台風時は泊まり込みで対応 電工職の技術者確保に苦労
地理的要因により、本州にはない課題に直面する沖縄電力。
関係・協力会社とともに、地域のために全身全霊を注ぐ。
毎年のように台風が上陸する沖縄県でも、昨年8月の台風6号の直撃は近年まれに見る被害をもたらした。特徴はその進路にあった。東シナ海へ抜けるかと思われたが、Uターンする形で再び沖縄本島に戻ってきたのだ。台風が抜けかけた時、すでに現場は警戒態勢を解いて復旧作業に入っていた。だがUターンを受けて再度の警戒態勢を余儀なくされた。
配電部門では最長10日間、家に帰らずに支店で泊まって対応した作業員もいたという。沖電労組の担当者が現場を激励した際も、疲労困憊している様子が見てとれた。台風6号では最大で約21万戸の停電に対して、関係・協力会社を含め全社一丸となって、約1800人の最大要員態勢で復旧対応などに全力を注いだ。
災害時に現場で復旧作業を行うのは、主に送配電の技能者だ。彼らの存在なしに、災害時の安定供給はなし得ない。沖電社内で毎年行われる「配電技能競技大会」では台風シーズンの到来を前に、日ごろの訓練で習得した技術や技能をいかに安全に実施するかを支店ごとに競う。緊迫した空気感と、作業責任者と作業者の呼称復唱が見どころだ。
天願敏光書記長が「喫緊の課題」と危機感をあらわにするのが、協力会社を含めた電工職の技術者の確保だ。最近は若年層のみならず中堅・ベテラン層にも離職が多く、人手が足りていない。配電技能は長い年月をかけて習得する「職人技」と言っていい。緊急時や災害時の復旧作業では熟練した技能が求められ、ほかの仕事から転職してすぐに務まる仕事ではない。
なぜ電工職が若者から選ばれないのか─。その要因の一つは、台風の接近などで緊急呼び出しを求められる労働環境だ。離職者の中には、土日が固定休の仕事を求めて転職する人もいる。電工職の技術者の休日を確保するため、沖電社員も含めて対応しているという。
脱炭素への選択肢少なく かりゆしウェアを着て
沖電管内には、原子力や水力発電所が存在しない。系統が独立しているので、電力を他地域から融通することもできない。となれば火力発電に頼らざるを得ないが、脱炭素化という時代の要請で燃料の転換や混焼実証などにコストがかさむ。「S+3E(安全性、安定供給、経済効率性、環境適合)を達成する選択肢がほかの地域に比べて限られる」(照喜名朝和副書記長)
こうした中での再エネ増で、本島・離島の発電所の現場の負担は高まった。系統が小さいがゆえに周波数変動に加えて、再エネを最大限受け入れるため、1日の中で起動停止を繰り返す必要がある。発電に限らず、系統運用を行う給電指令所も日々の対応に追われる。「外からは見えづらいところだが、安定供給のために現場が努力している」(同)
他電力に劣らず、働き方改革には力を入れている。車社会の沖縄本島は朝晩のラッシュの影響を受けやすい。出勤時間を自分で前後1時間ずらせるスライド勤務やフレックスタイム勤務制度は、子育て中の社員からも好評だ。
沖電のコーポレートスローガンは「地域とともに、地域のために」。沖縄県産であることが一つの条件とされる「かりゆしウェア」を身にまとい、地域を支え続ける。