【識者雑感/10月8日】高校生が考える将来の産業像を披露 IEEIが2回目の発表会

山本隆三/国際環境経済研究所副理事長・所長

NPO法人国際環境経済研究所(IEEI、小谷勝彦理事長)は、10月5日に福島市において「高校生が考える2040年から50年の産業界の姿」をテーマに、高校生による研究発表会を開催した。2月には福井県敦賀市において「高校生が考える2040年のエネルギー供給」をテーマに発表会を開催しており、今回は2回目の開催になる。

今回の発表会には福井学園福井南高校、静岡県立三島北高校、静岡県立焼津中央高校の3校が参加した。それぞれ研究対象の産業として、①福井南高校が自動車、②三島北高校が電力、③焼津中央高校がセメント――を選択した。産業界の関連する団体、日本自動車工業会、セメント協会、電気事業連合会に協力いただき、各高校において出前授業を実施するとともに、研究活動を支援いただいた。

3校それぞれが2050年の産業の姿を考え発表した

発表会では、福井南高校は、車の自動運転が行われている同県永平寺町での具体例を挙げ、「電気自動車を中心にした二酸化炭素を排出しない自動車が自動運転で運用される世界」の姿を描いた。

三島北高校は、「AI(人工知能)により電力需要が伸びる中での非炭素電源による電力供給の姿」を、学校内でのアンケートなどに触れながら説明し、浮体式原子力発電の可能性にも言及した内容を「AI(アイ)は地球を救う」として発表した。

焼津中央高校は、「セメント業界における二酸化炭素排出対策として自己治癒コンクリートによるライフサイクルを通しての削減案」を示し、技術の活用による輸出市場の獲得の可能性にも触れた。

産業界・高校生同士で熱心な質疑応答 女川原発も視察

各校のプレゼンテーション後には、産業界の参加者から多くの質問が出た。高校生からも他校のプレゼンテーションに関する質問が出され、熱心な質疑応答があった。

産業界からの参加者全員による投票の結果、最優秀賞には三島北高校、優秀賞に焼津中央高校、理事長賞に福井南高校が選ばれた。

発表会の前日4日には、参加者全員が宮城県女川町の震災遺構を見学した後、女川原子力発電所のPR館を訪問し原子力発電所の安全対策などについて学んだ。

女川の震災の語り部の方から説明を聞く参加者
女川原子力PRセンターでの様子

【記者通信/10月8日】改造EVで有事に電力供給 越谷市・NTT東・イハシが連携

埼玉県越谷市とNTT東日本、石油・ガス販売などを手掛けるイハシグループのイハシライフは、可搬型の交換式バッテリーを搭載したEVを災害時の電力供給に活用する取り組みを始める。NTT東がEVを所有し、イハシライフが運用する太陽光発電設備(PV)などから有事にバッテリーに充電、避難所へ運搬して供給する仕組みだ。東日本エリアでは初のモデルとなる。地域のレジリエンス向上、脱炭素、さらには地域経済循環の向上に資する新たなモデルを目指す。

協定式に臨む(左から)井橋社長、福田市長、霜鳥支店長

9月29日、3者で協定を締結した。市は昨夏、民間事業者10者と「こしがや脱炭素コンソーシアム」を設立しており、今回の取り組みはそこでの検討の際に出てきたアイデアだ。

特長は、ガソリンエンジン車を改造したコンバージョンEVを活用する点。エンジンや燃料タンクを取り除き、交換式の可搬型バッテリー(1台当たりの蓄電容量11.84kW時)やモーターを取り付けた。

災害用蓄電池は未使用なまま保管しているケースがあるが、本件では平時はNTT東の社用車として運行し、有事の際に避難所に貸し出す。屋根貸しでイハシが所有する近隣中学校のPV(49kW)を電源に活用することを想定し、スマートフォン約1180台の充電ができる規模という。まず車1台、バッテリー2台で11月から運用を始める。

これまでにNTT西日本などが環境省事業で同様の取り組みを実証しており、今回はその成果を踏まえ東日本で初めて実施することとなった。

地域経済循環に貢献 都市近郊型のモデルの一つに

車両の改造はイハシが担当した。市販のEVを購入するのではなく、地域のガソリン車を地場の企業がEVに改造することで、「長い目線では地域循環型の経済が作られる」(NTT東日本埼玉事業部の霜鳥正隆・埼玉南支店長)といった狙いもある。

イハシがコンバージョンEVに改造し、平時はNTT東の社用車として活用する

市では別のEVメーカーとも災害時の電力供給で協定を結んでいる。そこに今回の協定も加わり、多様な形でレジリエンスの向上を図る構えだ。福田晃市長は「災害が頻発、激甚化する中、災害対応を多重化し構えておくこと、特に地域の企業と組んでいくことは、市民の安心感につながる」と強調した。

イハシの井橋英蔵社長は、事業者間の協業の形やEVの形態、そこへの再エネの組み合わせなどさまざまなケースがあり得るとし、「こうした組み合わせを横に広げていけば、越谷市のような都市近郊型でもう一段CNの可能性が広がってくる。そこに当社として関わっていきたい」と展望した。

【記者通信/10月7日】ETSは成長志向型の制度へ 経産省GXグループ長が強調

経済産業省の伊藤禎則・脱炭素成長型経済構造移行推進審議官兼GXグループ長が10月2日、専門紙記者団の取材に応じ、排出量取引制度(ETS)やGX戦略地域などの重点施策に関する見解を述べた。来年度のスタートを予定し制度設計の議論が進むETSに関しては、当初から提唱するように「成長志向型」の制度とすべくさまざまな仕掛けを導入していく考えを示した。

伊藤氏は、「GX経済移行債による20兆円の先行投資とカーボンプライシングが一体であることが重要」だと強調。ETSではカーボンプライスは当初低い価格とし、徐々に上昇させる。取引価格の上限・下限価格を示し、5~10年単位で上昇トレンドが予見できる仕組みとし、具体的な価格水準は、国民や産業への影響、他国の価格水準などを踏まえて毎年決める形を想定している。

