【特集2 動き出した柏崎刈羽】厳しい安全対策基準をクリア 地元理解得て基幹電源に

2026年8月3日

産業活性化の原動力に期待が高まる発電所の再稼働。
電力安定供給や脱炭素戦略などさまざまな波及効果が見込まれる。

国内最大級の発電出力を持つ東京電力ホールディングスの柏崎刈羽原子力発電所(全7基、総出力821万2000kW)。福島第一原子力発電所の事故以降、発電所の運用が順次停止し、2012年に6号機の定期検査により、全号機が停止した。


以降、東電は原子力に関する新しい規制基準をクリアするための取り組みに注力。5号機から7号機の地震の想定を450ガル(編注:地震動の加速度)から1200ガル以上へ引き上げた。津波に対しては3・3mから6・8mへと想定を引き上げて防潮堤を整備するなど、対策を重ねてきた。こうして新規制基準に適合した安全基準を達成したことで、原子力規制委員会から認可を取得。地元の理解も得て今年4月、14年ぶりに本格的な営業運転を再開した。

5号機から7号機の全景


動き出したのは6号機だ。海水温度によって多少変化するが、出力は135・6万kW。100万kWを超える電源が動き出した意義は大きい。


中東危機に見舞われる中、資源に乏しい日本にとって、国内全体では約7割、東日本エリアに限れば8割近くを火力発電に頼っている。そうした中、火力依存度が高い東日本における再稼働は、エネルギー自給率の向上に寄与する。

防潮堤も整備した

脱炭素社会の推進を後押し 電気料金の低減に寄与

カーボンニュートラルの推進や電気料金低減への期待も大きい。CO2排出係数ゼロの電気がベースロードとして利用できるようになったことで、脱炭素に向けた戦略が前進していく。さらには、原子力の稼働が進む西日本に比べて東日本の電気料金が割高傾向にある中、とりわけ料金低減への要望を口にしてきた産業界にとっては追い風となる。


最近ではデータセンター(DC)向け電力需要も上昇中。「DCの種類にもよるが、365日、一定の電力需要があるDCとベースロードの原子力とは好相性」(業界関係者)というように、「原子力とDCとの近隣一体整備」戦略もアイデアとして検討されるなど、新たな産業創出にも期待が高まる。


また、安定供給に向けた実務面にも効果がある。東電管内ではこれまで、太平洋側の電源が中心となって関東エリアの電力供給を担っていたが、今後は日本海側からのベースロードが加わることになる。レジリエンス機能が高まると同時に、他の電源の定期検査の工程や送電網のメンテナンスなど、安定供給を支える上で、さまざまな運用面での柔軟性の向上にもつながる。

東日本大震災以降の発電所における主な出来事

特重施設整備で安全対策 技術者が活躍できる場へ

今後は7号機の再稼働に向けた安全対策を進める。東電によると、航空機衝突のような極端な事態などに対応する「特定重大事故等対処施設(特重施設)」への対応と既存設備とのつなぎ込みを29年8月までに終わらせる予定だという。

災害を想定した訓練


地元では複数号機の運用を望む声が高まっている。「全号機が停止していた時は、定期検査を担っていた地元の人材は、他のエリアに出向きながら事業を続け技術を維持してきた。6号機が動き出したことで今後、地元の技術者が定期検査やメンテナンスに対応できる。さらに数年後、複数の号機が動けば、定期検査と稼働するプラントの交互運用ができ、それぞれの業務を分散させられる」(地元企業関係者)


地元に活力を生み出そうと東電は今年7月、自治体や地元企業とともに「柏崎刈羽地域共創イニシアティブ」を立ち上げた。「国ではなく地元が主導していく、地域を活性化させるための協議体。若い世代の人たちが『自分たちの発言で街が動く』ことを実感してもらいたい」。柏崎商工会議所の西川正男会頭は言う。14年ぶりに実現した再稼働を契機に、地元では新たな動きが広がり始めている。