差し迫る「大量廃棄」時代 適切な処理に向け課題山積

【今そこにある危機】江田健二/RAUL社長

2030年以降、5億枚もの太陽光パネルが廃棄される見込みだ。

廃棄処理を巡る技術革新やルールづくりが求められる。

再生可能エネルギーの普及とともに、太陽光パネルは日本全国に普及した。昨今は災害などでの廃棄問題や、将来の大量廃棄についての懸念が報道されている。太陽光パネルを巡っては今後10年、リサイクル、リユース、適切な廃棄が重要なテーマとなるだろう。これは「課題」にも見えるが、裏を返せば大きなビジネスチャンスにもなり得るのだ。


廃棄処理市場が未成熟 初期投資などコストかさむ

太陽光パネルの大量廃棄問題の中心的な課題は、適切な処理方法やルールが確立されていないことだ。

日本では、2009年のFIT(固定価格買い取り制度)導入以降、太陽光発電が急速に拡大した。これにより、環境に配慮したエネルギー供給が促進されたのは確かだ。しかし、一般的に太陽光パネルの寿命は20〜25年で、このため30年以降には多くのパネルが廃棄されるという予測がある。

太陽光パネルにはガラスやアルミニウムなど再利用が可能な材料が多く含まれている。これらの資源は、適切なリサイクルが行われることで新たな製品の生産に役立てられ、資源の有効利用が可能となる。一方で、シリコンやカドミウムのような有害物質も含まれており、適切な処理が求められる。

国際エネルギー機関(IEA)によると、40年までに太陽光パネルの廃棄量は日本で約800万t、世界で約7800万tに達すると予測されている。太陽光パネル1枚の重さをおよそ15㎏と仮定すると、日本だけでも約5億枚の太陽光パネルが廃棄される計算になる。

読者は「30年まではまだ時間がある」と思うかもしれない。しかし、廃棄問題は現在も発生している。例えば、豪雨や台風などの自然災害により、太陽光発電設備が被災し、数千枚もの太陽光パネルが廃棄される事例が繰り返し起きているのは周知の通りだ。

太陽光パネルは災害での被害が相次ぐ

災害での廃棄問題だけではない。古い太陽光パネルの故障も増えている。製品寿命を迎え、廃棄が必要な太陽光パネルが増加。これらの現状を踏まえると、太陽光パネルの廃棄処理は現時点から取り組まなければいけない問題と言える。

廃棄を推進するために乗り越えるべき主な課題としては、故障したパネルの処理方法が明確に決められていないこと、リサイクルを含めた廃棄処理ができる業者が少ないことなどが挙げられる。

適切な業者が少ない原因は、太陽光パネル廃棄処理が市場として未成熟であり、廃棄処理がビジネスとして成り立っていないからだ。太陽光パネルの廃棄設備を建設するには初期投資が必要であり、運用には専門知識や技術者が必要になる。そういったコストが一つのハードルになっている。

太陽光パネル廃棄処理には次のような対策が求められる。第一に、廃棄物の適切な分別とリサイクル技術の発展だ。専門的な廃棄処理業者や仕組みの整備が不可欠となる。第二に、施設オーナーや関係者に適切な廃棄処理の重要性を理解してもらうための啓発活動や教育だ。さらには不法廃棄を防ぐために、廃棄処理の責任やペナルティを明確化するといった対策も重要だろう。

光ファイバーネットワーク構築 ビッグデータの活用促進に意欲

【技術革新の扉】デジタル技術駆使の変電所/東京電力パワーグリッド

データセンターが集積する千葉県印西市で稼働したデジタル変電所。

安定供給を支えるため、設備を監視・制御するシステムを高度化した。

デジタル社会を支えるデータセンター(DC)が集積する「世界のINZAI」として注目を集める千葉県印西市。その地で、高度な運用や保守を実現する「デジタル変電所」が存在感を放っている。東京電力パワーグリッド(PG)が整備した「千葉印西変電所」だ。発電所でつくられた電力の流れを制御する重要な役割を担うだけに、設備の状態を効率よく監視するなど、多様な効果をもたらすデジタル化が望まれていた。東電PGのデジタル戦略に迫った。

千葉県印西市のデジタル変電所


設備異常の検知能力アップ レジリエンス機能の強化へ

工業団地の整備が進む印西市の千葉ニュータウンは、国内外の大手IT企業が運用するDCが続々と建設されている。強固な地盤を持つことに加えて、首都圏や成田空港へのアクセスが良いことから、今後も立地が進みそうだ。このエリアで消費する電力も飛躍的に増加し、2027年度の電力需要量は17年度の6倍に達する見通し。

こうした動きに備えて従来の半分程度の工期で新設したのが千葉印西変電所。新京葉変電所(船橋市)と変電所の間に約10㎞のトンネルを造り、内部に送電ケーブルを敷設。6月に運転を始めた。27万5000Vと6万6000Vの送電線で電力を需要先に送り込む変電所で、超高圧変電所としては国内初のデジタル変電所となる。

送電ケーブルを通すトンネルの工事

デジタル変電所は、電力設備の自動化に必要な通信ネットワークやシステムについて規定した国際規格「IEC61850」に準拠した。同規格に基づき、変電所を構成する各機器をつなぐネットワークを構築し、作業員がネットワーク経由で所内のデータを共有できるようにした。

さらにデータが行き来する通信網を従来のメタル回線から、高速で大容量のデータ通信が可能な光ファイバーケーブルに切り替えたことも大きな特徴だ。

電力系統で事故が発生した際に変電所の機器を安全に系統から切り離す保護装置と、所内の機器を制御する装置の2系列を踏襲しつつ、通信ネットワークも2系列化し、データ共有と機能分離が両立できる構成とした。装置の異常で1系列が停止しても別の1系列で変電所を稼働し、安定供給に貢献できる。多様な選択肢から最適な機器を選ぶ「マルチベンダー」方式で、4社の製品を組み合わせた。