制度設計では、産業・業種ごとの特性を踏まえたきめ細かな基準づくりと、CO2多排出産業の海外移転(リーケージ)を防ぐ仕組みを重視する。特に後者については、「ETS導入でカーボンリーケージがあってはならず、リーケージ対策は相当しっかりやる」と説明。加えて、EU‐ETSにない制度として、GX関連の研究開発投資に積極的な事業者には一定の範囲で割当量を調節する仕組みを導入する。来年度のスタートに向け、年内に主要論点を整理する方針だ。

他方、発電事業者に関しては2033年度から排出枠を一部有償化する方針だ。事業者ごとの電源構成によってCO2削減のハードルに差があり、大幅削減が難しい事業者にカーボンプライスの負担が過度にかかれば、さらなる火力電源縮小の圧力となりかねない。その点、伊藤氏は「ベンチマークの設定が大事で、電力会社それぞれの賦存状況や電源構成を丁寧に踏まえていく必要がある」としつつ、石炭火力の縮小方針も踏まえて「全体のペースはよく考えていく」と述べた。

ベンチマークに加え、取引価格の上下限価格の設定や、カーボンクレジットの活用なども駆使し、「生成AIやデータセンター、デジタル化などで電力需要が増える見込みの中、安定供給に支障が出るような形にはしない」と言及した。

投資様子見モードを打破 GX戦略地域は年内公募開始目指す

一方、米トランプ政権のさまざまな政策変更で、企業がGX投資の様子見モードになりつつある。そこを打破する仕掛けとして「GX戦略地域制度」を創設し、3種類の重要プロジェクトを推進する。①コンビナート等の再生でGX新事業創出、②データセンターの集積、③脱炭素電源の活用で産業団地などを整備――といった三類型で、「この三つを切り口としてGX投資をもう一段、来年にかけて進めていく。GX戦略地域の提案を自治体や事業者から10月いっぱい募っており、早ければ年内に公募を開始したい」と説明した。

採択された際のメリットを現在検討中で、例えばコンビナート再生で土壌汚染対策法に基づく調査の合理化などを求める要望が出ており、「国家戦略特区との連動も現在検討中」とした。他に、設備投資支援や、DC集積での電力系統への優先的なアクセス確保などが検討されている。

【記者通信/10月3日】 Looopが新規事業に参入 「ホームIoT」×「電力」でシナジー創出

新電力のLooop(東京都台東区)は10月2日、8月末にIoTベンチャーのグラモ(東京都豊島区)を完全子会社化したことを機にスマートホーム事業に参入し、2032年には契約顧客数を250万件に拡大すると発表した。同社は、卸電力市場価格に合わせて30分ごとに料金が変動する「スマートタイムONE」を軸に、低圧電気契約数を足元で34万件まで伸ばしてきた。今後はこの料金プランとグラモが開発した住宅用IoT端末「ナインドット」を組み合わせ、さらなる利用者の拡大を狙う。

スマートホーム事業参入への意気込みを示した藤田COO(左)

「ナインドット」は、インターホンやHEMS(家庭用エネルギー管理システム)モニターなど50の機能に対応し、提案型AI「グラモン」を搭載する。ユーザーは、よく使う機能を9つのショートカットボタンに登録でき、ワンタッチで直感的利用可能だ。また、グラモンは利用者の生活データを解析し、ライフスタイルに合った電気利用を提案するほか、各種センサーやカメラを活用してペットや子供の見守り機能なども備える。

住宅用IoT端末「ナインドット」は、誰でも簡単に操作できる仕様となっている

Looopは新築の集合住宅や分譲マンションを中心に、ナインドットと市場連動型料金プランを組み合わせたパッケージを訴求していく方針で、機器は32年までに100万台の導入を、低圧契約件数は250万件にまで引き延ばす目標を示す。藤田総一郎取締役CОO(最高執行責任者)は2日に行った事業説明会の中で、「電気利用の最適化はもちろん、暮らし全体をより安全・快適にする“プラスα”の価値を提供し、新電力のトップを目指す」と力強く宣言。代表取締役社長の中村創一郎CEO (最高経営責任者)も、ナインドットの自宅での利用体験を踏まえ、「エネルギーの使い方だけでなく、生活習慣そのものを変える仕組みになる」と語り、今後の展望に自信をのぞかせた。

【時流潮流/10月6日】プルトニウム復活へ米トランプ政権が政策大転換

米トランプ政権が、一度は利用を断念したプルトニウムの活用策に乗り出している。5月の大統領令で、包括的な原子力推進策を打ち出して再処理推進を盛り込み、8月には政府が保有するプルトニウムを、先進的な原子炉を開発するスタートアップ企業に「ほぼ無償」で提供する案も打ち出した。

政府が提供するプルトニウムは約20tで、主に核軍縮で解体された核兵器から取り出したものを使う。米露は2000年、両国がそれぞれ34tずつの余剰プルトニウムを、二度と核兵器に使えないよう処理することに合意した。

米国はMOX(プルトニウム・ウラン混合酸化物)燃料にして軽水炉で使う計画だったが、建設費高騰や工期の大幅遅延が重なり、第1次トランプ政権は18年に計画断念を決める。

代替案は、プルトニウムを「捨てる」ことだった。プルトニウムに混ぜ物をして希釈した上で、南部ニューメキシコ州にある廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)で地層処分を進めた。だが、第2次トランプ政権は、プルトニウムを「捨てる」政策を取りやめ、一転して「活用する」政策へと大転換を図ろうとしている。

原発大国の米国は、再処理は実施していない。インドが1974年に再処理で取り出したプルトニウムを使って初めて核実験に踏み切ったことで、核拡散問題が大きな国際問題に浮上し、フォード政権が76年に再処理中止を打ち出しためだ。

