【論考】米イラン「イスラマバード覚書」 ペルシャ湾は「イランの海」に⁉ ※期間限定無料公開

2026年6月26日

より不安定化する中東 脅かされる通商国家

今後、中東湾岸地域では、イランのペルシャ湾支配に対する妥協と抵抗が交錯しよう。紅海、オマーン湾、地中海向け代替ルートによる、石油・天然ガス輸出の「脱・ペルシャ湾」の加速は、その抵抗の主軸の一つであり、これに伴って紅海南部の支配をめぐる争いも激しくなるだろう。

今回の覚書合意には、イランのミサイル能力や、ヒズボラなどの武装勢力支援を制限する項目がない。また、米国による対イラン制裁の解除と、「地域のパートナー諸国」と共同での3000億ドル規模の「イラン復興・経済開発」計画策定をうたう一方で、湾岸諸国がイランの軍事攻撃によって被った被害の補償には言及しない。

湾岸諸国は米国に見捨てられ、またイスラエルも最後には切り捨てられる形となりつつあるが、各国ともその危機感の中で、互いの合従連衡(例えばUAEとイスラエルの軍事協力の拡大)や米国以外の域外勢力(例えばパキスタン、トルコ、インド)との関係強化を模索し、中露の影響力拡大も相まって、中東の域内秩序をさらに不安定化させよう。

米国が一方的な実力行使によって中東の地域秩序を崩し、その収拾に責任を持たぬまま一方的に撤退する、03年の対イラク戦争以来の行動様式が、今回はより露骨に繰り返されつつある。それは西側自らの国際石油供給秩序の破壊につながり、日本のような通商国家の生存を脅かしつつある。

日本はいずれの国よりも鋭敏にこの危機を感得し、忍耐強く、現実的に、国民の創造力を結集して、その解決への道のりを切り開いていかねばならない。

国際石油アナリスト 小山正篤

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