こうした仕組みで変電所をデジタル化するメリットは、制御に必要なケーブルの本数を減らして設備を簡素化できる点で、設備の運用や保守に必要なコストの低減につながる。

所内には、設備の状態を常時監視する各種センサーも設置。遠隔地にいる管理者がデータサーバーに蓄積されたセンサー情報をリアルタイムで把握できるようにした。このため作業員が数値データを取得するために現場に出向する必要がなく、少ない人員で効率的に状態の把握や保全業務を確認することが可能となった。また、センサーで異常の予兆を検知し設備トラブルを未然防止したり、作業員によるケーブルの誤接続リスクを低減したりして、災害発生時の電力安定供給を支え続けるレジリエンス(強靭さ)機能を高められるようにしたという。

通信装置が並ぶ変電所の監視制御室

すでに東電PGは南横須賀変電所(神奈川県横須賀市)に、メタル回線で設備を高度に遠隔監視する仕組みを取り入れており、これまでに培った経験や知見を土台に今回のデジタル変電所を実現した格好だ。

背景には、電力業界に広がる「デジタルトランスフォーメーション(DX)」という潮流がある。AIやビッグデータの活用といった波も押し寄せる中で東電PGは、今後も変電所のDXを追求したい考えだ。


現場の省人化ニーズに対応 将来的には無線化も視野に

工務部変電グループの佐野優作主任は変電所で取得した有益データの活用策にも触れ、「働く場所を問わず業務用パソコンでデータを安全に共有できるようにしたい」と強調。「データの分析結果を保全や工事の計画づくりに加えて、災害対応や人材育成にも有効活用したい」とも意欲を示した。

次のステップとして視野に入れているのは、デジタル技術の適用範囲を広げた「フルデジタル変電所」で、28年に実現することを目指す。ただ、デジタル化を追求するハードルは高い。変電所の各種データを処理したりデータへのアクセスを処断したりする仕組みを、より高度化する力量が試されるからだ。複数の変電設備間でデータを精緻に同期させるといった課題も立ちはだかる。

作業現場の省人化を進める課題を踏まえ、30年代を視野に所内を無線で統合制御するというシナリオも描く東電PG。変電所のデジタル化をけん引する技術陣の挑戦の舞台が一段と広がりそうだ。

【コラム/9月26日】原子力活用と規制基準を考える~衰亡型か活用型か

飯倉 穣/エコノミスト

1、食い違う見方

日本のエネ事情・温暖化対策は、自民党総裁選、立憲民主党党首選で、原子力への態度を問いかけている。原子力発電再稼働・開発について候補者の否定的見方、消極的発言、仕方ない、差し当たりという反応がある。

岸田首相は、原子力発電所について「安全性の確保を大前提としつつ、地元理解を得た上で再稼働していく、というのが政府の一貫した方針です」 (第12回原子力関係閣僚会議発言:24年9月6日)と述べた。

政府が再稼働に踏み込む中で、実務面の動きは鈍い。10数年間地盤の議論が続いている。敦賀原発は、原子力規制員会が、浦底断層(活断層)近くの「K断層は、後期更新世以降(約12~13万年前以降)の活動が否定できない」と判断した。報道もあった。「敦賀2号機初の不合格 規制委、再稼働認めず 原電は再申請の意向」(日経24年8月29日)「規制委 敦賀2号機「不適合」了承 一般から意見募集」(朝日同)。

規制委は、事業者の調査結果(活断層否定)について、地盤の動きはわからない、証明できないと記した。再び事業者主張と異なる判断となった。敦賀2号機は再稼働を認められないばかりでなく、原子力発電所の存続可能性を低下させる。 同発電所の立地経緯と運転実績から見れば、敷地内の破砕帯について浦底断層の影響をある程度受けるとしても、耐震工学的な対応も含めて安全性確保が可能とも思える。現状の原子力規制、専門家集団原子力規制委員会の在り方・規制基準を、地質非専門者の目で経済・エネルギー・環境問題から考えてみたい。


2、原子力規制委員会は

委員に強権賦与

原子力規制委員会は、一般人には分かりにくい。根拠法は「原子力規制委員会設置法(議員立法)」(12年6月20日成立・27日公布)である。規制の一元化を行うため、内閣府原子力安全員会・経産省原子力保安院を分離し、環境省の外部部局且つ独立性の高い3条委員会とした。人選の経緯・適任性は定かでないが、“専門家”委員長・委員任命で原子力規制委員会発足(9月19日)となる。委員は政治的に独立し強い権限を持つ。事務局として原子力規制庁がある。発電用原子炉の新規制制定に取り組み、13年7月原子力発電規制基準が作られた。新原子力規制は、東日本大震災・福島第一原発事故を反省し、規制の強化を行い、且つバックフィット制度(新基準の既設備への適合義務付け)を採用した。

追込み向け規制強化一筋?

実用発電用原子炉(原子力発電所)に係る規制基準の考え方は次の通りである。まず見直しの基本的考え方がある。従来の規制基準の前提である自然現象に対する考慮、 火災に対する考慮、電源の信頼性、その他の設備の性能、耐震・耐津波性能の更なる強化・新設である。加えてテロ対策で意図的な航空機衝突への対応、シビアアクシデント対策で放射性物質の拡散抑制対策、格納容器破損防止対策、炉心損傷防止対策 (複数の機器の故障を想定)を新設した。具体例では、火山等の想定の引上げと防護対策、電源喪失対策で独立外部電源2回線、非常用電源3台・電源車2台、所内直流電源容量増等々を求めた。