その後、81年に誕生したレーガン政権が再処理再開に道を開くが、採算が合わないことを理由に、再処理事業に乗り出す企業は現れなかった。

とはいえ、時代は変わった。人工知能(AI)向けデータセンターの設置急増など、今後は大幅な電力需要増が見込まれる。

中国とのAI技術競争に勝ち抜くには、電力確保がカギとなる。そう位置づけるトランプ政権は、2050年までに原発の発電容量を現在の4倍の400GWとする原発推進策をまとめた。計画実現には、原発300基の増設だけでなく、核燃料の手当ても必要となる。

DOE長官が再処理事業再開に強い意欲

注目したのは、廃棄しているプルトニウム。そして、原発など全米各地のサイトに保管され、9万4000tにまで積み上がった使用済み核燃料だった。

エネルギー省(DOE)のライト長官は5月の米議会下院公聴会で「再処理の適切な進め方について調査検討中だ」と述べるなど、再処理事業再開に強い意欲を燃やす。現在、94基が稼働する軽水炉用だけでなく、今後導入が期待される次世代炉への燃料供給も見据える。

政府の呼びかけに応じ、9月にはカリフォルニア州に拠点を置き、ライト長官が就任直前まで役員を務めていた「オカロ」社が、南部テネシー州に再処理施設を設計、運営する計画を発表した。30年代初めまでに高速炉など先進炉用の核燃料生産を目指すという。

ただ、米国内にはこうした動きへの懐疑論もある。オバマ政権でエネルギー長官を務めたモニズ氏は「過去にうまくいかなかったアイデアを復活させるのは時期尚早」と苦言を呈す。失敗したMOX事業の二の舞になるとの指摘も。政府のかじ取りが今後の課題となる。

【記者通信/10月5日】高市総裁誕生の舞台裏 どうなる?人事と連立の行方

10月4日に投開票された自民党総裁選は、党員・党友票の大量得票を獲得した高市早苗元経済安全保障相が勝利した。自民党の総裁に女性が就任するのは結党以来初めてとなる。今月中旬にも召集される臨時国会で、憲政史上初の女性首相が誕生する見通しだ。国民的な人気は高いものの、自民党内では不人気という高市氏は当初、国会議員票で苦戦すると見られていた。だが予想以上の党員票の獲得に議員票がなだれ込み、勝利が濃厚とされていた小泉進次郎農水相に29票差をつけての圧勝劇となった。党員の減少や前3回の大型選挙で「自民党離れ」が加速する中、党員人気の底堅さが高市氏に勝利を呼び込んだ。

自民党初の女性総裁誕生を報じるANNニュース

ただ衆参ともに過半数割れしている少数与党の現状に変わりはなく、今後の国会運営や政策実現にはいくつもの難関が待ち受けている。石破茂前政権と同様、綱渡りの政権運営となりそうだ。野党との連立拡大を模索するとともに、党内では国民的な人気が続く間に早期の解散総選挙を期待する声も出ており、永田町では緊張が張り詰めている。

地道な「仲間づくり」で党員票4割

「これほどまでに党員票を獲得するとは想定外の出来事だ」

4日午後、党員・党友票の開票が始まってまもなく自民党内に衝撃が走った。党員・党友票の開票結果が各陣営に逐一報告されたが、そのほとんどが高市早苗票だったからだ。

総裁選には5人が立候補し、1回目投票は295人の国会議員票と、これと同じ数を割り振られた党員・党友票の合計590票で争われた。高市氏が獲得した党員・党友票は4割を超えた。報道各社の党員調査でも高市氏がトップではあったものの、2位の小泉氏とつばぜり合いを演じると予想されていた。蓋を開けてみると、小泉氏は3割未満にとどまり、高市氏とは大きな差を生んだ。

この党員・党友票の動向にいち早く反応したが麻生太郎元首相で、率いる麻生派の議員に「党員の声を反映した形でフルスペックの総裁選になった。党員の声を聞け」と決選投票になった際の投票先を暗に「高市」と指示したのだ。これにより、高市氏の勝利は決定的になった。

菅義偉元首相をはじめ、旧岸田派の一部が支援に回った小泉陣営にはかなりの動揺が見られたという。1回目はともかく決選投票は一体誰に入れたらいいのか。勝ち馬に乗らなくていいのか。そんな思惑が交錯した。その結果が決選投票での国会議員票が1回目と比べ85票も上積みした高市氏に対し、65票の上積みにとどまった小泉氏との差に表れた格好だ。

ある陣営関係者は「高市さんがこれだけ党員・党友票で支持を集めたのは、前回の総裁選に敗れてから地方や団体の会合に足しげく通い、選挙応援でも選り好みせずに駆けつけるという地道な活動を続けていたからだ。前回敗れた後に麻生元首相から『仲間を増やす努力をしなさい』と助言を受けていたが、高市氏は忠実に実行に移した結果だといえる」と話した。

【記者通信/10月2日】自民総裁選で小泉氏勝利濃厚か 経産省が気を揉む政務秘書官人事

自民党総裁選(10月4日投開票)は、党員票、議員票でまんべんなく支持を取り付けている小泉進次郎農林水産相の勝利が濃厚だ。晴れて新総裁に選出されれば自民党史上最年少(現在は安倍晋三氏の51歳が最年少)での総裁就任となる。5人の候補者で争われた今回の総裁選だが、党員票で有利に立つ高市早苗前経済安全保障相と、議員票で一定数支持を集めた林芳正官房長官との三つ巴の様相になった。4日当日は最終的に小泉氏と高市氏の決選投票になる公算が大きい。林氏は党員票が伸び悩んでいる上、出身母体の旧宏池会の全面支援が受けられないことが最後に響きそうだ。

