、解決すべき壁はより高くなっていく。それゆえに、当面はSDVといってもナビゲーションシステムや表示系などの走行安全に影響の少ないものから取り入れていくことになると考えられる。そして、理想のSDVを実現させる道は遠く険しいものであり、その事実が現在の多くの自動車メーカーの技術開発陣を悩ませている。

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ふるかわ・よしみ 東京大学大学院工学研究科修了。博士(工学)。ホンダで4輪操舵システムなどの研究開発に従事。芝浦工業大教授を経て現職。

【インフォメーション】エネルギー企業・団体の最新動向(2025年1月号)

【三浦工業/新型のガス焚き小型貫流蒸気ボイラーでCN貢献】

ボイラーメーカー大手の三浦工業は、産業用熱源として使用されている主力製品「ガス焚き小型貫流蒸気ボイラSQ-AS型」をモデルチェンジし、「SQ-CS型」を25年3月から順次発売する。CS型は排ガス中のO2濃度を常時計測し濃度が一定になるよう制御する「O2センサ」を搭載したことが特徴。これにより、細かな燃焼調整が可能となった。さらに排ガスと給水を熱交換する装置「エコノマイザ」を改良することで、従来機より1%高いボイラー効率99%を達成したという。同社は新製品を通じて、カーボンニュートラル(CN)の実現に貢献していく構えだ。


【NEDO/液化CO2大量輸送に向けた実証試験の説明会】

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)はこのほど、工場や火力発電所などから回収したCO2を液化し貯蔵や荷役を経て船舶で運ぶ一貫輸送システムの確立に向けた技術開発の説明会を開いた。CO2を低コストで大量輸送する役割が期待される実証試験船「えくすくぅる」で、京都府舞鶴市と北海道苫小牧市の間を往復する試験を開始した。NEDOの布川信サーキュラーエコノミー部CSSチーム長は、輸送船用貨物タンクの開発や液化CO2を安定した状態で運ぶ技術などを追求し、CCUS(CO2回収・有効利用・貯留技術)の社会実装を促すことへの意欲を示した。


【岩谷産業/LPガス配送の合理化へ横須賀デポステを新設】

LPガス配送の合理化に向け、岩谷産業はこのほど、神奈川県横須賀市内のLPガス充てん所を改良し大型トレーラーを受け入れるデポステーション(ボンベ置き場)としての機能を新たに追加した。出荷機能を高めるため、24年4月に横浜市内に整備した根岸LPガス液化ターミナルと横須賀デポステとの間を、トレーラーが毎日2往復をめどにピストン輸送する。1車両当たり12.5tを積載する大型トレーラーを8台活用する予定で、輸送能力は年間で約1万4000t。同社は、人口が約70万人の横須賀エリアにおけるシェアを現行の約4割から将来は6割まで高めたいとしている。


【東邦ガスほか/四日市市に地域新電力設立、公共施設に供給】

東邦ガスはこのほど、三重県四日市市、日鉄エンジニアリング、三十三銀行との共同出資で地域新電力会社「よっかいちクリーンエネルギー」を設立したと発表した。25年4月以降の電力供給を目指す。同市のごみ処理施設で発電した電力などを市内の公共施設に供給し、エネルギーの地産地消を進める。事業で得た利益は脱炭素化に役立つ取り組みなどに活用する。


【JPEC、産総研/液体合成燃料の製造プラントで連続運転に成功】

カーボンニュートラル燃料技術センター(JPEC)は、産業技術総合研究所と共同で、CO2と水から液体合成燃料を一貫製造するベンチプラントを開発し、連続運転に成功した。液体合成燃料は既存インフラを有効活用し、ガソリンや軽油、ジェット燃料などを代替できる利点を持つ。両者はシステムの規模を拡大し、社会実装に向けた取り組みを進めたい考えだ。


【茨城大学/カーボンリサイクルのシンポで最新動向を紹介】

茨城大学カーボンリサイクルエネルギー研究センター主催のシンポジウムが、11月末に開催された。元トヨタの中田雅彦氏が「エネルギー、CO2/気候変動問題などの最近の動向」をテーマに基調講演。また、同センターの田中光太郎教授が「湿度スイング式DAC(CO2の直接回収技術)」研究の進捗を紹介し、社会実装に向け企業と基盤技術を共有する意向を示した。

ロシアで進む気候変動の「時限爆弾」 国際社会は地球規模課題に集中を

【オピニオン】加藤 学/国際協力銀行 資源ファイナンス部門エネルギー・ソリューション部長

北極圏の海氷融解が指摘されて久しい。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、1980年代と比較し、現在の夏の海氷面積は約50%減少しているとレポートしている。地球温暖化の威力にがくぜんとする。

もっとも、ロシアの影響圏に敏感なプーチンの視座からみると、これは「安全保障上の脅威」にほかならない。ロシアの北極圏領土は、分厚い海氷が他国軍艦の侵入を許さず、自然の要塞となってきた。氷が溶け、近年これが脅かされているとプーチンは認識する。

2024年11月、露紙「ロシイスカヤ・ガゼータ」は、パトルシェフ大統領補佐官が北極圏での国益保護を目的とする「海洋参事会評議会」を設立したと報じた。北極圏のエネルギー資源と領土を狙う西側諸国への対抗策が協議されるという。パトルシェフといえば、タカ派中のタカ派として知られ、プーチンとともにウクライナ侵攻を決めた主戦論者。16年間にわたり安全保障会議書記を務めたが、24年5月、造船担当の大統領補佐官となった。降格人事とも目されたが、浮上する北極圏領土の防衛問題を任されており、その影響力は引き続き侮れない。パトルシェフは造船分野もカバーしているため、対ロ制裁をかいくぐり、ロシアの石油や石油製品を海上輸送する「シャドーフリート」(影の船団)のアレンジにも一枚かんでいる可能性がある。