折り返しの電力システム改革検証 取りまとめに向けた注目点は

【多事争論】話題:電力システム改革検証

電力システム改革検証は、7月9日に振り返りと論点整理が行われた。

業界関係者は、これまでの議論をどう評価し、今後の議論に何を期待しているのか。

〈 業界構造は大きく変わらず ビジネス育成へ規制緩和を 〉

視点A:小嶋祐輔/パワーエックス執行役電力事業領域管掌

2015~20年の間に3段階に分けて行われた電力システム改革は、「電力の安定供給の確保」「電気料金上昇の抑制」、そして「需要家の選択肢の拡大と事業者へのビジネスチャンスの創出」の三つの目的を達成するために行われ、①広域系統運用の拡大、②小売及び発電の全面自由化、③法的分離の方式による送配電部門の中立性の一層の確保という3段階が改革の全体像とされてきた。20年の発送電分離から5カ年が経過し、改めて検証が行われているわけだが、新規参入事業者の観点から、振り返りをしてみたいと思う。

まず、「電力の安定供給の確保」について。20年度の市場高騰の頃から、主に火力電源の退出が進み、新設電源の導入があまり進んでいないことがクローズアップされた。小売電気事業者の数が増え、長期的な契約ができるプレイヤーのシェアが減ってしまったことにより、電源側の投資予見性が下がってしまったことが原因か。需要期においては、エリア予備率の見込みが低下し、供給力公募を急遽行う必要が出るなどの影響が出たことは、制度設計のスピードよりも想定以上に事業者側の動き(投資・廃止判断など)が早かったことが原因として挙げられる。容量市場の導入も、それにより新設電源の投資に予見性が確保できたといえるかどうかが論点になってしまうと考える。一方、電力広域的運営推進機関による広域的な電力融通は、需要期が来るごとに行われるようになり、その運用が定着したと見ることができそうだ。これは、電力システム改革の一定の効果と言える。


低下する新電力シェア 脱炭素電源導入が競争活性化の条件

次に、「電気料金上昇の抑制」について。18年頃、卸電力取引所の価格が低廉に進捗した時期においては、旧一電小売とそのグループ会社、または大手新電力によるエリアを超えた過当競争が行われ、主に大口顧客に対する電気料金はかなり下がった。しかし、可変費ベースで競争を行っていたため長く続かなかった。20年頃からの市場高騰、およびウクライナ情勢以降、その揺り戻しが来てしまったわけである。結果として、新電力のシェアは下がる方向となり、足元では大口顧客に対する電気料金の水準は、かつてよりも高くとどまる形になっている。これらを見ると、活性化された競争環境下における電気料金の抑制という観点では、その目的は進捗しているとは言い難いのではないかと考える。

日本全体の電源構成は火力中心であり、その燃料価格によって概ね電気料金の原価が決まってしまうこともあり、この2~3年は、資源価格の水準の方が競争環境の活性化有無よりも影響力が大きい状況であることが示されている。新設電源の導入、特に再生可能エネルギーや原子力といった脱炭素電源の導入が活発になることで初めて、競争環境の活性化による電気料金の水準抑制の議論ができる状況になるのではないか。

また、昨今の再エネ導入は、制度に依存しない形での需要家主導型の導入が多くなってきている。こういった導入をけん引する事業者は、電気料金だけで電力メニューを評価しているわけではなく、再エネとしての電源の価値(例えば、追加性やトレーサビリティーなど)を評価して採用を決めている。「電気料金上昇の抑制」自体の求められる形が、一部の需要家群では変わりつつあるということについては、注目が必要であり、30~40年頃の電源構成を意識したシステム改革の在り方が検討されるべきではないかと考える。

最後に、「需要家の選択肢の拡大と事業者へのビジネスチャンスの創出」について。800社を超える小売電気事業者の参入により、需要家の選択肢は拡大したと言うことはできる。ただ、例えばBIG6の一角が新電力に買収された英国のような、業界構造を大きく変えるような事業者の登場はなく、いまだに旧一電・旧一ガスの、地域内独占を崩す/崩さないの範疇での顧客の取り合いに過ぎない状況は否めない。事業ノウハウを昔から有している旧一電であっても、越境して営業をすることが難しいとの声が聞こえてくる状況だ。自由化後のマーケットの理想像がどういったものであったか、改めて議論が必要な状況と考える。

新たなビジネスモデルの創出のために、大手企業と新興企業の連携は自由化後にかなり進捗した。電力データの活用や、分散型電源・蓄電池・電気自動車の活用など、まだまだ市場を席巻するような事業者やサービスは発展途上であるが、こういった新しいビジネスが育ちやすい競争環境や規制の緩和をさらに求めたいところだ。

こじま・ゆうすけ 2008年東京大学大学院工学系研究科修了。大手電機メーカーなどを経て14年より大手新電力で主に電力小売事業の責任者を務める。23年に独立しエネルギー会社などへの経営支援に従事。24年1月から現職。

【山本知也 むつ市長】 「長期貯蔵の懸念は解消された」

やまもと・ともや 1983年青森県むつ市生まれ。2005年法政大学経営学部卒業。卒業後はむつ市役所に入り、市長秘書などを務める。19年の青森県議議選に無所属で立候補し、初当選。23年、宮下宗一郎前市長の辞職に伴うむつ市長選に立候補。元県議を破り、40歳で初当選を果たした。

市内に立地する中間貯蔵施設の操業開始が目前に迫っている。

かじ取りを担うのは、宮下宗一郎前市長の側近だった若き市長だ。

青森県むつ市で育つ。高校までは長距離選手として陸上に打ち込み、卒業後は地元で就職するため、消防士を目指した。ところが人口減少を受けた行政改革の一環で、地元の消防署の新規採用がなかった。そんな時、父から大学へ行くように進言を受ける。むつ市に残りたいので「相当抵抗した」というが、しぶしぶ受け入れることに。法政大学に進学したものの、「長期休暇の多くを帰省に充てていたし、3年生までに単位をほぼ取り終え、4年生の頃はほとんどむつ市に戻っていた」

