【フラッシュニュース】注目の「政策・ビジネス」情報(2024年4月号)


NEWS 01:防衛省が陸上風力規制へ ゾーニングが一層重要に

政府は、陸上の風力発電設備が自衛隊のレーダーなどに障害を及ぼさないよう規制する「防衛・風力発電調整法案」を3月1日の閣議で決定した。指定区域に風車を設置する際に届け出が必要となる。自衛隊のレーダー運用などに影響がある場合、設置者と最大2年間協議し、期間中に勝手に工事を実施した場合などの罰則も規定する。木原稔防衛相は「自衛隊などの円滑かつ安全な活動を確保するために必要な法案」だとし、国会での早期成立を目指す方針だ。

レーダーと風車の「共生」が必要だ

風車が電波を反射し、目標の正確な探知が困難になると、警戒監視活動やスクランブル対応に支障をきたす恐れがある。これまでも各地の沿岸では、自衛隊と風力事業者との間で交渉することがままあり、風車の場所をずらすなどの対応を取ってきた。業界関係者は「風力の導入拡大に加え、防衛面では上空だけでなく低空の飛行物体をとらえる必要性が高まったという事情から、規制に動いたのではないか。ただ、これまで通り場所や大きさなどに関して事前に協議していけば、窮屈な法律というわけでもない」と受け止める。

他方、温対法に基づくポジティブゾーニングの対応も進む。都道府県や市町村が促進区域を示し、この過程で政府の意見も踏まえることになる。先述の関係者は「今回の規制を受け、よりポジティブゾーニングが重要になる」と強調する。


NEWS 02:賃上げで満額回答相次ぐ 大手電力にもようやく春が

大手電力各社は2024年の春季労使交渉(春闘)で、労働組合の賃上げ要求に相次いで満額回答した。東京電力ホールディングス(HD)は来年度から、年収水準を4%引き上げることで労組と妥結。11年に発生した東日本大震災前の水準に回復する。好業績や人材争奪戦の激化を背景に各社は、待遇の改善で社員の成長意欲を高めるほか、人材確保にもつなげる。

東電HDの賃上げは2年連続で、年収水準には基本給を底上げするベースアップ(ベア)も含まれる。福島第一原発事故後に巨額の費用負担が生じたとして、年収を一般社員で2割、管理職で3割削減していたが、事故前の水準に戻るという。

関西電力もベア要求に満額で回答。組合員平均で月額1万7000円とすることで組合側と妥結した。ベア実施は19年以来5年ぶり。ベアは2万3510円引き上げた1974年以来、50年ぶりの高水準になる。回答理由について同社は、「従業員の頑張りに報い、今後の奮起を期待したいという考えのもと、真摯に労使交渉を重ねた結果だ」と説明した。

中部電力は、ベアを月額1万2000円とすることで妥結。水準は前年の4倍で、記録のある1955年以来過去4番目の高水準という。収益拡大に貢献した社員の努力と意欲に応える。

政労使で物価高を上回る持続的な賃上げを目指す機運が高まる中、電力業界も足並みをそろえた。今春闘の妥結内容について電力総連の関係者は「組合員のモチベーションアップには十分な数字だ。(東日本大震災が発生した)3・11以降の春闘で連合方針を超えるのはこれが初めて。他業種では昨年から賃上げが続く中で、ようやく電力業界もその流れに乗ることができた」と評価した。


NEWS 03:GX移行債が初発行 償還財源の詳細なお未定

官民で150兆円のGX(グリーントランスフォーメーション)投資の呼び水とすべく、2月、政府が初めてGX経済移行債を発行した。「クライメート・トランジション利付国債」として10年債(表面利率0・7%)と5年債(同0・3%)を約8000億円ずつ、計1・6兆円を発行。2024年度は入札を4回に分け、10年債、5年債それぞれ7000億円程度、計1・4兆円発行する予定だ。ただ、関係者からは「今後10年で予定する20兆円分の移行債をすべて売り切れるのか」といった声も出ている。

初回分は22年度補正、23年度当初予算に計上した水素還元製鉄や蓄電池、高温ガス炉・高速炉、住宅断熱性能向上などの関連事業に充当する。他方、一部でグリーンウォッシュとも指摘されるアンモニア関連などは初回分から外した。また、日本政府はレピュテーションリスクを下げるため、海外への理解活動に力を入れてきたという。

ただ、それで海外投資家に多く買われたというわけでもなさそうだ。日本銀行が保有する国債銘柄別残高を見ると、3月8日時点で10年物の移行債を3366億円保有し、「タコが足を食っているような状況」(同)ともいえる。米国などでESG投資の伸びが鈍化しつつある上、GX基本方針を決めた22年末時点で想定できなかった、ロシア・ウクライナ戦争の長期化や中東での紛争、大幅な中国経済悪化など、周辺環境のマイナス要素もある。

さらに、「移行債の償還財源の詳細が未定な状況では、20兆円分をきちんと償還できるのか疑心暗鬼になり得る」(同)。まず28年度から徴収する化石燃料賦課金が、5年債の償還に充てられる予定だ。その水準が見えてくれば、移行債の買われ方に変化が生じるかもしれない。


NEWS 04:狙われる高齢者宅の給湯器 悪質訪問販売なぜ急増?

