内閣府が6月3日発表した、再エネ規制改革タスクフォース(TF)関連資料に中国国営企業のロゴが表示されていた問題に関する調査結果を巡り、波紋が広がっている。この調査では、ロゴの混入は「事務的な誤り」とし、「中国政府などから不当な影響力を行使され得る関係性を有していた事実は確認されなかった」と結論付けた。河野太郎規制改革担当相はTFを廃止すると明言し、再エネ規制改革の議論は規制改革推進会議に移すことで幕引きを図った格好だ。だが自民党内からは「調べが甘い」と指摘する声が挙がるほか、これまでエネルギー官庁や業界を糾弾してきたTFの手法を問題視する発言も飛び出した。中国ロゴ問題を契機に再エネ規制改革のあり方は立て直しを余儀なくされる。
中国国家電網のロゴマーク(右上)が入った問題の資料
◆「ケアレスミス」を強調した調査結果
中国ロゴ問題は3月22日に開催されたTFに、有識者の一人である自然エネルギー財団の大林ミカ氏から提出された資料の表紙以外のすべてに、中国国営のエネルギー企業の中国国家電網のロゴが表示されていたことに端を発する。
ロゴはこれ以前の会議や経済産業省、金融庁の会議にも表示されていたことが判明した。資料は大林氏が作成したことから、大林氏と中国政府との関係、再エネ規制改革の議論に中国政府の影響があったのではないかという疑念が生じた。
所管する内閣府は即座に資料を削除し、大林氏は有識者を辞任した。大林氏が所属する自然エネルギー財団は調査を実施し、記者会見などで中国政府との親密な関係性、議論への影響を否定した。
しかし事は簡単には収まらず、経産省や環境省が自然エネルギー財団からの政策意見の聴取を停止したり、国会でも詳細調査の実施を求めたりするなどの指摘が相次いだ。内閣府は追及に応える形で2カ月間にわたり関係者や関係機関へのヒアリング調査を実施した。
3日に公表した調査結果は、大まかに次の3点を結論付けた。
①TF資料へのロゴ混入は事務的な誤りであり、中国政府、中国の団体を出所とする資料は含まれていない中国政府などから自然エネルギー財団、財団職員への資金提供、会食や送迎といった便宜が図られていない
②省庁の会議などで財団職員から中国政府や中国国家電網に関する発言はなかった。中国に関する発言は、国際比較などの事実関係を除きなかった
③内閣府の調査は指摘されている疑念はなく、あくまでケアレスミスの類であったということを強調し、調査前の主張を繰り返したにすぎなかった。
河野規制改革担当相は4日の記者会見で、TFについて「議論の内容そのものには問題はなかった」と述べた。ただTFの今後については「一定の成果も上げたこともあり、タスクフォースは廃止する」と明言した。河野担当相の肝いりで作られたTFはあっけない幕切りとなり、一連の騒動は収まったように見えた。
◆かみついた自民党経済安保族
しかし異を唱えたのが自民党の経済安全保障推進本部だ。本部長で経済安保族のドンともいえる甘利明前幹事長は4日、会合後に記者団に対し「中国との関係については調べが甘いのではないか。引き続き厳しく、再度調べようという話だ」と苦言を呈した。部会としても政府に調査の継続を要請する意向も示した。
最も問題視したのはTFそのものの位置付けだ。内閣府の調査結果でも「(TFが)規制改革会議の答申の一部と誤解される恐れがあったことは否定できない」と指摘している。甘利氏は「この問題は極めて深刻で、大臣の私的な懇談会でそれがあたかも公的審議会と同等の権限を持たされている。そしてエネルギー担当省庁を呼んで、糾弾する。そんなこと許されていいのか。私的諮問機関に公的機関と同等の扱いをしないというのは『いろはのい』で、大臣としてそんなことやったら日本がどこいっちゃうかわからなくなりますから」と痛烈に批判した。
甘利氏がここまで問題にするのは中国が再エネを利用して他国から情報を取り出していたり、自国マネーを搾取したりしていることが国際的な問題になっているからだ。米国では中国製の太陽光パネルが跋扈し、そこからサイバー攻撃を加えられるなど損失が出ているという。バイデン政権も中国製を締め出す策を講じている。欧州でも中国製を締め出す方向に動き始めている。
G7で共有する問題でかつ緊張関係にある国であることの認識が欠如していることに、経済安保族からはあまりにも「能天気な話」と映るというわけだ。日本の危機意識の希薄さは欧米では有名な話になっており、例えばサイバー攻撃に関する国際情報網から除外されていることがある。甘利氏は「緊張関係にある国が、重要なインフラであるエネルギーを間接的に支配できることになる」と危機感をあらわにした。
◆規制強化と推進団体再考の必要性
2020年のカーボンニュートラル宣言を契機に、再エネの導入拡大のためにさまざまな規制を見直すことを目的で作られたTFだが、今後は規制改革会議で議論が継続する方針とされている。だが中国ロゴ問題によって、有名無実化するのではないだろうか。
岸田政権はグリーントランスフォーメーション(GX)として、脱炭素を進める施策を打ち出している。さまざまな規制はあるものの、国益やコストなどを踏まえながら担当省庁がそれぞれ担う時代になった。再エネについては主力電源として従来にはない仕組みが作られており、導入環境は20年当時と比べ格段によくなったといえよう。
再エネを巡っては度重なる事故や地域住民との軋轢、事業者の不正や衰退などで規制改革というより規制強化が必要になってきている状況にある。闇雲に開発や導入を叫ぶフェーズは終わり、社会に受け入れられるルールの下、開発や運営、管理をしていくフェーズに入った。その意味では大量導入のための規制改革の役割は終わったという見方もできる。
今回のやり玉に挙がった自然エネルギー財団は、再エネ導入を強力に推し進めていたパイオニアではある。内閣府の調査結果が公表された同じ日、同財団は凍結されている経産省や環境省との交渉を再開するとウェブサイトで宣言した。
しかし両省の関係者は「勝手に再開すると言っているが、再開を決定するのはこちら側で財団に言われる筋合いはない」と冷淡だった。霞が関筋は「これまでさんざん攻撃されてきましたからね。公開処刑もされてきたし。今回は手切れのいいきっかけになったかもしれません」。
同財団は再エネシンクタンク、コンサルタント的な役割を果たしていたが、中国ロゴ問題はこうした再エネ推進団体の必要性や役割を再考する余地を与えたのかもしれない。