就職は地元以外に考えていなかったが、市内にはこれといった産業がない。「地元で就職するなら、市役所か海上自衛隊の大湊基地、周辺に原子力関連施設が集まる電力業界くらいしかなかった」。結果的に市内の病院で事務職として1年働いた後、市役所の採用試験に合格した。「当時は東北新幹線の終着駅が盛岡駅であるなど、東京に出て下北地方の遅れを目の当たりにした。それでも、豊かな地域に行くのではなく、自分が地元を何とかしたいという気持ちが強かった。この思いは政治家になってからも揺るがない」

市役所には約11年半勤務した。2014年6月に宮下宗一郎前市長(現青森県知事)が就任すると、総合戦略課や秘書として仕えた。宮下氏はむつ市が稼げる地域になるべく、「攻めの市政」へと転換させた。街は活気づき、政治家が変われば街が変わることを目の当たりにした。宮下氏は山本氏に対して、「若い力でむつ市や青森県を変えていこう。政治が変わらなければ行政も変わらない」と頻繁に語っていたという。

山本氏の父はむつ市議会議長、祖父は東通村議会議員を務めたが、自身が政治家を志したことはなかった。親戚にも「絶対にやらない」と宣言していた。だが宮下市政に関わる中で、政治への関心は高まっていった。宮下氏から出馬の打診を受けた19年4月の青森県議選で初当選。昨年3月、青森県知事選に出馬する宮下氏の辞職に伴う市長選で当選し、40歳でむつ市長に就任した。

【コラム/9月25日】2024年度第2四半期までを振返って

加藤 真一/エネルギーアンドシステムプランニング副社長

9月に入り暑さも一服とはいかず、残暑が続いている状況であり、電力需給も一部エリアで需給改善のための応援融通が複数回実施されているほどである。また、台風や線状降水帯の発生等、自然災害の脅威は増しており、そうした状況下でインフラ設備を守る現場の方々には頭の下がる想いである。そうした中でエネルギーを取り巻く議論も引き続き活発に行われており、関連審議会は日々開催され、足元から中長期に至る多岐にわたる議題が取り上げられている。 今回は、2024年度第2四半期の状況を簡単に振り返ってみることとする。色々と議論が行われているが、大きく4つのポイントに絞ってみた。


1.引き続き、政策立案の大きな動きが進展

第1四半期同様に、中長期の視点で大きな政策の方向性の議論が進んでいる。その中で、エネルギーを単体で考えるのでなく、この数年、国内外で着目されている気候変動(温暖化対策含む)に加え、産業政策も組み合わせた三位一体の政策に仕上げていく方向となっている。

その本丸になるのがGX2040ビジョンである。政府のGX実行会議を筆頭に、有識者との意見交換であるリーダーズパネルでの示唆や専門家WGでの議論を踏まえ、7つの課題を抽出し、「エネルギー」「GX産業立地」「GX産業構造」「市場構造」「グローバル」の視点で計10個の検討のたたき台が提示された。今後、2024年内の取りまとめに向け、議論が加速される予定である。

このうち「エネルギー」については第7次エネルギー基本計画策定に向けた議論が基本政策分科会で着々と行われている。こちらも論点を10個ほど挙げており、それぞれの論点に対して、関連する企業や業界団体、研究機関等からのヒアリングを行っているところである。並行して、各論点について「現状と課題、対応の方向性」を提示し、共通認識が得られたものを整理している段階である。さらに、各分野(例えば、資源燃料、原子力、再エネ、省エネ)については、関連する審議会で方向性の議論や関係団体ヒアリングを行い、おそらくそれらの議論が基本政策分科会での整理に上げられると推測される。

また、エネルギー基本計画の論点には、エネルギーミックスの策定や電力システム改革・事業環境整備が含まれている。こちらは、それぞれ、電力・ガス基本政策小委員会、発電コスト検証WGにタスクアウトされており、今後、検討・取りまとめされたものが反映されてくることになるだろう。

気候変動対策やカーボンニュートラルの観点からは、次期NDC策定を含む地球温暖化対策計画の改定に向けた議論が環境省の中央環境審議会の小委員会と経済産業省の産業構造審議会のWGの合同会合として議論が進められている。まずは関係する業界団体、若者団体、関係府庁、自治体からのヒアリングを行っているところである。併せて、政府実行計画の見直しや地域脱炭素の今後の在り方も環境省の審議会で議論が展開されている。

こうした大きな政策の議論については、①これまでの取組の総括、現状の課題の抽出、②関係者へのヒアリングによる課題・要望の洗い出し、③これらを踏まえた今後の対応の方向性の論点整理や必要な試算の実施、④数字面の目標を含む取りまとめといったステップを踏んで進められており、この春から夏までは、特に①、②を中心に行われ、地固めをしている状況で、今後、秋から冬にかけて最終的な取りまとめに向けた具体議論が展開されることが予想される。

【政策・制度のそこが知りたい】数々の疑問に専門家が回答(2024年9月号)

今夏の電力需給はひっ迫状態なのか/分割供給の導入はなぜ決まった?