給湯器の修理や点検を装い、法外な請求を行う悪質な訪問販売業者による被害が相次いでいる。国民生活センターは2月21日、今年度に入り給湯器の点検トラブルに関する相談が急増したと発表した。相談件数は12月末時点で約1100件。前年度比で約3倍もの増加だ。

同センターは今回の騒動を受け、「屋根修理を装った点検商法の摘発が進んでいる。悪質訪販業者が屋根分野から、いまだ摘発の進んでいない給湯器分野に対象を移しているのではないか」と分析する。悪質業者は突如として点検訪問に現れ、「もうすぐ壊れる」などと消費者の不安をあおり契約させる手口であり、被害者の7割以上が70歳以上の高齢者だ。

悪質事例が相次ぐ給湯器の点検商法

被害にあった給湯器はガス瞬間湯沸器、電気温水器、ガス温水ボイラーの順に多い。家庭のシェア率に関係しているとみられるが、「これら3点が長期使用製品安全点検制度の対象外である点も要因の一つではないか」と同センター関係者は語る。対象製品の所有者はメーカーなどによる安全点検を受ける必要があるが、メーカー側から点検時期前の通知などがなかったことも、悪質業者が付け入る隙となった可能性がある。

今回の事例は、特定商取引法の規制対象となるためクーリングオフ制度も適用される。万が一、契約してしまっても冷静に対処することが必要だ。

高い暖房効率を発揮 欧州寒冷地で進むヒートポンプ


【欧州ヒートポンプ協会】

―取り組んでいることは何か。

ノワック 三つある。一つは2009年からヒートポンプで使う空気熱を再生可能エネルギーとして扱うことを開始した。これは社会的に影響を与えた。二点目は廃熱は再利用できると提唱している。廃熱もエネルギーを生むからだ。三点目がヒートポンプの意義を社会に認知させ普及させることだ。

ヒートポンプ技術を知った時は感銘を受けた。1の電力を4の熱量に変換する。なぜヒートポンプ機器が普及していないのか非常に驚いた。そうした経緯もあり、各取り組みには達成感を得ている。

―寒冷地でヒートポンプは高い効率を発揮できるのか。

ノワック できる。住宅向けではAir to Water方式が主流だが、温める機能としては非常に高く誰もが暖房能力を信頼している。ノルウェーやスイスなど寒い地域で最も普及している。

課題はビルや集合住宅 ボイラー企業は業容変換

―課題は何か。

ノワック ヒートポンプは主に戸建て住宅用途だが、規模の大きいビルや集合住宅でも適用可能だ。ただ設置業者の知見が浅いため、建築分野含め業界全体で取り組む必要がある。工業用途でも可能だ。工場の生産過程で発生する廃熱は活用すべきだ。

―ボイラーメーカーからの抵抗勢力はなかったのか。

ノワック ボイラーメーカーは高い利益率を上げており、抵抗は強かった。ただ、ボッシュなどヒートポンプ産業への巨額投資で業容を変化させている。機器を設置する施工技術などをヒートポンプ産業へ生かしている。

―日系企業への期待はあるか。

ノワック ダイキンやパナソニックなどはグローバル企業で、開発・製造能力で欧州でも存在感を発揮している。欧州企業と共に発展してほしい。

―日本ではヒートポンプを省エネ機器と位置付けている。欧州ではどうか。

ノワック 省エネ機器だ。同時に再エネである空気熱を使うヒートポンプは再エネ機器でもある。EUでは空気熱利用の統一された統計基準を作った。日本に基準がないのなら、早く作るべきだ。

トーマス・ノワック(欧州ヒートポンプ協会事務局長)
Thomas Nowak 2009年から欧州ヒートポンプ協会の事務局長を務める。欧州のヒートポンプ普及に力を注ぐ。

IEAにインド加盟か 日本へのメリットと課題


【論説室の窓】宮崎 誠/読売新聞 論説委員

日米欧など主要エネルギー消費国で構成するIEAがインドとの加盟交渉を始めた。

エネルギー安全保障を巡り、影響力を増す新興国・途上国との連携を一段と深化させる契機となるか。

国際エネルギー機関(IEA)は2月に開いた閣僚理事会で、インドとの加盟交渉開始を決めた。その際に発表したファティ・ビロル事務局長の声明が、IEAが置かれた現状を端的に物語っている。

「インド抜きには将来計画は策定できない」第一次石油危機後の1974年、米国の提唱によりIEAが設立された。その当時、世界の石油需要の約70%を西側先進国で占めていた。

しかし、近年の新興国の経済発展に伴い、その比率は40%以下にまで落ち込み、世界のエネルギー市場における影響力は低下した。もはや西側先進国だけでは、世界のエネルギー市場の安定化は望めない状況だ。

一方、インドの石油消費量は現在、米国と中国に次ぐ世界3位だが、今後の伸長は著しい。

IEAはインドについて、全世界の石油需要増加分の3分の1を超える1日当たり120万バレルの需要増が見込まれ、2030年までには同国の石油需要は同660万バレルに達すると予測している。中国を抜いて、石油需要の最大のけん引役になる公算だ。

また、インドは安価な原油を輸入して精製し、石油製品を他国に供給する輸出大国でもある。

加盟交渉は数年を要するとの見方も


エネルギー市場の安定化 新興国の取り込み不可欠

今回のIEAの決定に対し、インドのモディ首相は、「世界17%の人口を抱えるインドがより大きな役割を担うことは、IEAにとっても有益だ」とのコメントを寄せ、自らの存在感の大きさを誇ってみせた。

「グローバル・サウス」と呼ばれる新興・途上国の盟主として、国際機関の中での発言権を大きくしたいとのインドの思惑が浮かび上がる。

IEAは、エネルギー需要が増している新興国を取り込む動きを重ねてきた。15年には、加盟国とは別に「IEAアソシエーション国」というカテゴリを創設。そこには、インドのほか、ブラジルや中国、インドネシア、南アフリカなどが名を連ね、IEAは協力を深めてきた。アソシエーション国は、IEAの最高意思決定機関である閣僚理事会にも参加できる。