人気の高かった父の小泉純一郎氏の再来を進次郎氏に期待する向きもあるが、父と違い支持基盤が安定的でなく、今回の総裁選でも菅義偉元首相、岸田文雄前首相、麻生太郎元首相の「長老」3人の影響力が行使された結果だ。新政権はこの3長老の顔色を見ながら運営していく形となりそうで、進次郎カラーが出せないまま形骸化した首相となる可能性が大きいだろう。

進次郎政権構想を巡る噂 幹事長にはあの名前も

進次郎陣営ではすでに政権構想の準備を進めているという。閣僚人事は岸田氏を副総理兼外相、林氏を財務相、選対本部長を務めている加藤勝信財務相を官房長官に起用するという憶測だ。党務は菅氏を副総裁に留任させて、神奈川つながりで幹事長に河野太郎氏を登用する可能性も取り沙汰されている。

一方で官邸人事だが、安倍政権以降重要な役割を果たしてきた政務秘書官には、進次郎氏が環境相時代に支えた中井徳太郎・元環境事務次官の名前が挙がっている。気候変動対策の急進派がタッグを組めば、何かと対立してきた経済産業省への当たりが強くなるのではないかと警戒する声も漏れる。

ある霞が関筋は「進次郎氏の首相就任よりも経産省は中井氏の政務秘書官就任の方に気を揉んでいる。財務省出身の中井氏が首相に最も近いところになれば、官邸の財務省支配もより強固なものになる」と分析する。官邸は父純一郎氏との関係からもより財務省色が強くなることが見込まれそうだ。

純一郎氏にも仕えた飯島勲氏も何らかの形で政権に関与することも見通せる。進次郎氏としては純一郎氏と同様、国民的な支持を受け続けることを念頭に置くはずだ。支持率の動向によってはあっと言わせる仕掛けを駆使することも考えられる。

【目安箱/10月1日】再エネ拡大巡り政治家沈黙?今こそ国民合意を作る好機

政治の場で、再生可能エネルギーが大きく取り上げられなくなっている。国民の反感が広がっているために、これまで支援してきた政治家が急に沈黙したように見える。ただし、広がる批判も「再エネをゼロに」など極論が目立つ。国民からの政策を巡る疑問が広がる今こそ、これまで行われてこなかった再エネの未来について議論をする好機ではないか。国民の意思の集約と支持がなければ、日本での再エネの成長は行き詰まるだろう。

大規模メガソーラーの乱開発で日本の自然は確実に破壊されている

◆選挙で示された再エネへの不信

7月に行われた参議院選挙で、自民党と公明党の連立政権は惨敗した。そして野党第一党の立憲民主党をはじめ、再エネ拡大や脱原発を主張して政府を「政策支援が足りない」と批判してきた左派政党はそれほど支持が増えなかった。勢力を伸長させた国民民主党、新興政党の参政党、日本保守党は、再エネや脱炭素政策をそろって批判している。そして与党も積極的に取り上げなかった。これは10月4日に行われる自民党総裁選でも同じで、エネルギー問題は積極的に議論されていない。

参院選の争点は生活苦と物価高だった。再エネについては、その賦課金への批判が多い。筆者の周囲の人の感想を聞くと、再エネ賦課金は一般家庭で月1500円程度だが「この負担が私になんの役に立っているのか」という感想ばかり。SNSではメガソーラーや、風力発電による環境破壊の映像が頻繁に流れる。この環境悪化に対しても不快感を持つ人が増えている。再エネのイメージは、エネルギー関係者のものと、一般社会のものはどうも分離している。普通の人の間で、再エネには悪いイメージが広がり始めているようだ。

2023年11月に、洋上風力の制度設計をめぐり自民党の秋本真利衆議院議員(当時)が受託収賄の疑いで逮捕され、現在東京地裁で公判中だ。この事件も影を落とす。7月にある自民党の再エネ問題に取り組んできた議員と懇談する機会があった。「秋元さんの逮捕は今でも影響している。再エネについて自民党の言うことに国民がそっぽを向いてしまい、今は話しづらい」と嘆いていた。

◆感情的な再エネ反対論の懸念

政治家が再エネに対して冷たくなったのは、世論の動き、世界の動きを反映したものだろう。保守政党、一部からは右派ポピュリズムと呼ばれる政党が、欧米で躍進している。そして揃って脱炭素の潮流に疑問を示している。米国ではトランプ大統領がその先頭に立っている。トランプ大統領は9月23日に行った国連総会での演説で気候変動問題を「世界史上最大の詐欺」、再エネを「利権と欺瞞」と切り捨てた。あまりにも過激な意見だ。しかし米国ではSNSや一部メディアの論調を見ると、トランプ氏に同調する意見がかなり多い。

そして、その反発の方向が日本でも世界でもややおかしくなっている気配もある。陰謀論めいたことを発信するSNSやのアカウントやウェブページがいくつもある。そこで「エネルギー利権で日本が外国に売り渡される」「再エネや脱炭素は米民主党政権やディープステートの謀略だ」などと、本気で語り合う例が散見される。もちろん一部だろうが、反再エネの中に、ゆがんだ意見が入り込んでいることを示唆している。

【記者通信/9月30日】水素等「値差支援」で初認定2件 多排出産業を優先

経済産業省は9月30日、低炭素水素などへの「値差(価格差)支援」の対象として、豊田通商のグリーン水素と、レゾナックの水素・アンモニア案件の2件を認定したと発表した。同制度の認定は今回が初。いずれも脱炭素化が困難な「ハード・トゥ・アベイト」産業で、2030年度をめどに供給を開始する。エネルギー企業のプロジェクトは含まれなかった。

値差支援は、昨年成立した水素社会推進法に基づき、低炭素水素・アンモニアなどの製造、輸送・貯蔵、利用に対し、化石燃料との値差を補てんする制度。具体的には、供給開始から15年間でプロジェクトコストを回収できる水準の「基準価格」から、切り替え前の化石燃料の「参照価格」を差し引いた分を政府が支援する。支援終了後10年間は供給を継続することが求められ、遅延などに伴うコストアップ分は民間が負担する。

