【特集2】空気の力で電力需給ニーズに対応 LNG冷熱利用で効率化目指す

2024年7月3日

【住友重機械工業】

液化空気が気体に戻る際に得られる膨張エネルギーで発電する―。そんな空気の蓄電池を備える「液化空気エネルギー貯蔵(LAES)システム」の可能性を追求するのが、住友重機械工業だ。住友重機は、脱炭素化の追い風に乗る再生可能エネルギーの普及を支えようと、LAESシステムの市場開拓に注力している。

気象状況や時間帯によって出力が左右される再エネの導入が進むと、多くの電力調整も必要となる。そうした不安定電源を最大限に活用できるようにする切り札として注目されているのが、LAESシステムだ。

空気の力で蓄電するシステム

特徴の一つが、大容量で長時間の電力供給に対応できるという点で、数GW時という規模の電力貯蔵が省スペースで実現。揚水発電を代替することも可能だ。さらにリチウムイオン蓄電池との比較で、設備寿命が長く環境負荷が小さいなど、多くの項目で優位に立つ。回転体によるタービン発電機を持つことから、慣性力による電力系統への安定化にも貢献できる。

こうした特徴を武器に同社は、LAESシステムの導入に向けた検討や設計から建設・試運転までを総合的に手がける体制を強化してきた。

システムの実証に向けて住友重機は、広島ガスと連携。商用実証プラントを広ガスの廿日市工場(広島県廿日市市)に建設し、2025年の運転開始を目指している。両社は22年12月に業務提携契約を締結。LNGの冷熱の有効な活用策を探っていた広ガスと、蓄電市場の開拓に向けた知見を蓄積したい住友重機の考えが一致した。

計画によると、住友重機が20年に出資した英スタートアップのHighview Enterprisesが持つLAES技術を生かす。この技術を活用する実証プラントは日本初で、「5MW×4時間貯蔵」という能力を誇る。


AIが広がる時代も視野 質の良い電力で支える

具体的には、再エネなどの余剰電力で圧縮した空気をマイナス160℃程度まで冷やして液体にし、タンクに貯蔵。冷却の際には、基地からのLNG冷熱も有効に活用し、システム全体の効率を高める。

液体空気が、電力が必要な場合に加熱し、膨張させてタービンを回す仕組みとなっている。電力需要の高いタイミングに発電することで、脱炭素や電力需給の安定化に貢献したい考えだ。発電した電気を巡っては、アグリゲーターを通じて電力市場へ供給するという。

生成AIの普及などを背景に、情報処理を担うデータセンターで使う電力の需要が大幅に拡大する方向にある。

住友重機エネルギー環境事業部の長尾亙・事業開発推進部長はそうした潮流に触れ、「エネルギー貯蔵と電力系統安定化の双方を担える一石二鳥の技術がLAES。データセンターの運用を環境にやさしい質の良い電力で支えるニーズにも応えたい」と意欲を示した。エネルギー業界に新風を注ぐ挑戦から今後とも目が離せない。