IEAはさらに、アソシエーション国の中でもインドとの関係を緊密化し、21年には、IEAとインドは「戦略的パートナーシップ」を締結することで合意。IEAが持つ専門知識をモディ政権に提供してきた。

インドの加盟が実現すれば、IEAが進める新興国の取り込みにおいて大きな節目となる。
インドの加盟に対して、日米仏などが支持を表明している。原油のほぼ全量を輸入に依存する日本にとって、インドがIEAに加わるメリットは大きい。

【覆面ホンネ座談会】悪い商慣行と決別できるか 存続への岐路に立つLPガス


テーマ:液石法省令改正

LPガス販売を巡り長らく続いてきた不透明な商取引の是正に向け、今春にも液化石油ガス法の省令改正が公布される。実効性を確保し消費者の不利益解消につながるか。消費者、事業者、メディア関係者が率直に語り合った。

〈出席者〉 A 消費者団体関係者  B LPガス関係者  C メディア関係者

―2022年3月に再開した総合資源エネルギー調査会(経済産業相の諮問機関)液化石油ガス流通ワーキンググループ(WG・座長=内山隆青山学院大学教授)は、5回の議論を経て中間取りまとめを行い、液石法の省令が改正されることになった。

A LPガスの商取引を巡りさまざまな困難な課題がある中で、今回の省令改正に至るまでのプロセスはあくまでも改革の第一歩であり着地点ではない。戸建ての無償配管問題の議論が先送りされたことは大きな課題だし、改正省令案で罰則を含む義務・規定が制定された項目がある一方で、情報開示については罰則なしの努力義務にとどまってしまった。さらに対象は新規契約だけで、既存の契約者をどう守るのか見えてこない。消費者団体は「消費者被害」と呼んでいるが、資源エネルギー庁もLPガス業界も、一連の議論の中で消費者に不利益な点があることを認めていた。それにもかかわらず、新規よりも圧倒的に多い既存契約について不利益を放置してしまうのは納得いかない。期限を設け、既存契約も新規と同様の扱いにしていただきたいと考えている。

液石法省令改正は競争の構図をどう変えるのか

B エネ庁がよくここまで踏み込んだなというのが率直な感想だ。17年の省令改正で三部料金制などを努力義務として求めたが、事業者が全く対応しなかったということもあって、エネ庁が重い腰を上げ罰則規定も辞さない省令改正に踏み切った意義は大きい。最も評価しているのは、国土交通省や公正取引委員会など他省庁に協力を働き掛けたことだ。業界側は、間違いなく17年改正時よりも緊張感を持って受け止めているし、きちんと取り組もうとする動きが以前よりも出てきている。

一方、一部の大手と中規模事業者の行いが業界の悪評を高めてきたのがこの問題の本質で、これで良い方向に向かうと期待している事業者は多いものの、「正直者がばかを見る」と危惧する声があるのも確か。通報フォームや罰則規定でエネ庁の本気度は伝わってくるが、それで十分かというと取り締まりには限界があるから業界の自浄作用も必要だ。まだまだ業界内に温度差があり、有力事業者のリーダーシップが問われている。

C 前回の省令改正から見れば、大手のニチガスとTOKAIをWGに呼んで話を聞いたことを含め本当に大きく踏み出したと思うし、どこまで実効性が確保できるかに注目している。というのも、3月10日までWGの中間取りまとめと省令改正案に関するパブリックコメントが実施され、いよいよ4月に公布されるのを前に、一部事業者が集合住宅の契約切り替えを盛んに行っていると聞く。エネ庁はそれにどう対応するのか。3月中に見せしめのような対応をするのではないかという噂もあったが、そのような動きもないし、実効性については試行錯誤が続くのかな。

【マーケット情報/4月5日】原油先物、5か月振りの高値


【アーガスメディア=週刊原油概況】

先週の原油価格は、需給ひっ迫感が更に強まり、主要指標が続伸。米国原油の指標となるWTI先物、および北海原油の指標となるブレント先物は5日、それぞれ86.91ドルと91.17ドルの終値を付け、昨年10月以来5か月ぶりの高値更新となった。

中東での地政学リスクが高まっている。先週、シリアのイラン大使館がイスラエルのものと思われるミサイル攻撃をうけ、中東地域で風葬が拡大するとの懸念が台頭。供給不安が一段と強まり、価格上昇を予想した市場参加者からの買いが相次いだ。

また、米国における石油のリグ稼働数減少も、引き続きひっ迫感を強めている。先週金曜日に発表された石油リグの稼働数は前週からさらに減少を示し、3週連続の減少となった。ただ、同国の経済は活発化を続けており、先週発表となった3月雇用者数は30万3,000人増となり、1年振りの大幅増となった。

米国では賃金の上昇も続いており、経済指標も堅調だったことが示され、連邦準備理事会(FRB)の利下げ開始が後ずれする可能性がある。高金利がしばらく続くとの見通しが価格上昇を幾分か相殺した。


【4月5日現在の原油相場(原油価格($/bl))】

WTI先物(NYMEX)=86.91ドル(前週比3.74ドル高)、ブレント先物(ICE)=91.17ドル(前週比3.69ドル高)、オマーン先物(DME)=90.90ドル(前週比5.05ドル高)、ドバイ現物(Argus)=90.68ドル(前週比4.40ドル高)

