政治が不安定化する中で、日本のエネルギー政策はどうあるべきか。
気脈を通じる玉木氏と福島氏からは、あっと驚く提案も……。
〈司会〉
竹内純子(国際環境経済研究所理事)
福島伸享
玉木 雄一郎(衆議院議員)
竹内 お二人は当選同期のエネルギー政策通です。ズバリ、エネ政策最大の課題は何ですか。
玉木 「再生可能エネルギーか原発か」という二項対立から抜け出せないことです。二度のオイルショックの後、中東依存脱却を目指して原子力を推進したにもかかわらず、電力の7割近くを火力発電に頼り、原油はほぼ全て中東に依存している。国際情勢が混とんとしているにもかかわらず、「再エネか原発か」というイデオロギー対立でいがみ合っている。政治のリーダーシップがないし、国民全体で危機感を共有できていません。
福島 そういう現実を踏まえない議論をしていること自体が危機ですよ。再エネが増えたとはいえ、当面は化石燃料に一定程度頼らざるを得ない。小資源国の日本にとって、供給途絶が起きれば日本は窮地に追い込まれます。かつてはそれを補う産業や技術があったけれど、衰えてしまった。経済力も低下した。バーゲニングパワー(交渉能力)が何もない状況で国際環境の変化に対応しなければならない深刻な状況にあります。
竹内 エネルギーは国民の生命に関わります。化石燃料を持たず、さらに島国なのに、エネルギー教育はほぼない。自分たちの命を守る政策を真剣に考えられているのでしょうか。
玉木 外交・安全保障と同じで、エネルギー政策が政権によってコロコロ変わってはいけません。ただ先の衆院選では、自民党は公約に新増設やリプレースを書かなかったし、公明党は「原子力に依存しない社会」を掲げた。自公政権が原子力政策を転換するのではと、危惧している関係者も多いんじゃないですか。
竹内 コスト面に目を移すと、再エネ賦課金が年間約2・7兆円となり、2030年過ぎまで増加傾向が続くとの見通しもあります。電気という生活必需品に掛かる消費税のようなものですから、国民民主党が掲げる「手取りを増やす」上で極めて大きな問題ですよね。
賦課金は工夫して見直しを 「手取りを増やす」エネ政策
玉木 再エネ賦課金は明らかに見直しの時期を迎えています。いまだに「太陽光が一番安い」という人がいますが、それなら補助はいらないでしょう 。即時廃止は難しいですが、例えば期間を長くすれば単一年度の負担を下げられるかもしません。既契約分は賦課金ではなく税金で国が肩代わりする手もあります。
竹内 国民負担からは逃れられません。所得が上がらない原因の一つはエネルギーコストですからね。
玉木 そうです。賃金を増やせと声高に主張するだけではダメで、これから電力需要が増える中でどのように安価で安定的な電力を供給していくのか。現実的な議論をしない限り、経済成長や「手取りを増やす」ことにはつながりません。そのためには、少なくとも安全基準を満たした原子力発電所は稼働させる必要がある。北海道で発電した電気を本州に運ぶ海底直流送電の計画がありますが、そこに莫大な資金を投入するくらいなら現地で産業を作ればいい。原子力規制委員会の運転中審査も認めて、「原子力新時代」を創らないといけません。
福島 2024年は円安と物価高が日本を襲いました。その主要因はエネルギーと食糧の自給率の低さです。輸入に頼れば頼るほど、それは円安要因になる。では負のスパイラルを脱却するためにどうするかを考えた時、原子力を手放すという選択肢はあり得ないでしょう。
玉木 日本のGDP(国内総生産)は約600兆円。そのうち約25兆円を化石燃料の購入費として支払っています。近年ではデジタル赤字も6兆円もある。国内で回せていれば誰かの所得になっていたお金が、国外に流出している。この構造を放っておいていいわけがない。