真冬の政治決戦は高市早苗首相率いる自民党が歴史的大勝利を収めた。8日に投開票された衆院選で、自民党は単独政党が戦後獲得した最多議席の316議席(追加公認含む)を獲得した。衆院の定数465議席のうち3分の2を超えるのも戦後初めて。選挙戦最中の報道各社、政党などの情勢調査でも自民党有利の予想はあったが、予想を超える事態となった。消費減税や安全保障政策など高市自民党が掲げる政策が評価されたと指摘する向きもある。だが、これだけの大勝をもたらした最大の要因は、SNSなどを駆使して「サナエ」を前面に推しだした「推し活」選挙を繰り広げたことだと言える。国民の感覚に機敏に対応すれば勝利を呼び込めると読んだ自民党の底力を見せつけられた格好だ。

アイドル化した「サナエ」 YouTubeランキングでトップ
「これは高市早苗写真集か」。今回の選挙に用意した自民党の政策公約冊子を見ると、高市首相の写真が各ページの半分以上を占めている。鮮やかな赤色を中心に、高市首相が様々な場面で見せた表情やしぐさをこれでもかというぐらい配置した。ある政党関係者が漏らした前出の言葉は今回の選挙の特徴を象徴する。各候補者のポスターにも高市首相の姿が多く見られた。
解散直後の1月下旬、議員会館で選挙準備にとりかかる各議員の事務所には、地方組織、地元後援者などからひっきりなしに電話やメール着信音が鳴り響いていた。電話での会話の内容はもっぱら「高市首相はいつ入るのか?」「高市首相に入ってもらえるようお願いしたい」といったものだった。現役首相の選挙応援だからいつものことかと思いきや、ある議員秘書は「サナエ人気は純ちゃん(小泉純一郎元首相)に匹敵するよ」というものだった。
実際、選挙戦が始まると「サナエ」が行くところに人だかりができた。
「サナエちゃーん」。中年女性の集団が高市首相が現れると、奇声を上げた。一目見ようと行列ができることもあったという。真冬の寒空など関係なく、「サナエ」が行くところは熱気に包まれていた。
この現象はかつて人気を誇ったAKB48などアイドルグループの推し活に似ているではないか。中年女性の間で人気な藤井風、SNOWMan、若い女性に支持を受けるテイラー・スイフトのコンサート会場と間違うような雰囲気だ。
サナエを推す活動を「サナ活」というそうだ。SNSの世界では高市首相が使っているボールペンを買って書き記す若い女性のYouTube動画が5万回も再生されるという摩訶不思議な現象が起こっていた。
そしてYouTube最速1億回再生ランキングのトップにはなんと「高市総裁メッセージ、日本列島を、強く豊かに」が上がった。わずか9日でのトップは、2位のYOASOBI「アイドル」の35日、3位の米津玄師「IRIS OUT」の73日を大きく引き離した。
結果論だが、これらの現象から考えると高市自民党の勝利は必然だったかもしれない。2ちゃんねるの創設者で実業家のひろゆき氏は政治家を選ぶ基準について、「政策が素晴らしいからではない。単に見た目や話し方が好きなだけ」と持論を展開した。今回のサナエブーム、そして自民党大勝の結果を見ればこの指摘は正しいように思えてくる。
そして高市首相を前面に推した戦略を敷いた自民党の読みは当たったといえる。もちろん高市首相が自身の進退をかけた解散の仕掛け方も「わかりやすさ」で評価が高まった。
小泉元首相が郵政解散時に発した「国民に聞いてみたい」というフレーズは、高市首相が解散表明の記者会見で発した「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか、今主権者たる国民の皆様に決めていただく」と重なる。
高市首相が仕掛けた解散で郵政解散時の自民党の獲得議席(296議席)を抜いた。時代背景もあるが、「小泉超え」を果たした高市首相にはアイドル性が備わり、それが戦後最多議席につながったと言えよう。