*29日は休場のため、比較値は28日となります。

ベンツが完全電動化を撤回 EV「官製市場」の限界露呈


世界的に電気自動車(EV)市場の減速が顕著だ。例えば、欧州ではEVの新車販売数こそ年々増えているものの、前年比での増加率は鈍化が続く。一方でハイブリッド車(HV)が伸び、ガソリン車・ディーゼル車も2022年から23年にかけての新車販売台数の減少率が前年比1.1%と、ほぼ横ばいにまで持ち直した。BYDを筆頭に国家の強いバックアップでEV化を進める中国でさえ、昨年はプラグインハイブリッド車(PHEV)の前年比増加率が84.1%とEVを大きく上回る。

こうした動きを受け、メルセデス・ベンツグループは2月、「顧客の準備が整っていない」として30年までの完全電動化目標を事実上、撤回した。またテスラはBYDとの値下げ合戦で採算悪化が続き、昨年10~12月に47%の営業減益を記録。アストンマーチン、ジャガー・ランドローバーなどもEVシフトの延期を相次いで発表した。

ベンツのバッテリーEVコンセプトモデル「EQG」

世界の主要市場では補助金などのEV優遇策が取られていたが、それらの縮小・終了が響き、官製市場の限界が露呈した格好だ。また多くのユーザーが充電インフラの整備状況や航続距離などへの不安を抱える中、「既に一部の環境意識が高い人たちに〝ファッションとしてのEV〟は行きわたった」との見方もある。

当面は「脱内燃機関」よりも、バイクや軽自動車など近距離用途はEV、中距離移動を目的とする乗用車はHV、航続距離が長いトラックやバスなどは燃料電池車(FCV)といった適材適所での「ベストミックス」のが現実的な普及策となるか。

【イニシャルニュース 】奈良県知事を巡る疑念 太陽光計画が急浮上


奈良県知事を巡る疑念 太陽光計画が急浮上

奈良県の山下真知事が表明した五條市でのメガソーラー整備計画を巡り、地元で疑念が沸き起こっている。山下知事はメガソーラーを2023年4月の知事選で掲げた公約に明記していなかったにもかかわらず、突如として整備計画を打ち出したからだ。なぜメガソーラーに執着するのか。

市の県有地では、2000m級の滑走路を備える広域防災拠点を整える計画だったが、山下知事が就任後に見直した。大規模災害に備える整備計画で滑走路としていた場所に約25‌haのメガソーラーを建てる計画を1月に打ち出したもので、突然の計画表明に地元住民が激しく反発。知事は、能登半島地震を教訓とした非常用電源の確保や経済効果を整備の理由に挙げたが、折り合いがついていない。

物議を醸すメガソーラー開発

県議会でも大きな争点に。3月6日の一般質問で、五條市選出で自民党・無所属の会の斎藤有紀議員がメガソーラーの整備を決めた経緯や災害リスクを問い、「決定過程が不透明であり、防災力の強化につながるとは思えない」と疑問を投げ掛けた。

再生可能エネルギーの問題を扱う住民団体のY氏は、県が2人いる副知事のうち1人を交代させる人事を同日発表した動きに触れ、「後任の福谷健夫氏は元農林部長で、メガソーラーを推進してきた張本人。計画の背後に関係メーカーJなど事業者の影もちらついており、ソーラーに詳しくない知事が推進派に踊らされている可能性もある」との見方を示す。

「住民の声を無視した強行的なやり方に納得できない」と斎藤県議。知事は謎が深まる経緯の説明責任を果たさない限り、対立の溝は埋まらない。


JRE会長の辞任 審議会にも影響

ジャパンリニューアブルエナジー(JRE)の会長だった安茂氏が、セクハラ問題で解任された。業界団体の日本風力発電協会で、安氏はここ数年副代表理事を務め、日本風力開発の贈賄事件後、代表理事に就いた矢先だった。「男女分け隔てなくざっくばらんで穏やか。そんなことをしでかす人とは思えなかったが……」(風力関係者X氏)

協会は贈賄事件後いったん、エネ庁などの審議会で委員としての参加を取りやめた。協会の意思決定などの在り方を見直す方針をエネ庁に説明し理解を得た上で、年明けから従来の態勢に戻したい考えだった。ほかの委員からも、風力関係者の不参加を問題視する意見が出ていたという。

だが、「再びの不祥事で、エネ庁からは会議に参加しても個社としての発言に限定し、業界団体の意見を踏まえたようなコメントは避けるようお達しがあったようだ」(先述のX氏)。審議会で堂々と協会の立場で発言できるようになるには、年度をまたぐどころか、下手をすれば夏ごろまで待つ必要があるかもしれない、というのだ。

洋上風力など今後再エネの主力を担う電源として、詰めるべき政策課題はいろいろあり、今年はエネ基の改定も予定される。そうした中、相次ぐ不祥事の余波が懸念されている。


年内にも売却か!? T社身売りが再浮上

「今度こそ、T社の売却が決まりそうだよ」こう語るのは、大手エネルギー会社のX氏だ。大手電力会社のC、大手発電事業者のJ、大手商社のMと、これまでも散々売却が噂されてきた大手電力小売会社のT社。中でも有力視されてきたのが、大手エネルギーE社だったが、「資産を持たないT社を買収することに魅力はない」(E社のOBのF氏)と、それが実現することはなかった。

だが、T社の売却先として再び浮上しているのはそのE社なのだ。新電力関係者のY氏も、「資金力からいっても、今、T社を買えるのはE社しかない」と確実視する。

とはいえ、政府は福島への補償金を賄うためにも、数兆円規模という巨額でのT社売却を画策しているもよう。一方、買い手側からしてみれば、到底元を取れるはずもなく……。E社の最終判断はいかに。