認定された2件のうち、まずグリーン水素案件は、豊田通商やユーラスエナジーホールディングス、岩谷産業が参画する特別目的会社が供給者となる。利用者の愛知製鋼は、プレミアムを付与し、電炉業界初のグリーン鋼を製造する予定で、年間供給量は約1600t。系統を介して東北の陸上風力で発電された電気を供給し、愛知製鋼の工場(愛知県東海市)で電気分解し水素を製造する。地産地消型ではない。なお、水電解装置は別途「GXサプライチェーン構築支援事業」で採択されたトヨタ自動車・千代田化工製を採用する予定だ。

もう1件は、レゾナックが廃プラスチックや廃衣料をガス化し、得られた水素を原料に低炭素アンモニアを製造する事業。アンモニア換算で年間約2万t供給する。同社と日本触媒が利用者となり、繊維原料となるアンモニア誘導品の製造に活用し、資源循環に資するモデルだ。荏原製作所とUBEの廃プラガス化技術を用い、国内初となる廃プラ100%のプラント運転を予定する。

エネ関係から「期待薄」の声 総額3兆円の行方は

値差支援の申請は3月末までに27件あった。支援総額は3兆円を予定するが、27件の合計はこれを超える規模となる。同省は、外部有識者でつくる第三者委員会の意見を踏まえ、評価項目に照らして優先すべき案件を決め審査を行う方針で、今年度後半に向けて条件が整った案件から順次認定していく。

値差支援は当初、大規模発電向けなどでの活用も期待された。ただ、関係者からは「蓋を開ければハード・トゥ・アベイトが主な対象で、電力は二の次に。また公募内容があいまいで、海外の関係者の理解が得にくい」、「30年からの供給開始が条件だが、円安やインフレの影響がある中、特に海外案件で申請までにコミットすることは相当難しい」といった声が上がっていた。

JERAは4月上旬、値差支援を前提に、三井物産、米CFインダストリーズと、米ルイジアナ州で「ブルーアンモニア」を製造するプロジェクトの最終投資決定(FID)を行ったが、こうした動きは少数派。審査中の案件はあと20数件あることになるが、そのうちエネルギー案件は果たしていくつ選ばれるのだろうか。

【記者通信/9月24日】小売りの供給力確保義務 制度議論の落とし所は?

資源エネルギー庁の有識者会合で検討が進む、電力小売り事業者への供給力(kW時)確保義務を巡り賛否さまざまな声が上がっている。制度案は、実需給年度の3年前に需要想定の5割、1年前に7割の供給力を確保させるというもの。調達手段の一つとして、新たに中長期市場の整備も進められている。

エネ庁は急ピッチで検討を進めるが……

背景には、①中長期の取引量を増やし、電気料金の変動を抑制すること、②発電事業者の燃料調達や電源投資の予見性の向上させること――といった狙いがあるが、新たな負担を課される小売り事業者を中心に否定的な意見が噴出している。

特に②については、制度の実効性を疑問視する向きが多い。中長期市場の整備や相対契約の活性化に向けた動きが進んでも、燃料調達は10~20年単位の長期契約であるため、これらのタイムスパンの乖離が解消されないためだ。また、鉄道系新電力関係者は、「現行の制度において、需給はバランシンググループ内で調整される。その際には燃料費のかからない太陽光や風力などが優先されるため、仮に事業者が確保義務を履行しても、火力電源の維持や燃料調達に必要な資金が十分に確保されない」と指摘する。

業務負担の拡大への懸念も聞こえる。新電力関係者は、「低圧契約の多くは1年単位で、3〜5年先の需要を見通すのは難しい。あらかじめ想定需要を出しても、実績と大幅に乖離する可能性がある上に、その作成には実務上の負担も大きい」と憂慮する。

その一方で、「数年契約が制度によって習慣化されれば、発電側の収益は一定程度確保される。大局的に見れば意義のある取り組みなのではないか」(市場関係者)といった見方もある。この市場関係者は、義務化されれば売り手側が大きな交渉力を持つことになるため、「小売り・発電事業者の間のパワーバランスを調整する必要がある」と運用上の課題を指摘しながらも、「中期市場の新設を契機に、ベースロード市場や先物市場といった既存制度の機能を整理・統合してもらいたい」と期待を寄せる。

小規模事業者への配慮 一時的な経過措置は必要か

会合では、小規模事業者への配慮も焦点となっている。エネ庁は8月8日の会合で、制度導入から一定期間については、確保量を3年前で2.5割、1年前に5割とする負担軽減案を示した。これについて、「制度導入を円滑にするためにも一時的な緩和措置は必要だが、最終的には全ての事業者に一律の条件を課すべきだ」(前出の市場関係者)、「販売電力量に応じた確保義務が課されるべきで、対応できない事業者は淘汰されても仕方がないのでは」(前出の鉄道系新電力関係者)と、事業者間の公平性を重視する意見が多い。前出の新電力関係者も、「確保が難しい小規模事業者を緩和措置などで保護しても社会的な便益は乏しい」としつつ、「市場が機能しない段階で義務だけ課しても意味がない。その意味でも市場の有効性が確認されるまでの間の経過措置は不可欠だ」との見解を示す。

エネ庁は30年度の供給計画の策定に合わせて新制度を導入する方針で、その実現に向け、今秋に事業者などへのヒアリングを終え、供給計画の様式改正案を確定させる見通しだ。実効性の担保や事業者負担への配慮など、一層丁寧な議論が求められる。

【時流潮流/9月24日】中東核ドミノの足音が聞こえる 鍵握るサウジの動向

中東核ドミノの足音がにわかに高まり始めている。イランが核兵器保有を禁じる核拡散防止条約(NPT)から近く脱退し、核兵器開発に乗り出す可能性が出てきた。かねてからイランの核に対抗すると明言してきたサウジアラビアは、新たな事態に備えようと今月17日に核保有国のパキスタンと相互防衛条約を結び、パキスタンの「核の傘」を利用する準備を整えた。核を巡る状況が、一気に変わろうとしている。