Q 猛暑の影響で電力需給がひっ迫していると言われていますが、実態はどうなのでしょうか。

A 2022年6月に起きた本格的な夏前の需給危機、その後の夏の節電要請の時期に比べると、東京エリアを中心に、発動指令電源に対し複数回の指令が出されたものの、現在の夏の電力需給は実は緩和状態にあります。要因はいろいろあるが、一番大きいのは太陽光発電の増加がFIT/FIP分、それ以外のPPA・自家消費分とも続いているからと考えられます。全国レベルでFIT/FIPで年間300万~400万kW、自家消費・PPAが年間100万~150万kW以上という規模は、全体からみるとわずかだが少なくとも夏季ピークについて毎年累積で緩和効果を持っていると言えます。

一方で今夏、東京や東北管内では一週間前段階で予備率が1%台という「すわ需給危機か」と驚く日もありましたが、当日では逆に10%以上の予備率という日も多かったです。こうしたことが起きたのは、一般送配電事業者が一週間前に募集する需給調整市場での大量の未達のために供給力がない形の予備率を公開せざるをえないためで、実際に記者レクでエネ庁自身が「これは真実の数字ではありません」と説明した通りです。実際、前日断面ではBG(バランシンググループ)側の予測精度が上がり、余力活用契約による供給力が十分出てくる、というのが今夏の常でした。

これらの根本原因は「需給調整力を囲う(調達募集)タイミングの早過ぎ」ということにあり、現在の週間調達が前日調達となる26年度まで続く可能性が高いです。それまでの間、電力需給状況に関わる正しい情報のために供給力の計上を変えるなどの工夫が必要であるとともに、26年に予定されている調整力の前日取引の前倒しなどを進めることが必要になってくるでしょう。

回答者:西村 陽/大阪大学大学院招聘教授


Q なぜ部分供給が廃止され、代わりに分割供給が導入されることになったのでしょうか。

A 電気の供給契約は、「一需要場所一契約」が原則とされています。しかし、自由化直後の新規参入者は電源へのアクセスが難しく、確保した需要に供給する十分な電源、もしくは同時同量に必要な調整電源を持てないこともありました。そこで、需要家への供給に十分な電源を確保できない場合に、不足部分を一般電気事業者が供給する部分供給の仕組みが導入されました。経過措置として「一需要場所二契約」を認める制度です。

その後、卸取引市場の整備・活性化により新電力の電源アクセス状況が改善したこと、また市場価格の安い時間帯は自身で供給、それ以外をみなし小売電気事業者に供給させ収益を上げるなど趣旨にそぐわない不適切な制度活用が見られ、部分供給制度が見直されることとなりました。

制度廃止の議論もありましたが、PPAで新電力が再エネを供給し、残り部分をみなし小売電気事業者が供給するスキームなどでは、制度廃止が再エネ供給にも影響を及ぼす可能性があることから、不適切な活用が疑われた通告型を除いた類型で、分割供給制度に移行することになりました。

分割供給においても、一需要場所に対して複数の事業者が供給契約を結ぶことは同じですが、みなし小売電気事業者が片方の契約締結を必ずしも要請されないことが大きな違いです。つまり新電力+新電力の分割供給も可能になります。

契約の任意性が実質的に高まることになり、制度趣旨にそぐわない不適切な制度活用が排除されることが期待されます。一方、みなし小売電気事業者が制度趣旨に沿った分割供給の要請に応じないことで需要家に過度の不利益が生じることがないような制度対応および運用が課題となります。

回答者:桑原鉄也/KPMGコンサルティング Energyセクターリードスペシャリスト

【需要家】第六次環境基本計画決定 強い主体性を求める

【業界スクランブル/需要家】

5月21日に第6次環境基本計画が閣議決定された。環境政策の最上位目標として「現在及び将来の国民一人一人のウェルビーイング/高い生活の質」の実現が掲げられている点が大きな特徴だ。そしてその実現に向けて、①ストック、②長期的視点、③本質的ニーズ、④無形資産・心の豊かさ、⑤コミュニティ・包摂性、⑥自立・分散の重視の六つの視点が提示されている。これは、何が良い生活なのかを考え、その実現に向けて、外への依存を減らしながら今あるものや地域を最大限活用していく、ということと言えるのではないか。このような方針およびそれを目標として掲げること自体は非常に重要なことだと思う。

それをどう実現するのか。計画において国民に求められる役割を要約すると、望ましい生活・行動範囲を認識し、人間と環境の関わりの理解を深め、環境配慮行動に努めること、政策決定に関わること、社会づくりに参加して学びあい、社会およびコミュニティの対応力や課題解決能力を高めていくことが挙げられている。非常に強い主体性が国民には求められているわけだ。

しかし計画における重点戦略を見ても、目標実現に要する国民の主体性喚起をどうするのかについては明確ではない。例えば「心豊かな暮らしを目指すライフスタイルの変革」に向けた施策を見ても、GHG排出量のみえる化、食ロス削減、サステナブルファッション、自然とのふれあい、ナッジ、科学的知見の共有などにとどまっている。ウェルビーイングという個々人の主観に係る価値の進捗をどう評価し、国民の主体性喚起とどう向き合うのか。今後の計画進捗を注視したい。(O)

【再エネ】現行目標は到達困難 エネ基でタブー無き対策を

【業界スクランブル/再エネ】

政府は、2050年までに脱炭素社会を実現するという目標を掲げている。今年は第7次エネルギー基本計画の改定の時期に差し掛かっているが、21年10月の第6次エネ基の閣議決定以降、海外におけるウクライナ侵攻や中東での軍事衝突などの国際社会の分断から、エネルギーを取り巻く環境も大きく変化している。そうした中で現在の再エネ導入状況に目を移すと、達成目標である30年度に再エネ比率36~38%は現状ペースでは到達困難であり、一説では30%程度に留まる可能性もあるといわれている。

一方、28年の炭素賦課金開始に向けて、需要家からの再エネ電力へのニーズは高まっており、世界のサプライチェーンから外されないためにも再エネのさらなる拡大は待ったなしの状況だ。30年の目標達成なくして、35~40年度目標達成は不可能と思われ、タブーなしで思い切った再エネ導入拡大策を打ち出さねばならない。

現状は良い再エネ事業がある半面、質の悪い再エネがあることも事実。最近では悪い再エネの報道も多く、地域からの理解が得られず計画を断念する事例も目立つ。事業者の規律を求める声が大きいのはもちろんだが、結果的に良い再エネを伸ばせる余地まで奪っているのではないだろうか。FIT制度開始20年となる32年に向けては、良い再エネを実践する事業者の選別が始まっていくだろう。卒FIT案件をどのようにして事業継続させていくのか、大量のパネル廃棄や放置案件などの懸念もあるため、悪い再エネをどのように生まれ変わらせるか。民間任せにせず、国や地方自治体の積極的な関与を期待したい。(K)