北極圏で融解しているのは海氷だけではない。ロシアの陸地の65%を占める永久凍土も溶け出している。永久凍土には推定1.7兆tの炭素が、凍結した有機物の形態で閉じ込められているが、地表に出て温められると腐敗するため、メタンやCO2となって大気に放出される。この悪循環は、まさに気候変動の「時限爆弾」だ。また、永久凍土の融解により、感染症を引き起こす細菌やウィルスなどが解き放たれる恐れがある。16年にはヤマロ・ネネツ自治管区の先住民族が、トナカイの凍結死骸が溶けて放出された炭疽菌に集団感染し、死者も出ている。さらに、凍土中にある天然痘ウィルスが地表に出て活動を再開する危険もあるという。

言うまでもなく、これらは、ロシアにとどまらない「人類全体への脅威」である。ロシアもメンバー国である北極評議会は、今こそ、こうした北極圏の環境問題にアクティブに取り組んで欲しい国際組織だ。残念ながら、ウクライナ侵攻後、ロシアを巻き込んだ協議が進まず、その分野別ワーキンググループの活動も停滞気味とされる。

米国政権が変わる。国際社会は一致協力し、ウクライナでの紛争を一刻も早く終わらせ、ロシアの北極圏を発端とする地球規模の課題解決に集中すべきだ。

かとう・まなぶ 1996年日本輸出入銀行(現、国際協力銀行・JBIC)入行。延べ8年にわたりJBICモスクワ事務所に勤務。2022年から現職。近著に『ウクライナ侵攻 地政学×地経学の衝撃』。ロシアとエネルギーが専門領域。

開発機運高まる核融合 「産業化」目指す日本の強み

【脱炭素時代の経済評論 Vol.10】関口博之 /経済ジャーナリスト

「地上の太陽」「究極のクリーンエネルギー」と期待される一方、「いつまでたっても実用化まであと30年」と言われ続けた核融合。だがここに来て開発機運は高まり、投資も加速。世界中の投資額は62億ドル(9300億円)に上るとされる。2024年11月下旬、この核融合による発電をテーマにしたパネルディスカッションに司会として参加したが刺激的な経験だった。

国の核融合政策の司令塔・内閣府をはじめ、京都大学発のベンチャー「京都フュージョニアリング」、大阪府吹田市と浜松市を拠点にする「エクス・フュージョン」、核融合科学研究所の研究者らによる「ヘリカルフュージョン」と、日本を代表するスタートアップがそろって登壇とあって筆者にも得るところが多かった。「核融合=フュージョンという言葉を定着させたい」「従来は学会が発表の場だったが、企業が参加するこういう見本市でこそアピールしたかった」。京大教授から京都フュージョニアリングを創業した小西哲之氏は期待を口にした。

核融合は、例えば重水素と三重水素(トリチウム)の原子核が衝突しヘリウムになる際のエネルギーを利用する。原理的には原料1gで石油8t分のエネルギーが得られるとされる。国は23年に「フュージョンエネルギー・イノベーション戦略」を掲げ、開発計画の前倒しと世界に先駆けた「30年代の発電実証」の達成を目指している。民間スタートアップも発電実証に同様の目標を立てている。

フランスで建設中の核融合実験炉イーター
©ITER Organization

核融合にはいくつかの方式があるが、そのいずれにも技術開発の足場を持っているのは日本の強みだ。「磁場閉じ込め方式」の一つ、トカマク型では国際熱核融合実験炉・イーター(ⅠTER)計画に参加しているほか、茨城県那珂市に設けた実験装置では発生させたプラズマの体積のギネス記録を24年に達成した。またヘリカル型では核融合科学研の大型装置がプラズマ温度1億℃、保持時間3000秒以上を記録している。一方「レーザー方式」はエクス・フュージョンが手掛ける。「米ローレンス・リバモア研が世界で初めて投入量より多いエネルギーを取り出す『純増』に成功しているのが強み」(代表取締役・松尾一輝氏)という。

世界が研究開発にしのぎを削る中、今回のパネルディスカッションが主眼としたのは「核融合は実現できるのか」ではなく、その先の「核融合をどう産業化するか」だった。「研究開発と並行し製造業など幅広い企業を巻き込む必要がある。どういち早くサプライチェーンを構築するか、世界はその競争に向かっている」。フュージョンエネルギー産業協議会会長でもある小西氏はこう力説する。

一方で、国の責務が安全規制の確立だ。原発の核分裂反応とは異なり、核融合では連鎖反応が起こらず、燃料供給を止めれば反応が止まるため安全性が高いとされる。とはいえ「何となく怖い」という国民の漠然とした感覚もある。核融合の特性に合った新たな規制は不可欠だ。

パネルディスカッション終了後、外には登壇メンバーに名刺交換を求める企業関係者の長蛇の列が。「産業化」に向けた好機になったのではないか。


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せきぐち・ひろゆき 経済ジャーナリスト・元NHK解説副委員長。1979年一橋大学法学部卒、NHK入局。報道局経済部記者を経て、解説主幹などを歴任。