菅義偉・前政権下で再生可能エネルギーの大量導入に向けた規制のあり方を提言してきた、内閣府の再エネ総点検タスクフォース。去る10月4日の岸田政権への移行により、規制改革担当相が河野太郎氏から牧島かれん氏に交代した後、解散説がささやかれていたが、12月13日に会合を開き活動を再開した。これに伴い、構成員を一部変更。原英史・政策工房社長が退任し、経産省・電力ガス取引監視等委員会の前委員長だった八田達夫氏が後任に就いた。
この日の会合では、「水循環政策における再エネ導入目標・ロードマップのフォローアップ」「地域と共生した再エネ拡大に向けた規制の在り方のフォローアップ」「リチウムイオン蓄電池にかかわる消防法の見直しについて」の3テーマを議論。中でも注目は地域共生策で、担当大臣の交代が議論にどう影響するか、関係者の関心が集まった。
結論から言えば、議論の内容に代り映えはなく、「悪質事業者の排除し乱開発を防ぐための規制改革に政府主導で取り組む」という姿勢は微塵も感じられなかった格好だ。太陽光条例の制定で乱開発阻止に動く自治体からは「担当大臣や構成員の交代によって、再エネ開発正常化に向けた改革に乗り出すかと期待したが、肩透かしをくらった」との声が聞こえている。
会合で事務局が提示した資料「地域と共生した再生可能エネルギー導入拡大に向けた規制・制度の在り方」を見ると、委員および全国再エネ問題連絡会の意見に対する関係省庁(経産省・環境省・農水省林野庁)の回答が項目別に列挙されているが、基本的には現行法制の枠内で所管省庁ごとに【対応中】【検討中】のコメントが書かれているだけ。そこからは、乱開発がもたらす自然破壊・災害誘発のリスクや、悪質事業者による周辺住民の不利益を何としてでも改善しようという危機感はまるで伝わってこない。
「各省庁は、いかにも適正に対応しているといった内容だが、実際にそうであるなら、全国各地で反対運動が巻き起こるはずがない。深刻な地元の実情や悪質事業者の実態を、ことここに至ってもまだ理解されていないのではないか」。連絡会の山口雅之共同代表は、こう不満をぶちまける。
規制強化に消極的な事務局 問われる内閣府の本気度
再エネを巡っては、山間部における太陽光や風力の大型プロジェクトなどで乱開発が問題化しており、エネルギーフォーラムでも現地模様などをたびたび報じてきた。こうした事態に悩む地元住民などからは、国主導で再エネ開発規制の強化を求める声が日増しに高まっているのだ。
「悪質な再エネ事業者を市場から排除するには、国土利用計画法や建設業法、森林法、電気事業法、FIT法、環境アセス法など関係法令の欠陥を、省庁の枠を越えて体系的に調整し、改正する必要がある。それこそが、再エネTFの使命だろう。政府がいくら良い政策を進めようとしても、悪質事業者がはびこる現状を容認していては国民からの支持は得られない」
11月中旬、山口氏は再エネTF事務局に対し、こう強く要望したという。ところが、これに対し事務局側は「悪質事業者ばかりではないため、性悪説を前提にした法体系にはできない」「行政法は、企業側の営業の自由や財産権の保障などがあるため、性善説の前提が多い」などとして、規制強化に消極的な姿勢を示したという。山口氏は重ねて、「事業者の財産権や営業権よりも、国民の生存権のほうが優先される」と主張したが、「再エネ最優先・最大限の導入」という政府の大方針の前では効力に欠けたようだ。
再エネ乱開発に絡む災害や事故は現在も増え続けている。自然エネルギーのための自然破壊を阻止しない限り、熱海・伊豆山の土石流災害のような悲劇は今後も繰り返される可能性がある。その時、再エネTFは国民に対し、一体どんな説明をするのだろうか、「内閣府という立場を最大限発揮して、大局的見地から省庁の壁を越えて、国民のためにより良い仕組みを作っていただきたい」(山口氏)。構成員のさらなる刷新も含め、内閣府の本気度が問われている。