【論考】懸念される「複合石油危機」 中東情勢の現況を徹底解説

2026年7月21日

拡大する中東危機 ロシア・ウクライナ戦争も拍車

ペルシャ湾からの石油供給が止まる場合、紅海・バベルマンデブ海峡の通航が脅かされる危険も増幅する。紅海航路による石油輸出の重要性が増すにつれて、その確保を巡る対立も先鋭化するためだ。実際、サウジアラビアとフーシ派の対立が激化する様相を呈している。7月13日、サウジアラビアの支援を受けるイエメン暫定政府(あるいはサウジアラビア自身)がフーシ派支配下のサナア空港を空爆し、これに対してフーシ派がサウジアラビア南西部アブハー空港に向けてミサイル・ドローン攻撃を行った。テヘラン・サナア間の直行便の再開を、革命防衛隊による支援策として警戒するサウジアラビアとフーシ派との衝突だが、両者の戦闘は22年の停戦以来となる。18日にはイランもサウジアラビア・リヤド近郊の米軍基地に向けてミサイル攻撃を行った。フーシ派はサウジアラビアが攻撃を続ければ同国の石油施設へ報復攻撃すると警告。一方でイランはエネルギー施設が米軍の攻撃を受けた場合に、紅海で船舶攻撃を行うようフーシ派に要請したと報じられている。20日、フーシ派はサウジアラビアに対する「海上封鎖」を宣言し、揺さぶりをかけている。

また中東危機と並行して、ロシア・ウクライナ戦争に伴うロシア産石油輸出の阻害が増大している。今年に入りロシア西部の主要製油所が次々にウクライナからのドローン攻撃を受けているが、7月6日には西シベリアに位置するロシア最大級のオムスク製油所も攻撃された。ロシアは4月にガソリン、6月にジェット燃料の輸出を停止し、7月8日に軽油輸出も停止した。4~5月のロシアの軽油輸出は日量約80万バレルで、その消滅は国際市場における軽油供給をさらに逼迫させる。目下のところ、国内原油処理の減少はロシア原油輸出の増量となって現れているが、ウクライナはロシアからのタンカー輸送への攻撃を増しており、またバルト海のウスチ・ルガ港などの原油積み出し港も攻撃対象としている。長距離ドローンによるロシア原油生産施設への攻撃も今後増すとすれば、輸出阻害が石油製品から原油へと拡がる可能性は十分ある。それは、中東危機による石油供給逼迫を一層悪化させる。

ペルシャ湾、紅海、ロシアからの石油輸出が同時に阻害される「複合石油供給危機」へと陥る危険性が高まっている。

ペルシャ湾(および紅海)危機は米国・イスラエルの暴走が招いたもので、ロシア産石油輸出の阻害も西側の支援を受けたウクライナがもたらしている。一方、かつて石油危機を果敢な燃料転換、技術革新、産業構造転換によって克服した日本の姿は今はなく、備蓄放出と巨額の補助金支出に頼る現状維持の姿勢しか見えない。

このままでは西側の自滅であり、石油供給危機の深刻化は、西側の現実的な思考力が厳しく問い直される局面となろう。

1 2 3 4