11月21日、新潟県の花角英世知事が臨時記者会見において 東京電力柏崎刈羽原子力発電所の再稼働を容認すると表明した。本稿ではこの容認表明に至るまでの「最近の経緯など」、次に11月21日の臨時記者会見での知事の説明を見た上で、メディアの論調を紹介していきたい。
◆最近の経緯など
1.最近の動き
2023年12月 原子力規制委がテロ対策の不備による運転禁止命令を解除
24年3月 齋藤健経済産業相(当時)が新潟県知事、柏崎市長、刈羽村村長に再稼働の理解を要請
24年9月 原子力関係閣僚会議で、県の要望に応じ、避難対策の具体的対応として、避難路の整備、除排雪体制強化、屋内退避施設(シェルター) 整備強化などの方針を確認
25年2月 「新潟県原子力発電所の安全管理に関する技術委員会」が報告書「柏崎刈羽原子力発電所の安全対策の確認」をまとめる
→確認すべき22項目のうち18項目は「特に問題となる点はない」、残り4項目も「原子力規制委員会の判断を否定するものではない」とした
25年4月 新潟県議会が、再稼働の是非を問う県民投票を実施するための「再稼働に関する新潟県民投票条例案」を否決
25年8月 原子力関係閣僚会議で、「原子力発電施設等立地地域の振興に関する特措法」の指定対象地域を概ね半径10kmから30km圏に拡大することを決定
25年10月 東電ホールディングスの小早川智明社長が新潟県議会で、①同県の産業・地域活性化、防災支援に向けて総額1千億円規模の資金拠出を表明、②柏崎刈羽原発1号機、2号機に関して廃炉の方向で具体的に検討を進める旨を表明――
25年10月 新潟県議会が、知事が県民の意思を確認する方法として県議会を選択した場合、同じく県民を代表する立場にある議会として、再稼働の是非に関する意思を示すことを決議
25年11月 新潟県が県民意識調査公表(→結果の一部につき後述)
25年11月 花角知事が臨時記者会見で再稼働を容認すると表明
2.花角英世知事のキャリア
新潟県佐渡島出身。新潟高校・東大法学部卒、運輸省入省
1999年10~2000年7月 二階俊博運輸大臣秘書官
10年8月 大阪航空局次長、局長。関西国際空港と大阪国際(伊丹)空港を一体運営する新関西国際空港の設立に携わる
12年9月 大臣官房審議官(海事局、港湾局併任)
13年4月 新潟県副知事
15年9月 海上保安庁次長
18年6月 新潟県知事
22年6月 新潟県知事(2期目)
3.「県民の信を問う」
花角知事は知事就任時より「県民の信を問う」としていたが、知事選、県民投票、議会で承認、これらのうち、どのタイミングでいずれを選択するかはなかなか明確にならなかった。毎日新聞は、「議会で信を問う」判断に至る経緯を次のように解説する。
◎毎日新聞12月3日付〈政府、再稼働問う知事選封じ〉〈花角知事の師、二階氏動く〉〈柏崎刈羽容認表明〉〈……花角氏が官僚時代に秘書官として仕え、師弟関係にある自民党の二階俊博元幹事長は、経済産業省が長らく花角氏とのパイプ役として頼ってきた人物だ。24年に政界を引退した後も地方の議員らへの影響力を保っており、国は二階氏を通じて、県民投票や知事選で再稼働の是非を問う必要を主張している自民の有力県議に翻意を促すなど動きを進めた。政界の動きと連動するように、資源エネルギー庁の幹部らの動きは強まり、自民県議団に「県議会こそ民意の代表だ」という説得を続けた。花角氏は18年の知事選の際、再稼働に関して……「県民の信を問う」と明言した。その手法についてこれまで明らかにしたことはなかったが、有力な選択肢とみられていたのが県民投票や選挙だった。……一方、国は県議会から“信”を得させる形で、花角氏が再稼働の容認表明をしやすくする環境作りに躍起になって(いた)。……野党が強い地盤を持つ新潟県。昨年10月の衆院選では5つの小選挙区全てで自民が敗北した。今年7月の参院選でも立憲民主党の現職が再選し、自民党は敗れた。(近年の国政選挙の状況は文末添付資料参照)……仮に(知事)選挙で花角氏が野党系候補に敗れて再稼働が遠のくのは“悪夢のシナリオ”(経産省幹部)として、国は知事選は避けたいのが本音だった。〉
この毎日新聞記事に関連して言えば、筆者は、新潟県知事就任以前において、花角氏と二階事務所の“つながり”については一端を垣間見たことはある。なお、ちなみに多田明弘元経済産業省事務次官は二階俊博経済産業大臣時代の秘書官である。
4.新潟県議会 柏崎刈羽原発の再稼働に関する新潟県民投票条例案を否決
3月27日、再稼働に関する県民投票を実施する条例案が14万人超の署名で新潟県議会に請求された。これに対し、否定的な知事意見も出され、否決された。
◎県民投票条例案に対する知事意見(4月8日、抜粋)
〈……柏崎刈羽原子力発電所の再稼働の是非については、国のエネルギー政策上の必要性をはじめ、原子力規制委員会の審査や県技術委員会によって確認されてきた施設の安全性、原子力災害発生時における避難計画の実効性、そして東京電力に対する信頼性といった課題があり、すでに多岐にわたる観点から議論されているところである。……条例案第10条は、県民は、投票用紙の賛成欄または反対欄に〇の記号を記載して二者択一で自らの意思を表明することと……している。しかしながら再稼働の是非については、上記のとおり多岐にわたる観点から議論されてきて……いる。……条例案第10条に規定する「賛成」または「反対」の二者択一の選択肢では、県民の多様な意見を把握できないと思われる。……〉
〇4月18日の議会での採決結果
◎朝日新聞4月19日付(抜粋)〈柏崎刈羽原発再稼働を問う県民投票条例案が否決〉〈傍聴席から怒号も〉〈……最大会派の自民(議長を除き31人)と公明(2人)、真政にいがた(3人)の計36人が反対、議長を除いた県議52人の半数を上回った。野党系の第2会派“未来にいがた”(9人)とリベラル新潟(6人)、無所属1人の計16人が賛成した。……〉
5.柏崎刈羽原子力発電所の再稼働に関する 県民の意識調査の一部
〇県全体 11月6日公表 母数3360
「q:どのような対策を行ったとしても再稼働すべきではない」
再稼働否定 そう思う28.4% どちらかといえばそう思う18.7% 計47.1%
再稼働肯定 そうは思わない23.3% どちらかといえばそう思わない27.3% 計50.6%
〇paz(原子力施設から概ね半径5km圏内 予防的防護措置準備区域)、upz(pazの外側の概ね半径30km圏内 緊急時防護措置準備区域)地域を対象 11月11日公表 母数1573
「q:どのような対策を行ったとしても再稼働すべきではない」
再稼働否定 そう思う21.4% どちらかといえばそう思う21.6% 計43.0%
再稼働肯定 そうは思わない24.1% どちらかといえばそう思わない32.9% 計57.0%
「q:東京電力が柏崎刈羽原発を運転することは心配だ」
心配だ そう思う29.9% どちらかといえばそう思う32.4% 計62.3%
心配でない そうは思わない12.0% どちらかといえばそう思わない25.7% 計37.7%