脱炭素重視の企業が注目を集めるが、その裏では電気料金高騰に苦しむ企業も多い。電気料金が企業経営を直撃する実情を踏まえた政策が求められている。
脱炭素化対応の要請が高まり続けている昨今、電力調達に関する需要家の本音はどこにあるのか。
まず、ここ数年でCO2フリー電気が必須と判断する企業が増えているのは事実だ。再生可能エネルギーの活用に積極的な大手流通チェーングループでは、従来は親会社がエリアごとに旧一般電気事業者との間で個別契約してきたが、最近はPPA(電力販売契約)事業者からの調達を進め、敷地内のオンサイト太陽光発電の活用を拡大。今後はオフサイトでの調達も進めていく。調達しきれない部分については、非化石価値証書を補足的に利用する方向だ。
判断の背景には、やはり世界基準の脱炭素の動きを無視できないとの考えがある。「脱炭素化はCSR(企業の社会的責任)ではなく、企業の存続のために真剣に事業として進めるべきものと考えている。今後電気料金が高騰すると言われているが、料金の構成要素に加え、環境価値の価格動向、炭素税導入の行方など不確実要素があまりにも多い。それでも脱炭素化は着実に進めなければならない」(同グループ社員)
ただ、電力の消費実態や企業体力によって考え方は全く異なる。電力多消費産業では電気料金上昇に伴う実害が既に発生。さらなる価格上昇への懸念が高まっている。
電力は「総合無責任体制」 どうなる日本の工業力
東日本大震災以降の電気料金高騰のあおりで、電力多消費産業の一部では倒産や廃業に追い込まれている。同産業の電気消費原単位は、最大で売上高1000円当たり約20 kW時と、製造業平均の約29倍にもなる。この水準ではROE(自己資本利益率)10%とした場合、電気代がkW時5円上がると利益が飛んでしまう。

さらに料金を押し上げる要素の一つとして懸念されるのがFIT賦課金だ。例えば鉄鋼業界の場合、特殊鋼電炉業界などは減免対象外で、業界全体では年間400億円ほどの賦課金を支払っている。「賦課金だけでなく、再エネの統合コストも含めた電気料金全体はどうなるのか、第六次エネルギー基本計画の素案では見通しが全く示されていない。さらに化石燃料価格の動向も不透明で、戦々恐々としている」(鉄鋼業界関係者)
加えて安定供給リスクへの不安も大きい。1000℃以上の高温プロセスの準備には1日ほどかかり、稼働中に停電すれば製造中の鉄が固まり処分せざるを得なくなる。また自家発の老朽化が進むが、石炭利用への逆風が強まる中で数百億円かかる設備更新の投資判断はしにくく、ぎりぎりまで使った後で順次止めていくことに。
系統電力への依存度が高まる上、電化推進は既定路線だが、「今後停電や周波数変動が増加すれば、日本の製造業の競争力が落ちる可能性がある。だが総括原価時代と違い、今は誰も電気の品質の責任を負わない『総合無責任体制』だ。これで日本の工業力を保てるのか。天災である東日本大震災からの10年より、電気事業を取り巻く今後の人為的影響への危機感の方が強い」(同)と訴える。