イスラエルと米国は今年6月、イランの核兵器取得が近づいたとして、ウラン濃縮施設など多くの核施設を空爆した。一方、英仏独3カ国は、厳しい国連安保理制裁を復活させることで、イランに核開発断念を迫っている。

英仏独は、イランが核兵器製造にもつながる濃縮度60%の高濃縮ウラン製造を続けるなど、2015年に米中露と欧州3カ国が「イランが結んだ核合意を守っていない」と非難を続ける。

核合意成立に伴い停止されていた安保理制裁が近く再発動されれば、イランは経済的打撃を被る。さらに、国のプライドをかけて取り組んでいるウラン濃縮が法的に禁止される。イランは対抗措置としてNPT脱退の準備を進める。

ただイランには、最高指導者のハメネイ師が、核兵器の製造を禁じる宗教令(ファトワ)がある。北朝鮮は03年のNPT脱退後、一気に核武装へと走ったが、イランが同様の道を歩むかどうかは、現時点では見通せない。

【記者通信/9月21日】豪州が「35年目標」大幅引き上げ 輸入車に炭素課税案も

オーストラリア政府は、2035年までの温室効果ガス排出量を05年比62~70%削減すると発表した。豪州気候変動庁は従来、51%削減できるとしていたが、今回発表した削減目標はこれを大幅に引き上げた形だ。特徴的なのは脱炭素化と経済成長を両立させるために、巨額の財政出動を図ることだ。加えて自動車に対する新たな環境規制を課すことを掲げ、消費者の電気自動車(EV)購入を促すことを目的に、輸入車へ炭素税を課すことが検討されているという。アルバニージー首相は23日から始まる国連総会で、新たな削減目標を表明し、26年の気候変動枠組み条約締約国会議(COP31)の誘致を確実なものにしたい目論見だ。

首都キャンベラにある豪州連邦議事堂

秩序立った移行へ 7000億円の財政投入

「(新たな削減目標は)環境を守り、経済と雇用を守り発展させ、国益と現在そして未来の世代の利益のために行動するための正しい目標だ」。アルバニージー首相は18日に新たな削減目標を発表した際、自信に満ちた表情でこう語った。

今回の削減目標を設定する際、政府が細心の注意を払ったのが脱炭素化と経済成長の両立だ。これまで世界各国で野心的な気候変動対策が出るたびに「経済を縮小させる」との批判に常にさらされていた。そして具体的な両立策を示せなかったことも批判を助長させていた。

豪州政府はこの批判に応えるべく、財務省が主導して35年に65%削減との前提で経済効果をモデル化した。気候変動対策を施した「秩序立った移行」により、50年までに実質国内総生産(GDP)は2兆豪ドル増えるとし、1人当たりのGDPも2100豪ドル上がるとの結果を示した。この場合、実質賃金は現在より2.5%上昇すると試算した。チャーマーズ財務相は「気候変動対策をしない『無秩序な移行』の場合、賃金低下や電力価格の上昇を招き経済規模も縮小する」と警鐘を鳴らした。

両立策を実現するため、政府は総額70億豪ドル(約7000億円)の財政出動をする方針を示した。内訳はクリーンエネルギー金融公庫に20億豪ドル、新たに「ネットゼロ基金」を創設して脱炭素化と再生可能エネルギーの導入拡大を図るとした。新基金への財政投入は50億豪ドルになる。ちなみに目標の下限の62%削減の場合、風力発電を現在の4倍、メガソーラーを同3倍、屋根上の太陽光を同2倍にする必要があるという。

輸入車に炭素税? EVの普及拡大が狙い

削減目標を達成するために最も刺激的な施策は、自動車に対するものだ。政府は35年までに豪州内で販売される自動車の半数をEVにすることが必要だと述べている。国際エネルギー機関(IEA)によると、24年時点での豪州内のEV普及率(新車販売台数における比率)は13%だとしており、これを大幅に引き上げる計算だ。

政府はこれに対応するため、まず自動車の燃費基準を改変するという。燃費効率が悪いガソリン車やディーゼル車を排除するというわけだ。そして輸入車への国境炭素調整つまりは炭素税を課すことも視野に入れているという。もし導入されれば豪州内の化石燃料車は軒並み高くなることが予想される。価格に敏感な消費者はEVへの買い替えを加速させると思われる。

これは日本車メーカーには大きな痛手になる。豪州内ではトヨタやマツダが人気で、販売台数でも常にベスト3に入っている。その一方でテスラやBYDといったEVメーカーも伸長してきており、インセンティブがつけばEVメーカーが豪州市場を席巻するということが現実になることが予想される。EVの開発が遅れている日本車メーカーにとって豪州の販売戦略の練り直しが迫られそうだ。

とはいえ、豪州は国内に自動車メーカーがなく全量輸入に頼っている。個人消費者をはじめ、事業者からの反発は必至だろう。購入補助など政府はさらに巨額の財政出動が求められることになり、これには野党勢力も黙っていない。導入には紆余曲折が予想され、実現できるかは全く見通せない。

野党から批判相次ぐ 暗雲漂う目標達成

野心的な削減目標を掲げた現政権に対し、保守系の野党は当然のごとく反発を強めているが、緑の党など気候変動対策に積極的な勢力からも批判が出ている。

野党自由党のスーザン・レイ党首は「目標には国民にとってどれだけの費用や負担がかかるのか示されていない。到底受け入れられるものではない」と話した。経済成長との両立性についても「コストと信頼性の両面で不十分だ」とバッサリ切り捨てた。つまりは現政権のお手盛りのモデルは信頼できないというわけだ。

緑の党のラリッサ・ウォーターズ党首は「これは気候変動対策に期待して投票した国民に対する裏切りだ」と厳しく批判。「石炭やガスなど化石燃料の制限がないことは野心的とは言えない」と不十分さを指摘した。

