2月16日の衆議院予算委員会第7分科会で行われた、福島伸享衆院議員(茨城1区、無所属、有志の会)の質疑が原子力界隈で話題になっている。
福島氏は冒頭、自身の地元茨城県にある日本原子力発電東海第二原発が避難計画を巡る水戸地裁判決の影響で再稼働できない問題に触れ、「避難計画の策定が不十分ということで(再稼働が)できない。避難計画を作ることは事業者の努力ではどうにもならない」と指摘。「地元、水戸市を含めて困っている。27万の人口、病気や動けない方をどう移動させるのか、裁判に耐えるだけのものを作れと言われてもできない。国は何をやっているのか」と政府の姿勢を問いただした。
これに対し、資源エネルギー庁電力・ガス事業部長の松山泰浩氏は「地元の理解という意味では避難経路は大変重要。国としても自治体任せにすることなく、避難先や避難手段の確保など地域が抱えるさまざまな課題に対し、避難計画の策定を支援している」と主張。今後は自治体と協議し内閣府を中心に具体的計画に落とし込むとしたが、福島氏は「事業者は避難計画(の策定)に携われない。今みたいな状況では、東海第二原発は裁判に耐えうる避難計画は作れない」と繰り返し指摘した。
東海第二原発を巡っては、水戸地裁が昨年3月、避難計画の不備を理由に運転差し止めを命じたことで、茨城県内14市町村、約94万人の避難計画策定が急務となっている。人口の多さ故に、避難先の確保や移動手段の確保、避難所一人当たりの面積、ライフラインの確保といった計画の具体化には課題が山積みだ。茨城県東海村の原子力問題調査特別委員会は2月1日、計画の速やかな策定を求める請願を採択したが、反対派は採択が再稼働につながると反発しており、地元の混乱は収まる気配がない。
体系化された政策不在の原子力 問われる政府の本気度
福島氏の質疑は、国の「第六次エネルギー基本計画」における原子力政策の在り方にも及んだ。2030年度の温室効果ガス46%削減に向け、電源構成の原子力比率を20~22%にする計画について、具体的な実効性が不明だとして、原子力政策の再構築に及び腰な政府の姿勢を次のように追及した。
「資源エネルギー庁原子力政策課に、今の政府の原子力政策の体系を示す資料を出してほしいとお願いしたら、出てきたのは、第六次エネ基の原子力関連の項目をまとめたものだけ。つまり体系化された政策がないわけだ」「今の日本の安全規制はただ厳しいだけ、設備を求めるだけ。(東京電力福島原発事故の)反省を踏まえてというけれど、何を反省しているのか、いまだによく分からない。原子力産業を民間が担うのだとすれば、9電力体制が電力自由化によって流動化していく中で、だれがこれから担っていくのか。(原子力に関係する)危機をだれが救うのか。30年後、40年後の新しい技術開発は国がやるのか民間がやるのか、その役割分担はどうするのか」「この国全体としての意志や戦略が見えない。国民から見れば『政府は本気でなく、だったら原発なんてない方がいい』と思うのは当然だ。いつまでたっても再稼働が進まない中で、現場では家族を犠牲にしてまで一生懸命動いている職員がいる。であれば、国は本気になって原子力政策の再構築に取り組むべきではないか」――。
これを受け萩生田光一経済産業相は、既存の原子力施設は、地元の理解を得て安全性が確保されたものから速やかに再稼働を進める、という政府の基本方針を示しながら、「これから先どうするか。私も感じるところはある」と踏み込んだ。その上で「国民の暮らしに電気は絶対必要。それを守っていくためにコストと責任をどう見合っていくかが、われわれ政治家に課せられた使命。いろんな可能性を否定せずにしっかり議論したい」と、原子力政策の推進に前向きな姿勢を示した。
発電段階でCO2を排出せず、供給安定性に優れ、燃料費も安価な原子力は、脱炭素社会を目指す上で不可欠な電源であることは論を待たない。現在深刻化しつつある電力不足の回避、電気料金の上昇抑制なども視野に、岸田内閣は国益に適う原子力戦略を描くことができるかどうか。福島氏は質疑の最後に「血の通った原子力の総合政策を強く求める」と訴えた。政府の本気度が問われている。