地域課題を連携協働で解決 独自色強いエネルギー事業を展開

【エネルギービジネスのリーダー達】戸田達昭/ヴィジョナリーパワー代表取締役CEO

地域が自立して課題解決に向かう財源確保のため、新電力事業に参入した。

紆余曲折を経て経営は軌道に乗り、ユニークなバイオマス事業のチャレンジも始まった。

とだ・たつあき 2007年山梨大学大学院在学中にSPARK設立。同大学院医学工学総合教育部物質・生命工学コース修士課程修了。その後バイオベンチャー・シナプテックなど数社を設立。産学官民協働による地域づくりにも取り組む。17年、ヴィジョナリーパワーを設立。

甲府市に、ユニークな成り立ちの地域新電力がある。公益資金に頼らず、地元企業トップや名士ら9人が出資して2017年に誕生した「ヴィジョナリーパワー」だ。現在は個人株主20人超、法人株主4社に拡大した。代表取締役の戸田達昭氏は、「地域が抱える課題解決の財源をつくるツールとして、新電力が有望だと考えた。米国の寄付文化を参考に、地元関係者の共感を得られる形を意識し、資金を募った」と振り返る。


電力危機を越え経営安定 公営水力の売電先に選定

戸田氏は山梨大学大学院在学中に起業した山梨県初の学生起業家だ。とあるビジネスプランコンテストでの入賞を機に、起業家の道に入った。当初は専攻のバイオ関連でビジネスを立ち上げるつもりだったが、同級生の就職時に企業とのマッチング不足を目の当たりにし、就職支援ビジネスを開始。そこから地域活性化や人材育成に関する活動が増え、政府の中央教育審議会生涯学習分科会委員(第6期)を最年少で務めた。これまでにバイオベンチャー企業など多くの社を立ち上げ、現在は18社の経営を手掛けるほか、大学で教鞭も取る。

同社の現在の販売電力量は年間1000万kW時ほど。大手電力会社のプランよりも料金がお得になる通常電気メニューは、他社と一線を画し、「本来料金をお得にできる分の一部を顧客から預かり、地域に寄付する」(戸田氏)スタンスだ。寄付先は地域のNPO法人やスポーツクラブなどさまざま。さらに、地元顧客と別の法人顧客とのコラボを提案するなど、顧客同志の接点も提供する。

また、東京電力への売電契約が今年3月で終了した公営水力の獲得を、数年前から検討。県がプロポーザル(企画提案型)方式で新たな事業者を公募し、無事最小区分の年間約520万kW時の売電先に選定された。この電気を使った脱炭素電気メニューのほか、電気代の20%を県内企業の商品券などと交換する「子育て応援でんき」といったプランも提供する。

今は経営が安定しているが、21年初頭の電力ショックは、起業家人生最大のピンチとなった。当時はほぼ市場調達に頼っており、多大なダメージを負った。局面の打開には市場以外からの調達先を見つけることが必須。その際に力となったのが、株主や、これまでの活動で培った縁だった。つながりがあった某大手エネルギー企業の社員が社内で掛け合い、自社電源をヴィジョナリーパワーに卸供給するスキームを構築。2月には当時の販売量(約300万kW時)全量をこのスキームに切り替えることができた。危機を乗り越えた後は、撤退したほかの新電力の顧客を引き取り、さらに契約件数を伸ばしていった。

この経験で、不確実なものを経営に取り入れないことが重要だと痛感。さらに「エネルギー高騰の理由は自社でエネルギーを持っていないから。ならば作ればよい」―。そこで始まった次なる挑戦が、バイオマス事業だ。


育種から手掛けるバイオ 農業やSAFに活用へ

といっても一般的な木質バイオマス発電などではなく、ひまし油の原料であるトウゴマに着目。耕作放棄地で栽培し、枝葉、あるいは種子から取る油を化石燃料の代替とするプロジェクトだ。市と共同で今年本格始動し、まずは農業用重油の代替で導入していく。

別途経営するバイオベンチャーのノウハウを生かし、新品種「ヤマトダマ」を育成した。有毒植物で、病虫害や鳥獣害を受けにくい。5月に播種して11月の収穫を見込んでいる。苗を植えて2カ月で背丈2・8mを超えるほど成長が速く、協力する農家も驚くほど。また、日焼けや高温対策を兼ね、ソーラーシェアリングも検討中だ。

収穫した枝葉はボイラーで直接燃焼し、重油をバックアップとしながら農業用ハウスの加温に使う。今後、公共施設での利用も予定する。そして、特に油はSAF(持続可能な航空燃料)としての需要が見込め、既に興味を示す企業もあるという。「遊休農地を油田に変えるプロジェクト。ほかのカーボンニュ―トラル燃料に比べ一般に分かりやすい取り組みで、特に高齢化問題が深刻な農家はポジティブに受け止めている」と戸田氏。地域のエネルギーインフラ会社として、脱炭素という切り口で顧客の付加価値向上を目指す。

エネルギーの枠に捕われず、ベンチャーへの投資や、貧困問題の解決などにも積極的だ。「次世代が将来必要なビジネススキルを身に着け、生きる力を育くむことは、『支援』でなく『投資』として重要だと考えている」と強調する。地域の持続的な発展に向けて、全方位でのチャレンジを続けている。

【火力】数値ありきのエネ基議論 電源構成に目を向けよ

【業界スクランブル/火力】

第7次エネルギー基本計画の策定に先立ち、電源別発電コストの検証が行われている。このような定量的な分析は精緻な検討のために必要ではあるが、前回同様に電源別の数値だけが独り歩きすることが強く懸念される。

