幸いなことに、日本には、まだ気候変動を巡る政治的混乱は、広がっていない。グレタさんに同調して世界の先進国で、若い世代が「Friday for Future」という市民団体で活動している。ただし資金源は不明で、その活動と意図に不透明感がある。日本にも少数、この団体を名乗る若者がいて、活動している。そのデモなどを、メディアが好意的に伝えるが、世間の態度は冷たい。
あるテレビでこの団体のデモが報じられ、高校生が気候変動問題に関連して「もうこれ以上の豊かさ、成長は必要ない」とコメントしたところ、S N Sでは批判と嘲笑が広がった。善意を持つ青年が笑われるのは気の毒だが、対案を考えない提案は滑稽さを伴い、批判されるのは仕方がないだろう。日本の人々が気候変動問題で冷静な証拠だ。
特に日本のエネルギー業界は、今でも技術面で世界に誇れる企業が揃っている。2年ほど前、2000年に作られた東京電力の東京某所にある地下変電所を、アフリカ諸国の技術者がJ I C Aの支援で視察していたところに、偶然出会った。口々に規模の大きさと緻密な構造を感嘆し、質問していた。20年前のプラントでも、世界の手本になっていた。
ただし、この研究チームのエリオット・キャンベル同大教授は、温暖化懐疑論者・批判論者に自分の研究が使われていることを懸念している。光合成の量が増えたからと言って、温暖化が生態系の維持や食物増産に役立つわけではないと強調している。(ニューヨークタイムス2018年7月30日記事「Global Greening’ Sounds Good. In the Long Run, It’s Terrible」「素晴らしく聞こえる世界の緑化」「長い目で見ると怖い話」)
P C C(気候変動に関する政府間パネル)は、毎回の報告で気候変動の被害は温帯、亜寒帯にある国よりも、熱帯付近の国に集中し、温帯の影響は限られると、第3次評価報告書(2001年)の政策決定者向け報告で指摘していた。第4次(2007年)、第5次報告(2014年)では消えている。これは国際世論に配慮して、政治的な論争を避けるために外した可能性がある。