米国とイスラエルが開始したイラン戦争は4週間目に入り、長期化する様相が強まっている。米国は、イランの石油積み出し基地であるカーグ島の封鎖や上陸作戦に対応できる強襲揚陸艦部隊を日本の佐世保や、西海岸のサンディエゴから派遣。これらの部隊が中東地域に到着する3月下旬以後、新たな展開が起きる可能性がある。

イランによるホルムズ海峡閉鎖の長期化で、エネルギー市場の混乱も続く。そうした中、「我が世の春」を謳歌している国がロシアだ。この戦争で、多くの恩恵を被っている。
まずは石油・ガス価格の上昇だ。開戦直前まで国際的な原油安に加え、欧米による厳しい経済制裁により、ロシアは大幅な値引きを強いられていた。今年1月の石油・ガス収入は50億ドルにまで落ち込み、今年1~2月の財政赤字は国内総生産(GDP)の1.5%に達した。わずか2カ月で年間予想額の1.6%に近づいたことで、政府は予算縮減策の検討に着手した。ウクライナでの戦争継続にも疑問符がつく事態に追い込まれつつあった。
だが、イラク戦争開戦とホルムズ海峡封鎖という「神風」が吹く。1バレル=65ドル台だった原油価格は、一時、119ドルまで上昇、その後も100ドルをはさんだ取引が続く。ロシアのウラル産原油の値引き幅も一気に縮小した。ロシアの臨時収入は1カ月で30~40億ドルに達するとされる。まさに「棚ぼた」だ。
2点目は、米国による制裁の一時停止だ。トランプ米政権は、原油の流通量を確保しようと、ウクライナ戦争を機に発動していたロシア産原油への制裁措置を解除した。米国民に不人気なガソリン価格上昇をできるだけ抑え込むのが狙いだ。
制裁解除により、ロシア産原油の購入を控えていた中国の石油大手シノペックやペトロチャイナなどが購入再開に興味を示すほか、インドやトルコも購入量を増やしている。
米国は、あろうことか3月19日にはイランへの原油制裁も解除した。イランの戦費調達を容易にする恐れがあるが、原油価格の安定を優先させた。制裁措置の停止はいずれも1カ月が期限だが、戦争と同様に長期化すると予想されている。
三つ目は、ロシアが米国との新たな交渉道具を手にした点だ。昨年、イランと戦略的パートナーシップを結んだロシアは、開戦以後、中東に展開している米軍や周辺諸国の軍の位置座標や情報をイランに提供している。また、イランがウクライナ攻撃用にロシアに供与したシャヘド型ドローンを改造して能力向上を図ったものをイランに「逆輸出」している。
米国は、これらを問題視しているが、ロシアのドミトリエフ特別代表は11日に米南部フロリダであった米露協議の場で「米国がウクライナに実施している情報提供を停止すれば、ロシアもイラン支援をやめる」と、取引を持ちかけた。機を見るに敏、使えるものは何でも使おうというロシアのしたたかさが透けて見える。ロシアに詳しい外交官は「ロシアは『無』から『有』を生み出す天才だ。今回がその典型的な例だ」と取材に答えた。
ウクライナ戦争に「追い風」か 肥料価格上昇も収入増に
報道も含め世界の関心が中東に集まれば、ウクライナ戦争の注目度が落ちることもロシアにとっては追い風になる。米国は、中東諸国を守ることを優先してミサイル迎撃用のパトリオット・ミサイルを中東に手厚く配備する作業を進めており、ウクライナに武器が届かず守りが手薄になっている。ロシアはその隙を突きウクライナに攻勢をかける準備を整えつつある。元手となるのは、石油価格上昇で得た臨時収入だ。さらに、国際的な注目を浴びずに攻勢を仕掛けられるのも大きな利点だ。
このほか、ロシアが主要供給国となっている肥料の価格上昇もロシアの収入増につながる。中東湾岸諸国は肥料の3分の1、尿素の5割を国際市場に供給してきたが、石油や天然ガスと同様。ホルムズ海峡を通航できない状況が続く。
ロシアの「おらが春」はいつまで続くのか。それはトランプ氏の差配にかかっている。














