ウィズコロナでどう変わるか 新たな時代のエネルギー社会とは


座談会:江田健二/エネルギー情報センター理事
    巽直樹/KPMGコンサルティング プリンシパル
    塩将一/積水化学工業 住宅カンパニー広報・渉外部技術渉外グループグループ長
    中西勇太/トヨタ自動車新事業企画部担当部長

コロナ禍の終息が一向に見えない中、「アフターコロナ」ではなく「ウィズコロナ」がキーワードとして取りざたされるようになった。社会やエネルギーの在り方はどう変わるか。

――新型コロナウイルス感染拡大に伴う社会の変化から、どのような課題が見えてきたでしょうか。

 3・11後の放射線デマを彷彿とさせるような情報リテラシーの欠如が、今回も浮き彫りになったように思います。当時とは違い、オープンソースの時代ですし、3月には感染症に関する多角的なデータにアクセスできるようになり、情報ポータルが充実してきました。それにもかかわらず、3か月が経過した今もメディアは感染者数のみを取り上げ、国民の不安をあおるような報道が多く、それに扇動される形で世論がミスリードされていることは否めません。

 感染症に関してゼロリスクを求めることは不可能ですから、その中で感染対策と経済活動のバランスをどう取るのか。少なくとも、世の中をリードする人たちは、科学的なリテラシーが必要だと痛感しました。

江田 行政サービスにおけるデジタル化の遅れが、さまざまな手続きをスピーディーに実施する上での足かせになっていることが浮き彫りになりましたね。デジタル技術を活用できていれば、10万円の給付金や事業者への持続化給付金の支給など、より早く必要な人に届けられたはずです。


江田健二

 一方で、こうした課題が見えたことで、デジタル対応を加速化していかなければならないという意識を持ったことは、新型コロナ騒動の経験を踏まえ社会を良い方向へ変化させるチャンスです。デジタル化を一層進めると同時に、企業や行政はなんとなく続けてきたけど意味がない慣習を整理し、業務の在り方を見直す必要があると思います。

中西 確かに、緊急事態宣言下の在宅勤務を通して、いかにITツールへの対応が遅れていたか実感させられました。これまでもウエブ会議システムはありましたが、実際に使ってみると通信速度の課題があったり、電子印鑑の仕組みがなく、オンラインで業務を完結させることができなかったりといった問題が明らかになりました。社内でも業務の要・不要の整理が始まっていて、これを機に本質的に取り組むべきことに、より注力できるようになると大いに期待しています。

 企業が一斉に在宅勤務に切り替え、業務の生産性が向上することが分かったことで、一部では恒常的に在宅勤務を採用しようという動きが生まれたことも大きな変化の一つです。今回、在宅時間が増えたことで、家庭のエネルギー消費にどのような影響を与えたのだろうかと調べてみました。

 一般家庭約3万2000軒分の電力データを分析したところ、5月は家庭の電力消費が8%加し、特に昼間だけ見ると14%増えていました。これは、在宅時間の増加によるものと見られ、感染が再び拡大し冷房需要が大きい8月に第二弾の緊急事態宣言ともなれば、この傾向がさらに顕著になるのは間違いありません。昼間の電力消費量の増加は、自宅の太陽光発電から自家消費で対応するのがベスト。ウィズコロナ社会は、家庭内での電力供給の在り方がより重視されることになると考えています。