【コラム/11月28日】地方創生戦略とその体制を考える~違和感伴走の10年

2024年11月28日

飯倉 穣/エコノミスト

1、地方の低迷継続

日本の地方の多くは、経済停滞や人口減少に悩む。人口戦略会議は消滅可能性地方自治体(744)を予測する。2014年まち・ひと・しごと創生総合戦略が策定され、地方創生の言葉が生まれて10年を経た。毎年基本方針が作成され、石破内閣は、改めて地方創生を基本政策に掲げた。報道もあった。

「地方創生問われる実効性「2.0」始動 首相、交付金倍増方針」(朝日2024年11月9日)

「政府、地方創生に5本柱 東京一極集中是正やデジタル活用 閣僚会議初会合 首相「付加価値を創出」」(日経同)

施政方針演説(10月4日)で「(五)地方を守る」があった。「地方創生の原点に立ち返り、地方を守り抜きます・・「産官学金労言」・・こうした地域の多様なステークホルダーが知恵を出し合い、地域の可能性を最大限に引き出し・・すべての人に安心と安全を保障し、希望と幸せを実感する社会。それが地方創生の精神です・・「地方こそ成長の主役」です・・これまでの成果と反省を活かし、地方創生2.0として再起動させます。全国各地の取組を一層強力に支援するため、地方創生の交付金を当初予算ベースで倍増することを目指します・・私が先頭に立って、国・地方・国民が一丸となって地方創生に永続的に取り組む機運を高めてまいります」と述べた。そして地方経済・生活環境創生本部を設置し議論を始めた。地方開発担当で過去経企庁・国土庁という担当官庁があった。永続的課題である地方創生・地方開発の取組みを考える。


2、ローカル・アベノミクス

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(閣議決定14年12月27日)は、人口減少と地域経済縮小の克服を謳い、東京一極集中是正、若い世代の就労・結婚・子育ての希望実現、地域特性に即した地域課題解決を目指した。しごとの創生で雇用量の確保・拡大、ひとの創生で若者の地方就労を促し、まちの創生で都市のコンパクト化と公共交通網の再構築等を例示した。基本方針は、縦割り、全国一律、バラマキ、表面的、短期的政策を改め、政策5原則として自立性(地公体・民間事業者・個人等に自立)、将来性(前向き取組支援)、地域性(各地域の実態実態適合施策支援)、直接性(直接的支援かつ産官学金労連携)、結果重視(PDCA採用:計画・実施・評価・改善)を挙げた。

政策の基本目標は、4つである。①地方で安定した雇用創出(30万人)、②地方への新しい人の流れをつくる(地方雇用年10万人増で、東京転入年6万人減少、東京から地方への転出4万人増加で転出入均衡)、③結婚出産・子育ての希望実現(出生率1.8)、④時代にあった地域つくり・暮らしの安心・地域連携(まちの活性化:小さな拠点整備、地域連携推進)だった。担当は、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部、内閣府地方創生推進事務局だった。今回前者は、何故か「新しい地方経済・生活環境創生本部」に名称を変更した(24年10月)。

政府の支援策は、情報支援(地域経済分析システム)、人材支援(地方創生人材支援制度)、財政支援(地方創生交付金)である。そして強調する。日本を変えてきたのは、地方である。地方が自ら考え、責任をもって自ら取り組むことが何よりも重要である。全国一律でなく、地方による裁量性と責任ある地方主導の政策づくりを全力で支援していくと。政治的プロパガンダである。当初から時代や経済の流れに浮かぶ大風呂敷で実効性に疑問があった。


3、5年経過して~2019年見直し

第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」(19年12月20日)は、5年間の実績を検証した。基本の流れ(人口減少、東京一極集中)は変わらないが、起業、副業・兼業、サテライトオフィスで動意もみられる。また各地域の取組みで地域により,観光、経済産業、移住・定住、子ども・子育て、交通ネットワークの目標設定(KPI)を達成・進捗した例もあるという。好評価を言えず、多くで効果不鮮明を印象づけた。成果は乏しかったが、行政の仕事作りは継続する。

第2期は従来の4基本目標に加え、横断的な目標を追加した。①多様な人材の活躍を推進する(地方創生を担う人材確保等)、②新しい時代の流れ(Soceity5.0やSDGs)を力にするという2つである。政策5原則は、①自立性、②将来性、③地域性、④総合性、⑤結果重視となった。当初の5原則のうち④の直接性を総合性にかえた。多様な主体・地域連携等で総合的な施策に取組みつつ、直接的に支援する施策に取り組むとした。

地方創生を、地域活性化と捉えた場合、5年程度の政府誘導で、地方の活力(雇用確保、生活条件、地域魅力等)を取り戻す、あるいは向上することは容易でないことを示した。毎年1000億円の予算が注ぎ込まれた。勿論生活環境等の整備・改善例もある。ただ従来の地域行政の取組みとの違いが分かりにくい。

1 2