【特集2】地域熱供給でロードマップ策定 3本柱で新たな街づくりに挑む

2024年7月3日

SHK制度の改正で、熱の環境価値の提供が可能となった地域熱供給事業。

新制度を踏まえ、日本熱供給事業協会は2050年に向けた新たなロードマップを打ち出した。

温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度(SHK制度)が改正されたことを契機に地域熱供給への期待が高まっている。

2024年度に始まった新制度では、熱供給事業者ごとの係数を用いることが可能となり、熱の環境価値を評価するしくみや、カーボンクレジットなどの活用によりCO2排出係数ゼロのメニューの提供を可能とする内容が盛り込まれた。

これらを踏まえ、日本熱供給事業協会は、「地域熱供給中長期ロードマップ」を策定し、熱のカーボンニュートラル化による脱炭素社会の実現、新しい街づくり、街の防災機能の強化への貢献を目標とした三つのアプローチを打ち出した。

ロードマップのシナリオイメージ
提供:日本熱供給事業協会

各アプローチには、具体的な施策とともに、現在実装済みの先行事例を掲載している。これは、熱供給を営む各事業者が、先行事例を参考とすることで、目標達成に向けた取り組みを加速させる狙いがある。

一つ目のアプローチは、「最新技術の導入による省エネルギー・省CO2運転の取り組み」だ。具体的には、デジタル・AIを活用した熱製造システムの実装を推進することとしている。CEMS(地域エネルギー管理システム)の利用で、熱源運転効率の向上や省エネを実現した10社の取り組みなどが先行事例として挙げられた。

さらに将来的なCCU(CO2回収・利用)の導入にも言及している。現時点で革新的な技術開発として注目しているのが、CO2を脱吸着できる「CO2固体回収材」の「Na―Fe系酸化物」だ。熱供給に使用するボイラー設備での活用に期待を寄せる。

二つ目のアプローチは、「熱の脱炭素化に向けた取り組み」だ。取り組みは①カーボンオフセット熱の供給開始、②再エネ熱・排熱の有効利用システムの実装に加え、③関係業界などと連携したクリーンガスの導入、④関係業界と連携した水素の導入―に細分化される。事業者はSHK制度を活用し環境価値の高い熱の供給に取り組み、30年以降にはe―メタンや水素を活用することでさらなる環境価値の向上を見込む。


BCP向上に貢献 災害時の対応力強化

三つ目のアプローチは、「街のレジリエンス強化に向けた取り組み」で、地方自治体との連携を通じ、災害時のBCP対応力を強化する。施策として電気・熱の継続供給にはコージェネ設置型熱供給プラント、消防・生活用水の継続供給には、蓄熱槽設置熱供給プラントをそれぞれ活用し継続供給する体制を推進することを打ち出した。

同協会は、先行事例を交えたロードマップを通じ、熱供給事業者に方針を示すだけでなく、政府や需要家側にも熱供給の有用性を訴えることで業界を挙げて取り組みを加速させていく。

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