政府は12月22日、GX(グリーントランスフォーメーション)実現に向けた基本方針案を取りまとめた。今後10年を見据えたロードマップを策定。原子力では、再稼働の着実な推進に向け国が前面に立つことや、次世代革新炉の開発・建設、運転期間に関して長期停止期間分の延長も可能とする方針などを示した。第6次エネルギー基本計画では原子力について「必要な規模を持続的に活用していく」と掲げており、今回の基本方針はエネ基の方向性をよりクリアに整理したものだと言える。また、もう一つの柱となる「GX経済移行債」創設に際し、その償還財源となる「成長志向型カーボンプライシング(CP)」の方針も決定した。政府はGX基本方針案を2023年に閣議決定し、次期通常国会に関連法案を提出する予定だ。

原子力政策の「方針転換ではない」 第6次エネ基を踏襲
第6次エネ基では、原子力に関して「依存度の低減」という方針は残しつつ、新増設・リプレースの明示は見送った。こうしたことから、一部では今回のGX基本方針案で、政府が原子力政策を大きく方針転換したと報じる向きもある。
だが、自民党内の原子力派議員に言わせると、「方針転換をしたわけではない」。第6次エネ基での原子力のポイントは、策定作業の最終盤で盛り込んだ「必要な規模を持続的に活用していく」という一文。今回の基本方針はこの表現を踏襲する形で、「将来にわたって持続的に原子力を活用するため、安全性の確保を大前提に(中略)次世代革新炉の開発・建設に取り組む」とリプレースの推進を明示した。
また、運転期間を巡っては、新規制基準適合性審査の長期化などで停止した期間を除外する「カウントストップ」を認めることとした。これまでの原則40年、最大20年の延長を一度限りで認める方針は残しつつ、長期停止期間の追加的な延長も可能になる。
これに伴い、原子力規制庁が高経年化原子炉の安全規制の枠組みを見直している。従来は①30年以降10年ごとの高経年化技術評価、②最大60年の運転期間延長認可制度――の2つが存在していたが、今後は新制度に一本化。30年以降、10年以内ごとに、「長期施設管理計画」で災害防止上の支障がないことや、技術基準適合性を規制委が審査していく。
そして、30年度原子力比率20~22%達成に向けて再稼働の加速を図る。今冬までに再稼働済みの10基に加え、来夏以降には、設置許可済みの高浜1、2号、女川2号、島根2号の再稼働が順次見込まれている。さらに来冬以降には、複数の課題を抱える柏崎刈羽や、東海第二の再稼働も目指したい考えで、国が前面に立った対応や、運営体制の改革に取り組む。20年代半ばごろからは、設置許可審査の申請済みや未申請の19基の再稼働も目指す構えだ。
このほか、核燃料サイクルや最終処分の取り組みの推進も掲げた。
ただ、今回の方針を具体的にどう実現していくのかは、いまだ不透明だ。例えば柏崎刈羽は、東京電力の核物質防護での不手際に対する不信感が根深く、新潟県の「3つの検証の総括」が進まず地元同意が得られていない。東海第二を巡っては、茨城県や水戸市などでの避難計画の策定や、日本原子力発電と東海村や周辺5市との「事前了解」締結に至っていないことが課題だ。長年停滞していたこれらのハードルをどうクリアしていくのか。
また、「カウントストップ」は認められたものの、それがどの程度原発稼働率の向上に寄与するかは未知数。革新炉建設についても、資金調達などに関する制度的支援の検討などが必要になるし、具体的地点の選定段階ではまた課題に直面することになるだろう。
これらの課題をそれぞれ着実に解決していくための具体的な政策の検討が、引き続き求められている。
炭素賦課金を28年度以降徴収 発電部門には排出量取引を有償化
GX基本方針でのもう一つの注目点が、成長志向型CP政策だ。政府はGX経済移行債を20兆円規模で発行し、これを呼び水に今後10年間で官民合わせて150兆円を超える脱炭素分野の投資に結びつけたい考え。GX移行債の新設は償還財源の明示が条件となっており、①排出量取引制度(ETS)の本格化と、発電事業者を対象とした「有償オークション化」、②炭素賦課金の導入――を決めた。
まず①を先行させ、段階的なCP強化を図る。23年度から自主的な形でETSを始め、26年度頃からは企業が削減目標を超過達成した分の取引などを本格化させていく。そして33年度頃からは、発電部門を対象に有償オークションに移行する方針だ。
もう一方の炭素賦課金は、化石燃料輸入業者に対し炭素比例で課し、28年度頃から導入する。なお、CPの二重負担を避けるため、発電事業者は炭素賦課金の対象からは外れる。
これらの導入条件として、エネルギー諸税や再エネ固定価格買い取り制度(FIT)賦課金といった既存制度を含め、炭素に絡む総合的な負担は増えないようにするという。例えば炭素賦課金は、石油石炭税や地球温暖化対策税との位置づけの整理や、賦課金の水準設定が焦点となる。政府はGXの進展などに伴い将来的な石石税収の減少や、FIT賦課金の負担減を見込んでいるが、脱炭素へのトランジションがうまく進まず化石燃料使用量が大して減らなかった場合でも、総額負担が増えないことを担保できるのか。
他方、賦課金を巡っては「最終的に国庫に入るのであれば結局は炭素税とイコールだ」(政府関係者)といった見方もある。防衛増税議論などで今は炭素税議論を封印した形だが、いずれ議論が再浮上する可能性がある。
真に成長につながるCP施策を具体的にどう設計していくのかも、23年の注目点となる。