そもそも資源エネルギー庁が試算する発電原価は、一定の前提で想定されたモデルプラントを新設する場合として計算された目安でしかない。実際の発電原価は、地点ごとの条件や物価、為替、天候といった外的要因の影響を強く受けるもので、試算結果を元に電源種の優劣を直接比較することに大した意味はない。

参考とすべきは試算された発電コストの数値ではなく、それぞれの電源種で資本費、燃料費、社会的費用などの内訳がどのような比率の構成となっているかである。そこから分かる電源種ごとの特徴に加え、前回から取り入れられた「統合コスト」(電力系統を安定運用するために必要となる対策コスト)を加味してわが国の社会コストがミニマムとなる電源種の組み合わせ、ベストミックスを導き出すことこそが正しい使い道だ。

しかし、残念ながらこの統合コストという概念を加えた検討は容易なことではない。自然変動電源の間欠性を補うための方策は、系統対策ばかりでなく、電源側、需要側にもさまざまな方策がある。さらに蓄電池の大量導入や水素やアンモニア、CCUSといった新技術の社会実装に向けた工程とコストを見通すことも求められているためだ。

いずれにしてもカーボンニュートラルありきの拙速な議論では、実現不可能な目標となるばかりでなく、電力不足という社会の混乱を招くことになりかねない。(N)

地域共存を第一にサービス拡充 助け合いの精神で山鹿とともに歩む

【事業者探訪】山鹿都市ガス

温泉街として知られる熊本県山鹿市で、都市ガス小売り事業を営むのが山鹿都市ガスだ。

人口減少が深刻化する中、助け合いの精神を大事に地域に根差した事業を展開している。

熊本県北部に位置する山鹿市は、九州を代表する名湯「山鹿温泉」や1910年に建てられた芝居小屋「八千代座」などで有名な観光地。毎年8月に催される「山鹿灯籠まつり」には、多くの観光客が訪れる。

同市は明治時代に、県北部を流れる菊池川の水上交通の要、物産の集散地として発展した。

肥後・熊本(熊本市)と豊前・小倉(北九州市)をつなぐ「豊前街道」の中間地点に位置し、九州屈指の宿場町でもあった。

同市で都市ガス事業が始まったのは1970年。それまでLPガスが主流だったが、都市ガスの普及が急務となった。この動きを推進したのは、旧山鹿市の青年会議所の有志で、同所が出資し、山鹿ガス(現・山鹿都市ガス)を設立した。

岡本曉宗社長

同社は今年、設立から54年を迎えた。1市4町が合併する前の旧山鹿市を供給エリアとし、一般住宅、飲食店、医療施設、宿泊施設などの家庭・商業用に都市ガスを販売している。民間企業の工場がないため、工業用などの大口契約はない。また、同市にはLPガス事業者も多く、供給エリア内の同社の普及率は50%だ。


ガス供給で観光業下支え TSMCの効果に期待

市中心部で湧き出る温泉の温度は、30~40℃前後と比較的低いという特性がある。このため、旅館などの宿泊施設では源泉をボイラーなどで昇温する必要があり、この加温作業に用いられているのが、同社が供給するガスだ。地域の主力産業である観光業には欠かせないエネルギーインフラを、長年陰から支えてきた。

ガスの原料にはLNG(液化天然ガス)ではなく、プロパンガスと空気を混合して供給するPA13A方式を採用している。山鹿市古賀にある本社に隣接するガス製造基地には、毎時1万6800㎥のガス発生設備や335㎥の貯蔵能力を持つ中圧ガスホルダーなどを備える。

事業継続の上で一番の課題は、山鹿市の人口減少による供給先の減少だ。市町合併が行われた2005年1月時点の人口は約6万人だったが、現在は約4万8000人と、徐々に減少し続けている。

現在のメーター取り付け数は約3000件だが、実際に稼働しているのは2300件ほどにとどまる。コロナ禍の影響もあったとはいえ、23年度には例年の年間ガス販売量80万㎥を下回ってしまった。

事業の存続が危ぶまれる中、転機をもたらすことが期待されるのが、今年2月に開所した熊本県菊陽町の台湾積体電路製造(TSMC)の熊本第一工場だ。半導体工場の城下町となった菊陽町では、TSMCに関連する工業団地の建設が進み、同社社員や建設作業員の住宅地の建設も進む。それは、第一工場から北西約30‌Km圏内にある山鹿市でも同様だ。

岡本曉宗社長は「工業団地の進出に伴い、山鹿市でも住宅地の建設が始まる見通しだと聞いている。最近では、市内での工場新設を視野に入れる半導体関連の企業も出てきている」と、半導体工場立地の効果を話す。

本社に隣接するガス製造基地

第一工場から南西に進むと熊本市がある。同市は政令指定都市の中でも渋滞箇所数ワースト1位の「渋滞都市」。通勤の混雑を避ける点からも、山鹿市が住宅用地として注目されているという。

2月に第二工場の建設が決まって以降は、県外から訪れた建設作業員が宿泊施設を求めて山鹿市にやってくることも。市内では、作業員用の仮設住宅の建設があちらこちらで始まっている。半導体関連の工場建設に伴い、「家庭用の供給先増加につながれば」と期待を込める。

【原子力】中間貯蔵施設が稼働へ 青森県・むつ市は誇りを

【業界スクランブル/原子力】

青森県むつ市の中間貯蔵施設の安全協定が8月9日、青森県とむつ市、事業主体のリサイクル燃料貯蔵(RFS)、東京電力HD、日本原電との間で締結された。最終容量は5000tで、1棟目は9月中に原子力規制委員会の使用前確認を経て操業を開始する見込みだ。

福島第一原発事故前には毎年900tを超える使用済燃料が発生し、六ヶ所再処理工場の再処理能力である年800tを超えていた。しかし、今後再稼働が見込まれる原発から発生する量は、せいぜい年600tだ。

