【論考】懸念される「複合石油危機」 中東情勢の現況を徹底解説
米・イランが攻撃の応酬 イスラマバード「覚書」は無効に
これに対して、7月6、7日にイランは南側航路を通航中のタンカー3隻をドローンで攻撃、再び米軍によるイラン軍事施設空爆とイランによる湾岸諸国内の米軍拠点攻撃の応酬を招いた。7日に米国は6月22日以降に適用除外としたイラン産石油に対する制裁措置も復活させている。
11日にイランが南側航路を通航中のコンテナ船をミサイル攻撃すると、米軍はイラン沿岸部の他に内陸部の軍事目標を報復爆撃。12日にイランはホルムズ海峡再封鎖を宣言し、バーレーン、クウェート、ヨルダンに加え、米国との協議の仲介国であるカタールとオマーンの米軍施設を空爆した。以降、軍事衝突が拡大している。
13日にイランは南側航路通航中のタンカー3隻を攻撃したが、そのうち2隻はUAE産原油をフジャイラなど、ペルシャ湾外の出荷地まで運ぶ「影のシャトル船」だった。これら一連の攻撃を受けて、南側航路の通航量も急減している。14日に米国も実質的な対イラン海上封鎖を再開し、既に数隻のイラン関連船舶を臨検、強制的進路変更、あるいは航行不能化している。
米軍の攻撃対象はイラン海軍の拠点であるバンダル・アバス周辺の橋梁、鉄道、幹線道路、通信施設などのインフラにも拡がっている。また、沿岸部ジャスク近郊の海水淡水化施設も攻撃した模様であり、イランは報復として17、18日にクウェートの発電・海水淡水化施設を空爆した。18日にイラン最高指導者モジタバ・ハメネイ師は「イスラマバード覚書」を無効と述べ、イラン外務次官も覚書の履行を中断と発言。同日イランによるヨルダンの米空軍基地空爆により米軍兵士2人が死亡、1人が行方不明となり、4月8日以降の「停戦」以来、初めて米軍に戦死者が出た。軍事衝突の拡大が抑制を失いつつある。


