【多事争論】話題:再エネ出力抑制と系統増強
東京を除くすべてのエリアで再エネの出力制御が実施されるようになっている。
マスタープランに基づく送電網増強が計画される中、今後重視すべき視点とは。
〈 CNでの電力NWの将来像 コスト効率高い対策優先 〉
視点A:荻本和彦/東京大学生産技術研究所特任教授
2050年の温暖化ガスゼロ排出(CN)に向け、再生可能エネルギーの大量導入が期待される。太陽光発電(PV)は建物の屋根を含め設置面積が確保できる場所から配電網に接続し、風力は発電に適した風況の地域、その多くは大規模な需要地から離れた地点から送電網への接続が中心となる。
PV、風力の発電は、日射や風況によって変動し利用率が低い。その電気を需要地に送るために送電線を新設する場合、出力制御をゼロにするためには最大出力を送る必要があり、送電線の容量・建設費が大きくなり、その利用率は下がり、送電コスト(送電電力量当たりの費用)は増加する。逆に、再エネの出力制御を許容し発電の最大出力より小さい送電容量とすると、建設費は下がり、利用率は上がり、送電コストは低下するが、利用できる発電電力量は出力制御の分減少し、発電コストは上がる。再エネの出力制御と送電費用の間にはトレードオフの関係がある。
現在の約1兆kW時の電力供給の3分の1を再エネが担う場合、PV、風力の利用率を15%、30%と仮定すると、それぞれ250GW(1GW=100万kW)、130GWの導入が必要となる。再エネ出力制御に関する電力ネットワーク(NW)の課題は、この大量導入を見据えて、電力NWの将来を考えることである。
現在、電力広域的運営推進機関による広域連系系統マスタープランとして、全国9エリア間の連系線とエリア内の送配電網増強の検討・実施が行われている。計画検討では費用・便益評価に基づき、再エネの出力制御低減と緊急時の停電の抑制を目標として、北海道・九州から本州向けと、本州内のエリア間の連系線、それに関連したエリア内の送電線の増強が検討されている。しかし、再エネの利用率の低さや受け入れ側での出力制御の増加を考えると、NW増強による再エネの導入拡大の効果は限定的である。
高度化や需要・財蔵技術も重要 広い選択肢で評価・検討を
電力NWの対策は、先に述べたNW自体の増強である「ワイヤ」、運用高度化さらには電力需要・貯蔵技術との組み合わせの「ノンワイヤ」の対策に分けられる。ノンワイヤの対策では、平常時の送電網の容量制約の下での潮流管理と事故時の潮流管理(平行送電線1回線遮断時のN―1電制)が制度化(コネクト&マネージと呼ばれる)され、送電線の運用容量を気象条件によって管理して最大活用するダイナミックラインレーティングも検討されている。
貯蔵技術としては、日本が大きな設備容量を持つ揚水や、価格低下によって世界で大量導入が進む蓄電池、さらには液化空気貯蔵のLAESなどの新技術への期待も大きい。電力需要としては、CNに向けては省エネと、再エネ有効利用に直結する電化の促進に加え、ヒートポンプ(HP)給湯機やEV充電および、産業・業務の各種需要の時間シフト、さらにはデータセンターや半導体工場など新規需要の再エネ有望地域への誘導が有効である。調整力については、大半を供給する従来電源に代わり、PV・風力、蓄電池、需要などの分散型資源による供給を拡大し、化石燃料発電の運転台数を少なくすることで、出力制御量ひいては燃料費の低減につながる。
出力制御の抑制対策として、連系線の増強と定置用(系統用、需要側)蓄電池の適用が注目されているが、日本の設備増強コストの特性・運用特性においては、出力制御時間帯へのHP給湯やEV充電の需要シフトが短期的によりコスト効率の高い選択肢である。また、北海道・九州への半導体工場やデータセンターなど大規模需要の立地は、再エネの導入が先行するエリアでの需要増加という意味で、電源と需要のバランスを改善し、エリア間のNWのニーズを軽減する。そしてNW増強の「ワイヤ」対策の計画では、限られたシナリオによる費用便益分析ではなく、より広い選択肢を対象とした継続的な評価、検討が必要である。
CNへの移行において、日本の電力・エネルギーの供給コストは海外に比べて高くならざるを得ず、社会活動や産業を守るためには社会全体でのコストを下げる不断の努力が必要である。その中で制度、技術を磨くことができれば、エネルギー環境分野での国際貢献、産業競争力の向上にもつながる。再エネの電力NWへの統合には、よりコスト効率の高い対策を優先することと、情報・データと解析ツールの事業者および社会全体への適時・適切な情報提供に基づき3E(供給安定性、経済性、環境性)+S(安全性)を目指すエネルギーの議論の深化が必要であろう。