デジタル力で業務とサービスを変革 グループ一丸で攻勢をかけるDX戦略


【中部電力】

エネルギー産業を進化させるDX戦略で存在感を放つ中部電力グループ。

急成長する生成AIもDXの起爆剤と位置付け、社内外の変革に挑む。

中部電力グループが追求するDXは、デジタル技術を社内業務の効率化や高度化につなげる「業務の変革」と、顧客起点でサービスの価値を高める「お客さまサービスの変革」だ。2本柱のDXを、2050年を見据えて21年11月に策定した「中部電力グループ 経営ビジョン2・0」で重点施策の一つと位置付け、加速している。

社内業務では、携帯端末から利用できる業務用アプリの充実化に加えて、情報の民主化を全社方針として掲げ、デジタルツールで社員同士の連携を促すなど、多様なデジタル施策を展開している。

サービス面では、品質の高い電気を安価に企業や個人に届けるニーズに応えて、各地に分散した多彩なエネルギー資源を表す分散型エネルギーリソース(DER)を、デジタル技術で最適に制御・管理・運用する「エネルギープラットフォーム」に磨き上げている。

加えて、エネルギーインフラ企業として長年にわたり培ってきた多様な「データ資産」を高付加価値なサービスに生かそうと、膨大なデータを事業・グループ横断で活用するための「グループ共通データプラットフォーム」も整備している。例えば、家庭や事業所などに設置したデジタル式の電力計「スマートメーター」のデータと、許諾の上で得られた生活データを組み合わせ、快適な暮らしにつながるデータサービスに生かす。

送電設備を自動点検するドローン
提供:中部電力


多様な教育プログラム 社員のキャリア形成支援

そうした社内外のDX施策を主導する部隊が、社長直轄組織の「DX推進室」だ。DX推進室は、IT事業を手掛ける中電シーティーアイや高度データ分析事業のTSUNAGU Community Analyticsなどのグループ会社と連携し、グループ全体のDXの底上げを目指す。

DXを全従業員が担えるよう、多様な教育プログラムも用意。

独自の動画教材や全社員へのオンライン教育サービスなどの環境を整え、95%もの従業員がITリテラシー向上の効果を実感した。経営層から新入社員までを対象に各階層別の研修にも取り組んでいる。今後も個人の成長意欲に応え、リスキリング(学び直し)も含めてキャリア形成を後押ししたい考えだ。

一連の人財施策を土台に、デジタル技術を課題解決につなげる能力に長けた「DX推進人財」と、高い専門能力を持つ「デジタルエンジニア」の育成にも注力。すでに両人財の合計で500人超を確保しており、20年代後半までに約1300人に増やすことを目指す。

担当者によると、23年度までにDXを推進するために必要な土台を築き上げ、24年度からはこの土台の上でサービスを本格化させて収益につなげる「創造期」に入るとした上で、DXの成果を最大限に引き出していく構想を描く。

有望な変革ツールとして一躍脚光を浴びる生成AIを「DXの起爆剤」として注目。23年度までに全社員が生成AIを安全に実務で活用できる仕組みを構築。生成AIを一部のプロジェクトに取り入れ、実用の手応えが得られ始めているという。

デジタル技術で地域の活性化を目指す政府の「デジタル田園都市国家構想」が具体化に向けて動き出す中、地域の生活インフラを担うエネルギー企業への期待感も高まっている。同社は多様なパートナーとエコシステムを構成しながら、中部地域のデジタル化への貢献を重視。デジタルの力で挑戦する舞台はエネルギー事業にとどまらず、地域社会にも広がりそうだ。

大変革期の電力システム 先を見据えてあるべき姿示す


【巻頭インタビュー】大山 力/電力広域的運営推進機関 理事長

電気事業を巡る課題が次々顕在化し、電力広域的運営推進機関の存在感が増している。

現在、そしてこれからの同機関の役割とは。大山力理事長に話を聞いた。

おおやま・つとむ 1983年東京大学大学院電気工学博士課程修了。横浜国立大学工学部講師、同助教授、米国テキサス大学アーリントン校客員助教授、横浜国立大学工学部教授、同大学院工学研究院教授を経て2021年4月から現職。

―2021年4月に理事長に就任し、3年が経過しました。

大山 20年度冬季に全国的な電力需給ひっ迫を経験した直後の就任でした。その後も地震が発生したり、端境期の需給ひっ迫が起きたりとさまざまな困難に直面しましが、職員数も少なく、当機関だけで対応できることが限られている中で、電気事業に関わる事業者の協力を得て何とかか乗り切ってきました。この間、経済産業省から電力需給(kW、kW時)モニタリングや、FIT/FIP制度の賦課金の徴収・交付金の交付業務、将来の需給シナリオの検討などが新たにタスクアウトされ、就任時と比較すると実に多岐に渡る業務を手掛けるようになりました。

―さまざまな制度設計を主導する上で、心掛けていることはありますか。

大山 足元の課題解決を目指すだけではなく、将来を見据えて検討し、システムを動かしていくことが重要だと考えています。将来を見据えた業務を進めるためには、職員一人ひとりが良い電力システムを築き上げていくのだというマインドを持つ必要があります。そこで今年2月9日には、当機関が社会において果たすべき使命・目的として、「日本の電力の今を支え未来を切り拓く」というミッションを策定しました。

電気事業は今、大きな変革期にあります。問題が顕在化してから対応したのでは手遅れです。例えば再生可能エネルギーの大量導入は既にさまざまな電力システムの課題を顕在化させていますが、将来のさらなる大量導入に備え、システムの在り方をあらかじめ検討しておかなければなりません。当機関の「専門性」「先見性」「積極・主体性」という価値観を大切にしながら、より良いシステムの確立を目指し業務を遂行していきます。