一方の財界は「野心的だが達成はできるのではないか」と比較的好印象だ。ただ「巨額の資本投資と制度改変が必要で、官民の協力なしではできるものではない」と注文をつけた。強力な影響力がある労働組合側は労働者の追加が必要になると主張した。

アルバニージー首相は「民間の積極的関与が不可欠」と協力を呼びかけているが、今後起きるであろうさまざまな軋轢で民間側の支持が得られない可能性も否定できない。

豪州ではそもそもネットゼロという目標が「夢物語」と揶揄されている側面もある。地元紙はグリーン水素の開発案件が99%停滞していると報じ、洋上風力の開発も暗雲が漂い、政府が事業者の調査費用を軽減する策に乗り出すとの憶測も流れている。

現政権は今回の目標をかてにCOP31の誘致で政治的なアピール材料を増やしたい思惑もあるが、脱炭素が世界的な退潮傾向にある中、「看板倒れ」から3年後の総選挙での政権倒れにつながらないか心配する向きも与党内には少なからずある。

【ニュースの周辺/9月11日】各種資料から読み解く地域脱炭素事情

7月の参院選後、政局が注目される状況が続いている。一方、社会保障、財政、安全保障、そして世界の経済秩序が大きく変わる中での経済成長など、中長期の視野で議論を深めるべき課題は多い。エネルギー政策もその一つと言えよう。2月18日、「第7次エネルギー基本計画」「地球温暖化対策計画改定」「GX2040ビジョン」が閣議決定され、また、日本の「NDC(国が決定する貢献)」が国連気候変動枠組み条約事務局に提出された。そこでは多くの課題も提示されており、その中で「脱炭素と経済の両立」という困難な命題に対処しなければならない状況にある。

例)

・当面のデータセンターなどの電力需要増加に対する系統などのインフラ整備

・核燃料サイクルの進捗、安全対策の高度化などに伴うイニシャルコスト増などへの対応が求められる中での原発活用の促進(再稼働、新増設)

・コストアップ、地元との共生など、太陽光や洋上風力などにおいていろいろな課題が表面化した再生可能エネルギーの拡大

◆「地方創生」と「地域脱炭素」

1.「地方創生」と「再生可能エネルギーの導入による地域脱炭素の推進」

ところで、エネルギー問題への取り組みは本来、国全体の経済社会の安定を支えるとともに、石破政権が重要テーマとした「地方創生」とも密接にかかわり、後押しするものである6月に閣議決定された「地方創生2.0基本構想」では、「稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生」の一つとして「再生可能エネルギーの導入による地域脱炭素の推進」が掲げられている

参考= 「地方創生2.0基本構想」(6月13日閣議決定、概要より抜粋)

●政策の5本柱

(1)安心して働き、暮らせる地方の生活環境の創生

(2)稼ぐ力を高め、付加価値創出型の新しい地方経済の創生~地方イノベーション創生構想~

再生可能エネルギーの導入による地域脱炭素の推進⇔「地球温暖化対策計画改定」(2月18日閣議決定)2030年度までに脱炭素先行地域を少なくとも100地域で実現し、先行的な取組を普遍化

(3)人や企業の地方分散~産官学の地方移転、都市と地方の交流などによる創生~

(4)新時代のインフラ整備とAI・デジタルなどの新技術の徹底活用

(5)広域リージョン連携

→都道府県域や市町村域を超えて、地方公共団体と企業や大学、研究機関などの多様な主体が広域的に連携し、地域経済の成長につながる施策を面的に展開

2.「地域循環共生圏」「地域脱炭素ロードマップ」から「脱炭素先行地域」へ

◎「地域循環共生圏」第五次環境基本計画(18年4月17日閣議決定)で提唱

地域循環共生圏とは、「各地域がその地域資源を活かして自立・分散型の社会を形成、補完し、支え合う」(環境省資料)ことで地域を活性化させるというものである。第五次環境基本計画では、新たなバリューチェーンを生み出し、地域の活力を最大限に発揮する地域循環共生圏の考え方を展開するとした。

参考= かつて、ある環境省幹部は次のように述べていた。

地域循環共生圏では、まずは、エネルギー、文化・観光、食、自然、農林水産など、時に見過ごされがちだった各地域の地域資源を再認識し、価値を見出していくことが、地域における環境・経済・社会の統合的向上に向けた取り組みの第一歩となる。例えば、地域におけるバイオマスを活用した発電・熱利用は、化石資源の代替と長距離輸送の削減によって低炭素・省資源を実現しつつ、地域雇用の創出、災害時のエネルギー確保によるレジリエンスの強化といった経済・社会的な効用も生み出す。分散型エネルギーの収益を地域での再投資に向けるなど、地域資源で稼ぎながら課題解決をすることで、持続可能な形で地域循環共生圏の形成に取り組むことになる。地域循環共生圏の形成とは“地域の未来づくり”に他ならない」「分散型エネルギーシステムは、省エネルギーの推進や再生可能エネルギーの普及拡大、エネルギーシステムの強靭化に貢献する。それはまた、コンパクトシティや交通システムの構築など、まちづくりと一体として導入が進められることで、地域の活性化にも貢献し、“地域循環共生圏”の形成にも寄与するものである

◎「地域脱炭素ロードマップ」21年6月9日 国・地方脱炭素実現会議で決定

●キーメッセージ

地方から始まる、次の時代への移行戦略(概要より抜粋)

・わが国は、限られた国土を賢く活用し、面積当たりの太陽光発電を世界一まで拡大してきた。他方で、再エネをめぐる現下の情勢は、課題が山積(コスト・適地確保・環境共生など)。国を挙げてこの課題を乗り越え、地域の豊富な再エネポテンシャルを有効利用していく。

