【北陸電力】持続的な成長へ 財務基盤を立て直し 成長領域に挑戦する

2023年3月1日

志賀 どのように拡大していきますか。

松田 北陸の豊かな水資源を生かした水力発電所の新設や老朽化施設のリプレース、既設設備の改修のほか、AIを活用して水力発電電力量の増加を図るとともに、北陸エリア以外や海外での案件にも参画し再エネ開発拡大を図っています。水力では、昨年2月に石川県白山市において鶴来古町発電所の新設工事を開始したほか、4月には当社グループの黒部川電力で新たなに新姫川第六発電所が運転を開始しました。

 またエリア外でも、仙台市におけるバイオマス専焼事業に、海外では台湾沖における洋上風力事業へ参画しています。再エネは重要な電源と考えており、他のエネルギー企業などとのアライアンス活用も含め、エリアを問わず、今後も開発拡大を進めていきます。

2022年度に上方修正した新たな再エネ開発目標

志賀原子力早期稼働へ 審査に適切に対応

志賀 26年1月再稼働と仮置きした志賀2号機の見通しは?

松田 志賀2号機の再稼働については、現時点では、具体的な再稼働時期を見通せる状況にはありませんが、料金原価算定上は審査が最大限効率的に進むことを前提に26年1月としました。先ほど申し上げた通り、これは必ずしも不可能ではありませんがとても高いハードルです。昨年9月に開催された原子力規制委員会との意見交換では、審査の効率化・迅速化に向け、並行審査の要望を出しましたが、当社としても、審査会合などでのコメントに適切かつ速やかに対応するとともに、先を見据えた幅広な対応を進めていきます。安全性向上工事を着実に進め、十分な安全性を確保した上で地域の皆さまのご理解のもと、1日も早い再稼働を目指していきます。

志賀 審査の進捗はいかがですか。

松田 昨年10月の現地調査では、敷地内断層と敷地近傍断層の活動性評価について、21年の現地調査以降に実施した追加調査・分析などによりデータ拡充した内容を改めて現地で確認していただきました。現在、敷地内断層が活断層でないとする最終的な評価資料を取りまとめ、規制庁に資料を提出し、ヒアリングで確認いただいているところであり、今後の審査会合で審議される予定です。

 現地調査では、原子力規制委員会の委員から、「敷地内断層全10本については納得できる部分があった」「かなりデータが出そろってきており、結論までそれほど時間はかからないのではないかと期待している」とのコメントをいただいており、当社の評価に対してご理解を深めていただけたものと考えています。

 審査は着実に前進しており、1つ目のゴールにかなり近づいたのではないかと感じています。

志賀 原子力が再稼働すれば、CN達成を大きく後押しします。

松田 志賀原子力が稼働すれば、安定供給と脱炭素、そして収支改善に大きく寄与します。とはいえ、50年CN達成という観点で見れば、再エネを最大限に導入し原子力を安定的に稼働したとしても非常に難しいと言わざるを得ません。再エネと原子力に加え火力の脱炭素化にもしっかりと取り組み、バランスの取れた電源構成を実現し、安定供給とCN達成に貢献していきたいと考えています。

志賀 ありがとうございました。

対談を終えて  昨年11月、43年ぶりに電気料金の値上げ改定を申請した。志賀原発の長期停止と22年2月からの燃料価格の上限突破で、今期の収支は1000億円の赤字見通しだ。値上げ幅の抑制の妙案として、26年1月の原発再稼働を織り込み131億円のコスト削減効果を反映した。営業畑出身ならではの発想か。今後は、財務基盤の立て直しを図り成長軌道に乗せるべく、「チェンジ」「チャンス」「チャレンジ」の3Cで前に踏み出し、新しい景色を見たいと意欲を見せる。(本誌・志賀正利)

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