これまで、消費者側から幾度となく是正が求められてきたプロパンガスの商慣行。抜本的な改善には何が必要なのか。全国消費生活相談員協会の林弘美氏に話を聞いた。
【インタビュー】林 弘美 全国消費生活相談員協会 エネルギー問題研究会 代表
―プロパンガス業界の料金の不透明性や商慣行が改めて問題視されています。
林 2017年に料金の透明化に向けた改正液化石油ガス法省令や取引適正化ガイドラインが出されましたが、あまり変わっていないというのが実感です。店頭やホームページで公表している料金が実態と合っていなかったり、勧誘の際に公表とは全く異なる安い料金を提示し、切り替えから2、3カ月後に大幅に引き上げてしまったりといったケースが多く発生しているのが実情です。
―解決策についてどのようにお考えですか。
林 1事業者に何種類もの料金メニューがあることや、公開している料金と実際の料金、そして勧誘時の料金が全て違うというのはおかしな話です。基本料金と従量料金、配送条件による割増料金なども含め、消費者が納得できるよう料金を提示するべきです。1社でもこのような悪習を続ける限り、消費者のプロパン業界への不信感を拭うことはできません。
エネルギーの選択肢は多い方が生活の安心感につながりますし、プロパンはその大切な選択肢です。何より、地域に密着して事業を行うプロパン業者には、選ばれるというより地域に愛される存在であってほしい。安定供給への意欲を持つ事業者が、取引の透明化に努めたばかりに競争相手に攻め込まれ、廃業に追い込まれてしまうことは望ましくありません。消費者も、経済合理性だけではなく賢く事業者を選ぶ必要があります。
増える電気料金巡るトラブル 自由化は消費者利益なのか
―賃貸住宅において、設備の無償貸与など入居者のデメリットになる取引が行われたとしても、入居者は防ぎようがありません。
林 賃貸集合住宅では、さまざまな設備費用がガス料金に含まれて入居者に請求され、その分、賃貸オーナーが入居者に提示する家賃を安く設定するという行為が横行しています。これを阻止するためには、法改正により、プロパン料金の中にガスを供給するための費用以外は入れてはいけないという規制を設けるほかに手立てはないと考えています。
―電気料金を巡るトラブルも増えているようですね。
林 電気料金の高騰を受け、消費生活センターに寄せられる相談も電気関連が圧倒的に多くなっています。家賃をしのぐような高い料金を請求されたという相談もありますし、経営難による新電力撤退に伴うトラブルも散見されます。
事業者は、電話でメリットを強調して契約を結びますが、撤退に際してはインターネット上で公表するだけだったり、消費者側から問い合わせたくても電話がつながらなかったりと、消費者に説明を尽くしているとは到底言えない状況です。高齢者の中には、自分が契約している電力会社を知らないという方もいるくらいです。自由化の制度設計そのものが、消費者に対する説明責任や納得感という観点で十分な考慮がなされていないと言わざるを得ません。