・一方、環境省の試算によると、約9割の市町村で、エネルギー代金の域内外収支は、域外支出が上回っている

・豊富な再エネポテンシャルを有効活用することで、地域内で経済を循環させることが重要。

今後の5年間に政策を総動員し、人材・技術・情報・資金を積極支援して、

・30年度までに少なくとも100か所の脱炭素先行地域を創出

・全国で重点対策(自家消費型太陽光、省エネ住宅、電動車など)を実行

◎脱炭素先行地域の創出

「地球温暖化対策計画改定」(2月18日閣議決定)においても、30年度までに100以上の脱炭素先行地域の創出を掲げている。 

【記者通信/9月10日】三菱商事の洋上風力撤退 村瀬エネ庁長官「非常に遺憾」

資源エネルギー庁の村瀬佳史長官は9月3日、専門紙記者団のグループインタビューに応じた。この中で、三菱商事が秋田・千葉両県沖の3海域で進めていた洋上風力発電事業から撤退を表明したことについて、「非常に遺憾で残念だ」と述べた。一方、「第7次エネルギー基本計画で示した方針は揺らぐことなく進めていきたい」と強調。3海域については速やかに再公募に取り組む意向を示した。

三菱商事と中部電力子会社のシーテックによるコンソーシアムは、2021年に実施された洋上風力公募の第1ラウンドで「秋田県能代市・三種町・男鹿市沖」「同県由利本荘市沖」「千葉県銚子市沖」の3海域を落札したが、インフレなどによる事業環境の急変を理由にこれら全てのプロジェクトから撤退を決めた。村瀬氏は、世界的な資材価格の高騰に加え、国内では円安や風力設備の調達を海外メーカーに依存せざるを得ない状況であることから、撤退に一定の理解を示した。

第1ラウンドの評価基準は、供給価格点と事業実現性の配点をそれぞれ120点と同じ割合にしていた。村瀬氏は、「当時は供給価格と事業実現性を半々で見ていたが、結果論で言えば事業実現性にウエイトを置いて考えておくことが妥当だった」と振り返った。同社が破格の価格で3海域を総取りしたことについては「大企業として能力も責任もあると見込み、やり切ってもらえるとの期待があったが、裏切られる結果になった」との見解を示した。

第7次エネ基では、発電電源に占める風力の割合を現在の約1%から40年度に4~8%に拡大する方針を掲げる。この方針に向けて、今後は入札参加者が公平・公正なルールの下で事業を成り立たせられるよう制度設計を進める考えだ。仮に、事業実現性を重視すればコストが上振れする可能性があるため、「社会的に許容される制度設計がポイントになる」(村瀬氏)。再公募の具体的な時期については言及を避けた。

【時流潮流/9月5日】米中印の微妙な三角関係 石油資源問題も背景に

インドのモディ首相が8月末、7年ぶりに中国を訪問した。上海協力機構(SCO)首脳会議に出席し、中国の習近平国家主席やロシアのプーチン大統領とも会談した。インドと中国は2020年にヒマラヤ国境付近で衝突して以後、関係が悪化した。一方、米国とは、事実上の中国包囲網である協力枠組み「クアッド」を日本、豪州とともに形成し良好な関係を築いてきた。

だが、トランプ氏の米大統領就任後、米印関係に亀裂が入る。きっかけは今年5月初旬にあったインドとパキスタンの4日間紛争だ。パキスタンが核兵器使用に踏み切る構えを見せたことで、米国などが止めに入った。幸い停戦に至ったが、ノーベル平和賞を本気で狙うトランプ氏は、自分の成果だと自慢した。

モディ氏はこの発言が気に障る。インドの圧力でパキスタンが停戦に応じたと考えているからだ。6月17日のトランプ氏との電話協議では「米国からの仲介を受けておらず、今後も受けるつもりはない」と言い放ち、両国の対立の根が意外と深いと世に知らしめた。

トランプ氏も黙っていない。手始めにモディ氏との電話協議の翌日、インドと対立するパキスタンの軍参謀総長をホワイトハウスに迎えた。米国は中国やイランと国境を接するパキスタンを、地政学的に重要な国として北大西洋条約機構(NATO)に準ずる同盟国と位置づけているが、軍参謀総長を単独でホワイトハウスに招いたのは初めてだ。

7月末には、パキスタンの油田開発支援を打ち出した。石油の海外依存度が高いパキスタンは、国内で探鉱を続けるが、米エクソンモービルが19年に撤退するなど失敗続きだ。

トランプ氏は「米国は膨大な石油埋蔵量の開発に協力する。多分、将来はインドに輸出することになる」と宣言した。ただ、具体的な計画は何も示さず、インドを意識したパフォーマンスにすぎないと受け止められている。

インドのしたたかな外交術

極めつきは8月だ。トランプ氏はロシア産原油を購入し、ロシアのウクライナ戦争の戦費を支える諸国に「二次制裁を課す」と脅した。インドは、中国に次いでロシア産の原油を多く輸入する国だが、米国の脅しを無視して輸入を継続する。

反発した米国はインドに50%の高関税を発動する。ただ、中国への二次制裁は見送った。レアアースの対米禁輸措置など報復を恐れたためだ。中国と違い「切り札」を持たないインドを狙い撃ちした形だ。トランプ氏は、今秋にインドで開催予定の「クアッド」首脳会合への出席も見送る意向で、米印関係の改善はしばらくは見込めそうもない。

そうした中、中国は王毅外相を8月中旬にインドに派遣し、今回の首脳会談実現に道筋をつけた。米国の「敵失」を利用し、反米感情を持ち始めたインドへの接近を図る構えだ。

とはいえ、インドは一筋縄ではいかない。訪中前の訪問先に日本を選び、日本の新幹線導入を決めた。プーチン氏なども参列した3日の中国戦勝パレードには参加せずに帰国した。欧州を含めバランスのとれた外交を目指しているからだ。トランプ劇場の行方もさることながら、世界最大の人口を武器にしたインドのしたたかな外交術にも注目だ。