【LPガス大変革時代に挑む】物流と人材確保に本腰 電力事業拡大などで 業界をリードする存在に
尾日向 竹信 社長/三ッ輪産業

関東地方を中心に卸・販売事業を展開する三ッ輪産業。
小売り全面自由化を契機に電力事業に全国規模で取り組んでいる。
―今年で創業86年を迎えました。貴社のエネルギー事業についてお聞かせください。
尾日向 LPガス事業は関東全域と山梨県で展開し、約20万件の顧客を抱えています。卸と販売を手掛け、顧客との関係性を軸に事業を拡大してきました。また、エネルギーの小売り全面自由化以降は電力小売りのほか、電力販売や都市ガス販売支援事業なども手掛けています。
―国内では過疎化・人口減少が進み、物流の維持が大きな課題となっています。
尾日向 過疎化の進行でエリアの顧客密度が低下すると配送の生産性が下がります。そこで、2018年に複数の販売事業者とジャパンエナジックを設立し、配送の共同化に取り組んできました。当初は各社で重複していた配送ルートを最適化することを優先してきました。8年目に入る今年度からはフェーズ2として、配送拠点の統廃合を進めてさらに効率的な配送を目指していきます。
働き方の見直しが急務 持続可能な仕組み構築へ
―物流・保安の人材確保が課題です。どのように取り組んでいますか。
尾日向 働き方の見直しが急務です。LPガスの配送需要は夏冬で2倍程度の差があります。給与の相当部分が歩合制だったため収入が大きく変動していました。しかし、物流分野の残業規制が強化され、繁忙期に頑張れば稼げるという旧来の仕組みは成立しなくなっています。他業種からLPガス配送に人材を引きつけるためにも、収入の平準化や歩合の見直しを含めた給与体系の再設計が必要な局面に入っています。
そのためには、業界全体として配送・保安の担い手にきちんと資金が流れる仕組みを整備することが不可欠です。ジャパンエナジックでは、出資事業者から必要なコストをしっかり請求できる制度的な仕組みを構築しています。販売側が強いパワーを持ち運送側に資金が流れにくくなる構造から脱却し、物流・保安を支える人材が報われる仕組みをつくることが、持続可能な事業のために必要です。
―液石法省令改正が完全施行されてから1年余りが経過しました。この影響をどう見ていますか。
尾日向 設備提供を条件とした顧客の切り替えという行為は間違いなく減少しています。ただ、三部料金などへの対応が難しい小規模事業者が出てきています。中東情勢による仕入れコスト上昇が長期化すると、価格転嫁が難しい事業者はさらに事業継続が困難になると見ています。この動きに合わせて、大手事業者のM&A(企業の合併・買収)の動きが加速しています。当社も卸先の販売店からの事業承継案件や、エリアを広げるための買収に取り組んでいます。

電力事業と地域共生 本業と双璧をなす事業創出
―小売り全面自由化を機に参入した電力事業の現状についてお聞かせください。
尾日向 電力事業はイーネットワークシステムズという三ッ輪ホールディングスの子会社が手掛けています。現在、提携事業者数は650を超え、利益面ではLPガスに並び立つまでになっています。安売りで顧客を獲得するスタイルではなく、全国の自治体などと連携し、地域電力の循環モデルの構築に取り組んできました。三重県や岡山県で、森林のカーボンクレジット創出、地域の脱炭素化、再エネ設備の導入、電力供給まで一体的に手掛けています。ガス会社でも、電力会社でもなく、地域課題を解決できるエネルギー総合企業と認めてもらえてもらうよう注力しています。

―今後の展望をお聞かせください。
尾日向 当社はエネルギーを供給する地域の方々がどのような暮らしをして、どのような事業を営んでいるかを把握し、地域をいかに盛り上げるかが、鍵になると考えております。地方で積み上げてきた地域共生のノウハウは、関東エリアでも必要になるでしょう。自治体や他の事業者と協力しながら、地域の担い手としての役割を買って出たいと考えています。
三ッ輪産業
1940年神奈川県横浜市で練炭・石炭の製造販売業者として創業。エネルギーの変遷に機敏に対応しながら販売事業者として成長を続け、現在は関東圏で約20万件の顧客を抱える。