一方で、再処理工場の操業開始が大幅に遅れ、中間貯蔵の意味合いは変わった。東海第二も柏崎刈羽も、ともに運転を再開すれば使用済み燃料の貯蔵余裕はごく数年分と推定され、早急に中間貯蔵施設に移す必要がある。

青森県内では永久貯蔵を懸念する声が聞かれるが、心配無用だ。青森県知事の問いに対して、すでに国は次期エネ基に六ヶ所再処理工場の長期利用に触れると回答している。

そもそも中間貯蔵施設に貯蔵される5000tが再処理される頃には高速炉サイクルの時代を迎えている。高速炉では使用済み燃料の4分の3程度を核分裂でリサイクル利用でき、熱効率も高い。仮に日本の年間電力需要である1兆kW時の20%を原子力に委ねるとすれば、1gが1MWdのエネルギーを発生するから5000tの使用済み燃料は175年分、日本全体の電力需要の35年分に相当する。青森県とむつ市には莫大なエネルギー供給の基となる使用済み燃料の備蓄を引き受けることを誇りに思ってほしい。核燃料サイクルが日本の将来を救うのだ。(H)

酷暑の中で考える再エネ 脱炭素化は喫緊の課題

【リレーコラム】三宅成也/再生可能エネルギー推進機構代表取締役

暑い、とにかく暑い。原稿を書いている8月4日の外気温は35度を超えており、今夏も昨年に引き続き耐えがたい暑さが続いている。気象庁の発表によれば平均気温は暑かった昨年の最高記録をさらに上回り、統計開始以降最も高くなったという。残念ながらこの気温上昇や昨今の異常気象は、人為的な温室効果ガスの排出が原因であることはほぼ間違いないと言われている。そのことからも電力を含むエネルギーの脱炭素化は、人類にとって今すぐ行動すべき喫緊の課題として突きつけられているのである。巨大インフラである電力システムの脱炭素転換は容易ではない。だが、これは人類の存続に関わる問題として国、業界を挙げて一刻も早く真剣に取り組み、実現せねばならない。このような供給サイドの大きな取り組みの一方で、一市民、われわれ個人として何ができるであろうか。

江戸時代には「水うてや蝉も雀もぬるる程」という句がうたわれたように、庶民が涼を取る手段として打ち水がもてはやされていた。しかし、この暑さにはまさに「焼石に水」でしかなく、現代においてはエアコンに頼る以外方法はない。ここで私の一つの実践は、自宅に太陽光発電と蓄電池を導入することによるエネルギーの自給自足である。私が自宅に太陽光を導入してまず気づいたことは、特に夏の昼間のエアコン需要と太陽光発電はとても相性が良いことである。日本の住宅は気密・断熱性能が低く、夏の昼間は冷房に使う電力量が大きくなる。ところが、この電力を太陽光発電で給電すれば、夏の酷暑でエアコンをフル回転させても買電メーターは回らず、CO2も排出しないので罪悪感を抱くことはない。また、蓄電池のおかげで夜の残りの時間はおおむね昼に蓄電した電力で朝まで供給してくれるので、夜寝る間も電気代を気にせずに快適に過ごすことが可能となった。


蓄電池パリティ実現も近い

このようにわが家の酷暑の電力需給において、太陽光発電と蓄電池によりほとんど外部から電力を購入することない半自給自足が実現した。問題は太陽光発電と蓄電池による電力コストである。脱炭素化においてコストをいくらかけてもよいわけでない。日本の蓄電池価格はまだ高く補助金が前提となる。ただ太陽光パネルと同様、世界ではリチウムイオン電池の性能向上と価格の急速な低下が進んでおり、系統電力と自家発電の価格が均衡する蓄電池パリティの実現もそう遠くはない。誰もが太陽光発電と蓄電池で、電力を使うことをためらわず快適な自立生活を手にいれることが当たり前になるよう願っている。

みやけ・せいや 関西電力原子力部門を2007年に退職、ADL、KPMGで多様な業界のコンサルティングを経験。みんな電力を経て23年1月より現職。再エネアグリとして再エネ電源の地域活用・推進に取り組む。

※次回は、東芝ネクストクラフトベルケの新貝英己代表取締役社長です。

【石油】航空燃料不足は物流要因 経営効率化が招く危機

【業界スクランブル/石油】

国際線増便のネックとなっていた航空燃料不足問題の対応策について検討してきた官民タスクフォースの行動計画が、7月に開かれた政府の観光立国推進閣僚会議で了承された。内容的には、製油所の廃棄による燃料生産不足ではなく、内航タンカー・タンクローリーや空港で給油する作業員の不足といったロジスティクス(物流)上の原因であるという石油元売り側の主張が認められた。

行動計画には、年2回の航空ダイヤ改正時の増便計画の早期確定といった内容も盛り込まれた。注目されるのは「成田国際空港会社」による燃料直輸入だが、安全運航に必要な品質維持の責任を果たす観点で、1回限りの象徴的な対応にとどまるであろう。

背景には、近年の石油・運輸業界の経営効率化や、迫る物流の「2024年問題」に加えて、コロナ禍の航空需要激減に伴う給油作業員のリストラもあった。円安進行に伴う予想外のインバウンド(訪日客)急増もあろう。

ジェット燃料の供給契約は通常、石油元売りと航空会社間で結ぶ直接契約であり、所有権移転は航空機への給油時となる。物流を含む供給責任や航空機の安全に直結する品質維持の責任は元売りにあり、これらに責任が持てない以上契約しない。

近年の燃料安定供給問題を見ると、地震・災害時を含めて、圧倒的に物流上の問題が多い。備蓄や在庫があっても運べなくては意味がない。経営効率が重視される中、物流で余裕がなくなっている。これは航空会社でも同様だ。

こうした問題は今後も起こり得る。すぐに増便が計画できる中国・東南アジア系航空会社がうらやましい。(H)