【論考】懸念される「複合石油危機」 中東情勢の現況を徹底解説

2026年7月21日

米国のプレゼンス低下 世界的な石油供給危機が顕在化へ

ここで特筆すべきはペルシャ湾における米国の覇権の喪失だ。夜陰に紛れた商船の通峡を密かに幇助する米国は、抵抗者ではあっても支配者ではない。6月25日の米・湾岸協力会議(GCC)外相会合でも、自由航行の原則の確認、通航料を含むホルムズ海支配権の拒否がうたわれたが、米国にそれを実現する実力がない。7月13日、対イラン海上封鎖の再開を発表したトランプ大統領は、米国を「ホルムス海峡の守護者」と呼び、その「守護」の対価として20%の通航料を求めた。この構想はわずか1日で撤回されたが、米国の指導力の劣化と混乱を、改めて浮き彫りにした。一方、イラン側が海峡支配を自国防衛の中核に据え、これを固守する姿勢は一層鮮明となっている。

米・イスラエルとイランとの戦闘が拡大し続ければ、それは「軍事的相互破壊」となり、イランおよび湾岸諸国のエネルギー・インフラ施設に広範で長期的な損傷を与えよう。この場合には、ペルシャ湾岸のみならず、紅海岸・オマーン湾岸経由の代替ルートを含む石油供給全体に深刻な影響が出ると見なければならない。

一方、軍事衝突に一定の歯止めが掛かり、ホルムズ海峡封鎖・対イラン海上封鎖という「経済的相互破壊」が進行すれば、世界的な石油供給危機が次第に顕在化してくる。

3月以降、世界石油生産の不足は在庫減によって補われている。6月に中東からの石油輸出は前月対比で日量650万バレル増となったが、それでも昨年平均水準からは日量700万バレル低い。3月から6月までの間、世界石油在庫量は日量平均約300万バレル減少と推定され、昨年から今年2月まで続いた大幅な供給超過から反転している。7月以降、世界生産量が4~5月水準に止まれば、世界需要が第2四半期と同様に対前年比4.5%の高率で減少と仮定しても、8月には今年2月までの積み増し分が消え、世界在庫量は2021年来最低水準を割り込んで減少し続け、時間の経過とともに石油製品および原油供給を逼迫させる。ちなみに米・エネルギー情報局(EIA)の短期見通しによれば、今年第2四半期に米国の原油純輸出量は対前年比で日量170万バレル増大したが、戦略備蓄(SPR)を含む在庫取り崩しはその約9割に相当した。3月以降現在まで世界的な石油危機が顕在化しなかったのは、大量の在庫放出が供給を支えたからだが、今後この条件は失われていく。

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