―広域系統長期方針(マスタープラン)が昨年3月に策定され、その具体的な整備計画の策定が進んでいますが、本当に必要なのかといった意見も散見されます。

大山 現在、地域間連系線の整備については、再エネを全国大で活用するという視点で議論されているケースが多く、コストとベネフィットを踏まえメリットが低いという指摘があることは認識しています。各電力エリアの電源構成に差がなかった時代は、連系線は非常時に備えるものに過ぎませんでした。しかし、再エネが今後ますます拡大していけば電源の偏在性も高まりますし、今年度の容量市場の約定結果で北海道と九州が高い価格を付けるなど、供給信頼度にも課題があります。電源の偏在性を解消するため、そして安定供給を確保するためにも、連系線の活用は欠かせません。

文献調査の報告書案公表 待たれる新地点の登場


概要調査に進めるのか―。原子力発電環境整備機構(NUMO)は2月13日、北海道寿都町と神恵内村で行われていた高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定に向けた文献調査の報告書案を公表した。

概要調査に進む上で鍵となるのは、寿都町と神恵内村に続いて文献調査を行う新地点の登場だ。報告書の作成後は縦覧期間などを経て、経済産業大臣が概要調査に進むかどうかについて、北海道知事と2町村長に意見を聴取する。寿都町では概要調査実施の是非について住民投票を行う予定だが、片岡春雄町長は、新地点が出てこなければ住民投票に向けての勉強会など先には進めないとの考えを持つ。

文献調査開始から3年が経過したが新地点は現れていない(寿都町)

地元で概要調査に反対する人の中には、最終処分場の問題が自分たちに押し付けられているとの思いを抱く人もいる。不安の払しょくには共に調査を行う〝並走者〟が必要というわけだ。神恵内村の高橋昌幸村長も新たな調査地点を求めている。

一方、北海道の鈴木直道知事は「現時点では反対」の姿勢を貫くが、「原発の所在の有無にかかわらず、国民的な議論が必要な問題」(2月15日の定例記者会見)だとして、昨年12月にはNUMOに対して報告書の説明会の全国展開などを求める要請書を提出した。

国・NUMO・電力各社は昨年7月、地域ブロックごとに合同チームを新設し、全国の自治体などを個別に訪問する全国行脚を開始。1月末時点で73市町村の首長を訪問した。原発再稼働などフロントエンドの前進が見込まれる今年こそ、バックエンドの進展に期待したい。

託送料金にコスト上昇自動反映も レベニューキャップの影響と対策


【論点】制度変更と電気料金〈第3回〉/西村 陽・大阪大学大学院工学研究科招聘教授

電気料金の約3割を占める託送料金。2023年度にはレベニューキャップが導入された。

小売電気事業者は今後の負担と対処をどう考えるべきか。

世界各国の電力ネットワークの利用料金は今日、必要コストを積み上げ算定する総括原価方式と、必要な仕事量や投資を指定し収入上限を決めるレベニューキャップに分けられる。米国は概ね総括原価方式であり、英国・ドイツをはじめ欧州では総括原価方式からプライスキャップなどを経てレベニューキャップにシフトした国が多い。

電力託送料金の変更を踏まえた電気料金

日本が2020年代に入りレベニューキャップへの制度変更を検討し、23年度に採用したのには大きく四つの背景がある。

一つ目は、送配電事業全体が設備の大量更新期を迎え、かつ再生可能エネルギー大量導入対応投資が増加していくことだ。二つ目は、デジタル化、あるいは分散型エネルギー資源である蓄電池・電気自動車(EV)などを活用する次世代化が急がれることだ。

重要なのは当局の説明に通常出てこない三つ目の背景だ。すなわち、送配電投資の電力会社経営からの分離である。現実に10年代後半には電力各社の収支改善のために送配電の更新投資を控えるようなモラルハザード的行動も一部電力会社の経営陣で見受けられた。

そして四つ目の託送料金算定に直結する背景は、自家消費型太陽光(屋根載せPV)の普及、省エネの進展などによる系統電力量の減少が慢性的に送配電事業の収支悪化の原因になりかねないという事実である。

これら四つの背景は、致命的な欠点である改定スピードの遅さを持つ総括原価では解決困難であり、23年度、国が達成目標を定め、各社が事業計画を立て、その結果収入上限を算定して国が承認するレベニューキャップが採用されることなった。では、具体的にこれを負担・支払いし、自社の顧客にその変動を説明しなければならない小売電気事業者はこの制度をどう理解すべきだろうか。


当面の負担大幅増は回避 内部には潜在的上昇要因

24年度から発電側課金が加わったにもかかわらず、レベニューキャップ下の託送料金収入は、送配電事業者の合計で0・4%の収入増に留まった。これは23年度中の需給調整市場の価格低下や、最終保障約款用の電力調達価格の低下によるものである。

kW時単価では、発電側課金分が全国平均で0・9円程度加わり、その他の託送料金相当額が9円程度で計9・9円となり、家庭用料金30円の3分の1を占める(図参照)。今のところ落ち着いて見えるレベニューキャップ制度だが、実は小売事業者から見た場合、その将来負担増をあまり楽観すべきではない。

火力発電燃料にアンモニア 愛知・碧南火力で世界初の試験


火力発電最大手のJERAはIHIと共同で、碧南火力発電所(愛知県碧南市)で使う燃料の一部を石炭からアンモニアに置き換える世界初の大規模実証試験の準備を整えた。早ければ2027年にも商用運転に着手。燃やしてもCO2を出さないアンモニア燃料を導入することで、国内外の火力発電の脱炭素化を促す。

碧南火力発電所に建てたアンモニアの貯蔵タンク

両社は、CO2を排出しない「ゼロエミッション火力発電」という目標を掲げている。その実現に向けた大きな一歩が今回の試みで、出力100万kWの4号機を舞台に、6月までの約3カ月間にわたり実施予定。実証に先立つ3月13日には、試験設備を報道陣に公開した。

敷地内には、専用船で受け入れたアンモニアを運ぶ配管や貯蔵するタンクなど、実証に必要な設備を設置。ためたアンモニアは気化され、石炭を燃やして火を放つバーナーのノズルに流し込まれる。その熱で蒸気を作り、発電機を回す仕組みだ。

実証では、燃料の20%(熱量比)をアンモニアに転換し、設備性能を確認するとともに運用上の課題も抽出。得られた成果を土台に燃焼させるアンモニアの割合を5割以上に高める。谷川勝哉・碧南火力発電所長は「確立した技術を国内外の火力発電に転用し、世界の脱炭素化に貢献したい」と意欲を示した。

ただ、前例のない発電技術の普及に向けては、膨大な量のアンモニアを低コストで安定確保するための供給網を構築するという大きな壁が立ちはだかる。正念場はこれからで、磨いた技術の経済優位性を高める戦略づくりも試されそうだ。

新開発のコンクリートブロック 太陽光パネル廃棄ガラスを活用


【北陸電力】

太陽光パネル廃棄ガラスの課題解決のため開発された「インターロッキングブロック」。

2025年国際博覧会(大阪・関西万博)のパビリオンでお披露目となる。

現在、カーボンニュートラルの取り組みの一環で、太陽光発電の建設が進んでいる。一方で、発電の役割を終えた太陽光パネルが2030年代には年間50万~80万t程度発生すると見込まれており、社会問題となりつつある。

北陸電力は、この課題を解決すべく太陽光パネルの廃棄ガラスと、石炭火力発電所で石炭を燃やしたあとに発生する石炭灰「フライアッシュ」を混合してつくる「インターロッキングブロック」を開発した。このインターロッキングブロックの品質や開発の背景が評価され、25年に開催される大阪・関西万博の電気事業連合会のパビリオン「電力館 可能性のタマゴたち」において、構内舗装約1000㎡(約5万個)にインターロッキングブロックが採用されることが決まった。

電気事業連合会パビリオン「電力館 可能性のタマゴたち」外観イメージ


火力発電の廃棄物混合 ASR抑制で耐久性アップ

コンクリート製品は、大きく分けてセメント・水・骨材(砂・砂利)でつくられている。コンクリートの原料として、砂部分をガラスで代用する製造方法があるが、ガラス質が増えることで、骨材とアルカリが反応し、骨材が膨張する。これにより、コンクリート表面にひび割れが発生してしまう劣化現象「アルカリシリカ反応(ASR)」のリスクが高まる。

フライアッシュにはASRを大幅に抑制する効果があり、コンクリート製造時に混合すると耐久性が上がることが確認されていたことから、同社産のフライアッシュを混合したインターロッキングブロックの開発に至った。

北陸地方で採れる砂利にはガラス質が含まれていることが多く、コンクリートのASRが起きやすいといわれている。同社は、水力発電比率が高く、発電に必要となるダムなどのコンクリートにもフライアッシュを利用しており、土木工事におけるフライアッシュの利用拡大に向けて、ASRを抑制する研究を以前から進めてきた。

11年1月には同社の声掛けにより、産学官連携による「北陸地方におけるコンクリートへのフライアッシュの有効利用促進検討委員会」を設立。ASR抑制と、地域で持続可能な廃棄物の利用方策という双方の観点から、フライアッシュの有効活用を進めてきた。

㊤インターロッキングブロック試作品 ㊦北陸電力本店敷地での試験敷設状況

インターロッキングブロックの仕様は、長さ20㎝×幅10㎝×高さ6㎝。ガラスの混合率は、表層で砂の50%、基層で砂の10%、フライアッシュの混合率は、セメントの20%としている。一定の強度を維持したまま、太陽光パネルの廃棄ガラスを混合したコンクリート二次製品が誕生したのだ。

土木建築部土木技術チームの参納千夏男統括課長は、「大阪・関西万博のパビリオンで当社が開発したインターロッキングブロックが採用されることは大変意義深い。今回、ブロックに使用される廃棄太陽光パネルは約700枚、廃棄ガラスとしては約8tを有効活用することができる」と話す。


廃棄ガラスの使い道 SDGsにも貢献

インターロッキングブロックは美観に優れており、表層部に顔料を混合することで色味の変化も楽しめる。家のエントランスや公園の歩道などにも最適だ。

「インターロッキングブロックは、廃棄ガラスの有効活用という社会課題の解決を図るとともに持続可能な社会構築にも寄与できることから、非常に大きなポテンシャルを持っている」(参納氏)

30年代に入ると、12年の固定価格買い取り制度(FIT)開始に伴い導入された太陽光パネルが一斉に寿命を迎える。北陸電力は太陽光パネルの大量廃棄を見据え、同製品のさらなる品質を向上するとともに、商用化を目指すとしている。

【浜野喜史 国民民主党 参議院議員】エネ基に『新増設』明記を


はまの・よしふみ 1960年生まれ。83年神戸大卒業後、関西電力入社。2005年電力総連会長代理に就任。13年参議院議員選挙に初当選、現在2期目。資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会理事、環境委員会委員、党選挙対策委員長などを務める。

電力総連の会長代理などを務め、2013年の参議院議員選挙にて全国比例で初当選。

議員生活は10年を超えたが、「電力関連産業で働く仲間のために」との思いは変わらない。

電力総連の組織内議員として2019年に再選し、参議院議員として2期目の任期も後半に差しかかった。自身の選挙を来年に控えるが、国民民主党の選挙対策委員長として来る解散総選挙に向けて奔走する日々を送る。

能登半島地震の復旧対応では、北陸電力が送配電のみならず発電・小売りの域を超えてさまざまな後方支援を行った。「旧一般電気事業者の『安定供給の確保』に向けた熱い気持ちがしっかりと引き継がれていると痛感した」。今年に入り、経済産業省の電力・ガス基本政策小委員会が電力システム改革の検証に向けた議論に着手したが、「こうした現場の実態を踏まえた議論を」と訴える。

電力システム改革は、安定供給の確保を目的の一つとして始まったが、22年3月に全国初となる「電力需給ひっ迫警報」が発令されたことは記憶に新しい。燃料価格の高騰や原子力発電所の再稼働の遅滞もあり、電気料金の抑制という目的も達成できていない。「いつの間にか大手電力と新電力との競争状況をつくることが目的化したように感じる」との見立てだ。

自由化以降、大手電力は小売需要の大幅減で固定費を回収できず、火力電源の休廃止を進めた。その結果、供給予備力の確保は困難に。「火力電源の休廃止は経済合理的な行動で、発電事業の投資予見性を確保できなかった制度設計に問題がある」と指摘。23年度から容量市場の効果が徐々に現れているが、「効果は未知数の部分も大きく、今の制度設計で十分なのか。政府も反省すべきは率直に反省した上で、ゼロベースでの検証・検討を」と求める。

EV市場鈍化で戦略見直しも 販売増のHVに延命の兆候


【業界紙の目】村田浩子/日刊自動車新聞 記者

長期的にEVが普及するとの見方が依然強いものの、足元の販売動向に黄信号がともり始めた。

米国などでHV再評価の流れも出ており、揺り戻しに備え戦略を練り直す必要がありそうだ。

EV市場の広がりが減速している。販売現場では早くも値下げ競争が起きており、EVの収益性を懸念し投資を見直す完成車メーカーも出てきた。電池や駆動システム「eアクスル」といったEVのコア部品で先行する中国企業を警戒し、欧米は中国製EVを規制する動きも見せ始めている。

市場調査会社のマークラインズによると、2023年の米国新車販売台数は、1560万8386台(同12・3%増)となり、2年ぶりに増加に転じた。このうちEVは約8%を占めており、確実にシェアを増やしている。ただ増加率で見ると、23年7~9月期は5%、10~12月期は1・3%とペースが鈍化しつつある。

欧州も同様の傾向で、欧州自動車工業会(ACEA)によると、23年のEV販売の増加率は22年比で約3割増えたが、前年対比で6割以上増えた22年と比べると普及スピードが落ち込んでいる印象は拭えない。

EV市場の鈍化で戦略の練り直しが必要になる

「特に米国では、EVに対し不信感を抱く人が増えている印象がある」と、ある日系完成車メーカー幹部は話す。最大の理由はインフラ不足だ。米国内にはガソリンスタンドが約15万カ所あるのに対し、EV用の充電ステーションは約5万カ所にとどまっており、広い国土をカバーしきれていないのが現状だ。1月の大雪の際は、酷寒で一部の車両がダウンした。EVは低温下では充電性能が著しく落ちるため、寒冷地で走行する場合、通常より早いペースで充電が減る傾向にある。現地では充電が間に合わず動かなくなったEVが充電ステーションで乗り捨てられている様子も報じられた。

加えてガソリン車と比べて車両価格が割高なことも普及のネックになっている。電池材料にレアメタルなどを用いるEVは、同じ車格のガソリン車よりも2~3割、車両価格が高めに設定されているケースが多い。その差額を埋めるため購入補助金を出している国もあるが、昨年、ドイツが補助金を打ち切るなど、政府が支援内容を見直す事例も増えてきた。


対中国で負のスパイラル 欧米が規制に動く

一方、EV販売を着実に増やしているのは中国だ。昨年の中国の総販売台数(輸出含む)は初めて3000万台の大台を突破。このうちEVなどの新エネルギー車(NEV)が約3割を占めた。市場をけん引するのは比亜迪(BYD)などのEV新興メーカーで、安価を武器に中国外でも販売台数を伸ばしつつある。

BYDに対抗するため、米テスラなどはEVの値下げを繰り返し、収益性が悪化しつつある。「中国メーカーにならって値下げをしても市場が冷え込んでおり、売れない〝負のスパイラル〟に入っている」と前出の幹部は話す。

国家戦略で自国のEVメーカーを後押しする中国は、電池やeアクスルなどEVの基幹部品でも存在感を示す。電池に必要なネオジムなどのレアアースは6割以上、リチウムは1割以上の産出を中国に依存しており、材料面で圧倒的なイニシアチブを握る。モーター、インバーター、減速機を一体化したEVの駆動システム・eアクスルでも中国サプライヤーがシェアを伸ばしており、同じくeアクスルを手掛けるニデックや明電舎などの日本勢は中国事業の見直しを迫られている状況だ。

中国勢の台頭を懸念し、欧米は中国産EVの規制を始めた。欧州連合(EU)は中国政府が自国のEVに不当な金融支援を行っているとし、域内に輸入される中国産EVに追加関税をかける可能性を示唆する。米バイデン政権も中国産EVがサイバーセキュリティー上問題があるとし、調査を進める方針だ。米国はEV補助金の対象車両を自国メーカーの車両のみに限っており、価格面で有利な中国製の排除に向けて動き出している。